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学生時代にFR車(KP61)を2台乗り継ぎ、「クルマを選ぶならFRだ!」と安易に考えていた私の夢は、速さを純粋に追い求めたFD3S(マツダRX-7)を買うことだった。しかし、仕事で赴任した札幌においては、雪道のことを考えると、パワフルなクルマよりもコントロールを楽しむほうが良いと思い直したのである。

適度なパワーでKP61のように楽しく振り回せるFR車を探してみたところ、ユーノス・ロードスター、スズキ・カプチーノが候補に上がった。オープンカーを望んではいなかったが、1992年当時FR車で手頃なものはその2車種ぐらいしか見当たらなかったので、積雪の重みでつぶれない金属屋根を持つという理由でカプチーノを 第一候補とした。ところが人気車のため試乗車はなく、展示車を見るだけで、雑誌の評価を素直に信じて注文してしまった。

車両を受け取った後、問題点、不満点が次から次へと出てきた。以下に概略を示す。

  

問題点

対応

ステアリングセンターの異常

納車されてすぐに気づいたのはステアリングをロックまで回した時の切れる量が左右で異なったこと。直進時にステアリングがセンターにあるのは当然だが、ロックまで切ってみると右には2回転、左には1回転という奇妙なもので、過去にこんな経験はしたことがなかった。ディーラーマンはそれで普通だと言うが、そんな訳ないやろ! 日本には右の急カーブが多いのか?(左側通行なので、どちらかといえば左まわりのほうが急カーブになるのかな???) スズキのクルマは出荷時の検査が細かくなされていないのかもしれない。

アライメント調整を含めて修正を要求したところ、左右の最大切れ角が同じになって戻ってきた。

ボディ剛性の低さ

駐車場の出入口に高低差7〜8cmの急スロープがあり、それを斜めに乗り越える時に車体がギシギシ音を立てた。特にクローズ時の屋根の接合部のキシミはひどいものだった。走行中のフニャフニャしたフィーリングも気持ちが悪かった。そこで、ユーノス・ロードスター1.8L車の真似(1.6L車のボディに種々の補強部材を追加してあった)をして、シートベルトアンカーを左右に結合する部材である「HALFWAY製 シートタワーバー」を付けてみたところ、若干きしみは改善された。しかし同じ効果を期待して取り付けたフロントのタワーバーは全く意味を成さなかった。のちにサスペンションスプリングを硬くしてからは、サスペンションで吸収する路面の変化をボディが受け持つことが多くなったため、さらにボディ剛性の低さを感じてしまうことになった。

着座位置の高さ

 

ノーマルシートは着座位置が異常に高く設定されていたため、サーキット走行のためにヘルメットを被ると、天井につかえて真直ぐな姿勢が取れなかった。また、シートクッションが柔らかすぎるため街乗りで数時間運転すると背中や腰に疲れがひどく溜まった。そこで社外品のシートを色々探してみたが、室内が狭いカプチーノに適合する製品は殆どなく、体にフィットするBRIDEのバケットシートは付けられなかった。最終的に有名メーカー品ではautolook製のシートが付けられるということが分かり、交換してみたところ、ノーマルシートで感じていた不満が解消した。おかげで1日300km以上走っても疲れることはなくなった。

シートクッションの悪さ

ステレオの音の悪さ

スピーカーが足元の奥(ドアより前方)に位置し、音がきれいに聞こえなかった。オーディオの音にこだわりは持っていない私であるが、ラジオもまともに聞こえないありさまで、とても我慢ができなかった。そこで、薄型のアンプ付サブウーファを助手席後ろの隔壁に取り付けて低音だけを響かせて気を紛らした。

サスペンションセッティングの悪さ

ノーマルサスペンションのままでサーキットを走ったとき、100km/hぐらいのカーブでスロットルOFFとともにステアリングを切ると、リア内側の伸び上がりがとてつもなく速く、そのロールスピードに恐怖を覚えた。ノーマルダンパーを外して手で伸縮させてみると、減衰力がほとんど発生していないことに唖然とした。ボディ剛性の低さをカバーするためのセットアップなのかもしれないが、スポーツ走行がまったく考えられていない脚であった。まずはスプリング交換(タナベSUPER-H)によって、ロールスピードの速さによる恐怖感を解消することができた。ダンパー(SS)も買ったが、あまりに減衰力が高く、ボディが負けそうだったので、装着せずに売ってしまった。他ブランドのダンパーを試すことはなかった。

ブレーキフィーリングの悪さ

ブレーキ性能自体は、700kgの車両重量に四輪ディスクを装着しているため問題はないと思われた。しかし、前後バランスが悪く、剛性感もないペダルフィーリングだったので、リアPADを良く効くもの(摩擦係数が高いカーボンメタル材)に交換してバランスを調整した。フロントPADも一緒に買ったが、使うことはなかった。

サーキット走行に数回参加したが、ボディがフニャフニャで真剣に走る気になれず、結果的にはブレーキに手を加える必要はあまりなかった。

駆動系の遊びの多さ

シフトフィーリングがフニャフニャで、常にシフトレバーが揺れているので気持ちが悪かった。また、加減速での駆動系の遊びの多さが気になった。エンジンマウント、ミッションマウントを外してみると、ゴムはブヨブヨで、フィーリングを全く考えずに振動遮断だけを考えたものであった。

そこで、デフマウント(これだけは業者に依頼)も含めてゴムをすべてハード仕様(SS)にすると、エンジン振動が室内に伝わるようになったが、駆動系の遊びが減ってカッチリしたフィーリングになり、運転は楽しくなった。

コントロール性の悪さ

前後重量配分が50:50に近かったので、タイヤヘの負担が平等になってコントロール性が良いと想像していた。しかし、実際に雪道を走ってみるとリアの流れ方が唐突で、流れ始めると止まらなかった。タイヤ自体の性能も関係すると思うが、一番の問題はトレッドが狭いことだろう。

それまで乗っていたFR車は雪道でのスライドコントロールがたやすいクルマであったが、カプチーノはとても怖かった。サーキット走行でもリアが出ると止まらないかもしれないと思いつつ走っていたため、いろいろなチャレンジが出来ず、せっかくのFRを楽しめなかった。

現行の軽自動車規格で幅を80mm広げられたら、もっと良い車になりそうである。

トラクション性能の悪さ

一般的なFR車と違って駆動輪への重量配分は50%に近いため、トラクション性能には有利に働くと思っていた。過去に乗っていたFR車(車重は同じく700kg)と比べてリアタイヤにかかる重量はカプチーノのほうが30kgほど多いにもかかわらず、トラクション性能に大いに不満を感じた。凍った路面に雪が5cmぐらい積もったすすきの交差点で最悪の事態が訪れた。前進しようとすると、前輪が受ける積雪の抵抗によって後輪が空転してしまい、身動きがとれず、夕暮れの人ごみの中で恥ずかしい思いをした。その後、純正トルセンLSDを組んでもらったが、ほとんどトラクション性能は高まらなかった。

タイヤの性能が悪かったのだろうか。

エンジンパワー、フィーリングの悪さ

F6Aエンジンの最高回転は8500rpmであるが、最高出力が6500rpmで出るため、高回転はまったく面白くなかった。また、レスポンスも加速も悪く、山道の登りで古いインテグラ(ZCエンジン)にあっさりと抜かれてしまった。フライホイール軽量化、ブーストアップで対策はある程度可能と考えたが、実施はしなかった。

SS: SUZUKI SPORT

雑誌の評価を鵜呑みにして、ミニマムスポーツカーをイメージして買ってみたものの、実体は外観のみを重視して街乗りでの不快さを取り除いただけの安物のゴム草履であった。運転して楽しいロードスターとは似て非なるものであり、クルマ作りの精神が違うということを身をもって感じた。

モーターショウで見たコンセプトカーは格好が良かったが、市販のノーマル車はフニャフニャ、ブヨブヨでインフォメーションがない安易に作られたおもちゃ。部品はほとんどが流用で、カルタス、アルト、ジムニーの部品を寄せ集めて作られていた(カルタスから制動系とホイール、アルトからエンジンの一部とステアリングホイール、ジムニーからエンジンの一部、ミッションとデフ)。専用部品はボディとサスペンションぐらい。ダブルウィッシュボーンサスは専用設計であるが、ボディが全く他車種と似ていないので、どうせ新たに設計するのならユーノス・ロードスターと同じダブルウィッシュボーンにすればイメージが良いと考えたのだろう。

クルマde Runkingというサイトで国産オープンカーの人気投票をしていたが、私の予想を大きく裏切ってカプチーノが1位だった。街乗りだけにしか使用せず、クルマの表面だけしか見ていない人がどれほど多いかをこのサイトから知ることができた。おもちゃやアクセサリーとして買うのは反対しないが、クルマとしての完成度をもう少し高めてから出してもらいたかったものである。

スポーツカーとしてはダメでも、実用車としてはまあ使えるものであった(ビート、AZ-1と比べたら、というだけの話)。嫁はんと2人、3泊分の荷物をトランクに詰め込み、札幌から函館へ、また釧路へ、はたまたサロマ湖へと出かけた。ドライブ旅行の際には、「無駄な空間を運ばなくて済む」ということが心を満たしてくれた。それでも、無駄がない=余裕がないというのも確かであり、ファミリーカーに乗り 換えることになった。

セカンドカーとして所有することが容易なためか、生産が終了した現在でも高い人気を維持しているようである。現行の軽自動車のサイズを生かした新たなボディ、新たなサスセッティングを施し、「低ブースト圧で高回転まで回るエンジンをMTで操るスポーツ車」「低回転型ハイレスポンスターボのATの街乗り車」を作れば、かなり売れるのではないかと思う。ダイハツ・コペンに対抗してスズキにも新型を期待したいところだが、コストのことしか頭にない鈴木自動車には無理な話だろう。

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その後スズキのクルマには永らく触れることがなかったが、2001年に2代目WagonRを知人が買い、助手席に乗る機会ができた。そして驚いた。ひとつめは、新規格の軽自動車は広い!ということに。ふたつめは、エンジンがガァーガァーと騒がしく、乗り味がまるで軽トラであったことにである。どうしてこんなトラックが日本で一番売れているのだろう。別の選択肢もあるのに。。。軽自動車なんて屋根のついたスクーターなので、どんな出来栄えでも文句が出ないのだろうか。

 

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鈴木自動車の不正行為が発覚

 

 

 

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