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ATENZA

ワゴン

23Z

4段AT

FWD

2.26L

2年ぶりにアテンザに乗ってみた。試乗車は、23Zという最もスポーティといわれているモデルである。

運転席に座って最下位にシートを調整してみると、以前より着座位置が下がっているような気がした。久しぶりなので気のせいかもしれない。シートも硬くなっているように感じたが、専用表皮の張り具合が強いだけなのかもしれない。ステアリングホイールは最近多いサラッとしたタイプの表皮ではなく、昔ながらの湿った感触のものになっていた。個人的には運転席まわりの設定は、23Zが最もしっくりくる。

ATのセレクタをDに入れて動き出すと、ステアリングが重くなっているように感じた。以前のモデルで違和感のあった変速は普通になり、比較的低回転で滑らかに速度を増していくことができた。エンジン音は特に意識することがなくなり、以前よりマイルドになったような気がした。

このモデルは18インチのホイールを備えるのに乗り心地が良いという評価をされているが、それは本当であった。路面の悪い道を走っても突き上げ感は全然なく、従来型よりもどっしりとした安定感のある乗り味が形成されていた。スポーティという概念が覆されてしまう。同サイズ(215/45R18)のタイヤを履くレガシィGT Spec.Bと比べると、快適性の差は非常に大きい。RX-8も快適であったので、最近のマツダは上手に18インチを履きこなす術を習得したのだろう。ただ、VW Passat のような落ち着きは感じられなかった。やはり軽快感を残すことにはこだわったのだろう。

さて、スポーティというのを確かめるために箕面の山に行ってみることにした。ところが、止まりそうな速度で走る観光客のクルマの隊列を追尾する形になってしまった。陽気が良くなって、お猿さんが路上のあちこちで寝ていたりしたので、そういう状況に慣れない人たちがこわごわ走っていたのだろう。

観光客が駐車場に停めるのを待って、いざ全開ということになったが、ATのギア比がいまいちで、2速しか使えるギアがないのが問題であった。3000rpmまでのトルク感が弱く、3500rpmを越えるぐらいから元気が良くなっていくエンジン特性なので、カーブからの立ち上がりでもたついてしまうことがたびたびあった。1速に入れる手も無くはないが、ギア比が離れすぎているため駆動力変動が大き過ぎて、使う気にならなかった。

ハンドリングはとても滑らかで、ステアリングを切れば切っただけ曲がり、クルマの動きにもステアリングホイールにも変な抵抗感が全然なく、気持ちが良かった。ロール感もあまり感じられず、脚の出来具合は優秀であると思った。

色々な障害物(ここ箕面ではお猿さん)が現れる山道走行では見晴らしの良い着座位置が適正であると感じられたが、サーキットでのスポーツ走行を楽しむためには、あと20mmぐらい下方向へ基準値をずらしてもらいたいものである。また、背もたれが小さくて肩がはみ出してしまうシートは、ホールド感が良くないので、改善してもらいたいものである。もっと大きく包み込んでくれるようなシートが欲しい。

アテンザは初期モデルに比べてかなりの点で改善されてきているようで、ものすごく乗りやすいクルマになった。また、メーター照度のコントロールが可能になったのも嬉しい。しかし、高回転型エンジンとステップ比の大きい4段ATとのマッチングの悪さは如何ともしがたく、早急に5〜6段変速AT(アメリカ仕様に使っているアイシンAWの6段ATがいい)を導入してもらう必要がある。もしくはエンジンチューニングを変更して、高回転を犠牲にしてでも低回転のトルクを出すようにしてもらいたい。現在の状態では、高回転を楽しく使うのは一瞬で終わり、シフトアップ後には何も面白くない状態がしばらく続くため、気持ちが高ぶらない。途切れ途切れではなく、連続的に楽しめるようなセッティングを希望する。

ATENZA

ワゴン

23S

4段AT

FWD

2.26L

230万円

スポーツワゴンの2.26Lモデルにも乗ってみた。

23Sというグレードには17インチのタイヤが装着されるが、16インチタイヤとの違いは街乗りでは特に感じられない。道路の凹凸に対しても強いショックは無く、滑らかに走ってくれる。普通に運転する限りセダンとの差はほぼ無いといえるが、排気音が少し大きく聞こえる気がした。音を遮断する壁が1枚少ないため、そうなるのだろうか。

4段ATのトップギアでは、60km/h強でロックアップクラッチが作動する。そこからシフトダウンをして加速する時には、エンジン回転数の変動が大きくなるため、やはり5段ATが欲しくなる。あと気になったところは、ゆっくり発進して1stから2ndにシフトアップした瞬間に失火するような減速感があること。何が起きているのか分からないが、ステップ比を小さくして(すなわち5段にして細かく刻む)変な制御をやめて欲しい(⇒この不良はコンピュータの設定を変更して改善されたらしい)

17インチタイヤでのブレーキ性能(ブレーキそのものは全車共通)を確かめたかったが、高速度域の試乗はできなかったため、低速で急ブレーキを踏んでみた。すると、フロントタイヤが派手にスキール音をあげた。かなりABSの作動は抑えこまれている。この設定なら、BOSCHのABSが付いたPeugeot307のようにしっかりと止まってくれると予想される。100km/hからの制動距離が37mというのもあながち嘘ではなさそうである。ペダルタッチは硬質で良い。

荷室の広さは4.7mの長さのクルマとしては妥当である。Legacyにならって荷室と客室を仕切るネットが標準装備されている。ELR付きの巻き取り式なので、使い勝手も良い。ただし、それを支える部分がプラスチック製なので、どれほど強度があるのか不明である。

あとはセダンと同じ。スポーツワゴンに対する不満点は次のとおり。

  • ワゴンには全グレードに対してサイドカーテンエアバッグがオプション設定となる。セダンのほとんどのグレードに標準装備されるのに、どうしてワゴンには標準で付かないのか。安全装備は共通でいい。
  • オプション装備は、セット販売が多く、選択幅が非常に狭い。サンルーフを付けたい場合は、「撥水フロントガラスとのセット」または「BOSEサウンド+DSC+DVD NAVI+…その他合計50万円の装備とのセット」の組み合わせの、わずか2通りしか選べない。必要な装備は個々に異なるのである。細かい対応ができなければ国産車として失格である。同様に、サイドカーテンエアバッグを付けようと思っても、色々と無用なものが一緒に付いてくる。
  • FMラジオをつけてみたところ、音が非常に悪い。オーディオにまったくこだわりがない私ですら我慢できない。交換するにしても、オプションのBOSEサウンドシステムしか選べない。果たして音は良いのだろうか。

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4WD車(5段AT付)は20万円高で買えるのは良いが、駆動方式は経済性を考えたのか前輪が滑ってから後輪に駆動力が伝わるタイプとなる。それでもレガシィ(3.0L 6気筒および2.5L 4気筒)のほうがアテンザより燃費が良いというのはどういうことか。実燃費が良いのなら問題はないのだが。。

ATENZA

セダン

23E

Luxury package

4段AT

FWD

2.26L

236万円

(試乗1回目)

全長4.67m、全幅1.78mの車体を持つため、車内、荷室も広々としている。室内は左右に余裕があり、ドアポケットにペットボトル入れが備わるほど(Peugeot307と同様)。カップホルダは前席はセンターに2コ分、リアにもセンターアームレストに2コ分あって便利。前席はスライド量、上下移動量が多いためポジションは合わせやすい。ただし、着座位置は最下位でもあまり低くならないのは不満。前席はあと20mmぐらい下げてもらいたい。シートスライドのロック機構は左右のレールについており、しっかり固定される。後席は広く頭上空間にも余裕があり、180cmの人にも対応するぐらいの高さに調節できるヘッドレストも備わる。トランクルームは欧州車のように外部からキーを使わずに開けることが可能で、内部はホイールハウスの出っ張りが少なくフラットで広い。私の愛用の釣竿は余裕をもって入るだろう。マツダ車だから当然リアシートの背は倒れてトランクと室内はつながる。

走ってみると、全体的に動きは良くまとまっている。後方排気の2.26L 4気筒エンジンは通常走行では静かで、フルスロットルにすると適度にビートが効いた心地よい音を奏でながら雑音が混じることなく7000rpmまできれいに回る。トルク特性は広い範囲でフラットで、盛り上がる箇所は特にない。排気管は途中から2本に分岐してそれぞれ主消音器を通る設計ゆえ消音性能は高い。排気管はパイプがバンパー下から僅かに覗く欧州車風のデザイン(5ドアの「SPORT」だけは排気管を目立たせる仕様)である。トランスミッションは発売後しばらくはATだけの設定(MTは2002年11月発売)で、ワゴン2.3AWDのみ5段変速、あとは4段変速になる。4ATの自動変速はスムーズであるが、ロックアップクラッチは60km/hぐらいでは働かないのは不満が残る。流行のTIPシフトは押してダウン、引いてアップというBMW流儀になっていた。

脚の設定は柔らかくはないが、路面の当たりはスムーズで心地よく、良いフィーリングであった。高Gでのハンドリングは試すことはできなかったが、ステアリングのフィーリングは最近流行の速いギア比を持ったクルマ(Alfa147、BMW 3er、V35 Skyline等)と比べるとスローではあるが、キャラクターに合ったスムーズなフィーリングであった(レガシィよりスローだと思ったので、ギア比はおそらく17:1ぐらいだろう)。スロットル特性は踏み始めが穏やかで、踏むほどにトルクが出てくる好ましい仕上がりとなっていた。ペダル配置は左足ブレーキは考えられておらず、右足でブレーキペダルを踏むしかない。通常走行時の制動感に不自然さはない。100km/h強からのフルブレーキでは、ABSのキックバックは少なく、タイヤスキールはわずかに感じられた。減速Gは標準的だと思った(資料によると100km/hから37m以内で止まり、ライバル中で最短であるという)が、姿勢が安定していたためにあまりGを感じなかったのだろう。もしかすると、試乗車は16インチ仕様であったので、17インチ仕様とブレーキ性能は異なるのかもしれない。リアサスペンションはマルチリンク式でブレーキ力によって縮むように設計されているため、フルブレーキ時にもリア浮き上がることが少ない。最近はこのような設定のクルマが多く、BH&BEレガシィも同様である。

全体的に見て尖ったところがなく、いまどき珍しくとても自然なフィーリングを持った乗りやすいクルマである。試乗すればエンジンや脚の心地よい感触はつかむことができると思う。ただし 2.26Lという中途半端な排気量を客が受け入れるかどうかが問題である。2Lエンジンも存在するがバリエーションは少なく、積極的に販売する姿勢は見えない。販売員の教育でも2.26Lが主体のようであった。

今のところ挙げられる不満点、改善要望は次のとおり。

  • 常に赤橙色に明るく光るメーターの輝度を調節できない。ライトON時のみ1段階暗くすることもできるが、実質的に明るさはライトスイッチと連動してそれぞれ固定されている。必要以上にメーターが目立つため、ある程度の輝度調節ができるようにしてもらいたい。わずかなコストをかけられなかったのか。
  • 最近の傾向かもしれないがオーディオがModule式で市販品を装着できない。オプションはBOSEのサウンドシステムだけで選択肢が狭い。
  • 4段ATのロックアップクラッチは低速では作動しない。効率を良くするために低速度域で細かくロックアップクラッチを制御してもらいたい。また、5段ATをスポーツワゴンAWDのみならず 全車に設定してほしい。5ATならハイギアードな設定ができ、燃費・騒音のさらなる改善が可能と思われる(ヨーロッパでは2.0Lに5ATが付くという)。
  • BMW流のTipシフトの方向はなじめない。通常の使用ではシフトダウンは加速時に使うことのほうが多いと思うので、引いてダウンが好ましい。
  • サイドカーテンエアバッグが標準設定ではないグレードが存在する。安全装備は全車共通にしてもらいたい。
  • 2.26Lエンジンだけに付く可変バルブタイミング(S-VT)は吸気側だけの設定であるが、排気側にも付けて性能(出力と燃費)向上を図ってもらいたい。2.26LのAT車で10・15モード燃費 11.6km/Lは決して褒められた数字ではない(実燃費は良いと聞くが)。2.0Lもケチな設定にせず、可変バルタイを装着してほしい。
  • 開発中といわれるマニュアルトランスミッションの早期導入を期待する。しかし5段というのは時代遅れな気がするので、6段を早急に出してもらいたい。
  • 現状で175cmの人間でも低すぎない運転席着座位置を、あと20mm下げてもらいたい。BMWの着座位置は、これでもか!というぐらい低くなり、大男でも運転できる。
  • 日本向けのATENZAではステアリングホイールの調節は高さ方向のみであるが、ヨーロッパ向けは前後方向(テレスコピック)の調節もできるらしい。微妙なコストダウンのために客の満足度を低下させるのは避けてもらいたい。

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試乗2回目)

ATENZAが手本にしたクルマは、ハンドリングではBMW 3er、快適性ではVW Passatと言われている。そこで、Passatに乗った直後にATENZAに乗って快適性を比べてみた。

ATENZAとPassatの価格は同排気量のモデル同士で比べて約100万円の差があるので、単純に比べることはできないが、内装は圧倒的にPassatが上質であり、ダンパーの動きの滑らかさ、ステアフィーリングの滑らかさ、遮音性、重厚感のいずれをとってもPassatの圧勝である。いったい目標はどの程度達成できたと考えているのだろう。

オプション設定のBOSEのサウンドシステムが試乗車に装着されており、素人の耳には良い音だと感じられた。価格が安いのなら、装着してもいいかもしれない。

ついでに荷室の広さを確認してみた。すると、驚いたことに私の釣竿は余裕をもって入り、荷室の中で斜めにしなくても、横向きにして手前(外に近いほう)に並べて置くことができる。こんなに広いトランクスペースを持つクルマを見たのは初めてである(Passatよりも広い)。

基本的にはATENZAは実用車として良いクルマであると思うが、最近流行のPremiumという類のクルマにある質の良さは一切感じられない。「質感が少し低くても価格が安いから売れる」というのが日本車の特徴ではあるが、あと50万円コストをかけてやれば、細かい点でも外車に負けることはないのではないだろうか。そんな日本車を待っている人は多くいると思う。

 

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