ホンダ アコード試乗会にて

ホンダクリオ新東京から試乗会の案内をもらったので、杉並区の日通自動車学校まで出向いた。

新型アコードは、ヨーロッパと日本で同じもの(アメリカは別)を販売するということなので、ヨーロッパのDセグメントに属する他車に見劣りしないことをマスメディアで頻繁にアピールしている。今回の試乗会は、ブランドネームのあるBMWと比べてその出来栄えを認めてもらおうという企画である。

試乗は、教習コースの外周を2周する(90度カーブを8回曲がる)だけの単純極まりないものであったが、以下の3台を上から順に乗り比べてみると、それぞれに乗り味が違うことがわかった。

 

ACCORD 24TL

245万円

アコードの中で最も売れるのではないかと思われる2.35Lの4気筒エンジンが載る最上級モデルで、すでに発売時に街乗りで試しているが、フルパワーを試すのは今回が初めて。200PS/23.7kgmというスペックを見ると、かなりの走りが期待された。しかし、実際は期待していたほど活発なものではなかった(200PSといえば旧プレリュードの走りをイメージしていたので)。

ハンドリングは、ブレーキングからカーブに進入するときは安定したアンダーステアを示す。そのときのフィーリングは、手に伝わる路面の感触が少なく、どれぐらいの舵角でいくのかは、目でクルマの動きを感じて体で横Gを感じて切っていくしかない。

フルスロットルで立ち上がると、ホイールスピンを抑制するためにVSAが働く。VSAのON-OFFは明確に感じられ、VSA作動時には極端にスロットルが閉じられて減速感が強く出た。安全性を高めるために最後の砦になってくれるのは良いが、もう少しスムーズな制御ができないものだろうか。

BMW 318i

368万円

2.0Lエンジン(143PS/20.4kgm)を持つ318iは車重が24TLより40kg軽い。その軽さを生かして動きは軽快であるとホンダ社員が話していたので、期待して乗ってみた。

社員の言葉のとおり、身のこなしは軽く、巷で言われるスポーティセダンというのを初めて感じることができた。カーブの進入でABSが作動するほどのフルブレーキングをしてもノーズダイブは少なく、また、ステアリング操作に対して素直に気持ちよく頭が入っていき、アンダーステアはほとんど感じない。そして、しっかりとしたステアリングインフォメーションもある。舵角とクルマの動きがきれいに連動し、掌にタイヤのグリップ感を感じながらハンドルを回すことができる。立ち上がり加速でもアンダーステアを出さずにリアタイヤがクルマを前へ押し出す感触がしっかりと出ている。その一連のつながりがとてもスムーズで、これが雑誌で褒め称えられるBMWの味なのかと認識することができた。これまでは街乗りだけでしか判断せず、普通の3erを「パワーがない」とか「何の変哲もない」と言ってきたが、タイヤの限界近くで走らせたときのクルマの動きの気持ちの良さは「素晴らしい」と率直に認めてしまう。

単純に軽いから軽快な走りをするのではなく、ボディや脚がバランス良く出来ているからこの走りが可能なのだろう。素性は良いクルマだと思ったが、このフィーリングは都内の街乗りでは感じられないので、アコード24TLの1.5倍の金を払う価値があるか疑問である。自動車評論家のように山道を勢いよく走る機会が多い人なら、十分に価値があるだろう。

ACCORD 20EL

214万円

318iと同じ車重の2.0L車である。155PS/19.2kgmという性能なので、あまり期待せずに乗ってみたが、これは意外に活発であった。スロットルレスポンスが明らかに24TLよりも良く、パンチのある加速をみせてくれた。24シリーズの電子制御スロットル(Drive by wire)の反応が穏やかに設定されているのだろう。普通のケーブルでスロットルバルブを開く20シリーズのほうが反応が素早いと感じた(このことはホンダ社員も認識しており「24TLより活発に感じると思う」と話していた)。また、ファイナルギア比が低いため、トルク感も24シリーズに対し遜色のないもの。20シリーズはタイヤ幅が細いのでグリップ限界は低いが、アンダーステアを出しても敏感なスロットルによりコントロールはしやすい。よって、街乗りが主体の人なら、24シリースよりも20シリーズを選ぶほうが良いと思う。高速走行や登坂走行が多い人なら24シリーズの余裕が優位になるかもしれない。

最後にひとつだけ気になったことを挙げておくが、冷えたクルマに乗って1発めに踏んだブレーキが効かないのにはビックリした。2発め以降は良かったが、ノーマルPADでそのような温度依存性があるのは問題である。

 

ホンダが自信を持って世に問うた新型アコードであるが、今回の限定されたプログラムではBMW 3erの素直さだけが強く印象に残ることになってしまった。例えば、素人がFRで走るとスピンするような難しいコースレイアウトを設定すれば「アコードは安定して良い」という評価になったかもしれない。また、比較の相手をAudi A4にしていれば、違った印象になっていたかもしれない。

自ら不利な方向へ持っていった感のある今回の試乗会であったが、様々なコースで多くの人に乗ってもらえば、アコードの良い点を見つけてもらうこともできるだろう。

 

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