マイナーチェンジ(M/C)を受けてからしばらく経過したが、どこが変わったのか確認するためにプリンス店に行ってみた。
試乗車は2.5LのGTmというグレードであった。これは、スカイラインが上級化して300万円クラスのクルマになり、売りにくくなったため、お買い得グレードとして追加された廉価版(250万円)である。装備は簡略化され、電動シート調整、リアシートリクライニング、エアコンの左独立温度調整機能等が装備されない。ただ、試乗車は特別仕様車(70周年記念車)で、リアシートはリクライニングが可能であった。それでも価格は変わらず250万円。
マイナーチェンジの内容は、見えるところではグリルの色、ボディ下部の色が変わり、 トランクを外からキーを使わずに開けられるという機能を廃止した(←折角の装備を、外観がカッコ悪いという理由でやめてしまった。いったい何を考えているのだ! そんな些細な変更で売れるようになると本気で思っているのか?)。
見えないところも色々と変わっているようなので、田舎のワインディングロードで乗って確かめてみることにした。
まずは運転席に乗り込んでみると、やたらに 着座位置が高いのが気になった。頭上の空間は充分確保されているので問題はないが、何となく気持ちが悪い。ステアリングホイールは上下にしか調整できないので、手前に引っ張り出してシートを寝かす(目の位置を下げる)というやり方は通用しない。もう少し調整幅を大きくして20mmぐらい前席の位置を下げられると、後席の人の快適性も高まる(視界が広くなる)はずである。カタログで高らかに謳われている「パーソナルコンフォート」をもっと真面目に考えてもらいたい。
慣れない足踏式駐車ブレーキを解除して動き出すと、ステアリングが重くなっていることに気付いた。小さいRのカーブが続く山坂道を走ると、もう少し軽いほうが取り回しが良いかなと感じた。
脚はかなり締め上げられ、初期モデルの面影はまったくなくなった。ローレルと呼ばれることはもうないだろう。しかし、ちょっと突っ張った感じが強く、乗り心地が悪い。もう少しきれいにストロークする脚が欲しい。脚が硬くなったことによって、ステアリングが異様に敏感に思える違和感は消失した。まさかステアリングギア比を変えたという話はないだろう?
ステアリングのレスポンスが悪い代わりに スロットルのレスポンスは異常に敏感に設定されているため、ワインディングロードではとても走りにくかった。また、何の躊躇もなくどんどんシフトアップするAT(ノーマルモード設定時)の性質ゆえ、カーブからの立ち上がりでは2段シフトダウン(4→2)が頻繁に起こり、リズム良く走ることができなかった。Tipシフトが付いているので、それを使ってギアを固定するか、Sportモードを試してみてもよかったかもしれない。
スロットルレスポンスの異様に過敏な性質 は、ゼロからの発進時にも強く感じてしまう。何気なくスロットルペダルを踏むと、ドカンと出てしまい、自分でビックリしてしまう。もちろん同乗者も不快な思いを抱くだろう。こんな子供騙しで良い加速感を演出するのはもう止めてもらいたい。まるで能のない芸人が目立つために無意味に騒いでいるようで、虚しい限りである。初期モデルは穏やかなセッティングであったので、何が良いのか日産の開発者は知っているはずである。爪は隠しておいてこそ恰好が良い。変なところで評論家の意見を取り入れてしまうと、折角のクルマが台無しになってしまう。
全開加速をしてみると、やはり一般的な2L車よりも力強いことは感じられた。しかしこのエンジンは明らかに高い回転を好むようで、3500rpmぐらいから盛り上がっていくのが感じられた。 3000rpmまでのトルク感が薄いというのは実用セダンのエンジンとしてはいかがなものか。27.5kgmというトルク最大値は魅力的ではあるが、それを25kgmにしてもいいので、フラットトルクにしてもらいたい。
ATはいまだに4段変速である。 そのせいで少しだけエンジンブレーキが欲しいときに適当なギアが選べないことが多い。また、中低速トルクが薄い性質を持つ2.5Lエンジンには多段ミッションのほうが向いているのである。いいかげんに5段ATを導入すればいいと思うのであるが、価格が数万円アップするのがそんなに嫌なのだろうか。5万円ぐらい高くても大したことはないと思うが、どうだろうか。評論家の意見はこういうものこそ取り入れるべきである。
客や評論家などの外部の様々な意見を取り入れて、初期モデルの不思議な乗り味は改善され、クーペと合わせてスカイラインらしい乗り味が確立されてきたようである。方向性としてはなかなか良いと思われる。 |