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プジョー1日試乗モニター

プジョーの人気は206の発売に伴って高まり、2003年度は外国籍メーカーの中で第5位の登録台数を誇っている。輸入車の中でのシェアは5%強で、ボルボ、アウディと4位の座を競い合い、各社次々と日本に新製品を導入し、魅力的な商品構成で頑張っている。

プジョーは307シリーズに「CC」を追加し、また新たな顧客を呼び込もうと考えているようである。今回、307の販売促進のために1日オーナーキャンペーンが実施されたので、ちょっと話に乗ってみることにした。

また、山道ではプジョー406とアルファ147を交えて、乗り比べも実施した。

 

PEUGEOT 307

XS 2.0

5ドアハッチバック

4AT

正規販売店試乗車

307 XSはハッチバックタイプのボディをもつ最も一般的なグレードである。日本導入初期にすでに簡単な試乗は済ませているが、朝から晩まで乗り回すことで新たな発見があることを期待して販売店を訪問し、新車(累計走行距離70km)を借り出した。

まずはインプレッサのトランクからピクニック用の荷物を307のラゲッジルームに積み替えた。RV-BOX 800クーラーボックス(18L)、その他弁当や雑多な遊具など多くの積荷があったが、それらはまったく問題なく収めることができた。307のラゲッジルームは横幅が広くて奥行は80cm強あり、四角い形状のため、セダンタイプの車両に対してさほど遜色のない収納力を備えていた。307はCセグメントのハッチバック車の中で最も大きい荷室を持っているだろう。

室内も広々としており、ガラス面積が広いことで開放感が高いのが良い。

走り出すと、いつもの如くプジョーのATには違和感を覚えたが、今回はこの4段ATの変速特性(自動変速)についてよく理解することができた。各ギアの動きを観察すると、1速はロックアップクラッチが作動せず、2速は加速の途中で3000rpmぐらいに達するとロックアップが入る。その際のクラッチ締結のショックはわりと大きい。3速は常にロックアップし、トルコンのトルク増幅効果を得る機会がない。4速も同様である。

Tipシフトを使った手動変速においても各ギアの振舞はまったく同じであった。Dレンジの自動変速ではエンジン回転を比較的高めにしてからシフトアップする性質を有するが、Tipシフトを使えば2000rpmを少し越えたあたりで命令を受け付けてくれる。ただし、3速と4速で1500rpm以下の回転を使うと、トルクが出ないためかエンジンがブルブルと震えるのが気になった(フレックスロックアップの機能は付いていないのだろう)。燃費を考えると、エンジンを回したがるDレンジよりも、面倒だがTipシフトで低回転シフトをするほうが好ましいだろう。

乗り心地は巷で言われている猫脚という感じではなく、意外にも硬くて突き上げがあった。これは新車で馴染みが進んでいなかったからだろう。100kmの道のりを経た後の帰り道では、体が慣れたためか突き上げが気になることはなかった。ただ、猫脚とは呼ぶほどしなやかなものでもなかった。

山道での感想を述べる。軽く流してみたところ、ステアリングの重さがちょうど良く、なかなか運転はしやすかった。ただ、ATの設定には問題があり、2速と3速のギア比の差が大きすぎるのでギア選択に困った。また、カーブの途中で段差を乗り越えるときに、リアサスがグニョっと歪む感触は気持ちが悪かった。フルスロットルでちょっと頑張って走ってみたところ、3500rpmまでのエンジンのかったるさが顕著で、中速トルクの薄さ(1800rpmで最大値の90%を発揮するというのは本当か?)とギアリングの不適切さによって、楽しく走ることができなかった。そこで、ATのモードを「S」にしてみると、明らかに高回転を使うパターンへ変化し、走りやすくなった。その際のロックアップクラッチのコントロールは、残念ながら意識していなかったので覚えていない。ハンドリングはやや鈍重で、安定感はあったが、あまり面白いものではなかった。すべての動きが心を穏やかにさせるようにセッティングされているのだろう。

PEUGEOT 406

セダン 2.0

1997年式

個人所有車輌

マイナーチェンジ(M/C)によって307と同じアルミブロックのエンジンを搭載することになった406であるが、今回乗ったのは M/C前の鉄ブロックの2.0Lエンジンを搭載した車両である。

山道を軽く流してみると、ATの変速ショックはほとんどなくスムーズであった。シートはふわりと体を支え、巷で言われるフランス車らしい乗り味が感じられ、脚の動きもスムーズで、「猫脚」という表現が何を意味しているのかが感じられた。ちょっと頑張ってカーブを走ってみたところ、ハンドリングは明らかなアンダーステアの特性であったが、ステアリングホイールから伝わる路面の感触が良好なので、フロントタイヤのグリップと相談しながら速度をコントロールしておけば何ら問題はなく、運転は軽快でとても楽であった。また、エンジンのピックアップも良好で、スロットルコントロールによるフロントタイヤのグリップ変動を作りやすい特性を有していた。

この車両は195/65R15という細い、しかも溝が残り少ないピレリP6000を履いていたのでグリップ限界は低く、全開走行でも横Gがあまりかからない状態であった。そのため、ソフトな猫脚でありながらロール感の少ない乗り味がそこには存在した。タイヤのサイズや銘柄は全体的なバランスを考えて選ばれていると思われるので、ハイグリップタイヤを履くとバランスを崩しそうな気がする。

406は正統派セダンで、室内は広いしトランクもかなり大きい。フランスでタクシーに使われるというのも理解できる。外国(クルマの先進国)でタクシーに使われる車両というのは、長距離を走っても疲れない真っ当なセダンなので、そういう車種をファミリーカーに使うというのは良い考えであろう。

Alfa 147

2.0 TWIN SPARK

Selespeed

2003年式

個人所有車輌

June's 147

June's 147に乗るときはいつも大人しく丁寧な運転を心掛けていたので、147というクルマはソフトでユルい乗り味を持ち、ステアリングがクイックなだけのファミリーカーだと認識していた。

まずは肩ならしにワインディング路を軽く流してみると、最初のブレーキングで「オオッ!」とビックリ。減速力がいつもより弱く感じられたのである。それは2回目で消え去ったが、純正のブレーキパッドは意外に温度依存性を持っているようである。そしてもうひとつビックリしたのがステアリングのクイックさ。1回目の切り込みでの予想外の横Gが出て、室内の装飾品が吹っ飛んだ。

心の準備が整ったところでちょっと頑張って走ってみた。全開走行はJune's 147にとってもおそらく初めての経験だったと思う。

今回走ったのは 2速と3速をメインに使う山道で、手始めにフルスロットルでのセレスピードのマナーを確かめてみた。2速から3速へのアップシフトは7000rpmに達する前に自動的に行われるので、完全にクルマ任せにしておいた。街乗りの中途半端な負荷状態に比べてスロットル全開キープでの変速に要する時間は短く、「これはイケルじゃないか!」と感じた。ダウンシフトはカーブの手前でパドルを操作して行った。自動的に中吹かしを入れてくれるので、何もしなくても運転が上手になった気分になれる。しかし、MTでダブルクラッチと中吹かしが決まったときの嬉しさを感じることは不可能である。レースではシフトミスが命取りになるのでセレスピードのような自動制御が良いが、素人にとっては練習を重ねて上手になっていく過程もクルマの楽しみの一つである。それこそがMTに残された唯一の面白さなのかもしれない。

ハンドリングは初期の動きが敏感で、慣れるまではやや怖い。だが、その特性を覚えてしまえば、タイヤが鳴るまでの範囲内でクイックな回頭性を楽しむことができた。

スロットルの特性もすばらしく敏感で、カーブからの立ち上がりでスロットルペダルに足を乗せるだけでグイッと反応してくれた。

立ち上がりでスロットル全開にして回転が上がっていくときのエンジンとマフラーの音も運転手を熱くさせるものであった。

山道での147の動きはすべてがビンビン反応するvividなもので、クルマの限界に達していない自分なりのハイペースで走るのは非常に楽しいものであった。今回初めてアルファロメオの人気の秘密が分かった気がする。素人が公道で限界に挑戦するようなことはなく、ちょいと頑張って走っているときに一番楽しいようにセッティングされているのである。こんなに楽しい世界があるというのには素直に「参った」というしかない。

街乗りでの感触と山で頑張って走ったときの感触にこんなに大きい差異があるクルマを今回初めて知った。これを鑑みると、アルファロメオのディーラーマンは、何としてでも試乗を希望する客を山へ連れて行って、その人の感覚的限界で走らせるべきである。そうしないと良い面を見てもらうことができない。外見や名前でクルマを選ぶ人はどうでもいいけど。。

 

307はドイツ車風の乗り味になったと雑誌によく書かれているが、406と比べると確かにそう思わざるを得ない。406に備わるしなやかな優雅さは307には存在しない。プジョーはドイツ風味へと向かっているのだろうか。2005年に407がどのような味で出てくるのか楽しみである。

307のエンジンは4100rpmで最大トルクを発生するので、あまり低速トルクが強くない。それなのにトランスミッションは4段ATであるため、エンジントルクが強力な範囲をうまく使い切れていないと思われる。ロックアップクラッチの制御を見直す(低負荷では低回転からロックし、負荷によってロックポイントを高めていき、3500rpm以上で常時ロックするのが一般的な傾向である)か、5段ATを積むなどの多段化が望ましい。

今回、307を同メーカーあるいは同クラスの車両と乗り比べてみて、いまどきのクルマでも乗り味に大きい差が存在することに驚いた。そして、多彩な試乗の重要性にも気付いたのである。307の印象は街乗りでも山道でも変わることはなかったが、147は違った。147はデビュー時に甲州街道(調布〜世田谷)で試乗(運転)し、さらにJuneが購入を決める前に山道試乗に同行(後席)したが、特別な印象は持ち得なかったのである。

クルマを買う前には営業マンに無理を言ってでも1日かけて色々なコースを走ることをお勧めする。

 

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