~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

クルマ雑誌が教えてくれるもの

昔からクルマの雑誌は広告がたくさん掲載されており、部品の価格調査が雑誌を買う目的となることが多かった。しかし、新車の広告についてはまったく興味がなかった。中古車に乗る学生にとっては、安い部品を使って速くて乗りやすいクルマを仕上げることが最重要課題だったからである。

新車の情報が主体の雑誌もたまには買って読んだが、どんどん改良されたいいクルマが世の中に出てきているんだなあ、と感じるだけであった。

時が流れ、私にも新車を買うという時期がやってきた。インターネットがない時代、クルマの良し悪しを判断する基準は雑誌以外になく、いろいろな記事に目を通したものである。

そして決めたのがスズキ カプチーノ。雑誌の評価はものすごく高かったので、信用してしまったのである。だが、実際はこんな出来であった。

この一件によってクルマ雑誌の見方が大きく変わった。記事も広告の一部なんだということを知ったのである。

大枚をはたいて自分のクルマを買うのに、広告主の機嫌を取るために書かれた他人の印象を基に決めるとはなんと愚かなことかと思い始め、自分で身をもって感じることが大事なんだと考えるようになった。そして、こんなことになってしまった。

とはいえ、クルマ好きにとって雑誌の記事は娯楽として興味があるので、買わなくなったわけではない。雑誌社は購読者から得る収入ではなく広告料で運営されていると思いながら記事を読むと、 提灯持ちもなかなか苦労して書いているんだなあと思えるものがあって面白い。

3台目の新車を買ってからも、やはり絶えず世の中の動きを自分で体験することが重要だと考え、情報のある場所に足を運んでいる

インターネットが普及した今、素人がいろいろな意見を交わす場所があちこちに存在する。このことによって、クルマに限らず、得られる情報の量が飛躍的に増えた。もちろん玉石混交であるが、商品の欠点を知りたいと思ったなら、掲示板を見ると話題に事欠かない。

そういう素人が発信する情報に影響を受けているせいか、最近のクルマ雑誌の記事は褒め称えるだけの内容を書きにくくなっているのかもしれない。記事の中に批評や改善要望などをよく見かけるようになったと感じるのである。

そして今日、雑誌にショッキングな記事を見つけた。それは「GOLF5をライバルと考えているなんて、VWの仕事をあまりにも馬鹿にしている」という内容であった。オーリスはトヨタがカローラとは別に欧州向けに作ったクルマ(日本向けは、 欧州向けのついでに売っているだけ)なのに、そんなに駄目なのか。。。いや、ショックを受けたのは、オーリスが不出来だと言われたことに対してではない。

GOLF5もオーリスも街乗りで試してみて、自分なりの評価をしたつもりであった。しかし、実際のところ、それは僅かな一面に過ぎず、本質を何も見ていなかったということなのである。大多数の雑誌は「オーリスは欧州車レベルなのにお買い得だ」というイメージで書かれており、評論家と呼ばれる人のレベルの低さは素人と変わりがないものだった。 メーカーの話を聞いて、表面を見ただけなのである。雑誌が低レベル、メーカーも低レベル、ユーザーも低レベルというのがこの日本で蔓延していることにショックを受けたのである。

しかしながら、日本のお役所が定めた制限速度をだいたい守っている場合、一般ユーザーがクルマに乗っている時間の99%以上はリスクを何も考えずに走っている状態であり、緊迫した状況に陥るのは数年〜十数年に1回という頻度なので、限界領域でのクルマの本質を問う必要性が本当にあるのか、とも思ってしまう。強いブレーキングをしながらステアリングを急に切るという行動は、サーキット走行以外では滅多になく、20年の運転経験において危険回避中にスピンして制御不能になったことは 一度もない。

日本の交通死亡事故の中でリアの安定性が低いクルマが原因だった事例はどれぐらいあるのだろう。警察も役所も調査していないから分からないのが現状か。無謀運転、速度超過ということ以外に情報はない。何が起きても十分な調査がなされないのが日本である。制限速度を守らなかった者が悪い、それで何もかもおしまいである。 欧州では行政もメーカーもクルマによる事故を減らそうと考え、安定性が低いことをリコールによって改善するという動きがあるが、日本では実現しそうにない。

サーキット走行を経験した人ならクルマの本来の姿を垣間見たことがあるだろう。これまで所有したスターレットカプチーノインプレッサをいろいろなコースで試してみると、それぞれがどんな考え方に基づいて作られたのかを感じることができた。ただし、その動きは 低速の街乗りでの感覚とは別物だったのである。一般ユーザーは、買ってからでないと本質を見ることができない。

オーリスのリアの安定性がGOLF5の足元にも及ばないというのは、サーキットを走れば誰にでも分かるだろう。オーリスが日本専用のクルマならそれでいい。だが、世界一の自動車メーカーが欧州市場に売り込むのなら、もっと意気込みを見せて欲しいと思う。初代Audi TTの初期モデルのような高速での安定性欠如による死亡事故が起きてしまってはイメージ低下を免れない。

安価なことや故障が少ないことで日本車が売れるのも悪くないが、active safetyでも欧州車に負けない製品を作って欲しいと期待する。そういう観点でクルマを評価している雑誌がある。Dynamic safety testと題して連載しているNAVIである。その内容は興味深く、多くの日本車は低速での快適性や燃費だけを追求しているんだなということを知る。

そのような雑誌でクルマの弱点を明かしてもらうことにより、買ってしまったマイカーの要改善項目が出てくる。ウェットが苦手なタイヤがついているのなら銘柄を替えればいい。ブレーキの前後バランスが悪いのならパッドの銘柄を替えればいい。サスペンションの動きが悪いのなら設定の異なる製品に交換すればいい。リアの安定性を見直すためにアライメント設定を変更してもいい。本質は変えられないが、部品交換や調整によってクルマの動きは変化する。とにかく、自分のクルマが限界域でどんな動きを見せるのかを掴んでおくために、たまにはサーキットを走ってみるといい。あなたの運転技術で制御が難しそうなトリッキーな動きを見せるのなら、ハイスピードドライブは諦めることである。出来損ないのクルマが原因で死なないために、ユーザーとして知っておくべきことはいろいろとある。

 

戻る

 

inserted by FC2 system