3 SeriesE90) 3 days monitor

人気の低下が著しい小さめのファミリーセダンの中で依然として高い注目を浴びる3シリーズ。

店頭試乗ではじっくりと味わうことができないので、3日間でいろいろな使い方をしてみた。

320i

6AT

正規販売店試乗車

408万円(税込)

【店舗から家まで】

仕事帰りにインプレッサで店まで試乗車を取りに行き、40分ぐらいの道のりを走って家に着いた。落ち着いた印象の強い走りは良かったが、通勤時間帯の低速度走行ではステアリングのフリクションの多さに対して違和感を拭えなかった。シートはE46と同じように腰に当たる部分がとても柔らかく、沈み込みが大きいため、わずかな時間しか乗っていないのに腰がだるくなってしまった。BMWのノーマルシートは相変わらずクッションが安っぽく、ゴミ箱に直行である。交換を強いられるシートなど始めから着いている必要がないので、「シートなし」というオプションが欲しい

リアドアの窓を少し開けて排気音を聞いてみると、4000rpmを超えたあたりで何ともいえない良い音を奏でてくれるが分かったE90になってエンジン音は静かになったと思っていたが、4気筒でもBMWらしい演出は健在であった。

【高速道路と街乗り】

速度が高くなるとステアリングのフリクションは感じられなくなり、ねっとりした操舵感とともに車体がジワッっと沈み込んで安定した姿勢でカーブをクリアすることが分かった。路面すべてに凸凹舗装が施されている高速道路のトンネル内のカーブを120km/hで通り抜けるときの乗り心地は秀逸で、しなやかな脚とボディによって路面からの入力をいなす感触は他のクルマでは得られない。高速道路ではタイヤの能力をいっぱいまで使うことができないので、一般道でややハードなコーナーリングを試してみると、E46(318i)では感じられなかったタイヤからのゴロゴロした感触が伝わってきた。それでも全体的な車体の動きにはBMWらしい一体感があり、運転手の期待を裏切らないという安心感があった。ただ、大きい入力があるときにのみ気持ちの良い味を感じさせてくれるというのでは、日本の道路環境では良い面を見る機会が少なすぎる。

100km/h時のエンジン回転数は2200rpmであり、その速度でロックアップクラッチは完全には作動していなかった。120km/hまで速度を高めてもロックせず(スロットルOFFで回転が下がる)、いったいどれぐらいの速度になれば作動するのか確認することができなかった。6段もギアがあるのなら、もっと積極的にロックアップさせても駆動力不足になることはない(トルコン利用の必要がない)と思うので、MTのようなエンジンとタイヤが連結している感触を出してやるほうがいいと思う。日産(Z33等)を見習って、Tipシフトを使っているときには3000rpm以上で常時ロックするというような制御が欲しい。

6段ATは2速発進なのかと思っていたが、1速から出て即座に2速に上がるということが分かった。慣れないうちはスロットル開度を大きくしていくタイミングが2速へのシフトポイントと同期して気持ち悪い動きが出てしまったが、癖をつかんでしまえば、2速にアップするのを大人しく待ってからスロットルを開いていくという操作が身に付き、特に不具合なく使うことができた。Dレンジでのシフトスケジュールは6つのギアを有効に使おうという意図が読み取れるものであり、ここでダウンシフトしてほしいなあと思う時に自動変速してくれた。さすがにBMWは運転手の気持ちがよく分かっていると感心した。

運転席で意識的に背中をピンと伸ばして腰の沈み込みを減らしてみると、疲れが軽減されることが分かった。しかし、体をシートに預けることができないというのはちょっと辛い。純正スポーツシートであればどうなるのだろう。助手席では座面やバックレストの角度の制約がないため、いろいろな姿勢をとることができ、特に問題は起こらなかった。そして、E90で最も居心地が良かったのは後席であった。突き上げ感はほとんど気にならず、ピッチングもフロントよりやや多いものの問題視するほどではなく、バックレストの角度が適正で、腰の当たる辺りが硬めにできていて沈み込まないため、とても快適に過ごすことができた。

トランクを見てみると、レクサスISよりは大きく、GSと同程度に見えた。E46よりカタログ上の容量は大きくなったというが、スペアタイヤがなくなったために深くなっただけで、床面積は変わった気がしなかった。そこで、使い勝手がどうなのか確認してみた。床面の奥行きは980mm、最も狭い所の幅は910mmであり、インプレッサと同じようなものであるが、開口部が狭く、床面が平らではないため、日頃よく入れる荷物はあまりうまく収納できないことが分かった。

燃費は350km(高速道路は200km)ぐらい走って11km/Lであった。加速性能の確認のためにスロットルを大きく開ける機会が多かったのに、この数値なら立派である。普通に走ったなら12km/Lはいくだろう。自然吸気の2.0Lエンジンなのに動力性能が良く、燃費も良いというのは、さすがにエンジン工場を名乗るだけのことはある。トルコンのロックアップをもっと広範囲に使えば、さらに磨きがかかると思う。

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320iにはHIDヘッドランプ、ESP、カーテンエアバッグ、自動防眩ルームミラーなどが基本装備として設定され、E46と比べて大幅な充実ぶりを見せる。しかし、325iや330iと比べるとMDプレイヤーやETCがオプションになる等の簡素化もみられる。今回の試乗ではETCが付いていないのは辛かった(土日に無線通行車は2割引になる)。

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Dセグメントのセダンの中で3シリーズは独自の世界を持っている。日本の同クラス車としてレガシィが挙げられるが、同じサイズのタイヤを履く2.0iを思い出してみると、ボディの落ち着き感と脚の動きの正確さがまるで違ったのである。限界性能は同等かもしれないが、そこに至る領域で運転手に訴えかけてくる情報の量と質が異なるのである。運転手が期待するクルマの動きとはどういうものなのか、それをBMWはよく知っているのだろう。BMWファン(マニア)になる人の気持ちは理解できる。

友人の声

【男性】

新プリウスに乗る友人に100km近く運転してもらった(街乗りおよび高速)。320iのコーナーリングの安定感は気に入ったようであるが、全般的に見ると400万円も出す気にはならないらしい。最も不満な点は高速道路での加速に余裕がないことで、回転を高めてせわしなく追い越しをかける姿に優雅さがないのだという。速いクルマも所有する彼にとっては、内装の質感や動力性能に対して価格ほどの価値を認めることができなかったのだろう。

【女性】

ALFA147(Selespeed)に乗る友人には20kmほど運転してもらった(通勤路)。低速時のステアリングの重さに辟易していたが、だんだんと慣れるにしたがって違和感がなくなり、中速カーブでのフィーリングはなかなか気に入ったという。ただ、クルマの動きが重々しいことには不満を抱いたようで、400万円で320iを買うより、300万円で147を買うほうが毎日の通勤時間を楽しく過ごせるという。

 

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