----------------------------------

FWD

 

 

R1e(大阪モーターショー)

まずはR1のベースになったR2について述べる。2003年12月にR2が登場したとき、大阪モーターショーで一緒に並んでいた「R1e」(ショー用のスタディモデル)とのデザインの違いにいささか幻滅した記憶がある。車体寸法に制限のない「R1e」は新しくてなかなか格好が良いデザインであると感じたが、R2を見て軽自動車の枠の中ではデザインの自由度が低いのだということを痛感したのである。他社の軽自動車と比べるとR2は外装デザインで頑張っているのは感じられるたが、やはり室内空間が優先され、外観は無理やりに軽自動車枠に嵌め込まれてしまったというのが伝わってきた。その最たるものは、前端の形状である。まるでコンクリートの壁に衝突したかの如く平らな顔になってしまい、デザイナーが可哀想でならない。

2004年12月、R1が発表されたとき、ショーで見た「R1e」のイメージが再現されていて嬉しくなった。R2と比べて全長を110mm短縮し、ホイールベースを165mm短縮することにより、オーバーハングに55mmの余裕を持たせ、その分をデザインに当てたのである。これで平面だった顔つきがガラリと変わり、表情が良くなった。

試乗車に乗り込んでみると、前席のスペースはR2と変わりなく、部品もほとんど同じであるため、特に目新しいと感じることはなかった。メーターの意匠が変更されて、レガシィやインプレッサのようにキーONで指針が振り切れるギミックが装備されていているのが差別化ポイントとなっていた。後席はR2でも狭かったが、R1ではもはや荷物置きにすぎず、大人は乗れない。

冷えたエンジンを始動すると(外気温はプラス10℃ぐらい)、アイドル回転は2000rpmを越えた。R2と同様にR1にも水温計はなく、青い警告ランプで低温状態であることを示してくれる。ざっとクルマを見ている間に警告ランプは消え、エンジン回転も下がったので、走り出すことにした。

発進はトルコンのおかげで滑らかに動いてくれた。R1は意外にトルコンを使う領域が広く、約25km/hまでロックアップしないため、急発進時にはトルコンの作用によって速度の乗りが良くなると思われる。

60km/hを越えると、盛大にロードノイズが入ってきて驚いた。どんな銘柄のタイヤを履いているのか確認しなかったが、エンジン音が感知できないぐらいに大きいノイズを発生することに対して、開発者の見識を疑ってしまう。155/60R15という大きいタイヤを装着する意味が本当にあるのだろうか。立派な15インチホイールの奥に見えるブレーキサイズは貧弱な13インチ用なのである。エンジン音は、80km/hで2800rpm程度なので静かであった。

山坂道へクルマを進め、遅い先行車についてゆっくり走ったところ、ボディと脚は軽自動車らしからぬ感触を示し、WagonRMOVEとは明らかに違うものを感じた。荒れた路面でも重い15インチタイヤを持て余すことなくきれいに動かしていることには感心してしまった。やや重めに設定された電動パワステは路面状況をあまり伝えてくれないが、日産TIIDAと比べると遥かにフィーリングが良く、違和感を見せたのはほんの僅かな時間だけであった。

走行中にATのセレクタをLに入れてみると、CVTのギア比を低い領域に設定し、エンジン回転を高め、エンジンブレーキを十分効かせることができた。フルスロットル状態では、DレンジよりもLレンジのほうが高い回転数を保つ設定になっていることが分かった。あまり険しくない山道ではLではギア比が低すぎて使いにくいので、LとDの中間の(TIIDAにあるSPORTスイッチのような)変速比を使えるようにしてもらいたい。

スロットルを徐々に開いていくと、変速比が変化してエンジン回転が徐々に高まっていくのはCVTの一般の動きである。しかし、回転の高まり方がスロットル開度と連動せず、あとから非常に遅れてついてくるというのはフィーリングが良くない。たとえば、スーッと8割までスロットルを踏んでエンジン回転が徐々に上がって5000rpmに達して、「よし、この回転数を維持して行こう」と思って7割までスロットルペダルを戻したとしても、エンジン回転はさらにどんどん高まっていこうとするのである。このような運転手の意図にそぐわない設定では気持ちよく走ることができない。同じスバルのVIVIOのCVTはもっと単純な制御がなされ、スロットルの操作に応じて、そのスロットル開度で設定されたエンジン回転数にすぐに持っていき、戻せば明確に反応が出るので、運転手の思いが伝わり易いのである。一部の評論家と呼ばれる人が変な情報をインプットしたのだと思われるが、「MTのように速度とエンジン回転数が連動するように」、「スロットルを急に開いてもエンジン回転が急に高まらないように」という意見をスバルは真に受けたのかもしれない。運転手がどのように考え、どのような結果を期待するのか、もう少しマトモな意見を制御に反映してもらいたい。CVTのメリットを生かすという点で、VIVIOのやり方で良いと思うのである。

山道の下りをやや高めの(限界には程遠い)速度で走るとき、カーブでは前輪荷重を高めてステアリングの利きを良くするためブレーキを残して進入するのが通例である。今日もそのように走っていると、カーブの途中にあったマンホールの凸部にリアの内輪が乗った次の瞬間、ABSが顔を出し、しばらくペダルに微振動が残った。攻めた走りをしていたわけでもなく、路面が濡れていたわけでもないのに、ABSが作動するというのはいかがなものか。おそらくリアの伸び側ストロークが足りないのだろう。それとも、ブレーキの前後バランスやABSの設定が他のスバルのクルマと同じように不出来なのかもしれない。また、着座位置が高すぎることとシートのサポート性が悪すぎるので、タイヤの限界まで攻めてみようという気にならない。安全マージンとして太いタイヤを履くという手なのかもしれないが、バランスは取れていない。

普通に乗っているときの質感は高いので、もし2台分のガレージがあれば通勤用に買ってもいいと思ってしまう。ただし、次期「オカンの草履」としては、4人乗車の機会を避けられないため、VIVIOの代わりを務められない。

 

戻る

 

inserted by FC2 system