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マツダ アクセラ発売前試乗会にて

(WEB MEMBERS 試乗会)

MAZDA WEB MEMBERSの試乗会が2003年10月11日に広島県三次市のマツダ三次総合試験場にて開催され、全国各地から30名のWeb memberが集合した。

アクセラ(Mazda3)という新型車は、アテンザ(Mazda6)に始まりデミオ(Mazda2)、RX-8に続く新しい商品群の第4の意欲作である。

VW GOLF、FORD FOCUSに代表されるヨーロッパでもっとも人気のあるCセグメントにおいて、欧州車と同じ土俵で勝負できるレベルの商品は今までの日本車の中に存在しなかった。日本国内ではこのクラスの国産車の売上が落ちてきており、代わって輸入車は伸びてきている。その事実は国産車には価格以外の魅力がないことを端的に示しているのである。

そこでマツダはVW GOLFと対等に勝負できるクルマを目指して新型車を開発し、Mazda3としてヨーロッパで発表したところ、相当の評価を受けているらしい。それは新型GOLF(5代め)と同程度のレベルの高さだという。私はGOLF V にはまだ乗っていないが、それの兄弟車Audi A3には好印象を持っているので、アクセラには乗る前から大きい期待を抱いていた。

今回の試乗会はGOLF(4代め)、インプレッサワゴンをライバルとして、各車でハンドリングコースを1周して比較するという企画であり、二人一組で交互に各車の運転席および助手席に乗って感じたことをインタビューされた。

「走ってどうだったか」という感想は以下のとおりである。

なお、アクセラに搭載されるエンジンは、2.26L、2.0L、1.5Lの3種類である。それらの基本はアテンザ、デミオと共用であるが、チューニングは微妙に異なるようである。

 

AXELA 20C

5ドアHB

オプションタイヤ

205/55R16装着

【運転席:1クールめ】

サーキット練習会と同様に、まずはコースに慣れるために先導車の後ろをゆっくりと走る。せっかくのテストコースなのに極低速でしか走行できないことに我慢を強いられたが、右足の欲望を押し殺して必死に耐え続けた。 先導車に曳かれて、客が運転する試乗車は 20C〜インプレッサ〜ゴルフ〜23S の順に4台が連なって走るはずなのに、どういうわけか後続のインプレッサはゴール地点までミラーに写ることはなかった。

20Cは慣熟走行の1周だけしか運転できなかったので、直線部分でのフルスロットル加速(2ndギア)以外に運動性能を試すチャンスはなかった。その代わり、日常走行で重要なファクターとなる静粛性、乗り心地、パワステのフィーリング、ATのシフトフィーリング、ブレーキの初期タッチという項目をチェックすることができた。

初めてのクルマ、初めてのコース(路面状況)で判断基準がない状態ながら、20Cにはかなりの好印象を抱いた。エンジンとミッションはともにスムーズで静かに仕事をこなし、ステアリングは剛性感が高く滑らかに回ってインフォメーションもきっちりと得られ、ブレーキはカッチリした初期タッチがあり、サスペンションとシートは大きい段差を越えても乗員にショックを伝えず、しかもダンピングが効いた乗り心地が備わっていた。「変だな」と思うところは一切なかった。

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【助手席:2クールめ】

2クールめは助手席に乗車。運転席には友人(アルファ147 オーナー)が座り、遅くない速度で走った。1クールめにライバルを含めてひととおり乗ったので、音、振動、乗り心地はライバルと比較して話ができるようになっていた。

何より強い印象を受けるのは静かさである。遮音が良いだけでなく、エンジンやATから音を出さないように作られている。乗り心地は、わりあいにダンパーがしっかりと減衰力を出しており、ロール感が少ないのに衝撃をしなやかに吸収する脚の出来はかなり良かった。タイヤ表面の突っ張り感も車体や脚にマッチしていると感じた。全体的にライバルよりも明らかに高いレベルでバランスされている。

IMPREZA

15i

FWD

195/60R15

インプレッサの1.5L前輪駆動車はアクセラ15Fのライバルであり、20Cと比較するのはちょっと分が悪い。15Fの試乗車はなかったが、その乗り味が20Cとあまり差がないと仮定して比較してみた。

【助手席:1クールめ】

20Cから乗り換えて助手席に座る。走り始めると、すぐさま明らかな差を感じてしまうことになった。エンジンとATから発せられる音が大きく、「うるさいクルマだな〜」という印象を受けた。脚の動きにはダンピング不足を感じ、乗り心地は荒っぽい。安物ダンパーを使っているというイメージである。シートのホールド性も若干甘い。全体的に古臭い乗り味がした。

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【運転席:2クールめ】

運転席に座って走り出すと、ステアリングを回したときのしっとりした感触や重さが適切で、ブレーキペダルのタッチや効き味も良かった。アクセラのやや人工的なステアフィールや奥で効かないブレーキに比べると、インプレッサのほうが好ましく感じられた。

高い横Gをかけてカーブを曲がると、フロントタイヤが腰砕けになり、ステアフィールが曖昧になった。インプレッサワゴンは同セダンに比べて車幅が狭く、短いロワアームを使っているため、対地キャンバ変化が大きいのだろう。バネが柔らかく、ロール角が大きくなり過ぎるのも悪さをしている。段差では脚のバタツキも感じられた。

インプレッサ2.0L AWDモデルが比較車なら、どのような違いがあっただろう。

GOLF IV

GLi

195/65R15

小型2BOX車のお手本と言われて久しく、世界中で多くの人に愛されてきたクルマである。一般人の認知度も高いため、比較の対照にしたいというマツダの思惑も理解できるが、まもなく第5世代のモデルが発売されるため、アクセラのライバルとしてはちょっと不適当な役回りである。

【運転席:1クールめ】

動き出してすぐに意識させられたのはエンジンからのゴロゴロ音である。VWの直列4気筒2.0Lは相変わらず安物感が強い(ただし2003年以降はバランサーがついて静かになったらしい)。速度を少し高めると車体がフワフワして、とても気持ち悪くなり、アクセルを踏む足が戻ってしまう。スプリングが柔らかすぎ、ダンパーも減衰力が足りていない。ブレーキを踏むと、ペダルの遊びがとてつもなく大きく、効き始める場所が奥のほうにあり、不安を感じてしまった。ブレーキの効きそのものには問題ないのだが、ちょっとペダルの設定が変である。ステアリングは不感帯が広く、インフォメーションも曖昧で、どれぐらい切れば曲がってくれるのかを慎重に手探りで追い求めていかなければならず、高速のカーブではとても緊張した。タイトターンで追い込んでいってフロントタイヤが滑る速度になると、スロットルOFFによる荷重移動によってリアタイヤも適度に滑ってくれる。最終的なコントロール性に問題はないのかもしれないが、非常に不安感のあるサスペンション設定ではある。

ゴルフIVの運動性能がこれほどまでに悪いというのはなんだか腑に落ちない。ドイツで乗ったボーラワゴンはこんなに不安定ではなかったので、日本仕様は特別な部品に替えられているのではないかと疑ってしまう。販売No.1のカローラの乗り心地にするために。。。

日本仕様のゴルフIVはアクセラと勝負するレベルにはない。唯一まともな部分はシートである。これはフィット感が良かった。

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【助手席:2クールめ】

助手席に乗っていれば不安を感じることはなかった。運転手が私よりも低い速度で走ったというのも理由のひとつではあるが、本当の理由は別に存在する。クルマが発するインフォメーションが運転手に伝わりにくいということで不安感を抱いてしまうのである。クルマと対話しようとすると、運転手は必死に頑張らねばならない。しかし、それは助手席の人には分からない。クルマの動き自体はさほど悪くないため、「怖い」という運転手の声に対して間接的に同乗者は怖さを感じるだけである。

AXELA 23S

4ドアセダン

205/50R17

23Sの試乗車は、4ドア車を1クールめに使い、5ドア車を2クールめに使った。ボディは異なるが、走りは同じと考えていいと思う。

23Sには17インチタイヤが標準装備されているが、ブレーキ径は300mm(モンデオと同サイズ)であり、16インチタイヤを装着することも可能である。

【助手席:1クールめ】

これも20Cと同じくエンジンやATが静かで、車体がスムーズで安定した動きをする良いクルマであった。助手席に乗った限り 20Cとの差を感じたのは脚まわりが少し硬いかなという程度であった。その差がタイヤだけに起因するのか、はたまたバネやダンパーの設定も異なるのか、それは開発陣に聞かなかった。

デビュー後に街乗りで比べてみて、20Cと23Sのどちらの脚の設定が好ましいか判断してみたいと思う。

AXELA 23S

5ドアHB

205/50R17

【運転席:2クールめ】

運転してみると、20Cと23Sではエンジンの力強さが異なるのを感じた。20Cもレスポンスが良いエンジンを備えるが、2ndギアで全力加速したときのトルク感やカーブからの立ち上がりのレスポンスに23Sは明らかなアドバンテージを持っている。

23Sは走りと快適性のバランスが極めて高い。公道で乗ってみないと答えを出せないが、新型アウディA3にも負けないかもしれない。

ブレーキフィーリングは初期タッチに優れるものの、奥のほうで制動感が増していかないのが気になった。ライバルに比べてリニアに効くブレーキが自慢という話であったが、納得のいかない結果であった。せっかく300mmのFrローターを使って限界性能を上げても、過渡特性が悪ければ評価は厳しくならざるを得ない。パッドの特性が日本人向け(鳴かない、粉が出ない)なのだろう。ただ、国産車ではこの問題は必ずつきまとうので、リニアな効き味を求めるのは厳しい要求だと思う。パッドを社外品に替えるだけで問題は解決するだろう(粉、鳴きは増えるが我慢する)

また、宣伝の中で少しだけ気になったのは、ボディの局部剛性をBMW 3erより高めているという話である(アテンザでも同じことをしている)。剛性が高かろうが低かろうが五感に合った気持ちの良い動きをしてくれればよいわけであり、数字で表して勝った負けたの話ではないと思う。アクセラは、ダンパーの性能が悪いのかボディの剛性が低いのかブッシュのチューニングが悪いのか分からないが、ダンパーが伸縮を頻繁に繰り返すような路面でブルブルと車体が震えるのが気になった。ただし、これは微妙なことなので、市販車では改良されているかもしれない。

 

短い時間の中でいろいろ乗り比べてみると、それぞれのクルマの持つ味がまったく異なることが分かり、この企画は有意義なものだと思った。ただし、今回のライバル車の2台は適任とは言い難い。どうせ比べるのなら、高級感の分野でCセグメントの先端を走る新型アウディA3と、楽しい走りの魔法がかかったアルファ147を用意してもらいたかった。

アクセラは、アテンザとデミオの間を担当するクルマである。しかし、一部の装備においてアテンザを追い越してしまったものがある。アクセラ23SのFrブレーキローター(300φ)は、アテンザの中で最大の23Zよりも大きく、アテンザについていないメーター照度調整機能およびテレスコピックハンドルがアクセラに備わる。また、アクセラ15Fの燃費はデミオ1.5Lモデルよりも良い。ヒエラルキーを守るために、早急に対応(アテンザとデミオの改良)をすべきである。

今回は直接比較していないが、アテンザのデビュー時の印象を思い出して比べてみると、アクセラの走り味には高級感や重厚感が出ている思った。アテンザの軽快感は、裏を返すと子供っぽさであったり重厚さの欠如という感じを受けたので、アクセラの落ち着いた大人っぽい味付けはとても好ましい。早く公道で試乗してみたい。

オートマチックトランスミッションは全車に4段変速のものが用意されているが、世界の強豪と4段ATで勝負できるだろうか。Audi/VWは2.0L/1.6Lクラスにまでアイシン6段ATを標準装備しているというのに。。。アテンザ4WDの5段ATはJATCOから供給されているので、せめてそれを23Sと20Cに搭載してもらいたい。

余談ではあるが、Mazda3の車台は次期VOLVO V50&S40、次期FORD FOCUSにも共通で利用されるので、再びヨーロッパでFOCUS旋風が吹き荒れるかもしれない。

★インテリア、エクステリア、その他

 マツダWebサイトで概略を見ることができるが、細かいことについて少し触れてみたい。

  • 5ドアHBのハッチゲートは外側からレバーを引いて(電気式スイッチではないが、ロックはドアと連動)開けることができるが、4ドアセダンは従来どおり運転席横のレバー操作で開ける(ヨーロッパ方式ではなく、外から開けるにはキーを使う必要がある)。
  • 4ドアセダンのトランク容量は充分に確保されているが、車体のデザイン性が優先されているため、トランクの蓋の前後長が短くなっている。そのため、開口部の前後長(上側のゴムと下の梁までの距離)が400mmぐらいしかない。それゆえに大きい箱を載せられない可能性がある。RV BOX等を使っている人は、それを展示会場に持参して実際にチェックしたほうがいい。そのうちに私の"RV BOX 800"が入るかどうか確かめるために販売店を訪問するつもりである。また、その際に公道試乗もしてみようと思う。
  • 5ドアHBのラゲッジスペースは、このクラスでは広いほうである(車体が大きいので当然ではある)。単に広いだけでなく、シトロエンC3のようなカラクリも備わり、便利に使えそうである。
  • 運転席にはラチェット式の着座高の調節機能があり、テレスコピック&チルトハンドルも備わる。頭上空間が広いので、自分の好みのポジションにこだわることが可能である。
  • 5ドアHB、セダンともに後席は足元も頭上空間も広く、アテンザの必要性を感じない。
  • 排気管(マフラー)は全車1本出口であり、2.26L車でもテールエンドの口径は45φ程度と細い。メインパイプ径は分からないが、アテンザよりも排気抵抗を高めて低〜中回転のエンジン性能を重視しているようである。実際にスロットルに対する反応はアテンザより良いのではないかと感じた(ギア比が低いせいもある)。引き換えにカタログ上の最大出力はアテンザよりも若干落ちている。
  • 全長、全幅ともにかなり大きいが、実物は数値ほどの大きさを感じさせないデザインである。
  • グローブボックスを開くと、容量の大きさに驚く。助手席エアバッグは小さく収められるようになったようである。
  • アテンザとの共用部品は意外に多くない。フロントサスペンションはマクファーソン式ストラットなので当然別物であるが、リアはE型マルチリンクという同じ形式のサスペンションであっても部品はすべて専用設計されている。アーム長が2〜3mm違うという。
  • フロントのトランスバースリンク後側のブッシュは液体封入式のものである。これは特殊なオリフィス構造をもって効果的に振動を遮断する国産車で初めて採用されたものらしい。
  • リアのブレーキキャリパはアルミ製で、バネ下重量軽減が考えられている(インテグラと同様である。流行なのか?)。
  • インパネのスイッチは、すべてフニャっとしたタッチで統一されている。こだわって開発したと聞いたが、意図がつかめない。作動するまで押せたのかどうか判断しにくいので、新型アウディA3のようなクリック感があるほうがいい。

 

 

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