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LEGACYBPBL 2006.5〜2007.5

D型

TOURING WAGON

3.0R

5AT

304万円(税抜)

BP/BLレガシィが3度目のマイナーチェンジ(M/C)をしてD型になった(2006年5月)。

今回は外観にも内装にも変更点が多く、変な言い方であるが、Big M/Cと言ってもいいだろう。C型からの変更箇所は、販売比率が下がりつつある2.0ターボモデルと3.0モデルに集中し、主要な内容はSUBARU Intelligent (SI) Drive、テレスコピック式ステアリングコラム、空調の左右独立温度調整などが挙げられる。2.0iや2.0Rの変更点は少ないが、フロントサス周囲ボディ補強、フロントシート形状変更は全モデルに及ぶ。

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今回の試乗車は3.0Rであった。LEGACYに乗るのは実に久しぶりで、3.0Rは2003年のA型以来である。進化の度合いがはっきりと体感できるのかどうか、短時間ながら乗って確かめてみた。

まず運転ポジションを合わせるために各部を調整してみると、ステアリングホイールを大きく手前に引くことができた。テレスコ機能によって、これまでのように必要以上にシートバックを立てる必要がなくなったのは嬉しい。

前席座面のクッション形状は横方向のサポート性を落とし、乗降性を考慮したものに変更された。クッションの中身は変わったのかどうか分からないが、従来の高反発ウレタンを低密度で使ったような感触は、今回は感じなかった。そして着座位置は相変わらず高かった。現状で運転席を最下位にするとシート下の隙間には後席乗員のつま先が入り込む余地はあまりない。したがって、シート下の空間に意味を持たせないという前提で、あと20mmぐらい着座位置を下げてもいいのではないかと思う。

エアコンをONにしてみると、従前と変わらず電磁クラッチの作動が感じられ、それによって固定容量のコンプレッサが使われていることが分かった。トヨタと提携してもDENSOの可変容量コンプレッサを使えるようになる日は遠いのだろうか。

では、SI Driveのダイヤルを押して「I」設定で走ってみよう。「I」はIntelligentである。何がインテリなのかというと、スロットルペダルの踏み込み量に対してスロットルバルブの開度が小さく、ATのシフトポイントが低く設定されるという。それにより、下手な運転手が荒っぽいスロットル操作をしてもクルマは穏やかに走り、燃費が良くなるという仕掛けである。

一般的なスロットル踏み込み量で走り出すと、エンジン回転がとても穏やかに上がり、ゆっくりと加速した。なるほど、これなら馬鹿な運転をしてスバルは燃費が悪いんだと述べる輩が減るだろう。また、同乗者が眠っている場合に「I」は重宝すると思われる。

I」で走行中にスロットル開度を一定に保ったままでダイヤルを右に回して「S#」にしてみると、急にダウンシフトするとともにスロットルバルブが大きく開き、グワーッと加速を開始した。スイッチひとつでスロットルとATの特性がこれほど変わってしまうとは思わなかった。

SI Driveの3種類をもう少し詳しく知るためにいろいろなスロットルペダルの踏み方を試してみると、「S」はこれまでの標準的なスロットル特性であり、なんら違和感のないフィーリングで、ペダルを最後まで踏めばフルスロットルになるようであった。「I」はペダルを全部踏み込んでもスロットルバルブはあまり開かず、30%開度ぐらいを限度にするような感触で、まるで2.0iのようなレベルの走りになった。「S#」は小さいスロットルペダル踏み込み量でも大きくスロットルバルブを開くのが明確で、さらにATはギアを高回転まで維持するので、わずかなペダルストロークでも5000rpmまで回ることがあった。SI Driveの3種類の特性は明瞭に分かれており、宣伝のとおり走行状況によって使い分ける意味がある装備だと思った。

しかし、SI Driveも所詮はオートマチックであり、決められたシフトパターンに則った変速をするにすぎないので(多少の学習はあるかもしれないが)、自分の考えるポイントで変速が行われないこともあろう。そういう場合はステアリング脇のパドルシフトを使えばいい。パドルシフトでは、Dレンジであっても一時的なアップ/ダウンシフトを可能とし、セレクタを右に倒してから操作すれば基本的に自分の選択が固定される。従来は固定ギアでエンジンを回し続けるとレブリミッタに当たったが、D型からはリミットに近づけば自動的にアップシフトするようになった。

SI Driveはダイヤルの形状も含めてBMW M6の一部を真似たものに見える。M6は"400""500""500 sport" というレベルの高い選択ができるが、日本の低レベル走行に合わせて作られたBP/BLでは "150""250""250 sport" というイメージになる。トランスミッションは、コントロールが独立しているM6に対し(それはMTベースであるが)、BP/BLのATはエンジンコントロールとリンクしたものになる。

3.0のATでは、手動ダウンシフト時に、エンジン回転数を次に入る下のギアにフィットさせるために自動的にスロットルを煽る機能が採用された。これはすでに日産がJATCOと協力して採用しているが(FUGAなど)、スバルもJATCOのトランスミッションを使う関係で、技術を共用したのだろう。まあこのようなことは昔から運転手が自分でスロットルを開いてやっていたが、今ではクルマが自動的に実行してくれるので失敗(踏み過ぎたり、踏み足りなかったり)することがなく、便利になったものである。3.0Rで実際に5速80km/hぐらいからブレーキングしながら4→3→2と落としていくと、低速ギアになるほど明確なブリッピングが感じられた。これは日産のシンクロレブコントロールよりもかなり大げさで、運転手はある程度の減速Gのショックを期待しているのに、減速Gがゼロになるぐらいに回転数を上げられてしまうと、却って気持ちが悪く、一瞬だけ加速してしまうかのようなイメージ(期待と反するため)になってしまった。急激な減速G(シフトショック)を緩やかにする技術は、日産のほうがテストを多くこなして上手に習得したのだと思われる。そうは言っても、シフトロック(ダウンシフトによる急激なエンジンブレーキでタイヤがロックすること)が怖い氷上でも安心してダウンシフトができそうな気がするので、いちおうメリットはあるだろう。今回、6気筒3.0モデルのみに回転合わせ機構が付いたのは、4気筒よりもエンジンの摺動抵抗が大きく、エンジンブレーキが強力にかかるからなのだろうか。

山道に入り、ハンドリングや車体の動きを見てみることにした。一般よりちょっと高めの速度で低速カーブをクリアしていくと、ステアリングホイールに伝わってくる感触が分かりやすくなっていることに気付いた。フロント周りの補強が利いているのだろう。また、リアサスのバンプステアのようなフラフラした曖昧な動きは消え去り、すっきりと安定した乗り味になっていた。3.0Rはダンナ仕様ゆえに脚が柔らかく設定されており、ロール量が大きく、ギャップで煽られた後の収まりが悪かったりするが、3.0Rに乗りそうな一般ユーサーは特に文句を言わないだろう。

乗り心地はやや硬めだと感じたが、販売員によると従前よりも柔らかくなったという。従前の3.0Rユーザーから「乗り心地が悪い」というコメントが多く寄せられていたというので、メーカーはそういう意見を反映したのだろう。

ステアリングの操作力は、どの時点で変更がなされたのか分からないが、全般的にかなり重めになり、扱いやすくなった。スバルは試行錯誤が多いが、ようやく落ち着いた感じがする。

3.0Rの走りは全般的に落ち着いたもので好感が持てたが、ATの制御にスポーティを盛り込もうとするなど、方向性が不明瞭なものが見える。1台で3台のレガシィを楽しめるというのは言いすぎで、脚の設定も変更できるのなら(VOLVO V70R/S60Rのように)そういう宣伝もいいだろう。フルチェンジした次期モデルではSI Driveのメニューに脚設定も含まれるかもしれない。

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3.0Rの走りに落ち着いた印象を持ったが、その裏には重量増があった。D型はC型よりも20kgも増えていたのである(1490kg)。BP/BLレガシィ(4代目)は、BH/BE(3代目)より100kgも軽くしながら剛性や安全性を高めたという宣伝をしていたが、やはり当初は軽いということからもたらされる走り味の薄っぺらさを隠せなかった。スバルの技術者もそれを感じていて、乗り味に重厚感を出すために補強を入れたのだろう。

日本車は、衝突安全性が基準を満足し、剛性値が目標に達すれば、ボディは軽いに越したことがないという考えがあるようで、感性に訴える乗り味は二の次のようである。日本ではいくら出しても一瞬の150km/hなのだから、それでもいい。

一方、ドイツ車は250km/hという最高速を公表していれば、それを安心して維持できないクルマを世に出すわけにはいかない。したがって、ボディをしっかりとさせて運動性に不安を感じさせないことが最低条件となり、重量がかさむのだろう。

以下にDセグメントの3Lクラスの4WDワゴンを挙げてみた。3車ともレガシィに比べて200kg前後も重いのである。なるほどドイツ車の走りは剛性感が高くなるのも頷ける。例えば200kgもの鉄板をレガシィに追加すれば(もちろんボディだけではなく、サスペンションやシートフレームなどにも)、ドイツ車と同じような塊感を実現できるだろう。

BMW 330xi Touring:1715kg

Audi A4 Avant 3.2 Quattro:1710kg

Mercedes C280 Wagon 4MATIC:1670kg

BP/BLレガシィはボディ構造を新たに設計したり鉄板の種類をいろいろと使い分けたりして、従前(BH/BE)よりも軽くなり、しかも測定した剛性値(例えば車体を1°曲げるのに必要な力)が高くなったというが、フィーリングを良くするためには、いくら巧妙な構造であっても鉄板の量の多さ(重さ)にはかなわないという気がするのである。素人考えであるが、タイヤが受けたショックがサスペンションやボディ、そしてシートを通して乗員に伝わるまでの流れ(減衰のしかたなど)において鉄板の重さが影響するのは想像に難くない。使用環境が大きく異なるドイツ車と日本車の設計思想はまだまだ近づくことはないだろう。

D型

TOURING WAGON

2.0GT

5AT

299万円(税抜)

3.0Rの試乗から1週後、ターボ仕様の試乗車に乗ってみた。NAエンジンは元々スロットル開度とエンジン出力の関係がだいたい一定であるため、想像していたとおりSI-DRIVEの3種類に個性を持たせるのが容易であると感じたが、ターボ付きエンジンのコントロールはどのようになっているのか確認するため、2.0GTに乗ってみた。

エンジンを始動すると、水温が低かったようで、水温計の脇に青いランプが光っていた。最近は水温計が省かれるクルマが増えつつあり、計器の代わりに青ランプ(低水温)や赤ランプ(高水温)で適温から外れていることを知らせるものが多い。しかしレガシィの場合は水温計に加えて青ランプが存在する。それの意味するところは、青ランプが光っている間はSI-DRIVEの「S#」が使えないということらしい。大きくスロットルバルブを開き、エンジンを高回転まで回すような設定は、確かに低水温ではむやみに使わないほうがいい。青ランプが消える温度は70℃ぐらいだろうか。

まずは「I」で走り始めると、なるほど3.0Rと同様に穏やかなスロットル特性を示し、ターボの存在はほとんど気が付かないレベルであった。急にスロットルペダルを大きく踏めばターボによる過給が感じられたが、ゆっくりと大きく踏んでいけば穏やかさは維持されるので、よほど馬鹿な足技をしなければ実用燃費は悪くならないだろう。ATのロックアップクラッチが低速域で早々と締結し、スロットルペダルをかなり大きく踏み込むまではロックを解除しないというのもなかなか見識がある設定である。

次に「S」でスロットルペダルを大きく踏み込むと、気持ちよいターボらしい加速を見せ、やっぱりターボのアシストがあると余裕があっていいなあと感じた。ただ、D型の大きい特徴である2000rpmで最大トルクを発生するという特性は、負荷が軽い近所の公道では確認できなかった(フルスロットルにしてもギリギリ加速するかしないかといった長く急な上り坂が必要)。

S#」にスイッチを入れて走った時はパドルシフト操作のほうに気を取られていたので、スロットル特性はよく分からなかった。パドル操作をしていて気になったのは、左右のパドルが完全に独立していないかのような感触があったことである。右のパドルを引く時に左のパドルに指が触れていると、右を操作した力が左のほうになんとなく伝わるのであった。この気持ち悪さを解消するためには、必ず片方のパドルしか触ってはならないという掟を自分で作っておかねばならない。

乗り心地は3.0Rよりは硬めで、B型のGTよりもしっかり感が増したというイメージであった。脚の設定変更の有無は知らないが、ボディ補強の効果が表れているのだろう。なかなか快適性は高かった。

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D型から純正カーステレオの制御にSRS WOWが採用された。それは高価な機器を使わなくても良い音が楽しめるという電気仕掛けの技術で、以前からちょっと気になっていたのである。市販カーステレオでは一部でしか使われていない技術をBP/BLに純正導入するとはなかなかスバルはマニアックである。SRS WOWのスイッチON-OFFでは、明らかに音の調子が変わるが、マニアでない私にはうまく説明ができない。変化が楽しめるという点において面白い装置ではある。

D型

B4

2.0GT

Spec.B

5AT

299万円(税抜)

B4の2.0GT Spec.Bは、次期マイカーの最有力候補である。トランスミッションは新採用の6MTを考えているが、希望どおりの試乗車はなかったので、5ATのモデルに乗って全般的な感触を確認してみた。

上のワゴン2.0GTに引き続き乗ったので、両車の違いは明確に分かった。

まずはステアリングの重さが若干増していた。パワーアシストのセッティングが異なるのかどうかは知らないが、タイヤ外径が大きいので、接地面積が増えた分だけ重くなっていると考えられる。操作感はGTもGT spec.Bも予想の範囲を超えないレベルであり、どちらも問題はない。

過去のことはすっかり忘れてしまっていたが、A型で感じた「Mercedesのように切り込んだステアリングを戻すのに力が要る」という現象はもうみられなくなった。BP/BLの改善は進んでいるのである。

乗り味はGTよりも落ち着きがあり、硬いながらもしっかりと動く脚によってどっしりとした安定感をもたらしてくれることが分かった。普通の道で乗っている限り、「突き上げに耐えられない」ということはもはやない。ただし、店舗に入るために歩道に乗り上げたときのショックは、GTよりも明らかに強かったのは確かである。

GT Spec.BはGTよりもファイナルドライブのギア比が低く、タイヤ径が大きい分を差し引いても5%ぐらいローギアードな設定になっている。これは加速感を鋭くするのが目的だと思われるが、車体が20kg重いことから、実際にはGTとの差は体感できないだろう。いや、却って遅いかもしれない。

トランスミッションを6MTでこだわるのならSpec.Bということになるが、ATでいいというのなら、乗り比べて好みに合うほうを選ぶといい。18インチホイールはノーマルのままで乗り、脚も変更しないというのなら、Spec.Bでいいし、車高を下げよう(ノーマルサスを捨てよう)と考えていたり、18インチホイールを社外品で揃えようと考えているのならGTを選び、Spec.Bとの差額を充当すればいい。

AT車はスロットル特性およびトランスミッションの変速特性がSI-DRIVEによって協調制御されるので、「I」、「S」および「S#」の差別化を明らかに認識することができた。では、MT車ではどうなるのだろう。トランスミッションは運転手が任意にコントロールするため、スロットル特性のみをSI-DRIVEが決定することになる。したがって、AT車ほど変化の度合いを感じられないのではないだろうか。試乗車があれば確認してみたいものである。

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アメリカ仕様のB4ではD型からリアシートの背もたれを倒してトランクと室内を貫通させること(通称トランクスルー)が可能になった。日本仕様でもそれが採用されることを期待していたのに、現実は肘掛部分のみが貫通できるという従前と変わりのない設定であった。

日本ではセダンボディのクルマにおいて大量の荷物を室内にはみ出してまで積むということがあまりないのも事実で、そんな用途ならワゴンを買いなさい、という話になってしまう。実際、今の日本ではワゴンのほうが万能で価値が高いというのは間違いのないところではある。

念のため、B4においても我がインプレッサのようにリアシートを外してトランクスルーができるのか調べてみた。インプレッサでは開口部を一直線に横切るボルト留めの骨(目的は追突時のシートバックの沈み込みの抑制)が入っているが、B4にはセンターの開口部の両側に縦方向の骨が入っている。それらはインプレッサと同様にボルト留めの鉄の角材であり、取り外せばトランクスルーができる。アメリカ仕様のB4はシートバックそのものにワゴンと同じように強度を持たせて追突時に沈み込まない設計になっていると思うが、日本仕様は軽量化のため(重量増を避けるため)に別の措置を取ったのだろう。

D型

TOURING WAGON

2.0i

B-Sport

4AT

228.5万円(税抜)

B-Sportにはベースモデル(2.0i:税抜219万円)に対してHIDランプ、後部濃色ガラス、ワイパーヒーター、リアフォグランプ、テレスコピックステアリングコラム、運転席電動シート、後席センターアームレスト等が追加される。それで価格は9.5万円アップに過ぎない。驚くべきお買い得設定であり、ノーマル車を買う客はもはや存在しないだろう。

BP/BLがD型になってSI-Driveが注目され、それが装着される3.0Rや2.0GTに光が当たるようになった。しかし、専ら街乗りの用途であれば3.0や2.0ターボを必要とすることはなく、GTにほとんど見劣りすることがない装備を持つB-Sport仕様であれば普通の人は不満なく乗れるのではないかと思う。

では、雨の降る中ちょっと山道を走って乗り味を確かめてみよう。

まずはフロントスクリーンをきれいにするためにウォッシャを出してみたところ、ノズルから出た液は細い放物線を描いてガラスに当たるのではなく、細かく拡散してガラス面を広く覆った。些細なことながら我がインプレッサよりもBP/BLが進化していることを感じた。

Dレンジで軽くスロットルペダルを踏んでゆっくり走り出すと、2.0iは穏やかに加速した。D型の全車にSI-Driveを付けてもいいのではないかと少しだけ思っていたが、この走りではそれが無用であることを理解した。3.0や2.0ターボの有り余る力を2.0i並みに抑えるためにSI-Driveは存在するので、本物の2.0iには当然要らないということである。

左右に切り返しながら住宅地に向かう山道を走ると、ステアリングホイールに路面状況がよく伝わってくるようになった気がした。脚の動きも良く、従前より素直なクルマになったという印象を持った。特に何かがすごいというのではないのだが、全般的に自然な動き方をすることに好感を抱いた。これがボディ補強の効果なのだろうか。面白いものである。

2.0R/2.0iのステアリングホイールは革巻であるが、MOMO製品ではない。MOMO製品は革の継ぎ目に段差があまりないが、2.0R/2.0iのステアリングホイールの革の継ぎ目の段差はかなり高く、手が触れる度にそれが分かる。ある評論家はこの継ぎ目の段差を嫌う内容の記事をよく書いているが、私はそんなに気にならなかった。却って滑り止めになるぐらいのもので、どうこういうほどのものではない。

エンジンやトランスミッションは以前から特に変わっていないようで、エンジン出力は普通に乗る範囲では不足はない。一瞬のうちに前車を抜き去るという芸当は見せられないが、一般の人にはこれぐらいでいいだろう。レギュラーガソリンの設定になっているので、出費も抑えられる。100km/h時のエンジン回転数は2400rpm程度であり、4段ATというのがちょっと恨めしい。5段ATにしてもっと低い回転で運転できればなお良いだろう。

Tipシフトでギアを1に固定してフルスロットル加速を試してみると、6000rpmの少し手前で自動的にシフトアップした。ギアを固定したままレブリミッタに当てる従前の方式から自動シフトアップに変更したことは悪くないが、タコメータの白い部分をすべて使い切ることができないというのは腑に落ちない。フールプルーフを考えるのなら、レッドゾーンに入ってから一定時間(例えば0.5秒)を経ると自動でシフトアップするといった制御をして欲しい。それを実現するためにレッドラインを本来の位置より100〜200rpm下げて表示してもいいだろう。

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パワーがなく、AWDであることから、雨の中でフルスロットルを頻繁に与えても不安になることがない。そして走り味はかなり洗練されたので、一般の人に薦めることができる。しかし、いつまでも4段ATであることには疑問がある。ホンダは5段ATがアコードやシビックに標準化されているし、マツダはアテンザに続きアクセラにも5段ATを与えた。BP/BLはフルモデルチェンジを待たずにATを変更することはできないのだろうか。5段ATにしても10kgほどの重量増にすぎないので悪影響が出るとは考えにくく、走行性能や燃費を良くする効果のほうが断然高いと思うのだが。

D型

B4

2.0GT

Spec.B

6MT

299万円(税抜)

6段MTを載せたBL5にチョイ乗りをすることができた。

水温は適温になっていたので、まずは普通に乗ってみようと思い、SI-DRIVEで「S」を選んで走り出すと、Um?なんだか低速トルクがない。2ndギアで2000rpmぐらいからじわっとスロットルペダルを踏み込んでいくと、3000rpmを越えてから過給が感じられるではないか。カタログでは2400rpmで最大トルクが出ると謳うが、「フルスロットルで一定回転数を維持する」というカタログ出力測定条件は日常では作り出すことはできず、レガシィ用エンジンの過渡特性は高回転型に見えるインプレッサ用エンジンよりも体感的に鈍いとさえ感じられた。

スロットルペダルの踏み込み速度を高めていくと、スロットルバルブの反応がとても遅いことを感じた。スッと踏んでもエンジンの反応がなく、かなり遅れて力が出てくるので、運転手としては自分で操っている感覚がなくなり、なんだか気分が悪くなってしまった。MAZDASPEED ATENZAMAZDASPEED AXELAでも応答遅れがある印象を持っていたが、レガシィまでがこんな感触だったなんて、日本のMT車はいったいどうなってしまったのだろう。ATならばスロットルの開け閉めを頻繁にしないのでレスポンスの鈍さは気にならなかったが、MTは変速のたびにスロットルON-OFFを繰り返し、しかもエンジンとタイヤの間に滑りがないため、スロットルバルブの反応が鈍感なことを明瞭に感じてしまうのである。

途中で「S#」も選んでいろいろと試みたが、スロットルバルブの反応の鈍さは特に変わることはなかった。それ故、と言っていいのかどうか分からないが、「S#」であっても街乗りで穏やかに走ることに何ら支障はないということが分かった。スロットル特性は全然過激ではないということである。

試乗コースはSpec.BのAT車とまったく異なる場所であったので、直接比較はできないが、不思議なことに「Spec.Bには落ち着いた乗り味がある」という印象は薄れてしまった。今回はギャップを越えるたびにシートの上で体がポンポンと飛び跳ねることが多かったのである。コースの路面状態は、シートのスポンジとバネが持つ反発力を引き出すような条件にピッタリ合致していたのかもしれない。

クラッチペダルの感触は乗り慣れたGC8の味付けと大きく変わるものではなく、扱いやすいものであった。ただ、ペダル表面のゴムの滑り止めは、ちょっと引っかかってしまうのでいただけない。常に大きくストロークする必要のあるクラッチペダルは必ず靴底の滑りが伴うので(かかとを床につけない人は関係ない)、滑り止め機能は少し控えめにして欲しい。

6段MTのギア比はGC8の5段MTと似たようなワイドレシオであり、GDBのような各ギアが接近した小気味良さはなかった。街乗りで忙しさはないが、あまり6段のメリットを感じることはできなかった。まあ各ギアが離れているということはTOPギアが高くなっているということなので、高速巡航での燃費には貢献するだろう。今回はTOPギアのレシオを確認することはできなかった。

SI-DRIVEの特性を確かめるために停車中に各モードで「瞬間フルスロットル(一撃で全開にしてすぐに戻す)」を試してみると、いずれも同じように反応がとても鈍く、メーター上で4000rpmぐらい回っただけであった。そして、エンジンマウントの柔らかさが伝わってきた。次に「S」で無負荷2000rpmを維持するペダルストロークを保ちながら「I」や「S#」に変更してみると、それぞれ1800rpm、2200rpmぐらいになり、スロットルペダルとバルブ開度の関係が変化することが分かった。

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試乗を終えた帰り道で、我がWRXのケーブル式スロットルの反応の素直さが心地よいと感じてしまった。SI-DRIVEで特性を変えるのは面白いが、MTモデルはダイレクトなタッチが命なので、スロットルバルブの応答性を見直して欲しい。ブレーキペダルを踏んで1秒後に減速を開始したらどう思う???スロットルも同じである。

D型

B4

2.0R

B-Sport

4AT

240万円(税抜)

2.0L NAエンジンのレガシィにはB-Sportの設定がある。B-Sportの内容はワゴン2.0iの試乗記にも書いたように価格の割りに充実したものであり、お買い得感が高い。ただし、2.0RはHIDランプが標準で装備されるので、2.0iほどの割安さは感じられない。

いつものようにステアリングホイールを最も手前に引いて、シートを最下位にして、クッション前端を少し上げて、試乗を開始した。

まずはATの設定をECOにしてゆっくり走ると、2000rpmぐらいでアップシフトを繰り返し、TOP(4速)ギアに入るとすぐにロックアップクラッチの作動を感じた。その時のエンジン回転は1500rpmに満たないが、プジョー307のように振動が大きく出るようなことはなく、何ら違和感を持つことはなかった。スロットル開度が小さい時のプログラムは徹底的に低燃費にこだわっていることが感じられた。

TOPギアで2000rpmを維持すると速度は78km/hぐらいであり、2.0iよりもギア比が低いことが分かった。しかしエンジンを高回転まで使えるので、各ギアの守備範囲(上限速度)は2.0iより10%ほど高くなる。

ギアを1速に固定して発進直後からフルスロットル加速を試してみた。どこで自動変速するのか観察してみると、タコメータのレッドライン7000rpmまできっちりと回って2速にバトンタッチした。そのまま踏み続けていくと、2速もきっちりと7000rpmまで使い切って3速に移行した。3速の上限は公道で試すことはできなかった。トルク特性はフラットで、盛り上がりがないため、132kW(180PS)ものハイパワーを体感することはできず、2.0NAとして速いのか遅いのかよく分からなかった。

乗り心地は特に何ということもなかったが、17インチタイヤを履き、鉄のアームを備えるサスペンション(バネ下が重い)でありながら、同タイヤを履くターボや3.0(これらのサスペンションはアルミのアームを持つ)とあまり変わらない乗り味を実現できているのはなかなか面白い。

ファミリーセダンとして使う分にはこれで十分である。高速道路を頻繁に使う人ならギア比の低さが問題になる可能性があるので、2.0iのほうが良いかもしれない。それでもやはり4段ATというのは古いと思うので、早く5段ATを全車に載せてくれるのを期待する。わずか2万円/10kgの差(注)でしかないのだから、誰も文句は言わない。

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注:5MTと比較して、4ATは5万円高&20kg増(2.0 NA)

5MTと比較して、5ATは7万円高&30kg増(2.0 ターボ)

5MTはNA用もターボ用もほとんど同じ部品なので、4ATと5ATを間接的に比較すると、2万円/10kgの差になる。

 

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