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M/C後

MAZDASPEED

AXELA

6MT

241万円(税込)

2006年6月6日、アクセラがマイナーチェンジを実施した。外観の手直し以外に、ATの5段化(20および23シリーズ)、ボディ補強、2.0LエンジンへのVVT追加、全車に電制スロットルを採用するなど、 様々な変更がなされた。同時にMAZDASPEED(以下MSと書く)AXELAも追加された。

MS AXELA は MS ATENZA と同じような成り立ちのクルマである。ノーマル車のボディを補強し、直噴ターボエンジンと6段MTを積み、Fordの320φフロントブレーキローターと18インチホイールを装着するという手法である。MS AXELAのパワートレインはAWDではなくFWDである。AWDにしなかった理由は、 シンプルな駆動系で走り味を軽快にすること、ライバルも皆FWDであること、そして価格を抑えることだと思われる。MS AXELAはMS ATENZAより170kgも軽く仕上がっており(1390kg)、軽快に走ることが期待できる(GOLF5 GTIは1440〜1460kg)。

外観はMS ATENZAのようにボンネットがノーマル車よりも盛り上がっているのだが、元々アクセラ(Sport)のボンネットはセンターが盛り上がっていたので、単体で見ると特別な何かが存在することに気付かない。フロントフェンダは片側10mmずつ広げられているが、これも単体では判別ができない。MS AXELAであることを端的に示すものは18インチホイールとAlfa147のようなリアバンパー デザインぐらいであり、高性能をあまりひけらかさないかなり控えめな演出となる。MSを冠して特別なモデルであることを主張するのなら、もっと目立つデザイン処理をしないと、ライバルのMEGANE RSやGOLF5 GTIを追撃するのは難しいのではないだろうか。 真正面の顔はデミオに見えてしまうので、アウトバーンの追い越し車線で250km/hで後方から迫ってもその存在感は薄いだろう。

資料によると、6段変速のトランスミッションは従来の5段のものより重量が30kgも増し、78kgもあるという。ギアを1枚増やしただけでなく、ターボパワーに負けないよう強度も大幅に増しているのだろう。サスペンションスプリングのレートは Fr 33N/mm、Rr 30N/mmという値で、なかなか硬いものが使われている。

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【1回目】

では、試乗に出てみよう。指定コースは超短距離の渋滞の多い道であった。

前席はノーマルよりもしっかりと肩をサポートする形状に見えたが、実際は大ぶりで、インプレッサのシートのような窮屈感やランサーのRECAROのようなサポート性は全然なく、ほぼノーマルシートと同じ感触であった。シート以外にノーマルと違うところは6段MTのノブだけであり、 内装を見る限りMSを名乗るスペシャルな乗り物であるという印象は薄かった。

エンジンはクラッチペダルを踏んでおかなければ始動できない。最近のMT車はこういうマナーが普通になったので、いつもキーをひねっておいてからクラッチを踏み込んでいき、どのあたりでスタータが回るか確認している。MS AXELAでは8割程度踏んでやると始動した。エンジン内の油膜が十分に形成されていない(ドライスタート)時にクラッチをいっぱいに踏んでエンジン始動をするのは、スラストベアリングが擦り減りそうで嫌なのである。

クラッチペダルはMS ATENZAと同じように手前の方は軽く、中間から奥の方で反発力がかなり強いものであった。ギアを1stに入れてクラッチをつなごうとすると、ミートポイントはコントロールしにくい所にあり、微妙な加減をつかめずにドンとショックを出してしまうことがあった。ギアは2ndと3rdまでしか使わなかったが、3000〜4000rpmまで回してアップシフトする時のクラッチ操作においても微妙な操作ができず、急につないでパワートレイン全体が揺れることが多かった。

スロットルは電子制御であり、その感触はMS ATENZAと同様に曖昧なものであった。ペダル操作とバルブの反応の間にタイムラグがあり、気持ちが悪かった。ペダルストロークとバルブ開度の関係は適切なので、ダイレクトな感触になるよう反応速度の変更を期待したい。今回、全車が電制スロットルになったので、他のモデルも曖昧な反応になっていないのか、ちょっと心配になる。

ステアフィーリングは23Sのような軽快感はなく、重厚な感じがした。トルクが大きいので(23Sの78%アップ)、トルクステアを減らすようなステアリング機構を採用したのだろう。パワーアシストは電動ポンプで油圧を作るのではなく、従前のようなエンジンで油圧を作るものに変わっていた。変更の理由は不明である。

ブレーキはサーボが強いようで、低速時にはカックンブレーキになることが多かった。高速域からのブレーキングを主体に考えているのならいいが、日本仕様はもう少し奥ゆかしいほうが好まれるだろう。GOLF5 GTIでも最初は 同じように思ったが、これも同様にすぐに慣れるかもしれない。

FWD車で最速というのがMS AXELAの謳い文句なので、試さないで帰るわけにはいかない。0-100km/h加速の時間が5.9秒というのは、GOLF5 GTIより1秒ほど短く、Alfa147 GTAよりもわずかに短い。では、ホイールスピンを避けるため、2ndギアでフルスロットルにしてリミットまで引っ張ってみよう。エンジンは3000rpmぐらいから勢いが良くなり、5500rpmを超えるとかげりが見え始め、7000rpm近くでは無理に回っているような感じであった。総走行距離はわずか55kmであったので、エンジンはあまり回りたがらなかったのだろう。競技車両のように中速だけがトルクフルなエンジンで、まあまあ速いとは思ったが、 尻すぼみな特性ゆえにワクワクしたりドキドキしたりすることはなかった。また、加速時にステアリングホイールが外力で動かされるような動きがみられた。 初めての経験であったが、これがトルクステアなのだろう。兄弟車で2.5Lターボエンジンを積むVOLVO V50 T-5はFWDであっても普通に走ったが、それを上回るトルク値を誇るMS AXELAはもはやFWDの限界に近いのかもしれない。

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MS AXELAは、ライバルのGOLF5 GTIに対して単に速さだけを見れば圧倒している。しかし、MS ATENZAの記録にも書いたように、MSを名乗るクルマは街乗りで運転手を楽しませる演出が少なすぎて物足りないというのが本音である。ただ し、まだ山道などを走っていないので、本来の姿を見ることができていないだけなのかもしれない。

MS AXELAを改良するのなら、エンジンの圧縮比を10にして、ターボチャージャをMPV用の小さいものにして、スロットル特性をもっとリニアにして、レブリミットを5500rpmにしたい。そうすると、低回転でエンジンの反応がクイックで素直な動きのクルマになるのではないだろうか。

余談であるが、試乗後にマフラーの出口を見てみると、見事なまでに真っ黒なススが付着し、水分によって垂れていた。それはとっても見苦しいもので、濃いガソリンを噴射してエンジンが頑張っている光景が目に浮かぶ。

241万円という価格はとても安く見えるが、HIDランプはオプションで、ラジオすら付かないのはいかがなものだろう。一般的に高性能車は高級装備を兼ね備えているものである。

AXELA

20S

5AT

206万円(税込)

アクセラのイメージを代表するモデルは23Sである。その「S」という呼称はSportyを意味しているのだろう。当初「S」は23シリーズにしか設定がなかったが、2004年10月に2.0Lエンジン搭載の20シリーズにも「S」が追加された。

2006年6月のM/Cでは、ようやく2.0LエンジンにVVTが追加され、待望の5段ATとの組み合わせになった。そして2.0Lの「S」も続投されている。エンジン性能はカタログ上では従前と変わりがないが、燃費は少し良くなっているようである。

では、アップグレードされたアクセラを試してみよう(2006年8月)。

室内の意匠は大雑把に見てM/Cで大きく変わっていないようである。ダッシュパネルのプラスチックがカチカチのものから僅かに粘りのある材質へと変更されているような気がした が、気のせいかもしれない。また、「S」モデルにはステアリングホイール上にATの変速スイッチが付いた。

5段ATの変速制御は乗り方によっていろいろと変化すると想像できるが、今回のチョイ乗りをした車両では各ギアでエンジン回転をあまり高めずにどんどんアップシフトを進める設定になっており、70km/hまで速度を高めると5thに入っていた。 いつも良いなと思うのは、アクセラおよびアテンザは常に現在のギアポジションがメーター内に表示されることである。ATのギア比はアテンザ(20E)とまったく同じであるが、80kgも軽いアクセラでは加速の軽快さが明らかに異なる。そう感じた原因は、ギアの選択プログラムの差異によるものかもしれない。今回はアテンザ20Eのように「4thギアが好き なんだ」と感じることはなかった。

ブレーキやステアリングのフィーリングは従前とあまり変わりがなく、良好であったが、乗り心地はあまり良くなかった。具体的には上屋がボワンボワンと落ち着きのない動きをして、なかなか収まらないのであった。 ソフトな乗り味を出そうとしてダンパーの減衰力を弱めたのかもしれないが、そんなことをするよりも、ダンパーをしっかり締め上げるほうが乗り味が良くなるような気がした。

M/Cで20Sの価格は6.5万円もアップしている。アテンザは5段ATを積んだ時に2万円だけ高くなったが、アクセラにはそれ以外に4.5万円分の何が備わっているのだろう 。VVT、電子スロットルなどのコストはそんなに高くはないだろうに。ステアリングホイールにあるATのスイッチはとても使いにくい代物であったので、そんなものでお金を取っているのならば馬鹿馬鹿しい。

試乗車の外板色はファントムブルーマイカという青緑色であった。これは十数年前に見たE36 M3(BMW)を彷彿させる色で、なかなか趣がある。日本車ももっと色で楽しめるようになればいいと願う。

 

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