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V70 2.4

FWD

(140馬力仕様デビュー時)

460万円

S60のNAエンジン車に乗ってみようと思ってディーラーを訪問したが、試乗車がなかったため、S60と同じ2.4Lエンジン(170PS仕様)を積むV70に乗った。140PSの2.4Lを積んだV70新モデル(400万円)の試乗車もあったが、まずは従来からあるエンジンを試した。

V70もS60も革シートやオーディオ等のパッケージオプションが比較的安価で装着できるので、注文する客が多く、輸入されるクルマはそういうオプションがついたものが大半を占めるという。試乗車も電動の革シート、サンルーフ等がついていた。

日本向け車両は全車5段ATを備える。通常の発進ギアは2ndなので動き出しは鈍い。スロットルペダルを深く踏み込めば1stに落ちて強い加速をするが、同乗者を驚かせるぐらいのショックを伴うので、あまり好ましい設定とは思えない。1stでスタートして、スロットル開度が小さいときにはすぐにシフトアップするようなプログラムで良いと思う。ただ、そのためには離れすぎている1stと2ndのステップ比を見直す必要がある。推測ではあるが、欧州ではトレーラーを引っ張ることが多いので、わざわざ1stギアは低く設定されているのかもしれない。この日本製ATには、Dレンジでブレーキランプを点灯させながら停止しているとニュートラルになる仕掛けがついているが、これは使いにくい。再発進のときにブレーキをリリースしてしばらく待つと良いのであるが、すぐにアクセルに踏みかえたときにはギアがまだ入っていないことがある。そのときは無用なショック(アクセルを踏みながらN→Dの操作をしたのと同じ)を発生することになる。どうしても東京の交通事情ではせかせかした操作をしてしまうのだが、ATの作動を考慮した走り方をすれば問題はない。全開加速では、「遅くて話にならない」というほどではないが、2.4Tを知っている身には余裕のなさを感じてしまう。また、あまり意味はないことではあるが、空ぶかしでスロットルバルブ(Fly by wireである)の反応を確認したところ、T-5よりはマシであるが、一般的な電子制御スロットルバルブの特性よりは鈍いと感じられるものであった。

ステアリングの反応は鈍く、タイヤ(195/65R15)の影響も受けてゆったりとした動きをする。ステアリングホイールに伝わるインフォメーションも少ない。試しに速めのスピードでカーブを曲がりながらスロットルを大きく開けてみると、IN側のタイヤがホイールスピンするのが感じられた。フロントが重いFWD車なので、前輪のグリップ限界は低い。速い運転はどうも苦手なようである。

VOLVO車に乗ると、いつも気になるのがフロントガラスにダッシュボードが映りこむこと。反射しやすい素材を使っているのだろうか。また、革シートはツルツルと滑って姿勢が崩れるのが気になった。革のほうが耐久性はあるのかもしれないが、布張りのほうが運転には好ましい。ふつうシートの革の表面はパラフィン加工されているので、新品のときには滑りやすいが、使い込むと良くなるのかもしれない。そのへんは古いVOLVOを見てみると良いだろう。

2.4LのNA車両は、ゆったりと大人しく走る人に向いている。2.4L 140PS仕様のほうはまだ乗っていないので明言はできないが、まったく同じエンジンを低回転向けにセットアップし、4000rpm以下の性能は170PS仕様とほとんど差が無いので、4000rpm以上回す機会が少ない人(大多数がそうだと思う)には良いかもしれない。さりげなく飛ばしたい人は低圧ターボの2.4Tがいい(以前乗った低圧ターボは良かった)。

V70 R

AWD

5AT

2521cc

2003年

645万円

2003年5月に導入された(日本では)限定モデルである。VOLVOオーナーの乗り換えが多いそうで、9月6日時点で在庫はわずかだという。

VOLVOは時々ハイパワー仕様を出してくるので興味深い。これは300馬力を誇るが、日本に入るAT仕様のトルクは350Nmでしかない(6段MT仕様は400Nm)。トランスミッションが耐えられないので過給圧を落としているのだろう。0→100km/h加速タイムは、ATの7.7秒に対し、MTは5.9秒という。

試乗車にはオプション装備の18インチホイール、オレンジ色の革シートが備わっていた。おそらく日本に輸入されているほとんどの「R」は試乗車と同仕様ではないかと想像する。VOLVOは他の車種でも「オプション」とカタログで謳いながら、輸入時にほぼ標準的に装備されているものが多いのには困ってしまう。Rのカタログ上の標準装備である17インチホイールが欲しいと言っても、残念ながら受け付けられないだろう。

外観はRのバッジ以外に特に目立つものはない。しかしよく見ると18インチホイールの中にはbremboの対向4ピストンキャリパが前後ともについているではないか! さらにローター径も330mmと17インチホイールを装着できる限界の大きさである。PORSCHEでもないのに、リアにも4PODというのには驚いた。前後重量配分が55:45ということなので、リアブレーキも有効に使えるのかもしれない(ふつうのFF/AWDは60:40ぐらいでリア荷重が少ない)。

運転席に座ってみると、青いメタリック調のメーターが新しい。目盛の刻まれた枠はアルミ製のようで美しく光る。これまで、他社のスポーティモデルのメーターにつくアルミ枠に何の意味があるのか分からなかったが、これならデザインとして意味があると思った。そしてスポーティモデルの流行にならって、室内にはアルミ色のパーツがアクセントとしてついている。また、シートのオレンジ色に合わせてドア内張り、カーペット、フロアマットが同色でコーディネートされているのは洒落ていると感じた。

さて試乗開始。店を出てハンドルを切ると、曲がらない! 太いタイヤ(235/40R18)のせいで切れ角が制限されているのだろう。縁石に当たらないよう注意して路上に出た。脚の設定は3段階に変えられるので、まずは柔らかいCOMFORTからスタート。脚は良く動いて18インチを履いているとは思えないぐらい快適である。SPORTにするとちょっと硬くなるが、同乗者に何ら文句を言われない程度の快適性がある。

シートは電動調整機能(前の高さ、後ろの高さ、スライド、リクライン)がついた大ぶりで柔らかく包み込むようなもので、座り心地は従来のV70と同じフィーリング。サイドサポートが張り出しているが、細身の人にはあまり役に立たない。クルマにかかるGを大きくすると表皮が滑りやすいので体が落ち着かないのが難点である。踏ん張ろうとフットレストに足を置くと、なぜか柔らかく沈んでしまって気持ちの悪い感触であった

ステアリングのフィーリングは、ふつうのV70とさほど変わらず滑らかな操作感がある。特に重くはない。

スロットルペダルは若干重めで、慣れるまでは発進時に踏み過ぎることがあるだろう。意識すれば微妙な操作をすることもできるので、文句を言うほどではない。

ブレーキはbremboであることを特に意識させられることはない。低速度走行では普通のフィーリングであった。強いブレーキングでは安心できるタッチである。

エンジンフィーリングは T-5 と比べて改良されているのが分かる。低回転域の反応が良く、スロットル操作にあまり遅れずについてくる。約200ccの排気量アップが効いているのだろう。タービンはスタート直後から回り始め、加速感は気持ちがいい。急加速中の過給音が小さいのは良いが、急にスロットルを閉じたときのリリーフの音がものすごく耳につく。低圧ターボ車のマナーは良いのに、高圧ターボ車はかなり荒っぽいフィーリングが残っているのが面白い。タービンの回し方はBP5レガシィターボのほうが洗練されていると思う。

ATは5段変速で他のモデルと同様に滑らかにシフトが行われる。80km/hでは4段目までしか入らない。そのとき、すでにロックアップクラッチは働いている。Topギアにはどのぐらいのスピードで変速されるのか今回は試すことができなかった。

Rは今までのVOLVOの鈍重なイメージを忘れさせてくれるなかなか良く出来たクルマで、まあまあ洗練された感じもする。だた、日本で使うことを考えると、Max250km/hの性能は必要ないので、同じ2.5LターボのAWD仕様(209PS、320Nm、Max225km/h、540万円)で十分であると思う。Rは235幅のタイヤを履いているせいで、最小回転半径が6.6mとなっているのも大きい問題である。

最後に、脚の設定をADVANCEDにしたときの感想を簡単に述べると、そんなにビックリするほど硬くなるわけではなかった。当然と言えばそのとおりである。なぜなら、バネは金属製のものでレートを変化させられるわけではないので、そのバネ定数に合った減衰力の設定範囲はおのずと決まってくるというものである。別のクルマでこの硬さを表現すると、NewレガシィGT Spec.B(BP5)よりわずかに硬いかな、というレベルである。日常的に使えなくはないが、ボディへの入力を増やす機会をわざわざ作る必要性はない。ひとりで山坂道を走るときにだけ使えばいいだろう。

S60 T-5

FWD

S60デビュー時

520万円

セダンの売れ行きが芳しくないことから、VOLVOもMercedes Cクラスと同じようにSportyという宣伝文句を打ち出してきた。850やS70の煉瓦ボディから大変身して丸くなったS60にはFWDモデルとして2.4、2.4T、T-5の3種類がある(2.4L NA 140PSも追加されて4種類になった)。2.4Tに乗ろうと思って店に行ったのだが、試乗車にはT-5しか用意されていなかった。

全長はレガシィB4よりも短いのに、車幅が広い(1815mm)せいでとても大きいクルマに見える。車内も当然横方向は広々している。乗るととてもCクラスがライバルというふうには見えない。Eクラスと広さは勝負できるだろう。

S60の中で最もパワフルでスポーティなグレードであるT-5(2318cc/184kW)だが、ちょっと動かしただけでは普通のオジサン車で、SPORTYな味は感じられなかった。例えば電子制御スロットルはレスポンスが非常に鈍く、踏んでからなかなかバタフライが動かないのが不満。また、V70 2.4T(S60 2.4Tと同じエンジン)では聞えなかったターボチャージャの音が S60 T-5ではどういうわけか低回転域から発生し、かなり耳障りだった。そのわりに過給の恩恵を感じる回転数は意外に高いところにあってターボラグも大きい。V70の2.4T(2434cc/147kW)がスムーズにフラットトルクを発生し、ターボの過給遅れをまったく感じさせないエンジンだったので、その味付けの違いに驚いた。T-5は小さい排気量で大きい出力を発生させる他のエンジンと同様に過給の有無でトルク変動が大きく感じられる。絶対的な速さはT-5が優ると思うが、日常的な使い勝手は2.4Tのほうがはるかに良い。S60を買う場合は必ず全エンジンを乗り比べて、用途と考え合わせることが大事である。

雑誌にはT-5はトルクステアが出ると書いてあったので、スロットルの踏み加減とトルクの出方を気にしながら走ったが、急に全開にしてもステアリングが取られるようなパワーはなかった。5段のギアを持つATは、停止時に自動的にニュートラルになる。その作動は明らかに感じとることができるが、ブレーキをリリースしてから1stに入るときのショックはさほど大きいものではなかった。ただ、停止頻度が高い日本ではATの耐久性に問題が出ないのか気になってしまう。。。と心配していたら、実はATは日本のメーカーが納入しているのだった。

S60 2.4

S60のデビュー時以来久しぶりに見てみると、2003年モデルは細かい部分(室内灯のスイッチ等)が変更されていた。

今回乗ったのは170PSの2.4Lモデルである。基本的には上記のV70の2.4と同じではずある。しかし、乗り味はまったく別物で、すっきりとした印象を受けた。ステアフィールは軽薄ではあるが、ワゴンよりはシャープに曲がる気がしたし、脚の動きもスムーズに感じた。V70よりも軽く、ホイールベースが短く、ボディ開口部が狭いのが効いているのかもしれない。ブレーキのタッチも硬質で、踏力でコントロール可能なところが良かった。また、Dレンジで停止時にニュートラルになる機能はS60 2.4にはついておらず、自然に運転できるようになっていた。

動力性能は、2.4L NAなので期待はしていなかったが、力いっぱいアクセルを踏むことに何ら躊躇はいらないというレベルであった。坂道を力強く駆け上がることを望まないのであれば、これでいいのかもしれない。ゆったりと走る人にとっては静かで居心地の良いクルマだと思う。

XC70

2.5T

2004年モデルからS60とV70の低圧ターボFWDモデルの排気量が2.4Lから2.5Lに変更されるという情報を得て、それを試すために販売店を訪れた。だが、新モデルはまだ出ていなかったため、代わりに2003年モデルから2.5Lターボエンジンを載せているクロスカントリーに乗ってみることにした。

クロスカントリーはSUBARU OUTBACK(レガシィ グランドワゴン)を真似てV70 AWDをベースに大きいタイヤを履いて車高を上げた(全高90mmアップ、最低地上高215mm)モデルである。外装にワイルドな装飾を施すとともに、内装にも手が入っている。V70と比べると、ステアリングホイール、ドア内張り、シートの縫い目が太い糸で目立つように仕上げられている(革シートモデル)。また、助手席の横に体を支える握り棒が備わっているのも面白い。

試乗はV70Rと同じコースで行った。店を出るとまず小回り性能が試されるが、これは難なくクリア。大径タイヤをV70より外側に取り付けてある(車幅、トレッドが広い)ため、切れ角はさほど変更する必要がなかったようである。

エンジンは、発進直後にトルクが立ち上がる(タービンが回り始める)までにやや時間を要するが、走行していれば軽くアクセルを踏み込むだけでほとんど遅れずに加速感が得られる。1500〜4500rpmで最大トルクを発生するエンジン特性は日常の運転で扱い易いものである。2.4Lターボとの差がどれぐらいあるのか、それは同日に乗り比べてみないと分からないレベルのような気がする。

乗り味はベースのV70と変わらず、重いホイール&タイヤを感じさせない仕上がりで、快適性は高い。運転中の目線が普通の乗用車より高いので、見晴らしが良く気持ちがいい。車高が上がっていることの弊害は、街乗りの速度域では何ら感じられなかった。

クロスカントリーは2.5Lエンジンを搭載すると同時に駆動システムも変更を受け、前輪が滑ってから後輪に駆動が伝わるまでのタイムラグが小さくなったと聞いた。今回の試乗は雨天の中で行ったので、発進時に強い加速を試みて駆動系の動きを確かめてみた。すると、明らかに前輪がスリップするのが感じられ、「えっ? これ4駆じゃないの?」と思って間もなくリアに駆動力が伝わってスリップが止まった。前輪の滑りを感じる瞬間の気持ち悪さを許せるかどうかが、VOLVOのAWDシステムを認めるか否かのポイントになる。フルタイムAWD(SUBARU)はこのような滑り方をしないので、私にとっては違和感が強いが、そのうちに慣れるだろうか。

ギアトロニック(Tipシフト)を操作してみると、このATは3rdギアでもロックアップクラッチを作動させることが分かった。なかなか効率よい走りができそうである。

あまり不満を述べることのない良くできたクルマであったが、ひとつだけ改善してもらいたいものはエアコンである。可変容量コンプレッサを早く導入して高級感を上げて欲しい。

V70

ベース価格

¥4,323,810(税抜)

V70のラインアップはいつのまにか整理され、2005年モデルのNAエンジン車両は「V70」というグレードのみとなった。これのエンジンは従来の「V70 2.4」と呼ばれた170馬力仕様である。同エンジンのモデルとしては価格が下げられたが、装備の変更も若干あるらしい。

試乗車はVOLVOの通例でBasic packageというオプション(\367,619)を装着したモデルであった。Basic packageにはHIDランプ、革シート、電動調整運転席、ガラスサンルーフなどが含まれる。

久しぶりにV70の運転席に乗り込むと、知らぬ間に見栄えが良くなっていた。ウッドパネルが随所に張られており、安物に見えないように頑張った形跡が見られたのである。ただし、それ以外は基本的に変わらず、滑りやすい表皮のシートもそのままであった。例の如く座面前端を持ち上げて体が前に滑っていかないようにシートを合わせてから走り始めた。

街乗りをしてみると、スッキリした乗り味になったものだと感心した。V70シリーズには2年以上(素のV70には3年以上)乗っていないので、信憑性は定かではないが、第一印象としてはエンジン音が硬質になり、脚の動きがしっかりしていながら滑らかになった(凸凹路面を上手にいなす)というのが感想である。従来型の遠い記憶と比べると、AT、ステアリングおよびスロットルの特性に嫌味なところがなく、走り味が洗練されたという感じがしたのである。モデル末期(このモデルはあと2年ぐらいか?)になると、欧州車はいろいろな面で熟成が進むのだろう。

エンジン特性をチェックするために低回転からフルスロットルにしてみると、静かに滑らかに大きな特徴もなく回転が上昇し、その穏やかな性質に安心感を抱いた。100km/hで巡航していても車内は本当に安楽で、長距離を走っても疲れることが少ないだろうなあと想像できる乗り味であった。

30歳代も後半になると、サーキットを走って楽しいクルマもいいが、こういう穏やかなクルマでもいいかなと思ってしまうようになった。

 

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