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初代

Focus

 

1.6L

GHIA

4AT

シートの位置が高く、見晴らしがよいのが印象的。操作に素直に反応する運転しやすいクルマである。全体的なフィーリングは良好であるが、特別に素晴らしい部分というものは感じられなかった。雑誌テストによると、極限の性能はかなりいいらしい。さりげなく良いクルマなので、世界ではVW GOLFよりも多く売れているらしい。

前席は、インプレッサよりは柔らかいものの、一般車両に比べて硬めのクッションを持ち、とてもしっかりとして快適で、運転姿勢を保つのに適当である。雑誌では硬すぎるという批判が多いが、とんでもない。もっと硬くてもいいぐらいである。

スロットルバルブの開き始めの変化量はペダル移動量に対してやや大きいようで、街乗りではキビキビ走って良い。しかし、スロットルを全開にしてもペダルの残り代ほどトルクが増大しない。1.6Lだから仕方ないかもしれないが、ペダルストロークの残り分に期待を込めて踏みこんで、走らなかったらちょっと悲しい。

革巻ステアリングホイールはグリップが非常に太くて、昔アクセサリショップで買った5000円のビニール巻きスポーツステアリングを思い出した。できれば日本人の掌に合わせた細めのグリップを持つハンドルが欲しい。

不便だと思った点は、リアゲートを外から開けるとき、そして給油するときにKeyが要ること。他の輸入車と比べてFORD車は考え方が違うようである。リアゲートは信号待ち等の停止時に外部からの侵入者を防ぐため、給油口はセルフ給油のときに車両の盗難を防ぐため(運転席にキーを付けたままで給油ができないよう)の配慮かもしれない。

2.0L

GHIA

4AT

1.6Lと比べると踏み始めのスロットルバルブの開き具合がのセッティングが異なる。Mercedesのように意図的に深く踏み込んでやらない走らないので、街乗りでは1.6Lよりも鈍重に感じることもある。フルスロットルにする場所がなかったので、1.6Lよりどれぐらい速く走るのか試すことはできなかった。

エンジン以外ほとんど1.6Lと変わらないので、求める速さとフィーリングで選べばよい。

MONDEO

2.0L

4AT

275万円

2.0LのエンジンはFocusに載るZetecよりも新しいDuratecという呼称のもので、Focusより軽快なフィーリングを持っている。パワーは並で、回り方はあまり洗練されているわけではないが、遮音がしっかりしており、回転数を高めても車室内は静かに保たれる。全開に近い加速時のATの制御(特に1速と2速はステップ比が大きい)は少し荒っぽいが、このへんはあまり使わない部分なので問題ないかもしれない。3速、4速あたりの制御がどうなっているのかは、低速の試乗だったのでよく分からなかった。

乗り味は、ものすごく骨太で、ステアリングから感じるしっかり感はこれまでに乗ったクルマの中で一番である。車体から感じられるフィーリングもガッチリしており、ジャガーXタイプよりもモンデオのほうがクルマそのものの出来は気に入った。

しかし、いくらクルマが良くても売れないのは問題である。フォードのブランドイメージが日本で確立していないことが輸入車の販売においてはネックになる。日本では、輸入車を「クルマそのもの」の価値で選ぶ人がほとんどいないと思われるので、何らかのイメージを早急に作る必要がある。設定される価格は安いが、値段なら日本車のほうが安い。何か付加価値(イメージ)をつけて日本だけ価格を吊り上げると売れるかもしれない。

室内の広さは、幅が1810mmもある割りには横方向には広くないが、前後方向にはかなり広い。前席で運転ポジション(身長175cm)をとってから後席に座ると、膝の前には200mmぐらいの余裕があった。荷室の広さは中庸で、インプレッサの荷室に入る長さの愛用の釣竿はおそらく入ると思われた。

フォーカス、モンデオともにフットレストがない。最近のフォード車にはなぜフットレストがついていないのか。理由を知りたいものである。

MONDEO

WAGON

2.5L

V6

GHIA

5AT

338万円

V6エンジンを載せたモンデオは、ジャガーXタイプのベースである。このV6エンジンにはカムシャフトの位相を変化させる機構などは付かない「素」の状態のものであり、Xタイプのエンジンよりはトルク感が薄い。直4 2.0Lモデルと比べてV6 2.5Lモデルは車重が重いため、2.0Lセダンと加速性能にあまり違いは感じられなかった。

革シートは表皮もクッションも柔らかなつくりで、骨太な他の部分の感触とは少し合わない気がした。FOCUSのような硬いクッションのほうがが個人的には好ましいと思う。形状は悪くないのだが。

ブレーキは、フロントに直径300mmのローターを備えるだけあって効き味は良い。しかし、ペダルのリターンスプリングが強すぎて(CALDINAよりひどい)、踏み始めるのに力を込める必要がある。ペダルに足を乗せただけでPADがローターに当たる感触があるクルマに慣れているため、モンデオのブレーキは非常に違和感がある。安全のためにもう少し軽い力でペダルが動き始めるようにしてもらいたい。奥での感触がなかなか良いだけに残念である。

ATは5段になり、Tipシフトも装備する。Dレンジで加速すると、2ndギアではエンジンをある程度高い回転数まで引っ張っていくが、3rdギアは一瞬で通り過ぎ、4thへと変速してしまう。各ギアで受け持つ幅に差が大きいシフトスケジュールは何となく気持ち悪い。10パターンの変速プログラムが組み込まれているというので、前の人の走り方を覚えているのかもしれないが。。。TOP(5th)ギアには自動変速では60km/hぐらいで入る。Tipシフトで5thギアに変速できる最も低い速度は約50km/hである。ロックアップクラッチはTipシフト操作をしているときでも作動するので、任意のギアを選んで走っても燃費に影響することはなく、都合がいい。ギア比は2ndと3rdが大きく離れており、Tipシフト操作でダウンシフトをするとエンジン回転数が大きく変化し、変速ショックも大きい。せっかく5段のギアがあるのに、2ndと3rdのステップ比は4段ATと同じように広く開いている。1stのギア比をもう少し高めて全体にCloseしたギア比設定にして欲しい。

他の要改善ポイントは、サイドミラーの形状とエアコン。ミラーはデザイン優先で△の鏡になっているため、ちょっと見にくい。また、エアコンはAUTOモードが付いているが、設定した温度と出てくる風の温度が異なるのである。反応が遅いだけなのかもしれないが、なかなか希望の温度の風を得られないのは問題である。

2.0

GL-X

4AT

試乗車はなぜか2万km以上走っており、タイヤも残り溝が少なく、小さい故障(外気温度計作動せず)もあった。代車として客に貸し出す車両なのだろう。あまりコンディションが良いと言えない代物であった。

まず運転席に座ってみると、布張りのシートは沈み込みが大きい。特に背もたれは腰のあたりがグニョっと凹み、とても長時間運転できるような椅子ではなかった。ランバーサポートをいっぱいに前に出しても、その効果はほとんど得られない。FOCUSのシートは悪くないので、FORDの設計者がおかしいわけではないと思うが、MONDEOを高級車に仕立てようと企んで、ソフトな乗り味にしたのかもしれない。もしかすると、高級=ソフトという概念のある日本仕様の椅子なのだろうか?

走らせてみた感想は、セダン2.0とワゴン2.5と同じ文章を繰り返してしまうことになるので、もう書かない。

ただ、ひとつ反復して書いておきたいのはオートエアコンの制御のことである。一度AUTOボタンを押せば、あとは温度設定を変えるだけで風量、風向を自動的に選んでくれるという一見便利なものであるが、温度設定を変更しても風の量や温度が適切に変わってくれない。外気温10℃以下、室内温度20℃ぐらいで設定温度を最高の29度にしても、風量が最大にならないのである。手動でFANスイッチを触れば風量は変更できるが、それではオートエアコンの意味がない。センサーが鈍いのか何なのか分からないが、よく使うものだけに出来の悪さが気になるのである。

FIESTA

1.6

GHIA

4AT

ヨーロッパでの登場から2年遅れで日本市場にフィエスタが投入された。

外装デザインはフォーカスに似ており、弟分という感じがするが、内装はフォーカスとはまったく別の趣で、このクラスのヨーロッパ車らしく簡素な作りである。後席側の窓の開閉は、例によって手回し式となる。日本仕様だけでもパワーウィンドーにすればいいと思うのであるが、コストを割けないのだろうか。また、タコメーターにはダンピングの悪い指針を使っているようで、エンジンの動きとうまく合致しないのも安物臭い雰囲気を出してしまっている。

エンジンはフォーカスと同じものを使っている。フォーカスの1.6L車は意外に活発に走ったので、そのエンジンを少しだけ車両重量が軽いフィエスタに積めばなお良く走るだろうと乗る前から想像できた。

実際に乗ってみると、やはりキビキビと走ってくれた。フィエスタは、スロットルペダルの踏み込みが比較的浅い状態でもシフトポイントを高めに設定しているようで、ストロークの半分ほど踏んだときには4000rpmぐらいまで引っ張ってシフトアップする。そういうセッティングのおかげで活発に感じられたのだろう。

走行中の騒音は、エンジン回転があまり高くない状態であっても大きいと感じられた。タイヤや風切りの音よりもエンジンノイズが耳につくのである。TOPギアで80km/hで走るときのエンジン回転数は2200rpmぐらいであったが、3rd ギアに入っているのか確かめてしまうほどの音量であった。

ハンドリングはとても骨太な印象を受けた。ボディや脚がしっかりしており、大きいクラスのクルマを動かしているような感触があった。

乗り心地も軽々しさを感じさせず、立派なものであった。

ブレーキフィーリングも良好で、ペダルタッチや制動力の高まり具合は人間の感覚に合致していた。また、左足ブレーキングに適当なレイアウトであった。ただし、フットレストが存在せず、違和感が残った。フォードは何かこだわりがあるのだろうか。

運転席にはシートリフターが備わるが、いまどき珍しいクッションだけが上下するタイプで、その存在意義は薄い。また、リアシートの背もたれは60:40の分割可倒式になっているが、座面は一体式で跳ね上げるタイプになっており、使い勝手が良くない。もう少し考えてもらいたいものである。

全体的に観て、フィエスタは欧州のスタンダードなパーソナルコンパクトカーであると感じた。飾り気が無く、必要なものだけが揃っている1人乗り、あるいは2人乗り用のクルマである。つまり、日本における軽自動車と同じような位置付けで、後席は荷物置き場である。素材としては良いと思われるが、日本に入れるまで2年間も暖めておきながら、発売したのがこれでは、残念ながら販売量は期待できない。もう少し日本人の好みを考えて作り込みをすべきであったと思う。

 

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