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FUGA

250GT

5AT

350万円(税別)

 

 

 

試乗車には23万円分のオプションカタログ上の◆1と◆2)が装着され、350GTとほぼ同じ装備となっていた。

ここのところ、日産自動車は業績が好調なことに加えて次々と魅力的なクルマを発表してきている。TIIDAに始まった新しい動きに目が離せない。

新生NISSANの第2弾はFUGAである。セドリック/グロリアが年寄りのクルマになり、販売も芳しくないことから、若いユーザーをひきつけるために名前まで変えてしまった。クラウンは名前を残しながらイメージを一新する広告をうつことによって老人と中年の両方が購入するようになったが、セド/グロに乗る老人が果たしてFUGAに乗り換えてくれるだろうか。

FUGAには、これといった目新しい技術が取り入れられている訳ではなく、従来からある技術の中で作られたクルマであるが、「見てくれ」の良さが従来の日産車と大きく異なるのが特徴である(アルミのドアやマグネシウム合金のステアリングビームは目立たないが新しい試みである)。エンジンはVQの3.5Lと2.5Lの2本立てで、VQ35DEはV35スカイラインやZ33と同じもの、VQ25DEはV35スカイラインの直噴から燃料供給方法を旧来の方式に戻したものである。クラウンやAudi/VWが直噴エンジンを新しく採用する中、どうして三菱や日産は旧来の方式に戻っていくのだろう。

外観はリヤ部分にTEANA(J31)やCIMA(F50)に似た造形を残しているが、総じて垢抜けたという印象を持った。内装は過去の日産車と決別した上質なデザインになり、とっても驚いてしまった。古臭かった日産のデザイン(絶壁)からの変貌ぶりに大きなショックを受ける人も多いと思う。これでようやくクルマ好きが日産車に興味を持つことになろう。

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【運転席にて(雨天の昼)

運転席に乗り込んでSTARTボタンを押してみると、エンジンがかかった瞬間にメーターの指針がフルスケールに振れた。流行を追ったのであろうが、これはまったく無意味で品のないギミックである。始動直後のエンジン回転数をチェックしようとしても、これでは不可能である。現状では始動直後にタコメータは一旦フルに回った後で一旦0に戻り、それからしばらく経過して本当のエンジン回転数を指すのである。なんともばかばかしい装備である。

また、エンジン始動と時を同じくしてシートやステアリングホイールが自動的に動き出す(250GTにはオプション:カタログの◆2)。リモコンキーと連動してシート、ステアリングホイール、ミラーの位置を記憶しているというが、これは余計なお節介である。高級車にはついていなくてはならないのかもしれないが、1台のクルマにいろいろな人が乗る機会は多くないと思うので、メモリー機能の必要性をまったく感じない。このオプション◆2(15万円)を装着するとステアリングホイール位置を前後上下に電動で調整する機能が(助手席パワーシート、パワーオットマンなどもセットで)備わるが、装着しない場合にはステアリングホイールが手動で上下にしか動かせなくなくなるという。これはとんでもなくケチな発想である。高級車を謳うならテレスコピック式コラムぐらい標準で付けて然るべきである。250GTを選んだほとんどの人は、わずか15万円なので、目くじらを立てないで日産の策略どおりオプションを付けてしまうのだろう(1週間タダ働きと考えるか、1週間分の給料で買えるのなら安いと思うか…)

特徴的なメーターの照明の明るさは、ヘッドライトのON/OFFに関わらず、好みに合わせて明るさを5段階に調節することができる。ヘッドライトをONにすると、時計やナビ/情報などのボタンにもオレンジ色の灯がともり、なかなか雰囲気が良い。オレンジ色がFUGAのイメージのようで、ドアを開けたときにサイドシルに光るNISSAN(どうしてFUGAでなくNISSANなのだろう?)の文字もオレンジ色である。

駐車ブレーキ(足踏式)をリリースしてみると、ペダルが高い位置に移動してくれた。それによって左足がフットレストからブレーキペダルに移動するときの妨げにならずに済むのはとても助かる。V35スカイラインやM35ステージアは、リリースした駐車ブレーキペダルが中途半端な位置に留まって左足の邪魔になったが、FUGAでは改善されていた。したがって、今回は左足ブレーキで試乗をすることができた

ATのセレクタをDに入れて店の敷地内で動かしてみると、ステアリングを始めすべての動きが滑らかで自然なことに気が付いた。これは少し動かしただけで分かるもので、感激してしまった。ようやく日産がまともなクルマを作ってくれたのである(クルマの味に感じ入ったのではなく、日産が変わったことに感激したのである)

運転席の着座位置は低く設定され、ようやく日産車で満足できるポジションをとれるようになった。日産もやればできるのである。座面高さは最下位、ステアリングホイールは最も手前に引き出し、それらに合わせてステアリングホイールの高さとリクライニングを調整した。また、大腿が座面に当たるように座面前端の高さを少し上げ、尻の面圧を下げて、試乗を開始した。

店から国道へ出てスロットルを少し開けると、2.5Lエンジンで1630kgのクルマを動かしていると思えないほどグイッっと力強く加速した。1stギアで意外に引っ張るセッティングのため、勇ましい排気音が耳に届いた。この音は「GT」だけの設定であることを期待する(XVはもっと静かであってほしい)。雨天であったため、ワイパースイッチを操作してみると、レバー操作のカッチリ感がなかなか心地よかった。間歇ワイパーの作動間隔の調整幅も適当であり、スイッチ類は使いやすかった。

そのまま試乗コースによく使う田舎のワインディング路に行ってみた。雨なので外出する人が少なく、道路にはほとんど交通がなかったが、ウェット路面で速く走るわけにはいかず、ゆっくりと走りながらいろいろな操作をして味を確かめてみた。

パワーステアリングは従来どおり油圧式で、その感触はしっとりと上質なものであった。FUGAのステアリングギア比がいかほどか分からないが、V35(デビュー時のセダン)のような異常なクイックステアリングを設定する会社が作ったと思えないぐらい自然なフィーリングを提供してくれた。この動きはクラウンと比べて格段に良かった。

ATはアダプティブコントロールという機能が備わって、カーブの手前でスロットルOFFにしてもシフトアップしない制御が入るという話を聞いていたが、ワインディングではついついTipシフトを使ってギアを固定して走ってしまった。5段変速のギアは意外にワイドレシオ(各ギアの変速比が離れている)に設定され、カーブ手前でダウンシフトするとタコメータの指針がドンと急上昇することにびっくりした。そのわりに変速ショックが少ないのは、ダウンシフト時にエンジン回転数を合わせるシンクロレブコントロールが付いたおかげなのだろう。Dレンジ(TOPギア)でのロックアップクラッチが働く最低速度は60km/hぐらいであり、Tipシフトで固定したギア(今回は2ndギアで確認)でロックアップが働くのは3500rpm以上であると感じられたが、詳しくは分からない。つまらないことであるが、ATのセレクタ(シフトレバー)がショートストロークで剛性感のあるタッチを備えており、これもワイパースイッチと同様に気に入った。

FUGAのスロットルの特性は、V35(マイナーチェンジ後)のような違和感(ほとんど踏んでいないのにドカンと出る)はなく、ペダルの踏み込み量とトルクの出方が比較的リニアであると感じられた。カーブが連続する道で減速と加速を繰り返す際に微妙なコントロールができないと乗員が酔ってしまうので、スロットルのチューニングは重要なことなのである。ワインディングが終わるまでの道のり、FUGAのトルクフルでリニアな加速に気分を良くしていた。その気持ちの高まりがFUGAの性能をもっと知りたいといういう欲求になり、最後のカーブを立ち上がって長い直線路(急な上り)に入ったとき、フルスロットル加速を試してみた。するとどうだろう。ペダルストロークの半分を越えた辺りから加速力がほとんど増さないではないか。実のところ、私は騙されていたのであった。2.5Lのわりに力強いと感じたのは、ペダルを少し踏んだだけで大きくスロットルを開く日産流のセッティングのマジックだったのであった。ドカンと加速することがなかったのは、V35に比べてFUGAが160kg以上も重たかったのが原因だろう。小さいエンジンで重い車を動かすのが大変なのは分かるが、誤魔化してまで力強さを演出する必要があるのだろうか。日産の幼稚な考え方は従来と全然変わっていなかったのである。

脚まわりは、225/55R17という大きいタイヤを上手に履きこなしていると感じられた。V35(クーペ初期モデル及びトランクの取っ手が排除された初回マイナーチェンジ後の角テールランプのセダン)はサスペンションのストロークに引っかかり感があったが、FUGAにはそれが全然なく、とてもスムーズな乗り味が印象的であった。コーナーリング中にマンホールの凸凹を踏んでも姿勢が乱されず、「フラットライドとはこういうことを言うのか」と感じ入った。FUGAに対する日産の力の入れようが伝わってくる。ただ、タイヤは55%扁平のわりにたわみが大きいような気がしたので、市販品への交換によって乗り心地が変化する可能性はある。

最後に発進加速を試してみることにした。今回は路面が濡れていたため、駆動力をどのように伝える(抑制する)のかを確認したかったのである。発進直後にググッと1/3ぐらいスロットルペダルを踏みこむと、やや遅れて駆動輪がホイールスピンした。クルマが即座にそれを感知すると、スロットルを絞って駆動力を抑制するのが分かった。極端な作動はせず、推進力を残すようコントロールされるので、違和感はなかった。このときに思ったのは、やはり1stギアが低すぎるということである。日本人の好きな発進直後加速を良くすることを重視したのであろうが、幼稚な客に合わせたセッティングは是非とも改善してもらいたい。1stギアを高めることにより、TOPギアまでの各ギア間を狭く(クロースレシオ)できるので、加速感がよりスムーズになり、Tipシフト時の楽しさも増すだろう。なぜV35と同じギア比のAT(それはクロースレシオである)を載せないで、FUGA専用のギア比を作ってしまったのか、とても不思議で、残念である(ギアチェンジに段つきがあるとメリハリがあってスポーティに感じる、ということからギア比をわざと離したという話だが、そんな子供だましのクルマが高級車なのだろうか)

車室内の装備でひとつだけ面白いものを見つけた。それは空調のコントロールである。左右で風の温度を別々に調節できる機能は一般的になった(VW GOLFにまで備わる)が、FUGAには風の吹出口まで左右で別々に選べる機能(すでにMercedesのCやEに備わる)が付いた。マイルドフローシステムという流行の装備(GOLF5にも装備)も取り入れられている。そしてカーナビゲーションが標準装備されている(250XVと350XV FOURにはオプション:29万円)というのも気が利いている。

また、日常的な使い勝手の良さを感じるところとして、次のようなものが挙げられる。トランクの大きさは容量としてはクラウンに負けるが、深さが充分あるため、なんと73cmのスーツケースを3個と55cmのスーツケースを1個載せることができるという。車体の小回り性能もクラウンに負けるが、普通に「これぐらい切れればいいだろう」と感覚的に思うレベルを超えてさらにグイッと切り込むことができるので、まったく不満は感じない。

部分的に気になるところはあるが、FUGAは日産のクルマ作りに対する姿勢が変わってきていることを感じさせる魅力的なモデルである。内装のデザインや走り味を気に入ったので、ゆったりしたサイズのFR車を買いたい人には積極的に薦めることができる。乗り始めに耳についた排気音は、しばらく走って店に帰ってくるころには気にならなくなっていた。

(2004年10月30日)

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【後席にて】

ここのところ、後席に乗る年寄りのために乗り心地を確かめておかなければならないという思いが強くなった。自分も歳をとったということか。

250GTの後席に試乗した理由は、350GT Sports Packageの試乗車がある店舗への移動のため、また、それとの乗り味を比較するためである。

乗り込んで位置決めのために安全ベルトを締めると、前席よりも内寄りに座らせる設定になっていることが分かった。後席は3人掛けをあまり考慮していないのだろう。センターアームレストを引き出すと、余裕のある広い空間でゆったりと快適に過ごせるような気がした。

シート表皮は標準設定の織物/ネオソフィールで、前席の肩のあたりに見えるネオソフィールの質感がビニールレザーそのものであったのが少し残念である。もう少し見栄えを考えてもいいと思う。

しばらく乗っていると、なんとなく背中の筋肉がこわばっていることが気になり始めた。背もたれの形状が合わないため、体が無理な姿勢になっていたのだろう。どうすれば良くできるのか明らかではないが、Mercedesのシートのように肩甲骨のあたりをもっと押してくれれば良いのではないかと思った。

後席では一般的にエンジン(排気)音やロードノイズが大きく聞こえることが多いが、250GTは不快な音を意識することがなかった。これはなかなかのものである。後席に乗る人のことをかなり重視してセッティングしたのだと思う。座面はやや硬めで、前後長が十分にあるため、体が安定した状態を保ちやすい。タクシーのようにフワフワした動きはなく、しかも不整路面での突き上げ感も少なく、シート形状が体に合えば文句はない。(2005年6月19日)

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【運転席にて(晴天の夜)

250GTはウェット路面でしか運転したことがなく、一度はドライ路面でしっかりと走らせてみたいと思ったので、他店から250GTを取り寄せてもらった。今回は夜間の試乗である。

仕事帰りに店に寄る約束を取り付けたのは、日が落ちてからのほうが車内の照明による演出を見るのにも都合が良いと思ったからである。

ドアを開けるとサイドシルにNISSANの文字が光っていたが、乗り込んでドアを閉めてしまうと、光の演出はほとんどみられなかった。メーターとナビ以外にはパワーウィンドースイッチがほのかに光るだけというのはあまりにも寂しい。VW/Audiの真似をせよとは言わないが、もう少し華やかなほうがいい。

この試乗車のオプション装備はHIDランプのみ(カタログ◆1: 8万円)であった。つまり、ステアリングホイールは前後に動かない(上下には動く)仕様となり、運転席で適正ポジションを取ろうとすると、やはりシートバックを立て気味にしてやらねばならなかった。ただ、シルフィやティーダのようにとてつもなくハンドルが遠いという程ではなく、テレスコピック機能がある車両を知らなければ問題視することもないと言える。

まずは通勤路の国道を少し活発に走ってみると、排気音の演出がちょっと大げさなことが気になった。初回の試乗で感じたとおり、250GTはシリーズの中で最も活気に溢れる表情を見せてくれるモデルであることが再認識できた。

信号待ちで燃費計をリセットし、我家を横目に見ながら山道へとクルマを進めた。

ATをDレンジに入れたままで一般車両の遅い流れに従いながら走ると、上り坂でも意外に低回転で運転できることが分かった。それでも排気音は常に聞かせるよう演出がなされており、車内に安らいだ雰囲気はなかった。早くスロットルを開けて追い越せ!とFUGAは主張するのであった。

ATをマニュアルモードにして2速ギアで3500rpm近辺を維持してみると、スロットルのON-OFFでエンジン回転が変化しないことが分かった。つまり、トルコンはロックされていたのである。どれぐらいの回転数でロックアップクラッチが作動し始めるのか定かではないが、Z33と同様にマニュアルモード時にはロックされる仕掛けが付いていることは分かった。

アップダウンと左右への切り返しが絶え間なく訪れる道をDレンジで走ると、カーブの立ち上がりでスロットルを僅かに開けるたびにダウンシフトが起こり、エンジン回転がポンと上がって加速するという走り方になってしまった。まるでATがスポーツモードに入っているかのようなフィーリングであり、頻繁に変速をして即座の加速をしようとするセッティングに対して、もうちょっと落ち着きが欲しいと思った。低速ギアを維持してもいいし、もしくは高速ギアで我慢してもいい。いずれにしてもスロットルを僅かに踏んだだけで音と加速感が盛り上がるという演出は子供じみており、あまり心に響くものではなかった。頻繁な変速をしない大人の走りをできる設定を追加してもらいたいと思う。

マニュアルモードでギアを固定してやるとなかなか走りやすくなったが、速度を高めてしまうとブレーキングを挟んで左右に切り返すような場面では車体の動きがやや鈍重に感じられた。フラットライドという感触は穏やかに走った時に得られる特性のようで、17インチ仕様の脚は入力があまり大きくない場面が主たるステージと想定してセッティングされていると思われた。それでもZERO CROWNと比べると、FUGAは明らかに動きが自然で操りやすいクルマであると言える。

プロジェクタータイプのHID(ロービーム)の照射は上辺のカットが極めて明瞭で、下り坂から上り坂に移行する際にまったく前方が見えず、とても怖い思いをした。対向車への幻惑を考えると仕方ないのかもしれないが、僅かに上方に漏れる光を残して欲しいものである。

店に戻って燃費計を見ると、9.3km/Lを示していた。一般車に行く手を阻まれた走行が多く、スロットルを大きく開ける機会が少なかったといえるが、無意味な加速テストや通常なら出さない速度域も経験したのに、こんな数字が得られるとは思ってもみなかった。

250GTはクルマの運転が好きな人によって造られたことがひしひしと伝わってくるモデルであり、今、買ってもいいと思う最有力候補である。しかし、ちょっと演出が過剰で大人っぽさに欠けることが気になる。できるなら、次のようなことを改善して欲しい。

  • 現状ではATの変速スケジュールは変えられないが、あまりにも頻繁に変速(ダウンシフト)を行うのは気分が落ち着かないものである。3種類ぐらいのシフトスケジュール(Sport、Normal、Economy)を作って、ダウンシフトを我慢させるものがあってもいい。
  • 5段ATの各ギア比が離れているので、ダウンシフト時にエンジン回転数の変動が大きすぎる。6段ATにするか、ギア比を近接させるほうがいい(V35と同じギア比でいい)。
  • 快適性と運動性のバランスはかなり高いと思うが、18インチタイヤと組み合わせる少しだけしっかりした脚をオプションで設定してもらいたい。450GT Sports Packageのような乗り味が得られたら嬉しい。
  • 4.84m×1.8mという車体の大きさゆえ室内は広いが、運転していると大きいことがやや気になる。こんなにも余裕は要らないので、ひと回り小さくて背の低いセダンが欲しい。次期スカイラインはレクサスISぐらいの大きさで出して欲しい。

(2006年3月13日)

350GT

5AT

400万円(税別)

 

 

 

BOSEサウンドシステム、助手席パワーオットマン装着車(税抜20万円高)カタログの◆6)装着車

350GTと250GTの外観はまったく同じであり、トランクリッドの表示を見ないと区別が出来ない。装備品の差も少なく、助手席パワーシート、ステアリングホイール位置の電動調整、HIDヘッドランプぐらいの違いでしかない。両車の装備を同じにするために250GTにそれらをオプション装着(カタログ◆1および◆2)すると23万円(税抜)かかる。オプション◆2には助手席パワーオットマンが含まれるので、厳密に装備を同一にするには◆8のパワーオットマン(2万円)を差し引かなくてはならない(⇒計算上のオプション代金は21万円)。そうすると、2.5Lと3.5Lのエンジンだけの差額は29万円ということになる。

今回は、3.5Lエンジンが29万円分の付加価値を持っているのか確かめようと思って試乗車を見に行った。なお、250GTを試乗車した時とは、コース、天候、靴が異なる。靴が違うとペダルの操作性がまったく変わってしまう。いつもと異なるペダルタッチに強い違和感を感じながら日産のお店までインプレッサをドライブした(靴は昨日買ったもので、今朝初めて履いた)。

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まずは街乗りでゆっくりと走らせてみると、全般的な乗り味は250GTとなんら変わりがなかった。

350GTでは、街乗りにおいてスロットルペダルの踏み込み量に対する駆動力の出し方に不満はなく、すべての動きがスムーズなことに感心した。つまり、250GTよりもスロットル特性が穏やかなので、希望する加速感を自在に得ることができるのである。今回、試乗コースとして選んだのは、家内の実家に行くときに必ず通る旧国道である。ここは阪神淡路大震災によって路面の凸凹がひどくなり、それ以来インプレッサで走るのは苦痛を伴うので嫌なのであるが、そこをFUGAは何の躊躇もなく走り抜けてくれた。「すごくソフトで滑らかに動く脚ですね」と言ったら、営業マンは「そんなことを言う人は珍しい」といって驚いていた(CUSCOバネ+KYB BUZZ Specダンパーを組んだインプレッサより乗り心地の悪いクルマはめったにないので、どれに乗ってもソフトなのであるが…)。古いクラウンやセドリックと比べると硬いのは間違いないと思うが、スポーティなクルマから乗り換えようとする若い人がクルマを見に来ていないということなのだろう。

旧国道から住宅街へと通じる急な山道(上り)で動力性能とハンドリングを確かめようと意気込んでFUGAのステアリングを向けたが、極低速で走るクルマが列をなして前方を塞ぎ、ほとんどテストができなかった。残念!

仕方がないので TipシフトでUP-DOWNをして遊んでみたのであるが、そこで意外な発見をしてしまった。それは、Dレンジで自動選択しているギアよりも高いギアを任意に選択できることである。この機能はBMW330iに乗ったときに初めて気付いたことであるが、FUGAは「Dレンジでどんどん可能な限りシフトアップする」という日本流のプログラムをやめて、BMWのようにエンジン回転数を高めに保持していつでも臨戦態勢を取れるようにしたのだと思われる。複雑に入り組んだ実際の交通においては、そのほうがメリットがあるだろう。燃費には良くないが。。。

一瞬だけ前方が空いたのを見計らって、かなり急な上り坂で 2nd ギアのフルスロットル加速を試すことができた。体感的には、3.5Lというのが嘘ではないかと思える加速力であった。たしかに250GTでフル加速をテストした場所よりも勾配がかなりきつく、エンジン回転数も低かったが、それを差し引いても感動が全然なかった。

350GTは250GTに対して20kg重く、ギア比は15%ほど高いだけなので、テストデータ(0→100km/h加速など)における差は大きいはずであるが、体感的には1Lもの排気量の差が感じられず、速さの演出が盛り込まれた250GTで充分であると思った

平坦路を60km/h定速で走ってみたが、トルコンのロックアップは働かなかった。250GTよりファイナルギア比が高いので、ロックアップする速度も250GTより高く設定されているのだろう。

FUGAのステレオは専用品であり、市販品を組み込むことは難しい。標準装着のステレオ(CD & AM/FMラジオ)も悪くないが、試乗車についていたBOSEのオーディオはなかなか良かった。私はオーディオにはうるさくないが、社外品をあとでつけることができないのなら、このオプション(助手席パワーオットマンとセットで20万円:カタログ◆6)は魅力的である(250GTには残念ながらBOSEをつけることはできない)。

FUGAの価格は客を惑わせる絶妙な設定がなされている。あとちょっと払えば…と思わせるものが多くあり、ものすごく迷うことになるだろう。そして、FUGAではGT系とXV系で脚のセッティングやシート形状に差がない(らしい)ので、内装色、シート表皮、装飾パネルの組み合わせ(8種類)にも大いに迷わされてしまう。

久々に買ってもいいと思わせるクルマが日産から発売されたので、カタログを見ながらいろいろと考えるのが楽しくなってしまう。

(2004年10月31日)

350GT

SPORTS PACKAGE

5AT

420万円(税別)

 

 

 

本革シート、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ等、カタログの◆5)装着車:オプション代金35万円(税抜)

FUGAの看板商品であるスポーツパッケージを試してみた。

普通の350GTとの違いは、2インチアップのタイヤ&ホイール、リヤアクティブステア(旧名称 HICAS)、サスペンションセッティングである。

レガシィがタイヤ&ホイールを1インチアップするだけで15万円アップ(GT→GT Spec.B)しているのに対し、FUGAは2インチアップに加えてHICASを含んでいるため20万円アップ(350GT→350GT Sports Package)となっている。価格設定はまあ妥当なところだろう。ただし、レガシィが20kg重くなっているのに対し、FUGAは30kgも重くなっている。また、幅広タイヤを履いているため、フロントタイヤの最大切れ角は制限されている。

日本車初の19インチタイヤの乗り心地は果たして。。。

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【運転席にて】

試乗車は、フォーブ(茶橙色)の革シート(オプション)と木目調の飾りパネルを備えていた。革の表皮は標準のファブリックと比べてやや滑りやすいが、高級車としての品格を持たせたいのならば選択してもよいと思う。また、表皮に開けられた穴から風(前席のみ、左右席独立、温風と冷風を調節可能)を出す機能を有することから、暑いときにも寒いときにも快適な乗車ができそうである。今回、温風と冷風を試してみたが、はっきりと体感できるものであった。

走り出してみると、まずは乗り心地の良さに驚いてしまった。19インチの巨大なタイヤを履いているとは想像できない滑らかな乗り味であり、安定感(フラット感)は標準の17インチのクルマよりも優れているのではないかと思うほどであった。どのようにすれば19インチタイヤを生かしながら乗り心地を確保することができるのだろう。星野一義氏が「IMPULブランドの脚を作ることが出来ない」と雑誌で誉めていたが、本当に素晴らしい脚であった。

しばらく走ると、ステアフィールに違和感を感じた。17インチ仕様は切り始め部分から全域で滑らかなフィーリングを出していたが、19インチ仕様は中立付近の動きが固く(ホンダのような渋さではなく、ギアとギアの隙間を狭く組んだときのような感じ)、レーンチェンジ時のような微少舵角のときに操作を自然に行うことができず、常に操作を意識させられるのがマイナス点であった。太いタイヤは不整路面の影響を受けてステアリングを揺らすことがある(実際に感じることもあった)ので、それを運転手に伝えにくいように車両側で緩和する設定なのだと思う。ただ、大きく切っていけば17インチ仕様と同じように滑らかなフィーリングになった。フルにステアリングを切ったときの小回り性能は17インチ仕様と比べて劣るが、それでも充分に切れると感じたので、よほど狭いところに入らなければ問題ないだろう。

リヤに備わるステア機構(HICAS)は運転席に居る限り何ら違和感を持たなかった。昔、R32スカイラインGTS-tのリヤシートに座って山道を走ったとき、カーブでリヤタイヤが動く(ステアリング切り始めは逆位相、直後に同位相になる)たびに奇妙な感じを受けた記憶があるので、FUGAではどうなっているのか機会があればリヤシートで確認したい(下に記載)。

今回の試乗では最高速度が70km/hに達し、その時点でATのロックアップクラッチが働いていることを確認することができた。ロックポイントは60km/h以上70km/h以下であるが、その瞬間を認知することはできなかった。

350GTと比べて350GT SPORTS PACKAGEはしっかりと安定した乗り味を持ち、大きいホイールは単純に格好が良く見えるので、20万円の差額を払ってもいいのではないかと思わせる魅力がある。ただし、ブレーキが他のモデルと同じ(320φローター、2ピストンキャリパ/Front)であるというのはあまりにも情けない。せめて1インチでも大きくして欲しいものである。

(2004年11月6日)

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【後席にて】

350GT SPORTS PACKAGEの後席に乗り、R32(GTS-t)で感じられたHICASに起因する嫌な乗り味を感じるか否か、確かめてみた。

山道に行くまでの一般道での乗り心地をまずは端的に述べると、「日産はなかなかやるじゃないか」と思った。試乗車のある店までの移動に使った250GTと比べると明らかに足が硬いが、揺れを一発で収めてくれるので、不快な感じが残らないのである。250GTで揺れが一発で収まらない(タクシーのように揺れ続ける)とは思わなかったが、そこには歴然とした差があった。個人的にはSPORTS PACKAGEのほうが標準車よりも好みに合っていた。

ロードノイズやエンジン(排気)音は250GTよりも明らかに大きく、SPORTS PACKAGEとしての割り切りが感じられた。高性能タイヤを生かすために騒音振動を遮断するゴムを硬くしたのだろう。

山道に入ってステアリングを右に左に切って走ってもらった。R32ならばリアタイヤが左右に動いている様子が手に取るように分かったが、驚いたことにFUGAではHICASの存在に気が付かなかった。タイヤの動かし方は15年前と変わりなく、逆位相→同位相という変化があるはずなのに、現在のクルマではまったく意識することがなくなり、技術の熟成が感じられた。

この車両はオプション(カタログ◆5)を装備していたので、後席のヘッドレストが前後上下に動くようになっていた。標準車の固定式ヘッドレストよりもパッドが大きくて安心感はあるが、身長175cmの私にとって上下に動くパッドはあまり意味のないものであった(最下位でOK)。

運転席に移ってみると乗り味がとてもしなやかですっきりしており、後席の乗り心地がかなり硬かったことを改めて認識した。クラウンタクシーに慣れた年寄りにはこたえるかもしれないが、レガシィ3.0R Spec.Bに比べるとずっと優しい乗り味であり、こういうのもあっていいと思った。アメリカ仕様と同じようにホイールを1インチ小さくして245/45R18を履けば、もう少し快適になるだろう。

最後にひとつだけ希望を述べると、ドア側アームレストの下側に柔らかいパッドを貼って欲しいと思うのである。アシストグリップ、ドア内側グリップおよびアームレスト上側には高級な処理が施されているのに、カーブで踏ん張る際に膝が当たる箇所が硬いプラスチックでは高級感を損なう。細部まで丁重なもてなしを感じられる内装にしてもらいたい。(2005年6月19日)

350XV

5AT

400万円(税別)

 

 

 

カタログの◆5)◆6)◆7)装着車:オプション代金70万円(税抜)

XVがGTとどのように違うのか、確かめてみた。

試乗車ほとんどフル装備と言ってもよい仕様で、革シート、BOSEオーディオ、前走車追従クルーズ機能などのオプションが付けられていた。

内装色はエクリュ、飾りパネルはピアノブラックであった。これはXVの革シート仕様(色々付いて税抜35万円)でのみ選択できるものである。漆黒に光るパネルはなかなか美しくて魅力的であるが、木目調パネル(木目調ステアリングホイールも付く)も捨てがたい。GTのアルミ調も若いイメージがあるし、選択に困ってしまう。

デビュー当時、XVとGTは内装色と外装のデザイン(バンパー、グリル、灯火器)が異なるだけで、機械としては同仕様であると聞いていた。実際に乗ってみて、そのとおりであることが確認できた。

概して上記350GTと同じ感想を持ったが、革シートのせいなのか乗り味はやや硬い感じを受けた。試乗後に我がWRXで同じ道を辿ってみると、かなり路面が荒れていることが分かったので、FUGAならひどい道路状態でもまあまあ快適に走れるのだということになる。

今回の目玉は「インテリジェントクルーズコントロール」(税抜17万円)である。下限5km/hまで自動的に前を走るクルマに一定の車間距離で付いていくことができるという。試乗コースは信号機の多い道で、駐車車両も多く、安定した状態で走れない環境であったが、とりあえず設定してみると、始めは車間距離などを基準にした設定条件に合わせる動きをするので何となく違和感があり、思わずブレーキを踏んで解除してしまった。気を取り直してクルマ任せにしてみると、なかなか上手に前車を追従することが分かった。信号で停止する際には止まる寸前(5km/h)に警報ブザーが鳴ってシステムを解除するので、自分でブレーキを踏んで止めることになる。

今は高級なクルマにしか装備されない自動追従システムであるが、追突防止に役立つ安全装置なので、是非とも路上を走るすべてのクルマに装着してもらいたい。それによって痛ましいトラックの追突事故を防ぐことができるだろう。現時点で17万円という価格だが、大量生産するようになれば5万円ぐらいまで抑えられるだろう。現在ほぼ普及したエアバッグのように、一般的な装備となることを期待する。(2005年1月22日)

450GT

SPORTS PACKAGE

5AT

540万円(税別)

アメリカで人気のV8を積んだFUGAが日本でも発売されたので、ちょっと乗ってみることにした。

4.5LモデルにはGTおよびGT sports package(以後 GT-s.p.と略す)の2グレードが用意される。装備の違いはアルミペダル、脚設定、ホイール&タイヤ、リヤアクティブステアで、価格は12万円の差がつく。3.5LモデルのGTとGT-s.p.との価格差は20万円であるが、4.5LモデルではGTの標準ホイールが17インチから18インチに変わったことから、GT-s.p.との価格差が詰まったのだろう。

450GT-s.p.と350GT-s.p.との価格差は120万円にもなるが、いったいエンジン単体ではどれぐらいの違いがあるのだろう。装備をチェックしてみると、助手席オットマン(2万円)、革シート等(カタログ◆5:35万円)が4.5Lモデルには標準装備され、さらに4.5Lモデルの装飾パネルは模造品から本物の木に変更されている。それらの装備の差額合計を40万円とすると、大体80万円がエンジンの価格差であると考えられる。これが果たして妥当なものなのか、乗って確かめてみた。

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試乗車のある店舗までは350GT(ファブリックシート仕様)に乗って移動した。それから乗り換えたので、450GT-s.p.の感想は基本的には350GTとの比較になる。

まずは店から道へ出るとき、早速「オッ、いいフィーリングだね」という言葉を発した。ステアリングの手ごたえが軽くなり、歩道からの段差を落ちたときの脚の動きが滑らかになっていることを感じたのである。350GT-s.p.350GTよりも明らかにステアリングが重く設定されていたので、450GT-s.p.が350GTよりもむしろ軽く設定されていることに不思議な気分になった。とは言うものの、手に伝わってくる印象はとても良く、350GT-s.p.のような中立付近での意図的に付与された重さ(固さ)はなく、左右に切っていってもどこにもひっかかりや違和感がない感触はFUGAの中で最良のものであった。

スロットルの反応は350GTよりさらに穏やかで、渋滞の多い街乗りでは、350GTと同じ加速を得るためにはより多くのペダルストロークを要した。これはなかなか面白いもので、通常の街乗りの速度域では最小の排気量の250GTが最少のペダルストロークで済むのである。小排気量のエンジンを積んだクルマほど日常的に活発に感じさせる演出は、客をだます上手な作戦である。250GTであってもフルスロットル加速を要求されることはめったにないので、ちょっと踏んで「オオーッ、よく走るじゃん!」と喜ぶ客がいてもいいのかもしれない。

街中を流していると、450GT-s.p.はロードノイズが350GTより小さく感じられた。350GT-s.p.250GT(350GTと変わりはない)よりもタイヤノイズが圧倒的に高く感じられたので(450GT-s.p.<250GT=350GT<350GT-s.p.)、これはとても興味深いところである。同じタイヤを使っている450GT-s.p.と350GT-s.p.でこれほどまでに違いがあるというのは、450GT-s.p.には遮音・吸音対策が特別になされているということなのだろう。

エンジン音についても、450GT-s.p.はアイドリングから緩い加速時までほとんど音を意識させない設定になっていた。350GTでは加速時に排気音とエンジン音を意図的に伝えようとするスポーティな性質が与えられている(250GTではさらに排気音を強調している)が、450GT-s.p.は爪を隠すかの如く、街乗りでは主張が少なかった。それゆえに高級な印象が強かった。

450GT-s.p.の車両重量は350GT-s.p.よりも100kgも重い。その重さおよび脚がややソフトに設定されているということから、450GT-s.p.の乗り心地は350GT-s.p.と比べてとてもマイルドで、なおかつ350GTよりも快適である(硬さを感じないでスッキリしている)と感じられた。つまり、私の印象としてはFUGAの中で最上の乗り味である。

街乗りではギア比が高いため低回転ばかりを使ってしまい、4.5Lエンジンの実力は垣間見ることすらできない。そこで、埋め立てられた人工島との間の橋の上(かなり急な上り坂)でフルスロットル加速を試みた。初速は約50km/hで、そこからおもむろにペダルをいっぱいに踏み込むと、ATは1段ずつ2回自動ダウンシフトし、2速で加速を開始した。3速の途中までの全開加速時のGは350GTとは比べ物にならないぐらい強烈であったが、加速感はとても滑らかで洗練された気持ち良さがあり、まったく暴力的ではなかった。

試乗時の総合燃費は5.0km/Lであった。スロットル開度を大きくしたのはわずかな時間であったが、全体的に速度が低かったのが悪い燃費の原因だと思う。

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450GT-s.p.は、すべてにおいてV6モデルと出来の違いを感じさせるものであり、その上質感はとても気に入った。

350GT-s.p.との重量差100kgの中にはエンジン重量以外に遮音材やボディ補強も入っていると思われる。V8エンジンによる余裕があったからこそ、質感を高めるための重量増加を許容できたと考えられる。

エンジン単体の価格差は、2.5-V6と3.5-V6では29万円、3.5-V6と4.5-V8では80万円となり、体感するフィーリングの差も大体それぐらいの割合であり、妥当なものだと思う。ただ、どれを買うのかという現実の話になると、なかなか答えを出しにくい。250GTでも走りの性能そのものに大きい不満はないのだから。

450GT-s.p.の乗り味を忘れないうちに、ライバルと想定されるレクサスGSにも乗ってみようと思う。(2005年9月25日)

 

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