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IMPREZA

1.5 R

S/A package

(GGC G型)

157万円(税抜)

2006年6月、GD/GGはG型へと変更された。今回はWRXではなく、新しいエンジン「EL15」を積んだワゴンに乗ってみた。

このEL15エンジンは、ボアを小さくしてストロークを伸ばしたのが特徴で、従来のEJ15よりも低速トルクを増強することを目標に開発がなされたのだと思われる。VVTや等長等爆排気マニを採用して、基本性能のアップも図られている。

運転席に乗り込むと、WRX風のバケットシートは表層が柔らかく、ふんわりと体を包み込む感触が心地よいと思った。この柔らかさはWRX STIのシートと同じではなく、形状を似せただけの別物だろう。ただし、WRX STIのシートでもサーキットでは拘束力が足りないので、街乗り用途ならこのあたりでいい。

エンジンは各メーター指針がフルに回るギミックが完了するのを待ってから始動する。待っている間に燃料ポンプが一定時間だけ働き、燃圧を高めて準備をしておいてくれるのである。つまり、キーを回す際にONを通り過ぎて一気にSTARTまで進めるという操作は良くない。スバルの側にそういう意図があるのかどうか知らないが、ともかく演出は最後まで見届けるべきである。

私のGC8型と試乗車であるGG型では1世代異なるため運転ポジションの考え方が少し変わっているが、それでもやはり同じ会社の製品であるため、違和感はなかった。

ではATのセレクタをDレンジに入れて走ってみよう。

走り出してすぐに感じたのが静粛性であった。等長等爆排気マニになったおかげで、排気干渉がなくなって変な音が出なくなったので、静かになったと感じたのだろう。ATからのノイズも明らかに減った。 モデル末期の今、やっと普通の1.5Lのファミリー用コンパクトカーとして取り扱うことができるようになった。

住宅地へと続く山道を上っていくと、カーブでの挙動がとても分かりやすいものであることが感じられた。従前からインプレッサは自然な動きをしていたが、今回はタイヤサイズが205/50R16に変更されてグリップ性能に余裕が生まれたため、さらに深く追い込んでいけるようになった。サスペンションはかなり柔らかいのでローリングは大きいが、ステアリングギア比が穏やかに設定されているため、挙動に突飛なところがなく、とても安心してステアリングを切っていけるのである。

エンジンは低速トルクが増えたようで、低回転域で力不足に歯痒い思いをする度合いが少なくなった。スロットルは電子制御に変更されたので、フィーリングを確かめてみると、やはりレガシィと同様に反応が鈍く、スロットルを踏み込むときよりも戻すときの反応が特に悪かった。フルスロットルから徐々に戻していくときのトルクの変化は、運転手が予想しているものと少し異なり、慣れるまでは気持ちが悪く感じられるだろう。ATだからこんな変な設定でも気づきにくいのであって、MTならスロットルの反応の鈍さに苛立つことになるかもしれない。 それゆえに1.5RにはMT仕様が設定されていないのか。。。

エンジンは低回転のトルクが増えたが、高回転は逆に弱くなっていた。だいたい5000rpmを超えると回るのを嫌がるようになった。まあ街乗りでは5000rpmも回すことがないので、このセッティングは 一般的には正解であると言える。 しかし、スバルのエンジン設定は極端に偏ったものが多いのが不思議である。もっとバランスの良い設定にはできないのだろうか。

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インプレッサワゴン1.5Lの一番の美点は初心者にも分かりやすいであろう素直なハンドリングである。いろいろなクルマに乗ってみたが、この自然な動き方は最近感じたことがないものであった。次元(限界速度)は低いかもしれないが、クルマの挙動を感じやすいことは大事なポイントである。

カタログでエンジン性能を見ると、最高出力は6400rpmで出ることになっている。しかし、乗った感じでは決してそんな高回転まで回そうと思えないものであった。Dレンジ(SPORTモード)のフルスロットルで1速は6800rpmでアップシフトしたが、嫌々回っていたし、2速では6000rpm(100km/h)までしか回さなかったが、5000rpmを過ぎると元気がなくなっていく気がした。

WRX STI

(GDB F型)

2005年6月、GDBはF型へと変更された。GDBはマイナーチェンジのたびに色々と仕様を変えてくるのが興味深い。E型と同様に今回も短時間の低速での街乗りをしてみた。

エンジンマウントが液封式になったというが、体感はできなかった。おそらく遮音と剛性のバランスが良くなっているのだろう。

乗っている間、ボンネット上の空気穴の大きさが小さくなったという情報を忘れていた。今までは邪魔なものが付いていることが否応なく意識に上るものであったのに、今回は意識の外にあったことから、F型は視界が良くなっていることは確かだろう。

リアLSDがどういうわけか知らないが昔ながらの多板式なのである。トルセン、シュアトラックなど新しいものがあるのに、なぜいまだにメインテナンスが面倒な多板式なのだろう。ステアリングをいっぱいに切って低速で曲がってみても引っかかりや音が出ないため、イニシャルトルクの設定はかなり低いことが想像できる。利いているのかどうか分からないものが付いているより、トルクセンシングタイプのがっちり利くものを付けるほうが実用的なのではないかと思う。

「最大トルクが43kgmに」、「DCCDの進化」というのも売りものであるが、街乗りでは何も述べることができない。

シート形状はいつ変更されたのか知らないが、肩のサポートが幅広くなって窮屈な感じがしなくなった。これは気に入った。ただ、スライド調整の1ノッチが相変わらず大雑把なことが気に入らない。VWやBMWが細かく調節できるのに、どうして走りを重視する姿勢を見せるSUBARUにそういう考えが出てこないのだろう。

販売員が同乗するお試し走行では、この類のクルマの売り物を感じ取ることはできないのが残念である。

WRX STI

(GDB E型)

DCCD仕様

2004年6月、GDBはE型へと変更された。

E型の最大の変更点はハブの強化であり、それに合わせてホイールのPCDが100から114.3になった。ホイールナットの間隔が大きくなったのは一目見ただけで明らかである。

その他の大きい変更点は、STI標準車のフロントのホイールアライメント及びステアリングギア比がSpec.Cと同じになったことである。

今回はあまり交通の流れが良くない道で試乗したので、街乗りでの感触を述べるに過ぎない。

まずは運転席に座ってみると、何となくシートクッションがソフトになったような気がした。そして、着座位置がかなり高いことに違和感を覚えた。着座位置に不満を感じる人は、社外品でローダウンレールが出ているので、交換すればいいだろう。

歩道から道路に出る際に数cmの段差を落ちたが、そのときのショックはとてもまろやかで、今までのGDBの中で一番ソフトであった。タイヤの厚みが増している(エアボリュームが増えている)ので、衝撃を緩和できるようになったのだろう。

6段MTをこまめにかき回しながら走ってみると、シフトレバーの動きに渋さがなくなっていることに気付いた。今までは気合を入れてシフトをする必要があったが、E型は他のクルマと同じように普通に操作ができるようになった。私の場合、95%以上を街乗りが占めるので、これはありがたい。

忘れていたが、E型での大きい変更点はエンジン性能にもあった。42kgmの最大トルクは驚くべき数値である。しかし、今回はフルスロットルを試す場所がなかったので、従来との違いを感じることはできなかった。最大トルクの体験はできなかったが、街乗りで重要な柔軟性は確認することができた。平坦路をTOPギア(6th)で1400rpmで走行を続けることは従来どおり可能であった。

GDBはどんどん性質が丸くなってきている。乗り心地、ステアフィーリング、ギアシフトがとても滑らかになり、街乗りで全然不快感がなくなった。ファミリーカーにも問題なく使えるが、あまりに装備がそっけないので、ちょっと躊躇してしまう。

WRX STI

(GDB C型)

標準車

295.8万円

 

試乗したDCCD仕様(メーカーオプション)車はSpec.Cと同じBBSホイール&RE070を履く

332.3万円

発売後2年でC型になるというのはGC8と同じタイミングである。ただ、GC8と違ってGDBのマイナーチェンジはかなり大掛かりなものとなった。今回のM/Cの最大の変更点は、STI versionのEXマニである。ナンバー付モータースポーツ車両で交換が認められてからはEXマニの等長化は常識(WRCでも当然。ただしN1は交換不可)になったので、ようやくスバルも本気で動き出したかと推察する。鋳鉄からステンレスパイプへの構造・材質の変更による軽量化、排気干渉の減少による全域トルクアップが期待できる。果たして、等長EXマニ(市販品であれば10万円ぐらい)の効果はいかほどか。

(試乗1回目)

実際に乗ってみると、A型、B型に比べて低回転域がとても使いやすくなっているのを感じることができた。また、パワステが若干重くなったこと、そして、6段MTのフィーリングが軽くなり、操作系の重さのバランスが整ったことも好印象であった。着座位置が下げられたことはB型のSpec.C(S202)で感じていたが、C型にもそれが採用されたようで、適正な着座位置を得られるようになったのは嬉しい。欲を言えばきりがないが、サーキット走行用にあと1cm下げられたらなお良い。

混雑した道路での試乗であったため、この程度の感想しか述べられないが、もう一度乗ってから改めて感想を書こうと思う。

 

(試乗2回目)

前回はセールスマンが同乗していたため十分な検討ができなかったので、もう一度借りてひとりで乗ってみた。試乗車はDCCDを備えるメーカーオプション設定車であり、標準のWRX STIと違いは BBSホイール&RE070、13対1のステアリングギア、フリクションプレート式リアLSD、フロントLSDが備わること。低回転での走りは、6速 50km/h(1400rpm)でも何とか速度を維持することができる柔軟性を備えていた。標準よりクイックになったステアリングとRE070のせいで、不整路面からの影響を受けやすく、低速走行時にハンドルが取られることがあるが、シャープな動きはその欠点を忘れさせてくれるほど気持ち良いものであった。乗り心地はB型よりさらに洗練されて、日常使用に何ら支障のないレベルであると本当に言えるようになった。ボコボコいう排気音はなくなって耳に感じる音圧も小さくなり、街乗りでファミリーカーとして十分使える範囲にある(私の基準で)。

さて、C型に乗ったからには40kgmのトルク体感しなければ意味がないので、交通量の少ない道路で試してみた。8000rpmがレブリミットであるが、2ndギア 7500rpm以上ではトルクの落ち込みを感じた(負荷が少ないためか?)。そこで、7500rpmをシフトアップポイントにして3速の途中までフルスロットルで加速してみた。1stギア 2000rpmぐらいからスーっと全開にし、2nd→3rdとシフトアップしてみると、かなり低回転からスムーズな過給が始まり、B型までのドッカンターボとはまるで違うフィーリングになっていた。段付きがないうえターボラグも小さく、実戦で役に立つ特性になっている。260PS/31.5kgmのWRXの加速に慣れている私でも、40.2kgmのトルクには圧倒された。このクルマはサーキットを走らないと楽しくない。公道で遊ぶのは危険である。

街乗りは快適で、4ドアで室内は狭くなく4人乗車でき、サーキットを走れば996(PORSCHE 911)もM3(BMW E46)も怖くない。こんなクルマが300万円で買えるのは嬉しい。ただし、不満がないわけではない。

  • 巨大なリアウィングは30歳を過ぎると恥ずかしく感じる。M3のような控えめなスポイラーの設定もあるといい。
  • DCCD仕様のリアデフLSDをシュアトラックに設定した車両も出してもらいたい。フリクションプレート式LSDは5000km毎のオイル交換を要する(スバルの指定交換時期は知らない)ので手間が掛かるし、オイル交換をサボるとLSDが効かなくなる(効かなくなったLSDほど意味のないものはない/経験済み)ので、長期間安定した効きを維持できるシュアトラックのほうが好ましい。現状のフリクションプレート式LSDの設定がとても穏やかで、効いているのかどうか分かりにくいというのも理由のひとつ。
  • DCCD仕様に装着されるBBSホイールはノーマルより約2kg軽いという。乗り心地が良いのは、バネ下重量の軽さのおかげなのかもしれない。ノーマルホイールも頑張って軽くしてもらいたい。

I's

sport

(GG2 B型)

VIVIOに乗っている親が試乗に行ったので付き合ったのだが、私はWRX以外のインプレッサに興味はなく、何の期待もせずに乗ってみた。

1.5LのFWD車なので月並みのクルマを想像していたが、動かしてみて驚いた。ボディのしっかりした感触はGC8の比ではなく、GDAと同じようなフィーリングであった。

最近のスバルNAエンジンは等長EXマニを使用しているようで、音はBOXERをまったく意識させないスムーズなものになっていた。音量はやや大きいがスバルファンではない人にも違和感はないと思われる。2002年11月にスタイルを変更し、一般の人がインプレッサに興味を持ち、クルマの大事な部分の出来の良さが理解されるようになれば、もっと売れるだろうか。わずか150万円でこんなにしっかりしたクルマがあるということに感激はしたが、結局買わずに帰った。

Tommy kaira

20b 2.2

(B型ベース) 

標準車

 

 

オプション装着車

GDB(WRX STI)をトミーカイラが改造したクルマ。GDBからの変更ポイントは約150cc排気量を増したエンジン、マフラー、サスペンションスプリング、フロントバンパーぐらい。

ノーマル(280馬力、38kgm)よりも75馬力、7kgm増したエンジンに非常に興味を持って乗ってみた。排気量UPの恩恵を確かめようと6thギアで1500rpmから加速してみたが、意外に低速トルクは弱く、ノーマルと差は感じなかった。4th 2500rpmからの緩加速では過給領域への移行がノーマルよりもややスムーズなフィーリングで、ここにECUチューニング、排気量UPの両方が生かされていると感じた。1st→2ndの全開加速ではノーマルと全く差を感じなかったが、走行抵抗が小さいため負荷が充分にかからず、過給効果が出なかったのが原因だと思われる。速度域を180km/h以上にして走行抵抗を高めれば、トルクの違いが感じられるのかもしれない。ただし、そのためにはSUZUKAやFISCOで試さねばならない。

足回りはバネだけを変更して車高は15mmダウンしている。乗り味はGDB/B型ノーマルと同様にしなやかさが感じられた。バネレートの変更度合いが公表されていないため何とも言えないが、レートアップされているのなら乗り心地が変わらないということを高く評価できる(↓ 乗り味の良さは、オプションのバケットシートの影響も大きいと思う)

ただしこの仕様でノーマル比100万円高というのは、ちょっと手が出せない。

オプション装備について:試乗車にはレカロSR風(ティーズ製造品)のシートが付いており、GDBで最も気に入らなかった高い着座位置は改善されていた。この位置変更は気に入った。しかし、シート本体は背もたれのS字形状がレカロと同様で体にフィットしないため私には×である。ただ、座面はソフトで路面からの衝撃を和らげてくれそうなものであることと、ショルダーサポートがノーマルよりも低い位置で幅が広く包み込むような形状(R34GT-Rに似たもの)であるのはである。また、18インチホイールはバネレートとのバランスが良いのか重さを感じないものであった。そして、巨大なリアウィングは後方視界のど真ん中を占領するが、下方は開放されて見やすいため後退時に問題はないだろう。

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試乗したM20bにはPFCのサーキット用ブレーキパッドが付いていた。これはオプションではなく、完全な社外品であるためクルマの評価とは関係ないが、強く印象に残ったので書いておく。何も知らずに踏むと、低速域では強烈な効きと豪快な鳴きに驚くことになる。ストリートで使えるスポーツパッドを色々と試した経験があっても、PFCのパッドほどスゴイものはなかった。ブレンボキャリパにサーキット用PADをつけるとこんな風になるのかと認識を新たにした。ある程度スピードを出しているときにはフィーリングは良かったが、効きは強烈なためロック付近のコントロール性に心配は残る。試乗を終えて自分のGC8に乗ると、ブレーキ(Fパッド:Winmax ESCORT、Rパッド:AP ZX)の効きが非常に甘く感じてしまった。

WRX NB

5MT

(GDA)

フルモデルチェンジ時

A型

GC8と比べるとボディの剛性感が非常に高く、音が静かで1ランク高級車になった感じがする。GC8から曲げ剛性が2.5倍、捩れ剛性が2倍という通常では考えられないほどの変更をしているのに、高らかに宣伝しないのが不思議である。エンジンは可変バルタイが効いていて低速からトルクがあり、MTでも楽に運転できる。GC8で3000rpmシフトのところを、車体の重くなったGDA(WRX-NB)で2500rpmシフトで同じように走れるのは新世代を感じさせてくれる。

GDAは居住性改善をもくろんで屋根を30mmも高くしたのにもかかわらず、高さを感じさせないような外装デザインを採用し、リアウィンドーを寝かしたため、室内の空間はGC8とさほど変わらない。運転席は着座位置が上がったので見晴らしはいいが、後席は背もたれを寝かせたので頭上にはガラスが迫り、空間は反って狭くなっている。室内空間を有効に利用するためには前席のイニシャル位置を30mm下げ(基準値はGC8と同じになるが、リフターで50mm上昇できるので問題ないはず)、後席は背もたれを少し起こせば見晴らしも良くなっていいと思う。外観重視で寝かされたリアウィンドーのせいでトランクの蓋がGC8より小さくなり、使い勝手が悪くなったのではないかと思う。リアワイパーのモーターはGC8より非常に小さいものに変更され、トランクルーム内であまり邪魔にならなくなったのは良い。

225/45R17タイヤを履くGDB(WRX-STI)と同じボディをまとっているにもかかわらず、GDAのタイヤサイズはなぜかGC8と同じ205/50R16。ボディとタイヤのバランスが視覚的に非常に悪い。タイヤサイズを大きくするとトータルのギア比が高くなってしまうが、新エンジンは低速トルクに余裕があるので問題ないと思う(B型はファイナル比が落とされたので、大径タイヤ装着は全く問題なし)。ホイールを替えずに205/55R16(米国での標準サイズ)または215/50R16へ、あるいは、インチアップして205/50R17というのがいいのではないかと思う。なお、好みで替えるのなら、ノーマルの脚とのマッチングは悪くなるだろうが225/45R17、225/40R18という選択も可能ではある。

WRX STI

(GDB)

【GDB A型】

GC8の時代は、"STIバージョン"と"WRX"の脚は同一であったが、GDB(WRX-STI)とGDA(WRX-NB)には大きい差が感じられるのが印象的であった。路面の状況が悪いところでは脚が動かず、かなり荒っぽい乗り味であるが、ボディのしっかり感はかなりスゴイ。バネレートは市販車にしては非常に高く感じられ、F40N/mm弱、R30N/mm強ではないかというフィーリング(詳細はディーラーにてご確認を)。駆動系マウントなどのゴムのゆるゆる感が少なく、全体的に硬質な感じでうまくまとまっている。排気音はBOXERサウンドを愛する人にとってはちょうどいいかもしれないが、少し演出過剰(うるさすぎる!)。ゲノムのマフラーを買う人がいなくなるかもしれない。ブレンボのブレーキはペダルストロークが小さく、踏力で効かせるタイプでフィーリングが良い。6MTは真剣に走るときには良さそうだが、街乗りでは重くて常に操作を意識させられるので、発進停止を繰り返す市街地走行では疲れると思う。エンジンは可変バルタイが付いているのにも拘わらずGDAと比べて明らかに低速トルクが弱く、GC8と同程度なのは気に入らない。また、着座位置の問題はGDAと同じで、GC8より30mmも高いのが気に入らない。50mmも変移量のあるシートリフターがついているのでイニシャルはもっと下げてもいいと思う。ただ、座り心地はエクセーヌの表皮がソフトで意外に快適である。

スポーツ性を高めるために固められた脚は快適性を損ねる。バネ下の動きが渋く、常に乗員は揺すられる。なんとかBMWの快適性を見習えないものか。E46 M3のFストラットは26N/mmか27N/mmというとても弱いバネを使って、ダンピングもさほど強くないのに、なぜか高いロール剛性とソフトな乗り味を持っているのである。スバルも公道用(RA以外)だけはもう少し快適性を考えてセットアップして欲しい。雑誌に書いてあったが、スバルは「国産ダンパーメーカーに頑張って欲しいと考えてあえてBILSTEINにしなかった」そうである。いったい何を頑張って欲しかったのだろう。320万円以下で車両を完成させるために価格を抑えることなのか? 国産ダンパーメーカーの中で、S社でもT社でもなく KYBが最も安い価格を提示したという話を聞くと そう思わざるを得ない。このように性能よりも価格を重視する現状では、ダンパーの精度は悪く、フリクションが大きくなってしまうのも無理はないのだろう。

自動車雑誌では後発のランサーEvo7が多く取り上げられているが、特別な高性能タイヤを採用してサーキットLAPを稼ぐというEvo7の企画はイメージ作戦として上手である。クソ真面目にやったスバルは本当に商売が下手である。良い商品を出せばきっと分かってくれる、というのはたまたまレガシィで実現できたが、「速けりゃ偉い」という客がいることも忘れてはいけない。例えばRAだけに高性能タイヤを採用したり(競技では必ず交換するので純正タイヤが早く減っても問題ない)、スーパー耐久レースで使うことを考えて245/40R17サイズをオプション設定したり、素人を喜ばせるだけなら簡単だと思う。

  

【GDB B型】

2001年9月、GDBはマイナーチェンジを受けてB型になった。フロントサスの取り付け剛性を高め、ダンパー減衰力を変更し、価格を20万円以上下げた。残念ながら軽量化はなし。ランサーEvo7が売り切れてから値下げしても利益が減るだけだと思うが、客の立場では嬉しいことである。

A型で不満だった乗り心地の荒さは、ダンパーの減衰力特性の変更で明らかに改善され、サーキットを走らない一般ドライバーがなんとか日常的に使えるようなレベルになった。よく動く脚に変化したのは大きな進歩であり、歓迎できる。ダンパー以外に大きい変化はないと思うが、改めて観察したフィーリングを述べると次のとおりである。

エンジン特性はトルク変動が大きく、1500rpmでの実用トルクはGC8Cよりも細く感じるのに、3000rpmを少し越えたあたりでは微少スロットル開度にもかかわらずタービンが勝手に回り始める。この特性は速く走る必要のないときにはちょっと使いにくい。排気音は8000rpmまで回してもさほど高まらないように感じたが、A型からマフラーが変更されたのかどうかは不明。駆動系のマウントを固めているせいかエンジンマネージメントを良くしたのか判らないが、GC8と比べると低速でのスナッチが少なくて乗りやすい。6MTの操作感が硬いのは相変わらずだが、2ndギアのシンクロはトリプルコーンというが、ダブルクラッチを踏まないとシフトダウンできない(冷えているとき)のは意外であった。

全体的にA型よりも日常的に気負わずに乗れるクルマへと変化していたことは評価できる。

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【余 談】

●スーパー耐久レースではタイヤサイズは純正装着品に準ずることになっているため、GC8の時代は205mm幅となり、225mm幅のタイヤを装着するランサー(Evo5〜6)に全く歯が立たなかった。そこでライバルと対等に戦うために225幅タイヤ装着を前提にGDBは設計されたが、後発のライバル(Evo7)は235mm幅を装着して現れ、また差をつけられた。そのため2001年のレースでも過去と同様にGDBは苦戦した。しかし2002年から規定が変わりGDBに235mm幅のタイヤ装着が認められたこと、そして軽量モデルSpec.Cの登場で漸く対等に戦えるようになったようである。

●2002年5月、RA Spec.CをベースにしたS202 STI Versionが発売されたので見に行った。ノーマルWRX STIとの違いはスバルホームページで参照いただくとよいが、公表されていない部分で違いを感じた。ずっと気になっていて何度も試乗記に書いた着座位置が若干改善され、イニシャル位置が下げられていた。これはRA Spec Cだけの改良点なのかもしれないが、もし全車同様であるのなら嬉しい。それでも身長175cmが座ってステアリングホイールの上下調整を最も上にして、シート位置を最も下にしてちょうど良いポジションなのでノーマル状態の設計としては変である(ステアリングが最上位、シートが最下位というのは最も身長が高い人に対する設定なのに、175cmでピッタリなのはおかしい)。シートを交換して着座位置を下げることを前提にしているのなら、チルトハンドルが下方に余裕を残していることを理解できる。しかしレースでの使用を考えて市販車のポジションを設計するなんてことがあるのだろうか? BMWのように「ノーマルのセダンでそこまで着座位置を下げるのか」という設計を真似して、シートのイニシャル位置をさらに下げて欲しいものである。

 

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