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M/C前

AXELA

セダン

23S

4AT

発売前に広島の三次試験場で乗った感想はこちら

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アクセラが発売されたので、街乗りでの感触を確かめるべく販売店を訪問した。今回は三次で確認できなかった事項をいろいろとチェックすることができた。

【1回目】

エンジンルームを見ると、まるで外車のようであった。エンジンカバーにはMAZDAと書いてあるものの、ブレーキマスター、冷却水リザーバはFORDと同様のものを使用し、フレーム前端やラジエータアッパーサポートの構造も今までのマツダ車にはみられないもの(VOLVOの血も多く混じっている)となっていた。そして、ストラットのアッパーマウントには、流行に乗って補強用の厚い鉄板が当てられている(なぜかトヨタ車によく見られる)。

ショートデッキのため開口部が狭い(上下幅400mm)トランクではあるが、RV BOX800(高さ325mm)を入れることは可能であった(サイズからみて当然だが、実際にやってみるまで心配だった)。トランクの奥行は同BOX(370mm)を2個並べるだけのスペースはありそうである。だが、手前(バンパー)側の底にある傾斜のついたプラスチックカバーが意外に邪魔になる。トランクの蓋を支える機構が内部に突き出さないので内容量を有効に使えるのは良いが、ボディサイズの小さいインプレッサやBMW3er(E46)よりも床面積は狭いのはどうしたことか。

23Sの計器は昼間でも照明が点灯し、その存在を主張しすぎている。照度調整ダイヤルが付いているので暗くできると思っていたが、実はメーター照明のコントロールはできず、センターパネルの照明だけが暗くできるのである。なぜ全体を一緒にコントロールしないのだろう。中途半端な親切である。

ペダル配置は、右足ブレーキングをする人には問題ない(三次試験場ではブレーキペダルを右足で踏んだ)。しかし、私は公道では左足ブレーキングを多用するため、ペダル配置に違和感を覚えた。問題点は、フットレストとブレーキペダルの深さが大幅に違うことである。フットレストはかなり奥まった位置に存在するため、ブレーキを踏むまでの左足の移動距離が大きく、的確なブレーキングをする自信を喪失させられる。

4段ATにTipシフトがつくが、UP-DOWNの方向がBMW方式なのがどうしても馴染めない。Tipシフトを使うと自動シフトアップをしないので、何度もレブリミッタに当ててしまった。4つしかないギア比の良し悪しはチョイ乗りでは何とも言えないが、4段目(Top)ギアで約48km/hまでロックアップクラッチが作動しているので、50km/hぐらいの低速巡航であっても効率の良い走りができると思われる。

三次試験場では乗り心地が非常に良いという印象を持っていたが、街乗り試乗では意外にもサスペンションの動きが悪いという印象を持った。走行距離の少ない新車ゆえにダンパーの動きがまだ渋かったのかもしれないが、レガシィ(BP5の初期型GT Spec.B)のような硬さを感じた。

エアコンは、AUTOボタンでフルオート制御される。マニュアル操作で風量は7段階に変化させられるが、AUTO状態で温度調節ダイヤル操作によって変化する風量はもう少し細かく、9段階ぐらいに変化した。ダイヤルの操作感(クリックの感触)は安っぽい。

全体的にみると、運転手の意思がうまくクルマの反応に出るのが気に入った。山道をちょっと速いスピードで走ったとき、スロットルレスポンスは違和感のない鋭さを持ち、ステアリングも鋭敏すぎない(ギア比 16.2)ダイレクトなフィーリングが良かった。また、ブレーキ(前パッド FERODO製)も強い制動をしない範囲ではペダルタッチがカッチリしており、減速感も確かで良かった。ただ、リラックスして走る街乗りで、直進状態からの切り始めが重く、回し始めると軽くなるステアフィーリングは変である。そして、大きな問題ではないが、低速ギアで急加速するとトルクステアが感じられた。

この出来栄えで200万円を切る(195万円)というのはかなりお買い得感がある。ただ、アクセラは従来のマツダ車の延長線上にあるクルマではないので、細かい不具合の改善が終わってから買うのが良いだろう。

【2回目】

RX-8の試乗車がある店に移動するため、上と同じ車両に半年振りにもう一度乗ってみた(2004年6月)。追記することは、ATの制御についての話である。

Topギアで70km/h程度で走っているとき、Tipシフトを使おうとセレクタを横に動かすと、ロックアップクラッチが解除されることが分かった。これぐらいの低速度(低回転)ではトルコンを滑らせるほうが駆動力が増えて有利に働くと考えているのだろうか。これの使い方の例を挙げると、高速道路でDレンジで走行中に追い越しのために少し加速したいとき、スロットルを開けてもロックアップクラッチが作動していて十分に加速力が出ないことがある。加速力を得ようとスロットルをさらに開けると、3rdにダウンシフトしてしまってエンジン音が高まってしまう。そういうときには、Tipシフトを使って4thギアのままでロックアップを解除するという技を使うことができる。この例は、Dレンジでスロットル開度を大きくした際に自動的にロックアップ解除が行われないことを仮定して書いた。

乗り心地は、ある程度の距離を走ってこなれたせいか、あまり硬いとは思わなくなった。

AXELA

SPORT

15F

4AT

アクセラは、23S(2.26L)のスポーティさばかりが雑誌に取り上げられることが多い。そんなことは誰にでも容易に想像できることで、アテンザのパワーユニットをより小さいクルマに積めばスポーティに走るのは当たり前で、素人が書くような記事には飽き飽きしていた。

三次試験場でも1.5Lモデルに乗れなかったように、なかなかベーシックグレードには目が向けられないようで、それに焦点を当てた記事は見たことがなかった。このクルマは奥方のチョイ乗り用にちょうど良さそうなので、実際に乗ってみようと思ったが、いざ15Fに乗ろうとしても、売れ筋ではないグレードはなかなか試乗車が存在しないのであった。

今回は、クルマが置いてある吹田の店まで販売員の車両で送ってくれたので、乗ることができた。外観で‘最小エンジン搭載車’であることを示すのはホイールキャップぐらいであり、安いグレードであることを識別させるものはそれほどない。室内もシート表皮が異なるぐらいで、あまり差はない。こういう配慮があれば、「俺はエンジンが気に入って15Fを選んだんだ」と言うこともできないことはない。

エンジンを軽く暖機して、まずはゆっくりとスタート。江坂から吹田のあたりは交通量が多く、スピードが出せないため、低速度でステアリング、脚、エンジン、ATの感触を確かめてみた。また、途中、石畳を模した凸凹のタイル舗装のある商店街を通り抜け、騒音と振動のチェックも行った。

23Sに乗ったときの記憶と比べてみると、ステアリングは軽めに設定されていると感じられ、自然な操作感が気に入った。切り込んでいったときの頭の入り具合は23Sと同様にシャープで気持ちが良いものであった。脚はしなやかにストロークし、乗り心地は良好。定常走行中は音も静かで、石畳風の路面でも変な振動や騒音は出なかった。街乗り車両としてはとても良い出来具合であった。

前方に少し空間ができたので、フルスロットルでエンジンの力を試してみた。1240kgの車重を1.5Lエンジンで引っ張るのはいささか重苦しい。それでも、昔乗っていたファミリア(BF5P, 1.5L, 950kg, 3AT)と比べると、1.5Lエンジンも進歩しているんだなと感じた。気張って飛ばすことがないのなら、15Fは何ら問題ない動力性能を持っていると言えよう。

ブレーキは、街乗りで踏む限り何の問題もなく、強い制動時にも安定した姿勢で減速してくれた。ラインアップの中で15Fだけはリアがドラム式で、しかも放熱性の悪い鉄ホイールを履いているので、長い坂道を下るときには注意が要る。ペダルレイアウトは、23Sのところにも書いたように左足ブレーキングには適さないのだが、街乗りでは常に左足をペダルに引っ掛けて、いつでも即座に踏めるようにしておきたいので、今回は無理をして左足で踏んだ。変なレイアウトを改善するためには、ペダルの上にちょっと横に長いカバーを被せたうえでペダルを奥に持っていく必要がある (以前乗っていたAE104ではのカバーを被せ、ペダル位置を調整できる範囲で最も奥へ移動した)。

アクセラのAT全車には Tipシフトがつく。シフトレバーの意匠を共通にすればコストダウンになるので、これはなかなか良い考えだと思われる。4段しかギアがないのであまり使う機会は多くないが、ないよりはあったほうがカッコいいという程度である。

148万円でこの出来具合ならお買い得ではないかと思う。 なお、デミオの1.5Lは132〜153.5万円である。

AXELA

SPORT

20C

4AT

15インチホイール装着車

アクセラの試乗車は23Sが圧倒的に多く配備され、20Cが置いてある店はとても少ない。今回は、隣町まで行って試してみることにした。

まずは販売員の運転で山の手の住宅地まで移動した。その際、普段あまり乗る機会がないリアシートに乗車してみた。座面が大きくて視界の良い後席はなかなか快適であった。クッションは硬めながら、車両は脚の動きが良く、突き上げがなくてフワフワ感もなく、安定感を出している適当な設定であると感じられた。ただし、 背もたれの角度が寝すぎているように思えたので、リクライン機能を備えて立てられるようにすれば、なお良いだろう。

次に運転席に移動してドライブをしてみると、アクセラのベストはこの20Cであると私は思った。突出したところがなく、バランスがいいのである。

ステアリングは15Fと同様に変な抵抗感がなくスムーズに回すことができ、スロットルの反応は鋭すぎず鈍すぎず適切で、トルク感もなかなか充実しており、脚はやや突っ張り気味(走行7kmの新車ゆえ仕方ない)であったが角ばったショックはなく、ブレーキはややサーボが強いが安心して踏めるものであった。

ちょっと逸れるが、20Cだけが可変バルタイを備えていない。カタログを飾るだけかもしれないが、素人の目には可変バルタイがエンジン性能(出力と経済性)を上げてくれるように見えるので、ケチらないで他と同様にやってもらいたい。何度も同じように書いてしまうが、175万円の商品としては良くできていると思う。

AXELA

SEDAN

15F

4AT

来店の誘いを受けて訪れた店に15Fセダンの試乗車があったので、試しに乗ってみた。

1.5Lモデルが店頭にあるのは珍しいと思ったが、試乗希望の客がいるので取り寄せたとのこと。15Fに乗って内装を見渡すと、基本的に部品の材質は上級グレードと同じであるが、プラスチックの色使いに安っぽさが見えてしまうのが残念であった。ほとんどすべてが硬い表皮のプラスチックでできており、見た目にもそれが明らかで、ソフトパッド入りの表皮は肘掛ぐらいであった。このようなことは個人的にはどうでもいいのであるが、日産TIIDAは手が触れる部分の印象(触感)が良いので、一般の人の多くは日産のほうに目を向けることになろう。上記で「15Fも23Sもあまり違いがない」と書いたが、色使いについては23S用と比べて安っぽい感じはする。価格に跳ね返るわけではないので、全部同じような仕様にしても良いのではないだろうか。全モデルを安物に見せないことがイメージ戦略として大事なことである。

走らせてみると、何も気になるところはなく、日常で使う範囲では普通に走り、問題はない。発進からの全開加速も悪くなく、1.5Lエンジンにしては不満のない動力性能を示してくれた。脚はやや突っ張り気味の印象を受けたが、ダンピングがまあまあ出ており、収まりの良いすっきりした乗り心地はアクセラの良いところである。また、ステアフィールはとても気持ちが良く、キビキビと曲がる感触は運転を楽しくさせてくれるものであった。走らせて楽しいというのは大事なことで、これはマーチから派生したTIIDAでは味わうことはできない。

クラフトマンシップなどという大袈裟な言葉を使ってマツダは宣伝しているが、実物を見てしまうとそれが逆効果であると思えてしまう。こんな程度で熟練工の技なのか…と。理にかなわない過剰な宣伝をせずに、日産のように一般人に分かるような質感を作り上げて欲しい。せっかくFocusやS40/V50と基本を共通化してクルマの根本を強化しても、見える部分がチープなのではもったいない。どうしていつまでもこんなに下手なのだろう。あと5万円かけてまともな見栄えにすれば、評価も変わるのに。

AXELA

SEDAN

23S

5MT

アクセラのMTモデルに乗ったのは、これが初めてである。売れなかった長期在庫を試乗車に回したという事情なので、モデルはマイナーチェンジ前であった。まあマイナーチェンジといっても僅かな意匠違いでしかなく、機械としては何ら変わっていないので、問題はまったくない。

これまで何度となくアクセラやアテンザに試乗して、マツダの目指している方向はだいたい分かった。誰にでも分かりやすいスポーティな動きが日常の運転を楽しくさせてくれるのがマツダ車の特長である。

ATとMTの味の違いがどのあたりにあるのか、またヨーロッパで高い評価を受けているのはMT車であることから、本来の姿を見つけられるかもしれないと思って試乗をした。

スロットルバルブはペダルと電気的につながっているため、ペダルを踏み込んだときのストロークとエンジン回転の上昇との間に何となくずれがあり、気持ちが悪かった。ヨーロッパに目を向けている割にMT車のスロットルセッティングの微妙なチューニングができていないのは変である。また、実エンジン回転数が即座にタコメータに反映されないような気がした。ダイレクトなつながりが最も重要なMTモデルなのに、最初からインターフェイスの部分で違和感を覚えてしまった。

クラッチペダルが軽く、エンジンの低速トルクも充実しているため、発進はとても楽にこなしてくれた。1000rpmでつないでいくか、1500rpmでつないでいくか、微妙な調節は前述のスロットル特性によって曖昧になり、慣れないとうまくいかないと感じた。

渋滞時、1速のままでアイドリング走行(スロットルペダルを踏まない状態)をまったくギクシャクすることなく続けられたので、エンジンのフレキシビリティは十分にあると感じた。2速で同様のことを行うと、やや苦しい感じがしたが、平坦路ならまあOKであった。このあたりは小さいクルマに2.26Lエンジンを搭載したメリットがみられる。

シフトレバーはややストロークが短いタイプで、一見スポーティな印象を受けた。しかし、レバーの位置は車体中心線より左寄りにあり、このクルマがヨーロッパでの販売を主体にしていることを如実に示していた。確かに日本ではMTモデルの販売比率は10%にも満たないと思うので、MT好みの客は見捨てられても文句は言えない状況なのかもしれない。

運転中は2速に入れるときに何度も引っ掛かって苦労した。シンクロのせいなのかと考えて素早いシフトを試したりしながら色々と考えてみたところ、2速は左の方へレバーを押しつけながら引き下げなければうまくいかないことが分かった。右ハンドル車では、遠いシフトレバーをさらに遠くに押しながら動かさなくてはならず、とてもやりにくいのであった。左ハンドルなら、手前に引きながら2速に入れられるため、何ら不都合なく操作ができるのであるが。。

山道を走ってみると、クルマのすべての動きが軽快で、なかなか楽しく運転することができた。ATよりもギアのステップ比が小さいため、エンジンを高い回転数で使うときには力をより有効に使えると思われた。

フルスロットルで1速から3速の途中まで加速してみると、ATよりもシャキっとした加速感が心地よいと感じた。ただし、速さは2.26Lにしては満足とは言えない。

全体的な乗り味は軽快で良かったが、スロットル特性だけは最後まで馴染めなかった。ボワッとした曖昧な感触が残り、どれぐらい踏んだら自分の求めるバルブ開度になるのか見極めるのが難しかった。まあこれは経験が解消してくれるものだと考えられるので、所有すれば問題ないのかもしれない。でも、曖昧なインターフェイスでは運転の楽しさは半減するだろう。

総合的に見ると190万円を切るという価格はなかなか頑張っていると思う。ピッタリサイズの(無駄と思われる程の余裕は要らない)ファミリーカーを求める人にとってアクセラ23Sはなかなか良い選択ではないだろうか。

 

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