--------------------------------------
LEGACY
(BP、BL) 2003.5〜2004.5
Touring Wagon 2.0GT Spec.B (5AT) A型 |
2003年5月、レガシィがフルモデルチェンジを受けた。BF→BG→BHと続いてきた型式がどのようになるか気になっていたが、BPとなってセダンとバッティングしないように考えられた(セダンはBC→BD→BEときて、6月発売のニューモデルはBLになる)。 今度のBP5は感動を与えるというのが目標だと宣伝では言っている。数字で表す性能で勝負する時代は終わり、感性に訴えるのも性能のひとつであるという風潮をスバルも感じていたようである。GT Spec.Bの運転席に乗り込んでドアを閉めると、その音や感触はかなり実験を経て辿り着いたものであると感じられた。ドアの閉まる音は、トヨタ車のようになかなか良いものであった。インパネはちょっと緻密になった感じがしたが、アルミ風の色使いは安っぽくなるので、やめて欲しかった。 エンジンをかけると、静かさはBH5と変わりないものであった。オートエアコンをつけてみると、 ファンの強さは13段階ぐらいにきめ細かく調整され、設定温度に達した後の風の音は、停車中であっても気づかないぐらい静かであり、高級感が増した。ギアを入れて動き始めると、かなり重くなったステアリングがその先の走りを期待させる。このステアリングは低速度域で舵角を大きくしていくと、中立に戻りにくくなる。これはキャスター角を大きくしたことによって、舵角を増すとタイヤが倒れこむ形になるからだろうか。コーナーリング限界を上げるため、対地キャンバを稼ぐ設定になっているのは良いのだが、低速度域のフィーリングはMercedesと同様に気持ちの良いものではなかった。 アイドリング状態でクリープさせた後、軽くスロットルを開けると、ポンッと飛び出してちょっとビックリ。フォレスターターボ(SG5)に続いて採用した フライバイワイヤ(電子制御スロットルバルブ)は、まだセットアップが上手にできないようで、未熟さが露呈している。もしかすると、スロットルレスポンスが良いことを意図的に表現しようとしているのかもしれないが、子供ダマシならやめてもらいたい。「すべてが運転手の操作にリニアに反応する」というこれまでのスバルの考えはどこに行ってしまったのだろう。試乗コースは私の家の周りの住宅街である。ここは路面の状態が悪く、マンホールの蓋の凹部や凸部が激しくクルマを揺らしにかかる場所が点在する。そこでは、これまでのレガシィでは経験したことのない予想外の硬い乗り味を感じた。ボディはしっかりした感じがするものの、 脚がきれいに動かず、体には路面の凸凹が正確に伝わってきた。発売日に乗ったため、まだBILSTEINダンパーの渋さが取れていなかったのか、それとも高速向けセットアップのせいなのかもしれない。18インチホイールを履くGT Spec.Bは、17インチホイールを履くGTとは脚の設定が若干違うと聞いていたが、この硬さはかなりのものである。雑誌では「Spec.Bは乗り心地が硬いので、18インチがどうしても欲しい人以外はGTを選ぶほうがいい」という記事がみられることになろう。GTの乗り心地は別の機会に述べようと思う。余談であるが、TEINのhomepageにノーマルスプリングのバネ定数等の情報があった。F:4.2キロ、R:5.9キロ(→レバー比1.5なので、実際は約4キロ相当)というものである。これはノーマル車にしてはハードすぎる! 5段変速になったATは、スムーズな変速をこなすのは分かったが、住宅街での試乗では詳しいことは分からない。ステアリングホイールに付けられた+と−のスイッチによって、Dレンジのままで一時的に任意シフトができるのが面白い試みであると思った。これまでは、シフトレバーを右か左に倒すことでステアリングのシフトスイッチが作動するクルマが多かったが、BP5ではそのワンステップを踏むことなく任意シフトができるのが良い。しばらく放っておくと自動変速に復帰するのも良い。シフトレバーを右に倒せば、任意シフトを維持するが、エンジン回転がMAXになったときのシフトスケジュールを確認することはできなかった (BH5では自動シフトアップしなかったので、おそらくBP5も運転手の意思を尊重するのだろう)。加速感は BHと大いに異なるフィーリングで、シングルタービンへの変更によりインプレッサとよく似た感触になった。そして、低回転でのスロットルレスポンスはインプレッサより断然良かった。 軽量タービンブレードや吸排気の両方に採用された可変バルタイ(DUAL VVTi)が効果を現しているのだろう。排気音はツインサイレンサーのおかげで静かであるが、重量を増してまで流行の左右出しにこだわる必要があったのだろうか。シングルサイレンサーに変更すると5kg以上軽くするのは容易なことなので、バンパーをSOHC用のものに変更して、1本出しの社外マフラーに交換したくなる。ちょっと広いところでフルブレーキングを試してみると、 ペダルタッチはBH5に比べてかなり改善されているのが分かった。ABSの効き方も直進時はまあまあ良くできていた。ただし、全体のフィーリングは「世界のトップレベルを目指した」と謳うほどのものではなかった。浮動式キャリパでありながら素晴らしいフィーリングを持つBMW3erにはまだ届いていない。BP/BLターボのブレーキは17インチ用ローターといいながら、315mmφと中途半端に小さいのはなぜだろう。 |
2.0GT (5AT) A型 |
【1回目】 BP5デビューから2ヶ月経って、ようやく普通のGTに乗る機会を持つことができた。5月に乗ったSpec.Bの記憶は曖昧になってしまっているが、いちおう比べてみようと思う。 走り始めの印象は、ハンドルの手応え、アクセルの感触はSpec.Bと同じようなものであった。しかし、ギャップを踏んで初めてこれはぜんぜん別物だと感じた。Spec.Bより脚が断然良く動くのである(2ヶ月の間にダンパーにアタリがついたか…)。不快な揺すられ感がなく、従来のBH5に似たソフトな乗り味を示し、これならファミリーが普通に使うことが可能だろうと思った。或る雑誌を読んでみると「GTとGT Spec.Bを比べて乗り心地には大差ない」と書いてあったが、そんなことを平気で書く評論家は信じることができない。 今回は山坂道での試乗になったので、感想を前回より少し詳細に書けるかと思っていたが、残念ながらあまり追記できることはない。ステアリングとスロットルのフィーリングは上記(Spec.B)と同様あまり思わしくない。ステアリングは、外からの力を途中で抑制する作用が強すぎるようで、路面の状態が手にうまく伝わってこない。また、反力が小さく、戻りが悪いのも気になった。エンジンは、タービン回転の立ち上がりが早いのか電子制御スロットルの特性によるものなのか分からないが、慣れるまでは踏み始めの唐突なレスポンスに戸惑ってしまう。踏み始めの部分だけでも、もう少し穏やかな設定にしてもらいたい。このエンジンの面白いところは、小さいタービンを採用するフォレスターよりも中間からのレスポンスが良いことである。 ブレーキはスバルのノーマル車にしては良いフィーリングを提供してくれるので、通常の走行ではパッド交換の必要はないと思う。技術的に目新しいところでは、キャリパーの中心がパッドに対してオフセットして装着されていることが挙げられる。ディスクブレーキは自己サーボがない(弱い)と考えられているが、強い力で締めつけるとリーディング側がどうしても早く減ってしまう。街乗りでは分からないが、サーキット走行をすると、パッドが斜めに減るのである。これの対策のためにパッドのトレーリング側をより強く挟むような設計になっているのだろう。なかなか感心させられる。 期待していたGTであるが、なんとなく全体にシャキッとしたところのないクルマで、残念である。BP5の良さを見つけるにはじっくり付き合う必要があるのかもしれない。 |
【2回目】 今回は2004年5月に行われた年改を受けたB型を試してみようと思って店を訪問したが、A型からB型への変更点は些細なものであるため、試乗車の入れ替えはなかった。 「1年を経過してある程度こなれたクルマに乗るというのも良かろう」という考えのもと、A型で短時間の街乗りに出かけた。 感想は上記と基本的に変わりなく、低回転からレスポンスよく回るタービンがやはり最も印象的であった。 試乗後、平均燃費を見てみると、7.5km/Lを示していた。計測開始時点がいつなのか分からないが、手荒く扱われる試乗車の燃費としては非常に良い数値である。マフラー出口にもススが付いていなかったので、燃料コントロールが上手にできているのだろう。 BPレガシィに様々な技術がコストを度外視して新たに注入されていることは、富士重工業の発行しているレポート集やパンフレットを見れば分かるが、今後は見えるところにもコストを回してもらいたい。まずはステアリングホイールにテレスコピック機構をつけること、そしてフロントガラス上部に緑(もしくは青)の日よけ帯を入れること(従来型にはあった)を望む。 |
|
2.0R (5MT) A型 |
2.0RのEJ20(NA)はスバルでは今までにない190馬力(MT車)というハイパワーを示している。毎日乗っているWRX(EJ20ターボ)ではタービンを回したときのトルクに魅力はあるが、日常走行では面白みがなく、出来の良いNAエンジンの自然なフィーリングも味わいたいと常に思っていた。雑誌等で「新レガシィの一押しは2.0RのMTである」という記事を見たので、試してみることにした。 まずはゆっくりと走ってみると、ブレーキの印象があまり良くないことに気付いた。踏んだ感じが従来型レガシィと似てスポンジーなものであったのが惜しい。今回のモデルチェンジではブレーキフィーリングの改善に力を入れたという記事をよく見たし、同日に乗ったワゴンGTは良くできた硬めのタッチであったので、ちょっと複雑な気持ちが残る。キャリパは同じようなもので、ローターが少し小さいだけなのに、どうしてこんなにもタッチが異なるのだろう。2.0Rオーナーはスポーティに走ることが少ないと思ってパッドの設定を変えているのだろうか。 ワゴンGTの試乗コースと同じ山道へ向かい、上り坂で負荷をかけてエンジン特性をみてみると、きれいなフラットトルクで7500rpmまで回ってくれた。盛り上がるポイントはないが、そのぶん扱い易いことだろう。そしてこのクルマは排気音を聞かせるような音作りがなされているようで、今までのスバルNAエンジンにはないやり方が面白い。ただし、それはちょっと割れるような音で、心に響くような類のものではなかった。また、190馬力というとかなりのハイスペックなので刺激的な走りを期待をしていたが、普通の特性のエンジンであった。NAを楽しもうと思うと、2.0Lではやはり絶対的なトルクが乏しいので、トルク感の豊かな2.5LのNAエンジン(EJ25)搭載車を日本のBP/BLモデルにも設定してもらいたい(ヨーロッパには2.0 Turboはないが、2.5 NAはある)。 乗り心地はワゴンGTより明らかに柔らかく、ファミリー向きの設定である。それでも、山坂道を普通に走るぶんにはロールは大きくなく、安心して走ることができた。ただ、路面の感触がステアリングにあまり伝わってこないのはGTと同様に難点である。ステアリングを切ってサスペンションが動いていく様子に、運転手との一体感が欠けていると私は感じてしまった。 MTのフィーリングは、最初に1stギアに入れた瞬間はショートストロークで剛性感のある気がしたが、試乗後に自分のインプレッサに乗り換えると、BL5のシフトはストロークが短いもののゲートの感触(ダイレクト感)が薄いものであったことに気づいた。エンジン振動が手に伝わるのを遮断しようと頑張ったのかもしれないが、それが曖昧なフィーリングだと感じさせてしまうようである。 ワゴンGTと同様、軽快さがなく、ステアリングとサスペンションの曖昧さが強く印象に残る試乗であった。これまで(BG5、BH5)のレガシィが持っていたステアリングに路面状況を感じながら軽快にカーブを回っていくフィーリングが薄れたのは残念で仕方がない。 |
2.0@ (4AT) A型 |
あまり興味を抱いていなかった2.0iであるが、雑誌を見るとこれを薦める評論家も多い。なぜなのか、乗って確認することにした。 運転席に乗り込んでみると、内装の感じはGTや2.0Rとほとんど同じ意匠であり、電動シートがつかない程度である (ステアリングやステレオもちょっと違うが、見た目はそう変わらない)。シートスライドは両側ロックになっているようで、見えないところで改良されている。これまでの国産車では、最下位グレードは明らかに安っぽい作りがなされており、選ぶ気を失わせるものであったが、BP5では2.0iでも安物感がなく、エンジンが好みに合えば積極的に選ぶこともできる。走り出すと、静かで滑らかなエンジン音がとても快適であった。4段ATもまあまあスムーズに変速をこなしてくれた。4段めの(トップ)ギアでのみロックアップクラッチが働くが、60km/hぐらいにならないと作動しないのはちょっと不満が残る (フレックスロックアップは働いているらしいが、作動は判別できない)。直結になった際のショックやノイズはまったく気にならないが、やや時代遅れかも。Tipシフトによる手動変速も試してみたが、先代に比べてとても素早く反応し、ATの制御の進歩を感じさせてくれた。今回の試乗コースではフルスロットルにする場所はなかったので、絶対的な動力性能は不明であるが、日常走行においては不満を述べることはないだろう。乗り心地はフワフワではない柔らかさのあるものであった。ブレーキは2.0Rで不満があったが、2.0iでは何の問題も感じなかった。2.0Rで感じたのは40〜50km/hの街乗りでのフィーリングの甘さで、今回も同じような状況(最高速度60km/h)の試乗であったので、なんとも不思議な気持ちが残る。2.0iのブレーキペダルのタッチは硬質なフィーリングで、気に入った。 ステアリングはこれまで乗った新型レガシィと同じくダルなフィーリングであった。これの理由のひとつが今回分かった。ステアリングホイール自体にかなりの質量がある感触なのである。左右に素早く切り返すような場面で、いつも使っているNARDIのシンプルなステアリングと比べて慣性が大きいことを強く感じた。エアバッグを内蔵しているので軽くするのは難しいのかもしれないが、技術でなんとかしてほしいものである。 ターボ、DOHC、そしてSOHCに乗ってみて、レガシィの一押しはこの2.0iであると私も感じた。尖ったところがなく、まろやかな乗り味は、毎日の足として使うのに良いのではないだろうか。サーキットを走らない普通の人なら、パワー不足は感じないと思う。ただし、私はまだ「Extra power」を欲しいと思ってしまうので、買うならターボ付きか3.0Lになるだろう。 |
Touring Wagon 3.0R (5AT) A型 |
3.0Lエンジン搭載車がBP/BLシリーズに追加された。個人的に「新しいEZ30エンジンにはVVT-iが組み込まれると良いのになぁ」と期待をしていたら、なんと新型にはバルブリフト可変機構まで備えているではないか!! スバルにしては珍しい大進歩を披露してくれた。BP/BLレガシィに対する会社の思い入れはさらに強くなっているようである。 試乗車の内装はアイボリーレザーセレクションであった。レザーシートは一般的に滑りやすいので嫌いなのであるが、3.0Rのシート表皮は滑りにくい加工がなされており、なかなか気に入った。シート内部は布シート仕様と同じであると聞いていたのに、表皮が強めに張ってあるせいでクッション性は意外にも硬く感じた。私は硬いクッションが好きなのでよいのだが、レザーシートを選ぼうとする人は、事前に一度は座って比べてみるとよい。この内装の色も気に入った。黒一色の内装は気分が重々しくなるので、明るい色の内装が選択できるのは嬉しいものである。 エンジンを始動すると、従来型と同様に静かに回る。シフトレバーをDに入れてクリープで動き出すと、まず気づいたのはGTよりステアリングが軽くなっていること (先代の3.0よりは重い)である。2.0iのような軽さの中にちょっと太いタイヤを転がしているという感触が出ていた。ステアリングホイール自体はGTと同じなので、手に感じられる慣性は相変わらず大きい。5段ATは、ノーマルモードでは低回転でシフトアップが繰り返され、ゆったり流れる交通の中では60km/hですでに5thギアに入っていた。経済性を重視した設定のようである。 山坂道にクルマを進め、ATをスポーツモード(右にレバーを倒す)にして上ってみた。すると、シフトアップのタイミングが遅くなり、カーブの手前でスロットルOFFにしても変速しないという制御をしてくれた。ノーマルモードとは明らかにシフトパターンが変わる。 ステアリングはスムーズで軽く、ペースを上げなければBHのようにスイスイ走ることができた。ただし、ステアリングに伝わってくる情報は他のBP/BLモデルと同様に少ないのが残念である。 少し速度を上げると、ローリング、ピッチングの動きは比較的大きく出た。スプリングが柔らかく、ダンピングレートも低いようである。それによって乗り味はソフトで快適であった。スプリングとダンパーが柔らかいだけなら良いのであるが、路面の凸凹を踏んだ際にブヨブヨした何とも嫌なゴムの感触が伝わってくるのは気になった。悪いのはリアサスペンションのアームにあるブッシュなのか、サブフレームブッシュなのか??? BP/BLが持つ曖昧なフィーリングは3.0Rでも同じであった。 エンジンのトルク感は、ようやく3.0Lらしくなった。今回、ギア比が高くなっているにもかかわらず、力強い走りが実現している。スロットル特性は「踏み込み量が少ないときには開度を小さくする設定にした」という宣伝のとおり、このクルマでは上手くセッティングされているのが感じられた。0→100km/hの加速タイムは330xiと同等(7.9秒)になったというが、BMWのような過剰な演出がなくて好ましい。ある程度回転数を高めたときに排気音を聞かせるチューニングもなかなか良い。 ブレーキは基本構成がGTと同じ(17インチ用ローター)であるため、ペダルフィーリングはやや硬めのタッチで気持ちがいい。 今回の改良型EZ30エンジンと5段ATは期待を裏切らない出来栄えであり、BHE(先代)で不満だった部分はほぼ解決されている。大排気量NAは、ターボ付きエンジンとちがってレスポンスが自然なのが何より良い。ゆったりと余裕のあるクルマを求める向きにはおすすめできる。ただし、BP/BLを買うタイミングは、ブヨブヨした脚の感触と情報伝達量の少ないステアリングが改良されてからである。トヨタ、日産なら大改良は期待できないが、スバルならそのうちにきっと手を入れてくるだろう。 言い換えると、スバルの初期モデルは熟成が足りないので、A〜B型は買わないほうがいいということである。あと、レガシィを上質なクルマとして育てていこうと思うのなら、エアコンは可変容量コンプレッサのものを採用してもらいたい。コンプレッサがON-OFFを繰り返し、そのたびにショックを感じるようでは、時代遅れと言われても仕方がない。もはやist(トヨタ)にも可変容量コンプレッサを採用している時代である。 |
OUTBACK 3.0R (5AT) A型 |
1995年、スバルはレガシィワゴンに大きいタイヤを履いて車高を上げたグランドワゴン(BG型)を世に出し、AudiやVOLVOに影響を与えた。主な市場はアメリカだと思われるが、欧州や日本でも販売されている。この派生車種はランカスター(BG、BH型)を経て、世界共通のアウトバック(BP型)という名になった。 外観はワゴンに対してオーバーフェンダー等のプラスチックの部品が付加され、40mm車幅が広がっている。トレッドは VOLVO XC70のように広げられているわけではなく、ワゴン3.0Rと同じである。最低地上高はワゴンから50mm増やされている。全高は、ルーフレール形状の違いにより75mm増となっている。運転席に座ろうとすると、50mmの差が意外に大きいことを感じたが、乗り込んでみると、普通のレガシィワゴンと何ら変わりのない空間が広がる。ボディに対するシート位置やペダル配置などに変更はなく、単に車体がリフトアップされているだけである。メーターパネルは2.0R、2.0iと同じ普通のもの(蛍光管ではない)が採用されている。 走り出しても違和感はなく、大きく重いタイヤを履いていることも気にならなかった。サスペンションアームはワゴン3.0Rと異なって鉄製になるが、バネ下重量を軽減するため、ブレーキローターは小さいサイズ(フロント16インチ用)に変更してバランスを取っている。脚は17インチタイヤに合わせて硬めの設定になり、従来のランカスターにあった不安定感は払拭されていた。ブレーキローター径が小さいのは、オフロード愛好者のために16インチホイール(215/60R16)を履けるようにという配慮もあるのかもしれない。 シートはレガシィ(BP/BL)の全車が同じ仕様であると思っていたのであるが、お尻の下のあたりに膨らみが感じられるし、なんだか妙にポヨンポヨンと体が跳ねる。設計がちがうのかとセールス氏に聞いてみても「差別化はないと思う」という。そこでカタログをよく見てみると、なんとなく違っている。アウトバックのシートは2.0iカジュアルエディション(受注生産)と同じ形状なのである。座面のクッションも「スポーツ」と「ハイサポート」では異なるようである。使い分ける理由は何だろう。 ステアリングは新レガシィに共通する感触であり、ワゴン3.0Rよりは重めのフィーリングで、ギア比はスローであった。クイックではないステアリングは好感がもてる。 加速性能は、ワゴン3.0Rより30kg増の重量のせいか定かではないが、やや大人しく感じられた。オーバーオールのギア比はほとんど同じ(0.5%程度の差)なので、もしかするとオフロードや雪道でのコントロール性を考えてスロットルバルブの設定(電子制御なのでいかようにもできる)を変更しているのかもしれない。 日本国内で乗るには最低地上高200mmの必要性は感じられないが、ファッションとして乗るならOFF ROAD四駆よりもスマートだと思う。日常走行では普通のワゴン3.0Rに対してネガティブだと思われるところはあまりないので、街乗り専用で使うのも良いかもしれない。ちょっと欲を言えば、 VOLVO XC70のような限られたワイルド感の演出があればさらに良いだろう。しかし現状のアウトバックはレガシィワゴンの種々のグレードの部品を寄せ集めたことによって安く仕上がっているのだから、贅沢は言わないでおこう。 |
OUTBACK 2.5i (4AT) A型 |
従来型(BH、BE)には2.5LのDOHCエンジンが搭載されるモデルが存在し、ランカスターを街乗りで試した際、EJ25のトルク感豊かな走りがとても良い印象として残っている。今回のモデルチェンジに合わせてDOHCからOHCにヘッド回りが変更されたが、BP型で唯一のアウトバック用の2.5Lはどのようなものになったのか、ちょっと乗って確かめてみた。 まずはゆっくりとした交通の流れに乗って走ってみた。50km/hぐらいまでの走行では、エンジンの力強さはまったく判らず、ATがスムーズに変速してくれることが判っただけであった。途中、信号で先頭に立ったのを機に、ゆっくりとフルスルットルまで踏み込んでみた。スロットル全開を維持して2速に自動変速した直後までの加速感はかなり大人しく、パンチは感じられなかった。これは、電子制御スロットルの設定による影響かと思われる。 ATは普通に街乗りで使っている限り何ら変なところを感じさせることがなく、空気のような存在であった。フレックスロックアップはまったく判らず、確実なロックアップクラッチの締結ショックも感じなかった。 脚の感触はやや突っ張り気味で、アウトバックというクルマにしては硬いと感じられた。タイヤのエアを高めたような乗り味であったが、ダンパーの動きが渋いのだろうか。とにかくもう少し良く動く脚にしてもらいたい。 ステアリングの操作感は滑らかで、やや重めの感触はなかなか絶妙な設定かと思われた。切り込んでも戻しても変な抵抗感が感じられず、気に入った。 ブレーキペダルは左足で踏めるレイアウトであったため、試乗の間ずっと左足ブレーキングを行った。ペダルタッチはやや甘く感じられたが、これはツーリングワゴンより小さめのブレーキローターに起因するのかもしれない。アウトバックは大きいタイヤを採用するため、ローターを小さくしてバネ下重量を軽くしたかったのだろう。できることなら、バネ下重量の影響が少ないリアに16インチホイール用ローターを装着して気持ちよく止まれるようにしてもらいたい。 今回は燃費計を見ながら走ってみた。ゼロ発進で低速ギアを使った加速中は5km/Lぐらいになるが、3速や4速では加速中にもかかわらず10km/L以上を示していた。このクルマは意外に燃費が良いのかもしれない。なお、トータル燃費は 8.6km/Lを示していた。短時間の走行が主で、しかも手荒く扱われることが多い試乗車でその燃費をマークするというのは驚異的である。自分のクルマにした場合は、街乗りで10km/Lに達することも不可能ではないと思う。最後にシフトレバー脇にある「ECO」スイッチを押して運転してみた。普通に運転する分において違和感は特になく、シフトポイントがやや低い回転数に移行したような気がするだけであった。また、TOPギアでのロックアップ領域も広くなっているようで、50km/hまで速度が落ちてもクラッチが締結し続けていた。スロットルを大きく開けばECOモードは解除されるはずなので、常時「ECO」マークをメーターパネル内に光らせておいても何ら支障はない。言い換えるなら、「ECO」を解除する必要性がどこにあるのか理解できない。 BPレガシィの2.5Lエンジンは「力強さ」という分かりやすいインパクトを失った代わりに経済性や洗練度合いが高まったという感じがする。3.0Lエンジンが従来型(BH)のものより力強くなったので、それらの差は明確になった。これにより、好みのエンジンを選択しやすくなったのではないだろうか。 |
戻る