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二代目

Focus

2.0

4AT

270万円(税込)

 

 

18インチホイール装着車

【1回目:18インチホイール装着車】

Focusが2代目にモデルチェンジした。発表会は次の週末に予定されていたが、乗れる車両があったので試してみた。

展示車両であるFocus 2.0は、見栄えのするオプション設定ホイールと225/40R18のMICHELIN Pilotを履いていた。展示車とは別にノーマルの試乗車を用意するはずであったが、フォードからの車両供給不足のため準備できず、今回は展示車が試乗車を兼ねていた。

まずは運転席に座ってみると、高い着座点が初代から受け継がれていることが分かった。2.0の運転席は電動調整機構が付くが、リフターは座面を全体的に前方に傾けながら上げる設定になっており、希望する姿勢をとることはとても困難であった。運転姿勢の自由度を高めるため、前端と後端をそれぞれに上下できるようにしてもらいたい。

フットレストは相変わらず存在しなかった。付けない理由がフォードにはあるのだろうか。説明を聞きたいものである。

パワーウィンドーのスイッチは、運転者用にはアームレストに存在し、4つそれぞれがブラインドタッチで操作できて良いのであるが、それ以外の乗員のために用意された3箇所は、ちょっと操作しにくいドア壁面に存在する。「誰にでも使いやすい」とカタログに謳うのなら、スイッチは普通の位置にあるほうがいい。

エアコンは左右独立温度調整ができるようになった。モンデオ初代Focusで問題だと思っていた温度設定と風量変化のタイムラグは、2代目になって改善されていた。スイッチは従来どおりフニョっとしたタッチで質感は低い。また、グローブボックスの蓋はバタッと開くもので、ゆっくり動く仕掛けは付いていない。さらにダッシュボード上面以外は硬いプラスチックで出来ており、実用に徹したクルマであるという印象を強く受けた。フォードはどうも日本人の客を意識していないようで、微妙な質感を気にする人が多い我が国では初代と同様に受け入れられないだろう。GOLF5も材質は安っぽいが、見え方を気にしている分、Focusよりも安っぽく見えない。フォードは少し意識を変えたほうがいいと思う。

リアシートに座ってみると、座面クッションが長いところは良かった。しかし、かなりスポンジが柔らかくて驚いてしまった。前席との座り心地の違いが大きすぎるのはいただけない。また、リアの頭上には、スタイリング優先のためかほとんど余裕はなかった

荷室は、全長が伸びたことによってかなり広くなった。Cセグメント車では最も広いのではないだろうか。また、2代目からは外部に電磁スイッチが装着されて便利になった

動かしてみると、普通のクルマだなあ、という印象しかなかった。速度の遅い街中の試乗では、当然ながらメディアで誉められているような限界域での動きの良さの片鱗も感知することはできなかった。また、アクセラやS40/V50の姉妹車であることも感じることはできなかった。アイポイントの高さは相変わらずで、シート位置を最下位にしていても見晴らしは良かった。しかし着座姿勢は走り出してからもピッタリせず、いろいろとシートを動かしてみたがどうしてもしっくりと来なかった。アクセラやS40/V50に比べて、同じプラットフォームなのに高い着座位置を設定したことに対する悪影響が現れているのかもしれない。

コースは渋滞が多かったので、停止〜クリープを繰り返すことになってしまい、微速時のブレーキ鳴き(ググッ、ゴゴッという音)のチェックができた。これはかなりひどいもので、普通の日本車に乗っていた人にとっては違和感が大いにあるだろう。日本で販売される輸入車でも、最近はこんなにひどい音が出るものはなく、それらのように繊細な日本人の意識にまで踏み込んだ設計をしないとクルマは絶対に売れない。例えばVWのように日本製のブレーキパッドに変更するという配慮があってもいいだろう。停止寸前にATが1速に変速する際のショックも大きく、微妙な制御でショックを抑制している日本車と比べて「古臭い!」と強く感じてしまった。機械が機械らしく動くことを欧米人は当然のように思うかもしれないが、日本人には変速していることを感じさせてはいけないのである。

ATは、Dレンジで普通に流している状態では特に違和感はなく、4段変速であるデメリットは感じられなかった。しかし、Tipシフトを使って変速してみると、ステップ比の大きさに4段なんだなという印象を強く受け、積極的にTipシフトで遊ぼうという気にはならなかった。GOLF5などのように6段変速ならば良いのであるが、このあたりはコストを抑えようとするあまりの失敗である。5〜10万円高くなっても5〜6段ATが今の時代には必要である。発進時にはTipシフトで2速発進が可能であった。しかし、任意に2速を選べるのは停止時のみで、走り出してしまうと、ある程度の(自動変速プログラムでアップシフトする)速度を越えないと2速に手動でもアップシフトできない。この制御はなんとも理解できない。停止時に可能ならば、いつでも好きなときに2速に入るようにしても問題はないだろう。

路面状態の悪いカーブを低い速度で走ると、ステアリングが落ち着かない感じを受けた。これはまさに225幅のタイヤの欠点だろう。純正サイズ(205/55R16)であれば、こんなことはないと販売員は話してくれた。18インチにするのなら、レガシィアテンザと同じサイズ(215/45R18)にすれば、少しは路面の影響を受けにくくなるだろう。

2.0にはパワステのアシスト量を変化させるスイッチが備わる。STANDARDとSPORTを試してみると、微速ではともに軽くて差がないが、ある程度の速度になると違いが感じられるようになった。BMW Z4のような重過ぎるSPORTではなく、FocusのSPORT設定はクルマの動きが落ち着いた感触になり、とても惹かれるものがあった。このSPORT設定がATやESPにまで影響を及ぼすようになっていれば、マニアには受けるだろう。

1速でフルスロットルの加速を試してみると、高回転の音はアクセラと違い、あまり調律されたものではなかった。基本的にはマツダMZRと同じエンジンなのに、単に豪快な音が出るだけで、楽しくさせる類のものではないのが残念であった。欧州車は排気音のチューニングをしているものが多いのに、フォードはそこまで手が回らなかったのか、実用車に徹している。

初代Focusは欧米での評価が高く、評論家にも受けが良かった。しかし日本では売れなかった。2代目も評論家には大いに誉められている。しかし、基本がいくら良かったとしても細かい部分の煮詰めが不十分に過ぎる。どう見ても日本での販売を真剣に考えているとは思えないのである。同じ大衆車のカテゴリの中でGOLF5の洗練された作りや走りと比較すると、特にそう感じるのである。もう少し日本人の嗜好を知って作りこんで欲しい。

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【2回目:ノーマル】

205/55R16サイズのタイヤを装着するノーマル車にも乗ってみた。

FOCUSの試乗の直前にM/C後のPeugeot307に乗ったので、18インチを履いたFOCUSと比べるというよりも、今回は307との違いを述べてしまうことになる。

乗って始めに感じた印象は「ATがなんとルーズなんだ」ということであった。スロットルペダルを踏めばボワンと回転が上がり、離せばストンと落ちる。回転数の変化が大きいだけで、それが加減速になかなか反映しないことに苛立ちを覚えた。60km/hでは4段ATのトップギアでロックアップクラッチが作動しているが、わずかな加速を期待してスロットルを少し開ければ即座にロックアップが解除されてしまう。加速を感じる前にロックが解かれるのはいかがなものか。普通はしばらくロック状態を維持しておき、さらに踏み込んでトルコンのトルク増幅作用が必要となった時点でロックを解除するものである。頑なにロックアップクラッチを作動させたままにする307とFOCUSはまるで正反対の特性を持っていた。

標準サイズのタイヤを履いた車両の乗り心地は悪くなかったが、走行音が安っぽいという印象に終始した。ロードノイズが大きく、さらに段差を越えるときのタイヤ打音が室内に響くのはいただけない。307のほうが圧倒的に静かで上質な感じがした。

FOCUSの美点は操舵感である。これはとても気持ちが良かった。モンデオもそうであったが、滑らかで剛性感のある感触はクラス随一かもしれない。ステアリングの重さをSTANDARDからSPORTにすると、さらにしっかりした落ち着きが得られ、感心させられた。

ちょい乗りであったため色々と書くことはできないが、もう少し洗練された味がないと日本での商売は難しいだろう。

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【3回目:ノーマル】

下記の1.6モデルに続いて2.0モデルに乗って、両車を比較してみた。2.0はスロットルを浅く踏んでいるだけなのにエンジン回転を高めようとするし、ブレーキも初期が利きすぎる。あまり高性能というわけでもないのに、1.6との差異を誇示するような動きに対して違和感を覚えてしまった。どうやら私の体は1.6の自然な動きを気に入ってしまったようである。クルマの動きが運転手の想定より大きく出る特性は、私の最も嫌うものなのである。

エンジン音は1.6よりも2.0のほうが明らかに軽快であった。動力性能は1.6と比べると2.0は余裕が遥かに大きく、スロットルを開ければさほど不満のない加速を得ることができた。ただし、ライバル車(307メガーヌ)と比べて性能が特に優れている訳ではなく、6段ATを積むGOLF5よりは見劣りする。

Tipシフトを使って1速発進から変速を繰り返して加速してみると、これが意外に軽快で良かった。加速のみという一定方向の変化においては、トルコンのルーズさを感じることが少なく、素早いアップシフトを得られることも好印象であった。Focusがもし6段ATを載せていたなら、この感触を1.5倍楽しむことができるのに、とてももったいないと思う。FordもすでにアイシンAWと取引があるので、是非ともVW/Audiと同じ6段ATを採用して欲しい。

二代目

Focus

1.6

4AT

220万円(税込)

初代は1.6Lモデルの印象が良かったので、新型の1.6も試してみた。

乗り込むと、2.0と比較して明らかに安く仕立てられていることが分かる。ステアリングホイールに革は巻かれていないし、シート調整は手動になるし、エアコンやステレオの意匠も異なる。シートの掛け心地も異なったが、これは意外にも印象が良かった。2.0のようなランバーサポートの押し出しは付いていないものの、全体的に適度に沈み込む柔らかなクッション性は気に入った。

動かしてみると、初代1.6や新型2.0とは異なり、全体的にとてもまろやかな乗り味になっており、熟成された大人の乗り味だと感じた。運転手の操作に対して期待どおりの素直な反応が返ってくるのが良かった。

個々に見ていくと、スロットルの反応は穏やかで、ブレーキのタッチは硬からず柔らかからずの良い感触で、ステアリングは適度な軽さを持った上質なスムーズさがあり、路面からの突き上げ感はマイルドにいなされ、街乗りでは何ら文句を述べるところがなかった。

奥様の買物用の足に使えば、下手な運転が改善されるかもしれないし、安全面でも不足はないので、選択肢としてちょうどいいクルマだなという印象を持った。ただし、洒落た奥様だと思われるにはFordブランドは不適かもしれない。なんとなくそういうイメージを持ってしまうのがFordの弱いところである。Audiのような大胆な戦略を考えなければ日本市場を大きくするのは難しいだろう。

絶対的な動力性能を述べると、やはり大きくなったボディを100馬力エンジンで動かすのはやはり苦しいものがあり、スロットルを大きく踏み込んだ際のパワーにはまったく魅力がなかった。これは他のCセグメントの1.6モデルにも当てはまることであり、307やGOLF5でも最低限の走りということに変わりはない。まあGOLF5では6段ATがエンジン性能をうまく引き出しているので上品に走ることができるが、それ以外の4段ATを積むモデルでは細く長い加速に耐える必要がある。

記憶していた2.0との乗り味の違いはここに述べたとおりであるが、1.6の性格をもっと明らかにするため、もう一度2.0に乗って比べてみた(上記の3回目へ)。

 

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