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Jetta

2.0 FSI

6AT

289万円(税込)

久しぶりにJettaの名前が復活した。GOLFのセダン版は日本でもドイツでもあまり見かけないクルマだった。人気があったのは北米ぐらいなのだろうか。

これまでのJetta、Vento、BORAは、GOLFとフロントマスクの意匠が変えられていたが、今回のNew JettaはGOLF5と同じ顔を採用している。全体的なプロポーションは悪くないが、顔と体が別々の印象が強いのはまだ見慣れていない故か。

VOLVOがS40/V50を旧モデルより一クラス上にしたいと考えたように、VWもJettaをGOLF5より一クラス上、つまりMB Cクラス、BMW 3er、Audi A4に対抗するDセグメントに位置付けたいと考えているらしい。車体の大きさだけを見ればそう言えなくもないが、S40/V50の車台がCセグメントのFocus/Mazda3と共通であるのは詳しい人なら知っているし、ましてやGOLF5の顔をしたJettaを一クラス上に位置付けるのはちょっと無理な話だと思う。

GOLF5と比較すると、Jettaは全長が360mm、全幅が25mmも大きく、重量は30kg重い。セダンだから長くなるのは分かるが、幅まで広いのは理解し難い。

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まずはNAエンジンを搭載するJetta 2.0に乗ってみた。

運転席から見える室内の意匠は当然のことながらベース車のGOLF5と同じで、ウッドパネルが装着されること以外に違いはない。車幅拡大に伴う室内幅の拡張感も得られなかった。運転席の着座位置はドイツ車らしく低く設定できるようになっていたので、最下位からレバーで2回持ち上げて試乗を開始した。

コンフォートシートという椅子はなかなか具合が良く、直前に乗ったFORD Focusのシートよりも当方の背骨には馴染んでくれた。

パーキングスピードでステアリングを大きく操作したところ、車内で何か擦れるような音と感触があった。単なる個体の不具合だと思うが、VWがこういう現象を見逃すということに一抹の不安を感じた。

ATをDレンジにしてゆっくりと走ると、アイシンAWの6段ATの滑らかで素早い変速に心が動いた。Focusの4段ATがいかに時代遅れの代物なのかと思わせる出来の良さで、戦略が上手だなと感嘆してしまった。

エンジン回転をゆっくりと上げていくと、ゴロゴロと鳴るところが存在することを知った。従来型では明らかにゴロゴロ音が大きく頻繁に気になったが、新世代(GOLF5)になって消えたと思っていた音はまだ少しだけ残っていたのである。まあ、あまり大したことではないので、気にしなければ問題はない。2000rpmを少し越えた辺りでスロットルを踏み増ししてみたところ、トルクが力強く発生し、ドイツのエンジンは低速から使えてなかなか良いものだと改めて思った。

ステアリングはGOLF5と同じような感触であり、まあまあ滑らかな操作感であった。ただ、路面の情報を掴むということを考えるとFocusのほうが明瞭な感じがして良かった。

乗り心地はソフトで、横Gが掛かるカーブでのローリングはやや大きかった。急な操舵をした際のロールスピードは怖いとは思わないレベルに落ち着いているので問題はない。スポーティに走るにはやや脚は柔らかいという印象であったが、ファミリーカーに使うのならピッタリだろう。だいたいGOLF5のEと同じような脚の設定になっていると感じた。

ATをSレンジに入れて走ると、なかなかに高いエンジン回転数を使うようになり、活発な走りができるようになった。発進直後に半分ぐらいまでスロットルペダルを踏み込むと、小気味良くシフトチェンジが繰り返され、細かく刻んだギア比のありがたさを痛感することになった。「ハーフスロットルでもなかなか速いじゃないか」と思って期待を込めてフルスロットルも試してみたが、そんなに速くは走らなかった。実のところJetta 2.0は演技派であった。

後席はセダンらしい作りになっているが、ホイールベースがGOLF5と共通であることから、特に広いわけではなく、Dセグメントセダンより明らかに狭い。

トランクスペースは従来このシリーズの特徴(特にVentoは巨大)であったが、New Jettaも例外ではない。最狭部分の幅は1mほど、奥行はなんと1.1mほどあり、Dセグメントセダンよりも5cmほど幅広く、10cm以上奥に深い。

ホイールベースを10cm伸ばして、荷室を10cm削ってやれば、Dセグメントセダンに負けない居住空間ができたと思うと惜しい。

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Focusや307というライバルに対してGOLF/Jettaはそつなくうまく作られている。

Jetta 2.0の価格(289万円)はGOLF5と比べてどうなのだろう。上級移行を図るという観点からすると同装備なら高くなるのだろうか。

GOLF5 GT(299.25万円)と比べて、Jetta 2.0は…

 フォグランプなし、HIDランプなし、スポーツシートなし、ウッドパネルあり

GOLF5 GLi(279.3万円)と比べて、Jetta 2.0は…

 革巻ステアリングホイールあり、205/55R16タイヤあり。

このように装備内容が異なるので直接比較はできないが、だいたいGOLF5とJettaは同装備なら同価格であることが分かった。上級移行という名目がありながら日本ではJettaの需要は少ないので、安くして台数を伸ばそうということになったのだと思われる。

日本には少数派ながらセダンでなくてはクルマでないという人がいるので、New Jettaは一定の台数は捌けるだろう。なぜなら輸入車の中には価格的に比較できるライバルは存在しないからである。日本車で競合するのはやはりレガシィB4なのだろうか。レガシィは価格的には近いが、300万円級となると2.0ターボか3.0になる。性質や乗り味が三者三様なので、乗り比べて好みのものを選べば良いのだが、価格でクルマを選ぶというのはあまりお勧めできない。

ドイツではBORAにもGOLF4にもワゴンボディがあったが、現行型のワゴンが発売されたら日本にはどちらのタイプが入るのだろう。あっ、今回は顔が同じだからJettaワゴンとGOLFワゴンに差は付けられないか。。。これは失礼。

Jetta

2.0 TURBO FSI

DSG

359万円(税込)

Jettaのターボモデルにも乗ってみた。

Jetta 2.0Tは基本的にはGOLF5 GTIやGTXのセダン版と考えればいい。しかし、初代のイメージを復活させたGTIがGOLF5の独立したグレードであるのに対して、2.0TはJetta Sporlineという括りの中で選択できるターボFSIエンジンを積んだモデルに過ぎない。それゆえ、GOLF GTIのような目を引く仕上げはなされておらず、かなり大人びた佇まいがある。同じ顔なのにハッチバックとセダンでこれだけイメージが異なるのは面白いところであるが、フロントグリルのギラギラした鍍金処理は質実剛健なJettaに似合わない。

2.0Tには革シートが標準設定になる。革シートが高級イメージを醸し出すという考えは否定しないが、選択肢を無くすというのは日本でのJetta購入者が多く見込めないと初めから想定してしまった結果だろう。価格も需要が少ないことを見越して革シートのGOLF GTIよりも僅かに安く設定されている。

今回は家内を助手席に乗せて走ったので、急な操作をせず、ゆっくりとしたペースで流してみた。すると、Jetta 2.0Tはとても滑らかで心地良い走りを見せてくれた。GOLF GTIはスロットルやブレーキが操作より少しだけ過剰反応するタイプであったが、Jetta 2.0Tは操作に対する反応がとても穏やかで、発進時の飛び出しに気を使うことは一切なく、ブレーキも腫れ物に触るような初期操作をする必要がなくなっていた。

DSGはステアリングホイールに備わるスイッチによって一時的に任意変速ができるようになっていた(GOLF5 GTIの2006年モデルも同じ)。エンジンブレーキを必要とする時に瞬時に簡単にダウンシフトができる機構としてはなかなか良いと思う。しかし、ウィンカーやワイパーの操作レバーとパドルスイッチがとても近接しているため、ちょっと操作がしにくかった。あと10mmぐらいは離して欲しい。

最小回転半径はカタログ上で5.0mとなっている。実際にロックまで切ってターンしてみるとインプレッサよりも明らかに小回りが利くことが実感できた。ステアリングホイールはGTI用のいびつなものと異なり、ごく普通のタイプであることから、持つ位置によってグリップ感が変わらず、フル操舵をする際に具合が良いということを感じた。操舵力が軽いのも好ましい。

乗り心地はGTIよりも若干ソフトになっているように感じたが、NAモデルのように「柔らかい」と感じることはなかった。GTIに類似したガッシリした乗り味はスポーティセダンであることをさりげなく主張し、なかなか快いものであった。室内で感じる音はGTIよりも明らかに静かになっており、3000rpmぐらいでは排気音をほとんど感知できなかった。タイヤノイズも非常に抑えられており、快速ファミリーセダンとしてなかなか良くできたクルマであると言える。

家内にとって2.0Tは全般的には不満がなかったようであるが、一点だけ気になる箇所があったという。それはサイドシルとシートとの間隔が大きすぎるということである。尻を座面に載せて脚を揃えてクルッとスマートに乗り込もうとする動作ができないらしい。これはサイドインパクトも考慮した最近のクルマゆえに仕方がないと思う。そして、脚が長ければ問題がないような気もする。

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Jetta 2.0Tの試乗後に同じ道を我がWRXで辿ってみた。

WRXは騒々しく、路面の変化をすべて体に伝え、シートは窮屈で、日常使用だけを考えるとJettaが圧倒的に快適で安楽に移動できる素晴らしいクルマであるという認識ができた。

しかし、いくら出来が良くてもJettaを買おうという気にならなかったのは何故だろう。FFという駆動形態に不安がよぎるのが理由かもしれない。

冬の帯広で比べた4WDカローラとFFカローラの操縦性と駆動力の違い(スタッドレス装着)、湘南から多摩まで夏タイヤのWRXでなんとか帰った大雪の日、そんな記憶がFFを遠ざけてしまうのだろう。

北海道を離れてからは雪道を走ることなど年に1〜2度しかなく、雪が降ればクルマに乗らずに通勤もできる。それでも、遠出をした帰り道で大雪に降られたというtraumaを消すことができず、なかなか4WDを放棄するに至らない。困ったものである。

 

【余 談】

展示されていたGOLF5のR32にはオプションのRECAROシートが付いていた。腰掛けてみたところ、これはインプレッサWRXの標準シートよりもサポートが深くてフィット感が良く、ランサーEvo8用のRECAROのような感触であった。このシートはR32専用のオプション装備(21万円)になっているが、差額を払えばどんなモデル(GOLF/Jetta)にでも付けられるようにして欲しい。

 

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