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V50

2.4

5AT

V50の展示車輌で初めて標準のファブリックシート仕様を見ることができた。表皮は少し粗めの布地で、滑りにくいように感じられた。滅多にない機会なので、一度乗ってみなくてはならないと思い、試乗車を見てみると、残念ながらこれまでと同じ革シートであった。

それでも、いちおう試乗をお願いした手前、乗らずには帰ることができないので、V50で初めての「2.4」を試すことになった。

渋滞の道でのチョイ乗りでは2.4iとの差など何ら感じることはできず、尻がシートの上で滑ってしまうことだけを気にしながら静々と一回りした。

渋滞で停車している間は暇なので色々と室内のスイッチを触ってみたところ、空調のファンがかなり強力であることが分かった。最大風量は今までに経験したことがないぐらいのもので、しかも弱風までの調整を細かい刻みでできるのが特長である。

また、ATのW(Winter)モードも試してみた。3速発進はかなり反応が鈍く、雪のない道では日常使うものではないが、クリープ力が弱くなるため、渋滞中に使うのに都合がいい。なお、Wボタンを押さなくても、Tipシフトで1速〜3速まで任意に発進ギアを選ぶこともできるので、状況に応じたギアを選択するとよい。

下の2.4iのところに「デザインセンスが気に入ったら…」と書いたが、2.4iと同価格であるJaguar X-typeの内装と比べてみると、V50/S40の内装デザインがあまりに素っ気なく見えてしまう。特にドア周辺の内張りなどは日本車と変わりがないぐらいである。まあVOLVOというブランドが好きなら、アクセラと共用シャシを使ったクルマ自体は良いものであると思うので、買ってもいいかもしれない。

2.4 i

5AT

 

395万円

T-5(ターボ)のエンジンはあまり乗りやすいセッティングではなかったので、自然吸気のハイパワー(170PS)エンジンを搭載する2.4iも試してみた。2.4のローパワー(140PS)エンジンを積んだモデルもあるが、カタログ上では4000rpm以上の領域で差がつくだけなので、通常の乗り方ではほとんど違いは感じられないだろうと思われる。

今回の試乗車は、Basic packageというオプション装備(35万円)がついたモデルてあり、革シート、17インチホイール、サンルーフなどが備わっていた。日本に輸入されてくるVOLVOには、S60やV70などもそうであるが、革シートが含まれるBasic packageが通常装備になるというので、革シートが嫌いな人は標準車」を特別注文しなくてはならない。変な話である。

VOLVOはワゴン人気とともに日本に浸透してきたので、V50のシートアレンジを試してみることにした。ワゴンの良い点は、当たり前の話であるが、リアシートを倒して簡単に荷室を広げられるところにある。もちろんセダンであるS40もアクセラセダンと同様にリアシートの背もたれを倒してトランクと室内をつなぐことができるが、大空間を得られるという点でセダンに比してワゴンには夢がある。。

V50の場合、通常はリアシートの座面を起こし、ヘッドレストを外し、背もたれを倒すという作業手順を踏む。そうして広い荷室を得るのであるが、ここで若干の問題が発生する。普通のワゴン車は荷室の床面は全体がフラットに広がるのであるが、V50は倒した背もたれが前方に向かって下がった状態になるのである。では、座面を起こさずに背もたれだけを前に倒したらどうなるだろう、ということで実際にやってみたところ、今度は充分に倒れず、前方に向かって床面が上がってしまった(Audi A4 Avantと同じような感じ)。すなわち、いずれにしても中途半端なのである。どうしてワゴン車作りに慣れたVOLVOがこんなことをするのだろう。不思議である。

簡単に解決する方法は、無論メーカーにしかできないが、荷室の床面を2cmほど低くすることである(後席より後ろの床全体を下げる)。現状ではスペアタイヤと床の間には相当の隙間があるので、対処はたやすいはずである。

走ってみると、やはり自然吸気エンジンらしい穏やかで連続的な加速感が好ましいと思った。このエンジン、4400rpmがトルクのピークなので、4000rpmからの盛り上がりを楽しめると期待して、3速 3000rpmからフルスロットル、また、2速 4000rpmからフルスロットルで加速してみた。その結果、このハイパワー版2.4Lエンジンは活発さが薄く穏やかで、加速そのものを楽しむというスポーツ心は全然ないことが分かった。これならローパワー版でも良いかもしれない。なお、アクセラ23Sのほうがエンジンのパンチがあって楽しめる。

ハンドリングも穏やかで、どんな速度域でも自然に操作できるのが良かった。途中、Uターンをする場面があり、そのときに小回り性能の優秀さを確認することができた。カタログ上の最小回転半径は5.3mで、インプレッサと同じであるが、実際にはフルロックまでステアリングを回す時間の影響もあるので、ステアリングが軽いV50のほうが小回りが利くと感じられた。

5段ATのギア比はV50/S40全車共通であるが、ファイナル比はターボモデルと異なる。確かめてみると、Topギアの2000rpmにおいて、約85km/hぐらいの速度が出た。Dレンジで走っている限りシフトショックは感じられず、さすがにアイシンのATだけのことはあると思った。Tipシフトを使ったときの変速ショックも小さく、良くできていた。

Topギア、2000rpmで走っているときの騒音は、ほとんどがタイヤのパターンノイズであり、エンジン音は小さかった。試乗車はピレリP7(205/50R17)を履いていたが、タイヤ銘柄を変更することでもっと静かにできると思う。

2.4iというモデルは「穏やか」という言葉で全体をまとめて表現できる。何らかの強い特長があるのではなく、どこを取ってみても中庸な感じがするのである。これでは最近流行の「プレミアム」と呼ぶことはできない。メルセデスは「外界の情報を乗員に伝えない」、BMWは「限界に近いところでの運動性能が気持ち良い」、アウディは「造りが緻密で質感が高い」という特徴を持っている。VOLVOはV70、S60も含めて「穏やか」、「安全性が高いらしい」というよくありそうなフレーズしか出てこない。何かしら強い個性が欲しいものである。

このモデルでもアクセラ23Sの2倍の価格である。どこに価値を見出そうか。やはりS40/V50は内外装のデザインが一番の「売り物」だと思うので、このデザインセンスが気に入った人には高くないのかもしれない。

T-5

5AT

445万円

フォードグループのボルボが、マツダとフォードの協力を得て共同開発したC1プラットフォームを使った S40&V50 を発表した。

広島で開催されたアクセラの発売前試乗会の会場では、新プラットフォームの設計においてVOLVOが安全性分野のリーダーになったという話があり、安全に関わるボディ構造(フロントの衝撃三叉分散構造、低い位置に装着されるクロスビーム、水平移動するステアリングコラムなど)はアクセラ、フォーカスC-MAXと共通である。また、サスペンションも基本的な構成は同じで、パワーステアリングはモーターで油圧を発生させる電動ポンプ油圧式が共通で使用される。共通化が可能な部品はコストダウンのために使われるが、エンジン、ボディに使用する鋼板の種類や厚み、サスペンションチューニングなどは各社で独自の仕様にしているという。

V50の外装は、明らかにVOLVOらしい仕上げがなされる。デザインは上手だと思う。前端から後端に至るショルダーラインの造形が特にきれいに見える。そして、アクセラの腰高な印象は S40&V50 にはない。ただし、V50 のメカニズムに特に目新しいところはなく、小さいエンジンルームの中に衝突時の潰れ代を確保するために S60&V70に使用している5気筒エンジンをスリムに仕立て直したという程度である。上級モデルのエンジンの流用というのは、VOLVOの血を守ること、新たな投資を避けること及びプレミアム性を高めることにつながるのだろう。このエンジン、特にターボ付き2.5Lは排気温度を高くするように設計されているのが興味深い。通常は850〜900℃といわれている排気温度を1050℃にするのは簡単なことではなかったと思われる。これによって触媒の活性化を可能として★★★を獲得したのだろう。ターボ付きで三ツ星を取るとは立派なものである。もうひとつ興味深いのは冷却水の加圧弁(ラジエーターキャップ)の開弁圧が145kPa(1.48kg/cm2)に設定されていることである。日本車では0.9kg/cm2が普通で、最近は1.1kg/cm2という例も増えてきているが、スポーツ用品でも1.3kg/cm2が上限である。こんなにも高い圧力をかけると、冷却系のゴムホースにかなりの強度をもたせなければならないだろう。水温を上げて熱効率を良くしよう、あるいは、小さいエンジンルームに大きいエンジンを詰め込んでやろう(風が通りにくく熱が逃げにくいので、外気温と水温との差を大きくすることで冷却効率を高める)とする努力には目を見張るものがある。

T-5の外装は、ホイール以外に2.4や2.4iとほとんど変わるところがない。同意匠にすることによって全体的に価値を高めようというのが最近のプレミアムと呼ばれるクルマの流行になってきている。ターボ車の唯一の識別点はマフラー出口が左右に分かれて出ていることである。これも高性能車に流行しているスタイルであるが、メインサイレンサーに入るまで1本で来たパイプが、サイレンサーから左右に2本に分けて出されているだけであり、実質的にはあまり意味を成さない装備である。

運転席のドアを開くと、そこにはまぎれもないVOLVOの世界が広がっていた。サイドシルとセンターピラーとの継目部分には手をつくためにあるような盛り上がりが上級モデルと同様に存在し、サイドインパクトから乗員を守る(ドアの侵入を防ぐ)ことが考慮されている。この部分は独自の設計である(アクセラも重なり代は大きく取ってあるが、形状が異なる)。また、安全ベルトの腰ベルトの支点は2点ともにシート本体に留められており、位置決めの確実性を求めていることが分かる。シート本体にベルトを固定するということは、シートレールの強度も充分高く設計されているのだろう。しかし、肩ベルトの支点の位置は固定されており、身長差に応じた調節をすることができない。これはどういうことなのだろうか。シートに腰掛けてみると、感触は上級モデルと同じで、モチャっとしたクッションで受け止めてくれた。そのうえ、革の表皮が滑りやすいことも同様であった(革張りシートはオプションであるが、新しい素材を採用した標準シートを装着したクルマはショウルームにはなかった)。内装の見た目は悪くないが、触った感じは上級モデルと同様にさほど高級ではなかった。特にセンターピラーの内張りの感触の安っぽさは顕著であった(車内からピラーが太く厚く見えるが、実際はカバーが大きいだけであり、鉄の部分が太く厚いわけではない)。

さて、期待に胸を膨らませて走らせてみると、スロットルペダルの踏み込みに対するエンジン(2521ccの低圧ターボ)の反応は鈍感で、踏み始めは「ちょっと走らないなあ」と思わせ、「ではもうちょっと」とわずかに踏み加えるとタービンが回って必要以上に加速してしまうというやや使いにくい特性がみられた。タービンが低回転域から回ってくれる(最大トルクが1500rpmで発生するので、AT車での発進時にはすでにブーストが充分に効く回転域にある)のは良いのであるが、加速にはメリハリはなく、ターボの過給のセッティングはあまり芳しくなかった。V70の2.4ターボやXC90の2.5ターボには良い印象を持っていたので、V50もそういうセッティングにしてもらいたいものである。V50のT-5は、インタークーラーがバンパー下に見える(開口部いっぱいに広がり、冷却性能はかなり高そうである)ので、エンジン背後のコンプレッサからスロットルまでの配管が長いのが容易に想像できる。エンジンレスポンスが良くないのは、配管の取りまわしが悪い(長すぎる)ためであろう。エンジン補器を狭いエンジンルームに詰め込んだツケはこんな形で現れたようである。しかし、狭いエンジンルームの中でこれから改良するのは困難だと思う。圧縮比を上げてやることによって多少はドライバビリティが良くなるかもしれない。

乗り心地はVOLVOらしいやや大雑把な感触で、ボディの剛性感がどうこうということは特に意識することはなかった。アクセラ(23S)の乗り味は車両全体から高い剛性感を感じさせるツッパリ兄ちゃんの風体を持っていたが、V50は温和な感触で全体がまとめられていた。リアサスペンションは、共通の構造をもつアクセラと同じ挙動を示し、縮んだときにグニョっとよじれるバンプステアのような気持ち悪さを感じた。ただ、これは1時間も走ると気にならなくなっていた。T-5という最もスポーティなモデルであっても、アクセラ(23S)のような硬さはないので、街乗りで不快だと思うことはないはずである。

エンジンもミッションも上級モデル(S60・V70)と同じ類のものであるため、車内で聞こえる音には共通性を感じたが、遮音性の違いが少しみられた。それでも100km/h時のエンジン回転数は2000rpm(Topギア)であり、巡航は静かにこなしてくれた。

日本に輸入されるS40/V50はFWDだけであるので、ATにはWinterモードのON/OFFをする「W」スイッチが備わる。これをONにすると、発進ギアが3速になる。雪道でも使う機会は少ないと思うが、この機能は意外にも都会で有効に使うことができる。渋滞のときにスイッチをONにすると、煩わしいクリープの推進力が減少するのである。これで停止時のブレーキペダル踏力を弱めることができるし、また、サイドブレーキで停止させることもより容易になる。そのままブレーキをリリースすると、アイドリングのままで速度が上がるので、スロットルを開ける必要もない。なかなか有用なものである。

オーディオは、クッキリとした音作りがなされ、なかなか聞き易いものであった。また、FMラジオの感度が良いと感じた(アンテナは荷室サイドガラス面に存在する)。

運動性能は特に何かを意識することはなく、ごく自然な振る舞いであった。試しにフルブレーキングをしながらステアリングを切ってみたところ、ABS等の働きは緻密で、安定した挙動を示してくれた。タイヤは17インチを履くが、グリップ力は大したことがなく、見た目を優先した選択であることが分かった。ステアリング特性は、初期は穏やかで、切り込んでいけばシャープに反応するというタイプで、緊張感を持たなくてもよい設定がなされていた。

リアシートの居住性は停車中にしか確認していないが、V50はとてもうまく空間づくりができており、足元、頭上ともに充分なスペースが確保されていた。また、背もたれの形状も良くできていた。

V50の荷室はなかなか広くて質感が良く、使い勝手の良さそうな形状であった。

V50 T-5 の価格は445万円で、アクセラ23Sの実に2倍以上である。それだけの価値があるだろうか。まあ、このクルマの価値は内外装のデザインにあると思われるので、それがどれだけ心に響くかという価値観に左右されるということになろう。

 

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