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LANCER

EVOLUTION VIII

MR

GSR

6MT

339.8万円

ランサーのチューニングで有名な「HKS-Kansai」に新車を販売しているという店を訪問してみると、Evo8-MRの試乗車があったので乗ってみた。

シートに腰を降ろすと、今まで知らなかったフィット感でRECAROは迎えてくれた。このシートは市販品ではなく、三菱の意見を取り入れて製作された専用のものらしい。背もたれの形状は市販品と大きく異なり、私の背中にうまくフィットした。サイドサポートは深く、ホールド感も良好で、座面のクッションは市販品よりも非常に硬くできており、沈み込みは少なかった。価格は知らないが、純正部品として取り寄せたくなってしまうほど素晴らしいシートだと思った。なお、着座位置は少々高めに設定されていた(高さ調整不可)。

MOMOのステアリングホイールは小径のアルミ3本スポーク形状で、エアバッグは直径15cmぐらいのホーンボタンの中に収まっていた。いまやこんなにエアバッグが小さく収納されるようになったのかと感動を覚えた。また、アルミ剥き出し(ガンメタ塗装)のスポークもスポーティで良いと思った。

試乗を始めるに当たって、三菱の営業マンも分かっているようで、やはりドライバーが自ら「エンジンを始動する」という儀式でスタートさせてくれた。エンジンはすでに暖まった状態で用意されていたので、短いクランキングで目覚めたが、そのときの音は残念ながらあまり気持ちの良いものではなかった。

インプレッサと同等の重さのクラッチペダルを踏み、ショートストロークのシフトレバーを1stに入れ、1500rpmぐらいで繋いで発進した。しばらくゆっくりと走ったが、エンジンからガラガラ、トランスミッションからウーウーと騒がしい音がして、街乗りだけで使うとこのクルマを嫌いになりそうな気がした。走行距離170kmの新車だったせいか、1stから2ndギアに入れるのは硬かったが、3rdから2ndに入れるのはスムーズであった。

乗り心地は、硬い脚と硬いシートを備えているにもかかわらず、ボディがしっかりしているためか、意外にも快適性が高かった。「Evo8からバネレートが変更されていないのにもかかわらず、MRのほうが乗り心地が良い」という話なので、BILSTEINのダンパーが良い働きをしているのかもしれない。なお、ダンパーの減衰力はEvo8よりも30%も低くなっているという。

加速テストは 2ndギアで2500rpmぐらいから徐々に踏んで全開にし、3rdギアの途中まで試してみた。三菱のクルマらしく、スムーズで自然なレスポンスを示し、過給ラグは殆ど感じられなかった。スロットルを全開にすると、あっという間にとんでもない速度に達していたので、実際にはかなり速いはずであるが、爆発的な加速ではないため、GDBインプレッサ(C型)ほどの驚きを感じることはなかった(2人乗りで重かったというのも一因か)

6段MTのギア比は 1st〜5thが低く、そしてcloseしており、シフトアップ時の回転の落ち込みが少ないので、あまりエンジンを回さなくても走りやすい。トップギアのレシオは、60km/hで 1500rpmぐらいであった。

ブレーキは硬質タッチで気持ち良く効いてくれるものであった。

ACDをテストしようと思い、定常円旋回をしながらスイッチを押してみたが、何も変化がなかった。速度が低すぎた(おそらく限界の半分以下)のであろう。街中では効果を試すことは不可能である。

試乗を終えてしばらくアイドリングをしながら営業マンと話をして、エンジンを止めたところ、途端に世界が静寂に包まれた(エスティマのCMのよう)。その落差にとても驚いてしまった。これほどまでにエンジンや排気の音圧を感じるクルマは今までに経験したことはなく、アイドリングをしながら仮眠する(スキー場でよくある)ということなど到底考えられない。街乗り用のGSRでこれならば、RSはどんなに凄いのだろう。まあそんなことはどうでもいいが、Evo8-MRをファミリーカーとして使うのは、かなり厳しい

インプレッサ(GDBのC型)のほうが家族から苦情を言われることは少ないと思われる。

LANCER

EVOLUTION VII

GT-A

5AT

330万円

2002年2月の発表から8ヶ月経過するが、2000台作られたというGT-Aはまだ完売しておらず、在庫は東京でも50台あるらしい。ランエボのAT車はかなりの需要があると思っていたが、意外にも買う人は少ないのであった。値段が高すぎたのか、それとも2000台よりも多く作り過ぎたのか。。。近頃は30万円以上の値引が可能という。

(試乗1回目)

試乗したのは標準仕様車で、ファブリック表皮のスポーツシート、小さいリアスポイラーが付いていた。

運転席から見渡す雰囲気はCEDIAと同じで、木目調パネルの代わりに青メタリック塗装のパネルが付いているのが主な違い。ノーマルシートの着座位置はかなり高く設定され、見晴らしは良いが、スポーティな印象は薄い。着座位置の上下調整は、座面だけが動くもので、バックレストと連動しないためダメである(上げる必要性はまずないが)。一方、スライドは10mm刻みぐらいで動くため、とても良い。

さて、走り始めるとなんだか頭がくらくらする。きついメガネを掛けたときの気分。何故だろう? 原因は景色が歪んで見えるからである。ガラスが左右、上下に湾曲しているため、屈折しているようである(販売員も最初に乗ったときには歪んで見えたというので、私の目がおかしいのではない)しかし、シトロエンC3も同じように3次元に湾曲したガラスを使っているが、フロントガラスを通して見える景色に違和感はなかった。過去にCEDIAに乗ったときには違和感がなかったのも不思議である。

ノーマルシートは、一見何の変哲もない椅子であるが、サイドサポートはとても剛性が高く、ホールド性は意外に良い。また、形状も良くて疲れない。乗り心地はEvo7をベースにしているため普通のクルマよりはハードな設定であるが、十分ファミリーカーとして使うことが可能で、街乗りで我慢を強いられることはない。

ステアリングのフィーリングは滑らかで適度に軽く、街乗りでスイスイ曲がることができる。センターデフのロック率を任意に選ぶことができる(結合を弱くすることが可能)のは、自然なフィーリングを得られるという面で好ましい。

ペダル配置は、ブレーキペダルが右寄りにあり、左足ブレーキングはできない。GT-AのブレーキキャリパはEvo7と同じbremboが装着されている。ペダルタッチは硬質で良いのであるが、パッドがローターに食いつく感触が希薄で、少し速いペースで走っているときには「果たして止まるのだろうか」という不安が常につきまとう。摩擦係数の高いPADに替えれば解決する問題なのかもしれないが、現状では雑誌に書かれている評価(インプレッサWRX STIのほうがフィーリングが良い)が当てはまる。

ATをDレンジにして多めにスロットルを開くと、2500rpmあたりから過給が始まるのが実感できる。ターボチャージャを小さくして低回転から回るように設定されているので、とても扱い易い。加速レスポンスは素早く、いつでも思った以上にダッシュが可能で、街乗りではMT車よりも速く走れるだろう。エンジンは35kgmのトルクを3000〜5000rpmの間でフラットに発生する特性を持っているので、それを確かめるために2ndギアで3000rpm、4000rpm、5000rpmの各々の定速度走行からスロットルをスゥーっと開いて加速をしてみると、過給レスポンスはいずれの回転数でもかなり速い。しかし、ON-OFFを素早く行うと、ギクシャクする。これはエンジンマウント、ミッションマウント等に問題(振動を抑えるために柔らかいゴムが選定されている)があるのかもしれない。GT-Aはレスポンスが良いのでかなり速いと思ったが、ゼロヨン等のデータではインプレッサWRX NB(GDA/250PS、34kgm)のAT車と殆ど変わらないのが意外である。GDAはMT車にしか乗ったことがないが、低速からトルクが出ているので、パワーの割りに速いのかもしれない。また、2.0Lターボでは新型CALDINA GT-FOUR(260PS、33kgm)もあるが、これはまったく比較にならない。スペック上は遜色ないのにCALDINA GT-FOURのトルク感は明らかに薄い。

5段ATは意外にもワイドレシオの設定で、60km/h強までは4thまでしかシフトアップしない。4thでもロックアップクラッチは作動し、低回転で効率良く走ることができるが、そこで少しでもスロットルを開くとすぐにロックアップクラッチが解除される。もう少し高い速度ならばロックを保持したまま加速できるのかもしれないが、細かなスケジュールまでは経験できなかった。5thギアに入ってから60km/hに落としたときのエンジン回転は1500rpm程度である。Tipシフトの操作はシフトレバーでもステアリングホイール上でも行うことができるのは便利である。しかし、任意のシフトでは変速ショックが大きいと感じたので、日常的にはDで走るのがいいだろう。

4G63のエンジンの性能は良いが、音は特に低回転域でガァガァと騒がしく、官能的という言葉は全く当てはまらない。ギャランの時代から長く使ってきたエンジンなので、そろそろ音に目を向けて改良してもいいのではないだろうか。排気音はあまり大きくなく、加速時に若干の低音を響かせるもので心地良い。迫力をもっと感じたいと思う人はマフラーを替えると良い。そうすると、エンジンのガァガァ音が聞こえなくていいかも???

30分ぐらいの試乗から戻ってくる頃には、ガラスの歪みは気にならないようになっていた。案外早く慣れてしまうものである。

Evo7 GT-Aを4ドアATのスポーツカーと考えると、加速性能は合格である。しかし、減速性能は感覚に合わないので不合格である。加速は気軽にできるのに、減速は気合を入れないと止まらないというバランスの悪さをどうしても許すことができない。ただし、PADを替えてやるだけで、レベルの高い良いクルマになると思う。

 

(試乗2回目)

Evo8の情報を得るため、再度同じ店を訪問した(2002年11月)。Evo8は2003年2月発売とのことで、雑誌情報どおり6段MT採用、ACDの設定変更で出てくるそうである。

さて、Evo7 GT-Aであるが、在庫がまだあるそうで、叩き売り状態になっている。このような状況なので、Evo8ではもう販売量の見込めないAT車は出てこないと思われる。ランエボのAT車が欲しい人は今のうちである。もしかすると50万円ぐらい値引いてくれるかもしれない。

今回の試乗の目的は、雑誌にほとんど書かれていないbremboのブレーキフィーリングについて再度確認することである。前回の試乗ではローター温度が上がらない状況であったため、摩擦係数が安定する適温に達していなかった可能性が高いので、今回は積極的にブレーキを踏んで温度を高めてみた。その結果、効きはぐんと良くなり、不満を述べるほどではなくなった。しかし、スポーツ走行の頻度が比較的低いAT車にこのような温度によって摩擦係数が大きく変化するPADを装着するのはちょっと賛同できない。低温から摩擦係数の高い社外品を使うほうが安心できる。

また、ATのTipシフトについても新たな認識があった。Tipシフトでギアを固定しているとき、日産やトヨタのATではロックアップクラッチが解除されるが、三菱のINVECS-Vでは本家Tiptronicと同様にできるだけ直結した状態を保とうとする機能を持っている。なかなかの見識である。

 

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