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3 SeriesE90

2005年5月

330i

Hi-Line package

6AT

625万円(旧価格)

5,952,381円(税抜)

シリーズ譲りの新しいシャシにシリーズに先行搭載された新しい6気筒エンジンを載せて330i(E90)が日本に登場した。

車体は写真で見るほど幅広くは感じられず、ドアハンドルを無視すれば1800mm以内に収まるというので日本の環境でもあまり差し支えることはないだろう。デザインはよりも普通になったが、フェンダーラインを膨らませて力強さを演出するのがとても上手だと思う。フロントフェンダーはボンネットよりガバッと広がり、リアフェンダーはリアドアから徐々に膨らませてあり、どっしりと構えた格好はとても魅力的である。

E46よりもホイールベースを伸ばして居住性を高めたというリアシートは確かに足元は広くなったが、頭上高は低く、まだスポンジがへたっていない新車のシートに座ると髪が天井に触れてしまった。

トランクも広くなったというが、あまり見た目では判断できないぐらいの差で、車体に対してまあ普通という程度であった。

フロントシート(標準形状、革張り)はクッションがとても柔らかく、特に背もたれはフワフワとした感触のものであった。位置調節は運転席も助手席も電動式であり、微調整ができるのが良い。E90はこれまでよりも着座位置が若干高くなったようで、最下位にしても「どこまで低くするねん」という印象を抱くことはなくなった。E46時代の意外性(セダンなのに…)はひとつ減ってしまった。

インパネはのようなのような最近のBMWらしいものに統一された。メーター内には燃費計が従来どおり備わり、見慣れた感じのものであった。最近のクルマには水温計が備わらないことが多いが、330iも例に漏れず、タコメータの外周に可変式レッドゾーンを表示して低温時の警告を出すことで代用しているらしい(M3やM5と同様)。ただし今回はすでにエンジンが温まっており、その様子を見ることはできなかった。

さて、と同様にスタートボタンを押して始動すると、これまでになかったジェントルな音でエンジンが目覚めた。排気音は 530i(M54エンジン)よりもやや大きく吼えるが、旧型330i(E46)に比べると遥かに静かで、大人の乗り物になったと感じた。セダンなのに…という意外性はもうひとつ減ってしまった。

ATセレクタをDに入れて店の敷地内を動かすと、120iほど重くないが、類似した感触のステアリングの重さを感じた。フルに切ってもその重さはあまり変化せず、それには違和感を抱いた。タイヤの切れ角はかなりのもので、小回り性能は素晴らしい。

公道に出て流れに乗って走ると、スロットルペダルのスムーズな動きと加速の反応の滑らかさに時代の流れを感じた。微妙な調整が難しく唐突に加速した旧型330i(E46)と比べて、遥かに洗練されたフィーリングになっていたのである。

DレンジにおけるATの設定はおそらく2速発進で、スロットルペダルをあまり踏まないでいるとあっという間に次のギアへシフトアップしてしまうのが気になった。シフトアップのタイミングが、これからスロットルを開いて行こうとする矢先であるため、ギアが変わる瞬間にエンジン回転が急上昇して、うまく運転するのが難しかった。運転手がもう少し早めにスロットルペダルを大きく踏めばいいのかもしれないが、クルマ側で2速をもうちょっと維持してくれてもいいのではないかとも思う。

乗り心地はとても洗練されたものになり、ランフラットタイヤを履いていることなどまったく意識することさえなかった。225/45R17タイヤと標準設定サスペンションの組み合わせは、とても快適な走りを提供してくれた。

エンジン性能を確かめようとフルスロットルにしてみると、なかなか勢い良く加速してくれた。3.0Lエンジンのセダンとしては最も速いクルマだと思う。さすがにエンジン屋だけのことはある。旧型330i(E46)と比べると、静かな中で加速するため、耳から力強さは伝わってこないが、大人びた乗り味は飽きが来ないと思う。

ブレーキは従来どおりタッチが自然でとても踏みやすかった。絶妙のセッティングである。

従来からBMWのATは、Dレンジで "その速度において変速できる最も高いギア" までシフトアップすることをせず、ある程度高いエンジン回転を保ちながら加速に備える体制をとってきた。E90についてもそれは同じで、Tipシフトでアップシフトすると、Dレンジ時よりもエンジン回転を下げて運転することが可能であった。交通量の少ない道を単独で走る場合は、Dレンジのお任せ運転ではなく、Tipシフトを積極的に使ってアップシフトをしてやると好燃費を得られるだろう。

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短時間の試乗であったが、E90型 330iはとてもバランス良くできたクルマで、隙がないと感じた。E46はDセグメント車の到達目標として長きに渡って地位を譲らなかったが、ここに来てまた新たな基準ができたということである。

ひとつだけ問題なのは価格である。ドイツでは3.1万EUROなのに、日本では約600万円とは。。日本仕様は確かにオプション品がとてもたくさん付いており、直接比較できないのであるが、時間があったら同一仕様にしてドイツ価格を出してみようと思う。 ただ、320iについては、ドイツ価格が2.34万EUROなので、日本仕様(370万円)は高くない。

余談:展示車両としてDynamic packageの仕様が置いてあったので、運転席のスポーツシートの感触を確かめてみた。これは従来のM-sport用と同じような腰周りがタイトでクッションが硬いものであり、体にフィットして良い感触であった。E90を選ぶなら、スポーツシート装着車に限る。

2005年5月

320i

6AT

399万円(旧価格)

380万円(税抜)

自動車関係のメディアでとても評判の高い320iも試してみることにした。

標準車の柔らかいシートに座り、足元にあるはずのスライド調節のレバーを探ると、そこには何もなかった。電動調整式になったのである。アルミホイール、6段AT、カーテンエアバッグ、ESPなどが付加されながら、E46の318iよりも安い価格設定というのは、BMW日本法人の戦略を感じる。

混雑した道における試乗に出てみると、やはりステアリングがと同じフィーリングであることを確認した。ねっとりとした路面の抵抗ではない重さはあまり気持ちのいいものではない。

スロットルペダルをわずかに踏んで発進すると、とても穏やかな加速感が得られた。このATは2速発進のようである。Dsモードにすると 1速で発進するようになるが、1速はかなり低いギア比ゆえ、短時間しか使われなかった。試しにTipシフトで1速に固定して発進してみると、あっという間に5000rpmまで回ってしまった。この4気筒エンジンは、高回転までストレスなく回ることをここで知ることになった。

この後、Dレンジにおける加速時の自動ダウンシフトを試してみた。定常走行(ギアは4か5が選択されていたと思う)からペダルを徐々に踏み込むと、ストロークに応じてギアがだんだんと落ちていくのは分かったが、最初は1段だけ落ちた感じなのに、次のステップでは一度に2段落ちたようなエンジン回転数変動を感じた。これは4→3、3→2のステップ比の差によるものなのか、それとも想像どおり1段ずつ落ちずに一気にキックダウン(5→4、4→2)したのか、1回の経験では分からなかった。ともかく加速時の変速マナーはマークXの6段ATのほうがスマートだと感じた。E90では6段ATのギアリングは全車共通であるが、トルクの小さい2.0Lエンジンを十分に生かすためには、6つあるギアの比を根本的に見直すといいだろう。常時1速発進の前提でギア比を組み直せば(1速を高くして、他のギアの比を接近させる)、もっと小気味良い走りが実現すると思う。E46では5段ATのギア比は4気筒と6気筒で別物だったのである。E90でもこだわって欲しい。

2.0Lエンジンは、120iでもパワフルだとは思わなかったが、さらに重い320iでは余裕はない。最も加速Gの大きくかかる1速フルスロットルを急にやってみても、同乗者はまったく驚くことはなかった(驚かせるのが目的ではないが、何をやっても想定内というのは面白くない)

今回は70km/hぐらいしか速度を出せなかったが、そのときの安定した走りっぷりは素晴らしいものであった。日本の交通事情において一般の人が走る分には、動力性能はこれぐらいでいいのかもしれない。320iは戦略どおりVWに迫る勢いで売れるだろう。

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3日間モニターに参加したので、詳しい話はそちらで。

2006年7月

323i

Hi-Line package

6AT

480万円(税込)

323iは6気筒2.5Lエンジンを積むモデルである。

すでに2.5Lエンジンを搭載したモデルとして325iが販売されているが、そのエンジンを低いチューニングレベルに変更して載せたのが323iである。両車のエンジンは腰下(エンジンブロック、クランクシャフト、ピストン、コネクティングロッドなど)が同一で、ヘッド周りのみが異なるものと思われる。先代(E46)のように腰下が別の 低出力エンジン(2.17L)を新設計して新たなグレードを作るよりも、腰下を共用してカムシャフトやコンピュータの変更だけで別のグレードが設定できるのなら、かなり安上がりになる。325iと323iは外装も内装もすべて同一であるのに、価格差はなんと50万円。原価はほぼ同一であっても性能がかなり違うため、BMWマニアの中には325iに50万円分の付加価値を感じて買ってしまう人もいるのだろう。

4気筒の320iと比べると323iは72万円高い。この二車の間には装備の違いがいろいろとあるし、4気筒と6気筒という記号性の違いがあるため、客は自己の求めるものに応じて迷わずにどちらかを選択するだろう。

では、E46後期にあった320i(6気筒2.17L)の後継とも言えるこの6気筒廉価版の味を確かめてみよう。

内装はハイライン仕様(オプション)のため革シートが備わるが、シートそのものは320iと変わりはなく、腰のあたりが柔らかく沈むものであった。展示車のM-Sportのシートは沈み具合がまったく異なり、良い感触であったのに、どうしてノーマル仕様はこんな フニャフニャシートをいつまでも使うのだろう。

低速時の操舵力がとても重く、ステアリングを戻す方向にも力を入れなければならないという特性は320iと変わりはなかった。速度が高まればステアリングの違和感は薄れてゆき、安定感のあるフィーリングになるのも320iと同じであった。 良い感触を得られる速度域が高いというのは、ドイツ車に乗っていることを喜ぶ人には都合がいいが、日本の都会で使う分には好ましいとは言えない。

普通に街を流しているときには6気筒であることや2.5Lであることを特に感じることはなく、320iに対する優位性は感じられなかった。フルスロットル加速を試してみると、E46よりは静かになったもののBMWお得意の6気筒エンジンは相変わらず豪快な音を奏でながら高回転まで淀みなく回ってくれた。ただし、あまり速くなく、どこにも盛り上がりがなく、しかも上の方で割れた排気音がするのはちょっと中途半端だと感じた。高回転で伸びない323i用のエンジン設定ならば、 変な演出を抑えてもっと滑らかな音作りをするほうが良いと思う。

直線路を80km/hぐらいで走っていると、頻繁に進路がチョロチョロと乱されることがあった。路面状態は良くなかったが、320iではそんな動きを一切見せなかったのにどうしてこんなに挙動が違うのかと思ったら、タイヤサイズが異なっていた。320iは205/55R16、323iは225/50R16を履いており、20mmの幅の差があった。そんなわずかな違いが大きい影響を及ぼしたのである。太いタイヤはBMWの得意芸のはずなのに、225幅ぐらいでこんな挙動を示すとは意外な感じがした。また、乗り心地はなんとなく体に堪える 微妙な突き上げが感じられ、落ち着いた感触が薄く、長時間乗車は遠慮したいと思った。ランフラットの太めのタイヤが原因なのか判断できないが、320iのほうが穏やかで疲れにくい乗り味だった印象はある。M-Sportを選ぼうと思っている人は、太いタイヤの影響を知るために荒れた路面での試乗をしておくほうがいいかもしれない。

323iは2速発進をするようであったので、Tipシフトで1速に落としてから発進加速を試してみた。すると、意外なことに車体の重さを感じてしまう鈍重な動きを見せた。320iより50kg重いだけなのに、軽快な感触が得られなかったのは、6気筒エンジンの回り方が物理的に重いというのも一因だろう。中間加速はなかなか好印象なのに、発進加速で重々しいというのでは都会では快感を得にくいだろう。

ブレーキはペダルタッチが硬めでなかなか良い減速フィーリングであった。シンプルな構造でありながらしっかりしているBMWのブレーキにはいつも感心させられる。しかし、320iでも感じたように停止直前の踏力コントロールがとても難しかった。ショックレスで止まれるように何度もチャレンジしたが、ガックンと止まったり、 ガックンを抑えるために踏力を抜いていくと、止まりそうになってから再びスーッと進んでみたりで、一度もきれいに止まることができなかった。 ロスが少ないトルコンを使っているのかも知れないが、そのせいでクリープが強くなり、コントロールしにくくなってしまったのだろう。2速発進にしてクリープ力を抑えてもこれなので、対処方法はないのかもしれない。ドイツの環境ではこのブレーキの確かさは安心に結びつくが、日本の都会で使うのなら、もっと静摩擦係数が低いパッドを選ぶほうがいいだろう。それによってガックン停止を抑えられることを期待したい。

街乗りで使用する範囲では323iは320iと比べて傑出した美点はなく、わざわざ余分な費用を出すことはないと思った。2本出しのマフラーの外観 (6気筒を端的に示す)を手に入れるために72万円も払う必要はない。320iを買ってシートにお金を掛けてやるほうが満足できるだろう。

 

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