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Kangoo

4AT

カングーが日本に入ってきて、クルマ雑誌はこぞって良い評価をしていた。そんなに良いのか?と思っていたが、近くに店舗がなかったため、乗る機会がなかった。雑誌に出なくなって存在を忘れかけていたら、いつのまにかエンジンが1.4Lから1.6Lに変更されていた。

2003年11月、近所の日産の営業所が改装のついでにルノーの店を併設し、観音開きのバックドアをもつモデルが試乗車として用意された(サンルーフなし)。

外見は背の高いバンであるが、運転席に乗り込んでみると、単なる荷物運搬用のクルマではなく、なかなか洒落た雰囲気を持っていた。内装の一部に外装と同じ鉄板を使うという軽トラのような仕上げでありながら、デザインのおかげで安っぽい感じはあまりせず、シートの掛け心地もソフトでなかなかのものであった。

天井が高いので、後席では広く感じる。高い天井を生かして、飛行機の荷物入れのような装備があるのが面白い。

走らせてみると、加速は意外に鋭敏であった。スペックは大したことのない1.6Lエンジンであるが、気持ちよく走ってくれた。Dレンジで全力加速をすると、2nd ギアは95km/hまで引っ張る設定で、急な加速が必要なときに使いやすいギア比となっていた。普通に走るのに問題になるところは殆どないが、ダルなフィーリングのステアリングだけは気になった。

乗り心地は良く、あまり騒がしくないので、ファミリーカーとして使うのは適当ではないだろうか。乗車定員が5人であるのが最近人気のある日本の小型ミニバン(7人乗り)と同じようには使えないが、荷物を積みやすいので様々な用途に使え ると思う。雑誌に書かれている評価の理由が何となく理解できた。

LAGUNA

Wagon

V6 3.0

AT

375万円

京都からの帰り道、国道171号の渋滞は相変わらずひどく、運転に疲れきってしまったので、休憩がてらルノーのお店に寄ってみた。

家内がコーヒーを飲みながら婦人誌を読んでいる間に、私は試乗させてもらうことにした。

新型ラグナが日本に導入されて1年と少し経つが、残念なことにこれまで街で見かけた記憶はない。ヨーロッパでは実用的なファミリーカーとして人気があるはずであるが、日本では地味で目立たないクルマなので、OPELベクトラやFORDモンデオと同様にあまり支持されていないようである。やはりまだまだ「外車」というものは特殊な人のために存在するという気がする。

実車を見ると、4.7m×1.8mという大きさを全然感じさせない。大きく見えないので威圧感がない。それも目立ちたがり屋には不満なところだろう。

車内に乗り込んでみると、外見からの印象よりも遥かに広く感じる。電動調整がつく革シートはゆったりとしており、フランス車らしいソフトなものである。ステアリングホイールは、チルトとテレスコピックが可能で、シートポジションは合わせやすい。

アイシンの5段ATをDに入れて走り出すと、反応はごく普通にスムーズであり、驚かされるようなものは何もない。フランス車に多く見られる特徴の“シフトアップが遅かったり、ダウンシフトがすぐに入ってエンジンブレーキが強力に効く”といったことはなかった。

ステアリングは滑らかで軽く、路面状況の伝達はやや控えめで、中型ワゴンではこれぐらいの設定が良いのかもしれない。

乗り心地もごく普通で、剛いとか硬いとか渋いとか緩いとかいう言葉はない。ゆったりと滑らかに走る普通のクルマであった。

回さずに普通に走っている限り大人しい2.95Lエンジンの本領はどうなのか、確認するために全開加速も試してみた。207PS、28.5kgm、車重1590kgというスペックから想像できないぐらいに俊足で、旧レガシィ3.0(BH型)よりもトルク感は充実していた。しかし、何らかの特別な味わいが感じられるということはなく、普通であった。

このラグナは、何もかもが「中の上」、「中庸」、「無難」という感じで、メルセデスのように「とにかく外界の刺激を取り除いて安楽に過ごさせてやろう」という強い意志が感じられない。優等生ではあるが、面白味のないやつなのである。

ちょっと一回りのつもりが、また渋滞に巻き込まれ、30分ぐらいの試乗となってしまった。店に帰ってクルマを降りると、不思議なことに体が軽くなっていた。疲れきってダルかったのが嘘のように癒され、回復していたのである。運転することによって楽になるというクルマは貴重である。

ワゴンの荷室を見てみると、それはなかなか広く、床面がとても低い。また、ガラス部分だけを開閉できるのも使いやすそうである。ただし、ガラス部分を開いた状態でトノカバーの開閉は不可能(非常に困難)なことを発見した。目隠しをした(トノカバーを閉じた)状態で荷物を出し入れしようとする場合、必ずハッチゲートを開かなければならない。これは改善の余地があるので、店長にその旨お願いしておいた。

荷物を積んでバカンスに出かけるための実用車として考えると、ラグナはとても良いクルマだと思えるが、所有する喜びが薄いような気もする。それが欠点である。外車も日本車も区別がなくなる日が来れば、そういう思いもなくなるだろう。

MEGANE

2.0

4AT

253万円

日本にもヨーロッパから1年遅れぐらいでようやく導入された。

ドイツではよく見かけたので、どんな出来なのか試してみたかったのである。

【1回目 運転席にて】

運転席に座ると、座面の幅が狭いのがちょっと気になった。が、これは走っているうちに忘れてしまうぐらいのもので、大したことではなかった。

それよりも問題なのはブレーキで、サーボアシストが強すぎる。一般のクルマの感覚で踏むと効きすぎてしまい、慣れるまではコントロールが難しい。今回は最初に踏んだ左足ブレーキングでカックンと止まってしまったので、少しの間は右足で踏んでタッチを頭で覚えることにした。そうしてから左足ブレーキングをすれば、足もその感触を覚えるのが容易になり、普通の減速が可能になった。

速度を高めると、直進時のステアリングの据わりが非常に良いのが印象的であった。このクルマは電動パワステを備えているので、直進ではアシスト量を減らしているのだろう。ただ、ステアリングを切っているときにスロットルを開けてエンジントルクをかけると、急にステアリングをまっすぐに戻そうとする力が出るのが気になった。自動的にステアリングを戻す「アクテイブリターン機構」を備えているとルノーでは宣伝しているが、昔のFWD車のようで、ちょっと違和感があった。

ATはフランス流にダウンシフトを積極的に行う設定になっている。しかし、プジョーほど極端ではなく、日本車から乗り換えてもシフトスケジュールにそれほど違和感はないと思うし、エンジンブレーキを使わせる設定はかえって好ましい。それよりも、何となくシャキッとしないパワー伝達具合がちょっと気になった。CVTのような曖昧さ(エンジン回転数一定で速度が変化する)を感じたのであるが、短時間の試乗であったので、詳しくは分からない。この4段ATはTipシフトを備え、それを使っているときでもロックアップ制御は入る(設定速度の詳細は不明)ので、燃費と走りを両立することができる。

雨天の試乗はあまり好きではないが、私はこのクルマで初めて雨量を感知して自動的に作動間隔を変化させるオートワイパーというのを体験した。停止中や雨の量が少ないときにはほとんど作動せず、ザーッと降ってきたら即座に対応してくれるもので、作動間隔は私の感覚と合っており、自らスイッチを触ることは一度もなかった。「間欠ワイパーの設定なんて自分でやればいいじゃないか」と思っていた私であるが、オートワイパーはお気に入りの装備のひとつとなった。

今回はエンジンパワーについて考えることなく乗っていたので、4000rpmまでしか使わなかった。フルスロットルは機会を改めて試してみよう。

【2回目 後席にて】

ショウルームの展示車両で触った後席(座面)の印象は、「なんと柔らかいクッションだろう!」ということであり、ドイツ車やAlfa147のような硬いクッションのクルマに乗り慣れていると、果たして MEGANE II は快適なのだろうか、と疑問を持った。

そこで私は後席に陣取り、運転席にはAlfa147オーナーに、助手席には支店長に乗ってもらった。手で押して柔らかすぎると感じたシートは、体を預けてみるとさほど沈み込まず、適度な包まれ感があってなかなかのものであった。道路の継目を踏むと、タイヤを叩く音は感じられたが、車体への入力は弱く、そして乗員への衝撃は非常に少なかった。

ハッチバック車はリアダンパーの減衰力が弱いことによって跳ねることが多いが、MEGANE II ではそんな安っぽい乗り味は顔を出さず、快適性が高かった。また、前方視界は良く、横はCピラーが少しだけ視野に入るという丁度いいもので、なかなか安心感を持てる設計になっていた。

Alfa147オーナーは「運転して何ら違和感のないクルマである」とMEGANE II を評した。

2.0 turbo

左ハンドル

3ドア

6段MT

360万円

ルノー・スポール(RS)という魅力的な名前を冠するメガーヌがやってきた。

RSといえば、クリオ(ルーテシア)に3.0L V6をミッド搭載したクリオRSが有名であるが、メガーヌRSには直列4気筒2.0Lターボのエンジンがフロントに載せられている。気になるエンジン性能は 165kW(224PS)、300Nmという数値で、あまり驚くものにはなっていない。フロント2輪駆動なので過剰なトルクは無駄になるからであろう。なお、出力とトルクの値は英国仕様インプレッサWRXとまったく同じであり、RSは0→100km/h加速を6.5秒で、WRXは5.9秒でこなすという。これはFWDと4WDの発進加速の差によるもので、実質的な速さは同じレベルだろう。

RSの特別な装備としては、bremboのブレーキキャリパ(前のみ)および225/45R17(ヨーロッパでは225/40R18)サイズのタイヤが挙げられる。

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外観は前後バンパー形状が少しだけ特別な装いになる程度で、ボディ本体は普通のメガーヌと変わらない。また、マフラーがリアバンパーの隙間から左右に1本ずつ分かれて突き出ているが、これは単にデザイン上の遊びで、実質的な意味はない。EXマニからツインスクロールのタービンに入るパイプは2本であるが、タービンから出る排気管は1本で、そのまま1個のサイレンサに入り、そのあとでパイプが2本に分岐してバンパーから外へ出ているだけなのである。室内も革シート以外に特別に見える部分はなく、RSという名を持っていても意外にあっさりしたクルマなのである。安全ベルトがオレンジ色ということだけが印象に残った。

身長175cmの私には運転席の位置は最下位がベスト(それでも基準位置が高すぎる)で、ステアリングホイールを最も手前に引っ張った状態でシートバックを調整して(やや寝かして目線を下げて)走り出すことにした。

店の敷地内において、すでにブレーキのサーボが強すぎることおよび電動パワステのアシストが強すぎることが気になった。6段MTのシフト操作は軽く、適度なストロークがあり、それにクラッチペダルは軽く、乗る前にイメージしていたスポーツカー像とはまったくかけ離れたクルマであった。

最高速度が90km/hぐらいの低速の市街地試乗に出かけると、エンジンの実用性の高さに感心させられた。2000rpmぐらいから加速を平然とこなし、過給遅れ(ターボラグ)がなく、エンジンセッティングがとても上手になされていることが分かった。街乗りでどこから踏んでもレスポンス良く加速ができるのは気持ちよく、低回転を維持できるので、静かで燃費の良い走りができるだろう。また、大きくスロットルを開けてみると、300Nmの力強いトルクも見せつけてくれた。過給遅れの大きい私のインプレッサ(GC8)よりも安楽に速く走る実用的なクルマであった。

乗り心地は、ソフトなシートのおかげで安楽であった。脚もそれほど硬くなく、もし5ドアならファミリーユースにも問題がないぐらいの実用的な設定であった。18インチを履いていればバネ下の重さを感じたかもしれないが、グリップ性能は17インチとほとんど差がないはずなので、日本用モデルが17インチタイヤを選択したことは正解だったと思う。

ルノー・スポールは本国仕様と同じ左ハンドルモデルだけが輸入される。それにもかかわらずペダル設定が奇妙で、全体的に右に寄り過ぎていて運転に支障があった。フットレストとクラッチペダルが離れ、ブレーキペダルとスロットルペダルの間が極端に狭い。そしてスロットルペダルとフロアトンネルの間も狭い。それのせいで通常の操作で足がペダルが引っかかるのである。具体的には、ブレーキを真っ直ぐに踏んでいた足を、かかとを床につけたままで右に振ってスロットルペダルを踏もうとすると、爪先がフロアトンネルに当たってしまい、充分に右に振れないため、ブレーキペダルに足が掛かった(残った)状態になってしまうのである。かかとごと足全体を右に移動すればよいのであるが、運転中にそんな動作をする人はいない。

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英国でのメガーヌRSの価格は2万ポンド弱で、WRXより僅かに安い。また、メガーヌにはRS以外にも2.0Lターボ(MT)を積むモデルがあり、その性能は 120kW(165PS)、270Nm、0→100km/hが8.3秒、価格は15000ポンド弱である。なお、日本に正規輸入されているNA 2.0Lモデル(AT)も価格は15000ポンド弱である。つまり、ルノー・スポールというのは思ったほど価格的にも特殊なものではないのである。

現状でRSは左ハンドルの3ドアだけというラインアップなので、販売量は期待できないが、右ハンドルの5ドアも追加されるという。

今後ライバルのターボ付き2.0Lエンジンを搭載するモデルが続々と日本に入ってくるので、ルノージャポンはもう少し戦略を練らないといけない。これから買うのなら、ASTRA 2.0ターボ(300万円)、GOLF GTI 2.0 TFSIの(310〜320万円)ほうが魅力的である。

 

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