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1.5XG

4AT

FWD

1,648,500円(税込)

ヨーロッパで人気が高まっているという小型クロスオーバー車が日本でも発売された。その名はSX4Swift4WDX-overという意図で命名したのだろうか。

エンジンは1.5Lと2.0Lの2種類、ボディはオーバーフェンダやルーフレールで武装したオフロード風の「X」が付くものと、「X」が付かないシンプルなタイプの2種類、駆動方式はFWDとi-AWDが用意される。装備内容は廉価版の1.5Eを除くとほぼフル装備であり、驚くのはサイドエアバッグやカーテンエアバッグが標準装備されることである。ESPは2.0Lモデルに備わる。

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外観は何と表現すればいいのだろう。ショートワゴンの背を高くしたクルマという感じで、FORESTERRAV4ほどOFF ROADを考えたモデルでもない(最低地上高160〜175mm)。試乗車のXGの前後バンパーの下につくアンダーガード風の装飾はどういうわけか黒色 になってしまい、欧州仕様のようにアルミ調(塗装)ではない。また、ボディサイドに幅広のプロテクタも付かず、オフロード風の味付けは控えめになっている。日本人にとっては位置付けが分かりにくいクルマであるが、ライバル不在のポイントを狙ったのかもしれない。

運転席に乗り込んでみると、Swiftと同様に内装の作りがとても上質なものであることを感じた。Swift以降でスズキは考え方を大幅に変えたようで、安さだけで勝負するという手をもはや使わなくなった。シートはなかなかサポート感の良いものであった。

SX4はSwiftよりも全高が高いため、地上から着座位置までの高さはSwiftよりも高く、見晴らしが良い。しかし車内でのシートポジションはSwiftよりも床面に近いという感じがした。ホイールベースを伸ばしたので、アップライトポジションにする必要性がなくなったのだろう。175cmの男が運転しても、その後ろに同じ体型の男が不満なく座ることができる。

街乗りをしてみると、事前に説明があった「脚が硬い」ということはまったく感じなかった。ノーズダイブ等の姿勢変化が少ないことから、しっかりした脚であることは分かったが、乗り心地はとてもマイルドで、突き上げを気にするようなことは全然なかった。Swift Sportと比較すると、SX4の乗り味は圧倒的に柔らかくて穏やかと言える。

SX4のシャシはSwiftがベースとはいえ、ボディはかなり大きくなり、重量は1190kgもある。それを1.5Lエンジンで引っ張るのは無理があるのではないかと思っていたが、街乗りでは何ら問題はなかった。街乗りで気になったのは、パワステのフィーリングで、切り始めのフリクションがやや大きいと感じたのである。慣れれば問題のないレベルの話であるが、電動であることを明確に感じてしまうのは気分的に良くない。

カーブのある坂道で全開走行をすると、1.5Lという小排気量エンジンゆえに上り坂を元気に走るのは困難であった。一方、カーブでの姿勢はロールが小さく、シート上での体も安定しており、なかなかの優れものであった。これは広い車幅やトレッドが貢献しているのだろう。タイヤ(TURANZA)のグリップ性能が低く、発生する横Gが小さかったのがロールを感じさせない原因ではあるが、脚のセッティングは良好であると言える。ノーマル状態でバランスの取れたセッティングができているので、コーナーリング速度のアップを目指してハイグリップタイヤに替えるのは良くない。もしもタイヤをハイグリップ志向に替えるのなら、バランスが崩れないように脚の部品変更も考慮するほうがいい。ともかくノーマル状態で背の高さを忘れさせてくれるような気持ち良い動きを見せてくれた。

ブレーキもなかなかしっかりしたタッチで、踏み心地の良いものであった。本当にスズキのクルマ作りは変わった。やればできるのである。フロントブレーキは車重を考慮してSwift Sport用を流用しているよう に見えた。また、リアブレーキはドラム径がSwiftよりも大きい。

普通にドライブしただけではちょっとギア比が高くてパワーが足りないことぐらいしか不満はないと思っていたが、実は欠点があった。駐車場に入れようとすると、後方視界が悪いのである。リアウィンドーの位置が高く、真後ろの状況がつかめず、どこまで下がれるのかがまったく分からなかった。また、斜め後方も太いピラーが邪魔をして視界を妨げている。

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SX4は日本ではどんな人が購入するのだろう。どんな環境で使ったらよいのか想像ができない。今後WRCに参戦するというので、そのイメージ(公道ならどんな場所でも速く走れる)で引っ張っていくのだろうか。

日常の用足しに使うクルマとしては大きさはちょうど良いが、全高が1.55mを超えるので、都会の人はちょっと困る場面が出てくるかもしれない。

SX4はヨーロッパでは1.5L、1.6L、そして1.9Lディーゼルというラインアップがあり、2.0Lモデルは存在しない。2.0L+4段ATというのはどうやら日本専用のようである。つまり、2.0L+MTを期待するのは難しいと想像できる。1.9Lディーゼル用の6段MTを2.0Lと組み合わせてくれると嬉しいのだが。。アイシンの5段ATを組み合わせてもいい。

1.5G

4AT

FWD

1,648,500円(税込)

 

SX4の販売戦略の中心にはオフロード風スタイルの1.5XGがあるようで、ほとんどの店頭に置いてある。これまでにないスタイリングなので、ある種の客を集めることができるだろう。

今回は普通の外観を持つ1.5Gが試乗車として出ていたので、乗ってみることにした。

Gにはオーバーフェンダー風カバー、アンダーガード風カバーやルーフレールが付かないので、かなりシンプルに見える。ちょっと背が高いハッチバックというのは日本車にはないジャンルである。欧州ではGOLF PLUSのライバルになるのだろうか。

外観以外はすべてXGと同じ仕様なので、乗っても何ら変わりはない。そこで、今回はATの制御についてちょっと確認してみた。セレクタの前進用ポジションはD、3、2、1の4つがある。Dはもちろん4段のすべてを使うものであるが、3や2というのは各社でいろいろな設定が存在する。SX4では、 セレクタが3でも2でも発進は必ず1速から出て、表示のギアを上限にするものであった。つまり、2速発進や3速発進ができないのである。FWDモデルでは雪道で2速発進を選びたい場合もあるのではないかと思うが、スズキはそういう考えを持たないようである。雪道を走る機会のある人は4WDを選んで欲しいということなのだろう。

SX4はなかなか乗り心地が良く、ステア時の頭の入りがとても気持ち良いクルマであることをもう一度認識した。

2.0S

4AT

FWD

1,827,000円(税込)

 

2.0Sはタイヤサイズを見て分かるように少しスポーティな味付けにされている ことが想像できる。車高はタイヤ径が小さくなったことに加えて、バネが短くなったことも合わせて15mm低くなっている。15mmのうちバネの分担は10mm弱 と小さいものなので、車高短のような味にはなっていないと思うが、乗って確かめてみた。

外装では17インチホイールとリアディスクブレーキが装着されることだけが1.5Lモデルとの違いで、内装ではどういうわけか1.5Lモデルに標準装備されるステレオが省略されている。2.0Lモデルだけに装備されるのはESPである。

動かしてみると、パーキングスピードではステアリングがとても軽く、取り回しの良さそうな仕上がりになっていた。

80km/h程度の速度でゆるやかにステアリングを左右に切る場面では、操舵感に渋さ(簡単にはハンドルを動かしてやらないぞ、という抵抗感)が現れ、電動パワステだと気付くことになった。 重めのステアリングで1.5Lモデルとの違いを作り出そうとしたのかもしれないが、不自然な感触が残るのではせっかくの仕事も徒労に終わってしまう。ある程度の速度になればパワーアシストをカットしてもいいので、もっと自然なフィーリングにして欲しい。

乗り心地はタイヤのたわみの少なさを感じるもので、1.5Lモデルよりもしっかりしていた。2.0Lモデルの脚はON ROAD向けのセッティングと言えよう。SX4の中ではスポーティな位置づけではあるが、一般的には普通のクルマなので、街乗りで何ら問題なく使える乗り味であった。

AISINのラベルが貼られた4段ATはスムーズに変速をこなし、自然で扱いやすい設定であったが、全体的にギア比が高すぎて、加速の鋭さはなかった。2速ギアは5000rpmで100km/hに達するハイギアード設計である。できれば5段ATにして各ギアをcloseさせて欲しい。 スズキ社内で他車と部品を共用しない(横置き2.0Lの車種は他にないので、ATはSX4 2.0S専用となる)のであれば、AISINのATの中から5段でも6段でも選ぶことが可能だと思う。

SX4に興味を示す客からMTモデルの発売を求める声が多く出ているという。スズキの小型車はスポーティなイメージがあるし、WRCにも参戦するというのなら、何らかのイメージリーダー的なグレードがあってもいい。Swift SportでMTのダイレクトな感触に好感を持ったので、SX4にも6段MTを載せたスポーティなモデル(少しだけエンジンチューニングをして欲しい)を出してもらえると、スズキファンは喜ぶだろう。

 

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