ALFA ROMEO

Alfa 156

Sportwagon

3.2 V6

GTA

SELESPEED

559万円(税抜)

JuneAlfa 147 TwinSparkを買った店は試乗車の配備が充実しており、今回は6段変速のセレスピードを試すことにした。

【助手席にて(ドライバーはJune)】

まずは147(2.0TS)の5段セレスピードとの比較のためにJuneに運転してもらった。

基本的に147と操作系は同じであるため、何ら問題なく普通にドライブを楽しむことができた。1→2のシフトアップは、6段ミッションでもあまりギア比がクロースしていない(GTA:63.86%、2.0TS:63.13%)ので、待ち時間は意外に長かった。2→3もほとんど差がない(GTA:68.01%、2.0TS:67.92%)ので、いつもの147とあまり変わらなかった。

Juneはエンジンを低回転で使うのが好きなので、あまり回さないで走ったが、3.2Lエンジンはとてもトルクフルでピックアップが良く、2000rpmでも急な坂をグイグイと上ってくれるのが頼もしいと思った。さすがに1.6倍の排気量は伊達ではない。

ボディや脚は締め上げられ、2.0TSとはまったく別物であった。それでも乗り心地は良く、上手にセッティングするものだと感心した。

Juneは156GTAを「金属部品を包み隠す覆いが薄くて、動いているものをより直接的に感じる」と評した。確かにそのとおりである。GTAはそれを意図して作られているはずだから。

【運転席にて】

Juneからステアリングを引き継いで芦有ドライブウェイの入り口付近まで上ってみた。

上り坂ではエンジンの力強さが印象的で、いとも簡単にアルファの魔法にかかってしまった。本当のところはスロットル特性を敏感にしているのだと思うが、さじ加減が実に巧妙で、少ない踏み代のときにはスロットルをあまり開けず、大きく踏めばグイグイっとスロットル開度を増すというのが心憎い。発進から無闇にドカンと出るBMW330i(E46のM54エンジン搭載車)とはセンスが異なる。また、同じようなパワー/トルク値を備えるLegacy 3.0(BLのSpec.B)と比べても、官能的な刺激がまったく異なる。アルファの魔法を他のメーカーが真似するのは難しいのだろう。

ステアリングの手ごたえも実に巧妙で、切り始めは穏やかに動き出し、切り込めばグイグイっと曲がっていく。11.3という驚異のギア比を持っているにもかかわらず、あまり緊張感を抱かずに走ることができるのは素晴らしい。ただ、ロックtoロックが1.75回転と少ないので、一杯に回してもタイヤ自体があまり切れてくれないのである(タイヤ切れ角の計算値は、GTA:55.75度、インプレッサ:67.2度)。そのため、タイトターンではフルに切らないと曲がれない場所が多くあった。例えばGTAで郡上八幡城に上る道を走ると苦労するだろう(何度も切り返しが必要)。

ブレーキは初期制動がかなり強く、コントロール性が悪かった。これは安心感を抱かせるためのセッティングなのかもしれないが、他の操作系と同じように初期は緩やかで、踏んでいけばググッと締め付けるように利くような設定にしてもらいたい。ノーマル156はブレーキの利きが良くないのに、GTAは利き過ぎるというのは奇妙である。

全体的な乗り味は147GTAとほとんど同じであったが、156GTAのシートは体に合わなかった。おそらくサイズが大きいのだろう。表皮の革もすべり易いので、ワインディング路では体が落ち着かず、運転に集中することが出来なかった。

アルファロメオは147(2.0TS)であっても山道を飛ばすと楽しいが、GTAはクルマが発するオーラが極めて濃い。いつでも「早く踏め」「もっと行け」「上まで回せ」とクルマが話し掛けてくるのである。こんなクルマを日本の街で乗ったら、ストレスが溜まってしまうことだろう。日本の交通環境と運転手のマナーを改善しない限りGTAに乗ることはできない。

Alfa 156

Sportwagon

2.0 JTS

SELESPEED

革シート

エンジンがTwin SparkからJTSに変更されたとき(外観変更なしの時)には試乗する機会を持つことができなかったが、今回、外観がジウジアーロのデザインになったワゴンに乗ることができた。

友人JuneがAlfa 147を買ってから、数回(距離は350kmぐらい)運転する機会があったので、それと比較してみよう。

内装の仕立てはエンジン変更時のものと変わっていないため、ダッシュボードやドア内張りの表皮が安っぽさを感じさせる。ステアリングホイールは147用なので、表皮が統一されていないのも気持ち悪い。

さて、始めはセレスピードをマニュアルで操作して走ってみる。発進時のクラッチ操作とシフトアップの感触は147と変わらず、やはり変速はギクシャクした感じが残っていた。全自動変速のCITYモードを選ぶと、1stから2ndに上がるときのタイムラグは147と同様に大きかった。147ではCITYモードで走行中にシフト操作を行うと、手動モードに変更されてしまい、全自動変速にするにはCITYボタンを再度押す必要があった。しかし、156では制御が改善されており、CITYモードで走行中にレバーやパドルで一時的な変速命令をしても、しばらく経つと全自動変速に復帰してくれるようになった。一時的にエンジンブレーキが欲しいときなどに気兼ねなくパドル操作をすることができるので、Tiptronicと同様に日常で便利に使えるだろう。セレスピードのノブは、147の飾り気の無い単純な形状のものと比べ、156にはデザインされたものが装着されていた。

走り味は、147のようなボヨンボヨンと弾む柔な感じではなく、下に記載した古い156セダンのような締まった脚でスイスイと動く感じでもなく、中庸な動きにまとまっていた。ただ、ボディがユルいことだけは明確に感じられた。Alfa147/156のシャキッとしないフィーリングは、意図的な味付けなのだろうか。

ブレーキは左足で踏めるレイアウトであったので、試乗中はずっと左で踏んだ。しかし、どういうわけかペダルタッチは147と比べて曖昧で、カッチリ感に乏しいものであった。同じシャシを使っているのにどうしてこんなに差が出るのか不思議であるが、雑誌の記事で読んだ「ブレーキの効きが悪い」というのはコレだったのか、と認識することはできた。

JTS 16バルブのエンジンは、Twin Spark(TS)と音が違うというのは分かったが、それ以外には差を感じることができなかった。TSエンジンよりトルクは厚いようであるが、156SWは147より車重があるため、ありがたみを感じることができなかったようである。同じボディで比べれば、JTSの良さが分かったかもしれない。試しに 2ndと3rdギアでスロットルを全開にして5500rpmまで回してみたが、やはり何の変哲もない普通の2.0LのNAエンジンであった。

試乗にはアレーゼの支店長に同行いただき、いろいろな話を聞くことができた。その中のひとつを挙げると、インプレッサやレガシィからの乗り換え組が多いという。彼らの多くは、初回の車検を受ける前に行動していたそうである。「性能や性格が全然違うのに何故だろう」と支店長は不思議がっていたが、答えは簡単である。SUBARUもALFA ROMEOも「きっと運転するのが楽しいだろう」というイメージがある。しかし、SUBARUは真面目に速さを優先したため、街で乗ってみると全然面白くない。サーキットで限界域に達して初めて、「なんてコントロールしやすくて楽しいんだ」と思えるのである。それに対して、ALFA ROMEOは普通に乗っているときでも色々と訴えてかけてくるように作られているのだろう。人間の操作に対してクルマから返ってくる反応が不思議なくらいに気持ちを高めてくれるのである。サーキットを走らず、街乗りで使うだけの人は、ALFA ROMEOを選んで正解である。

ディーラーからの帰り道、今となってはボディ剛性が高いとは言えない我がWRX(GC8)を、「なんとカッチリした乗り味なんだ」と感じたことを付け加えておく。

Alfa 156

2.0

Twin Spark

5MT

中古車

156がマイナーチェンジを受けたので見に行った。エンジンがツインスパーク(TS)から筒内直噴ガソリンエンジン(JTS)に変更されたのが大きいポイントである。その他の変更としては、内装に147と共通部品(ステアリングホイール等)を採用して、仕立てが変更されている(展示車両を拝見)。

156に触れるのは初めてであったが、内装の雰囲気は147と比べると安っぽいので落胆した。外装、エンジンルーム、荷室すべてにわたってチープな印象を受けた。リアシートは狭く、147のほうが間違いなく快適だと思った。荷室は狭く、実用的なクルマではない。スポーツワゴンの荷室も同様に狭い。

JTS仕様の試乗車はまだ存在しなかった(2002.11)。

そこで、中古車として展示されていたTS仕様に乗った。ところが、これは57000kmも走って年季が入ったもので、クラッチペダルの渋さは尋常ではなかった。内装も旧仕様で、しかもシフトレバーの革は擦り切れ、みすぼらしいクルマであった。文句を言っても無い物は仕方がないので、とりあえず走ってみた。

エンジンは長い距離を走った割にはやつれた感じはしなかった。普通に7000rpmまで回る何の変哲もないNAエンジンだった。巷でよく述べられる気持ち良いアルファサウンドというのがどんなものなのか、今回は147の試乗のときと違い、注意して聞いてみるようにした。官能的というのがいったいどういうものなのかよく分からないが、3000〜4000rpmあたりでスロットルを多めに開いた時の音は、まあまあ演出が効いたものではあった。しかし、そんなに感動したり感激したりする類の音でもなかった。速さは2.0Lなので期待はしていなかったが、本当に大したことがないパワーで、全開加速に何ら躊躇はいらなかった。

ステアリングはやはりギア比が速く、スイスイと気持ちよくクルマは向きを変えてくれる。サスペンションは147より硬いので、速いステアリングギア比とのマッチングは良かった。

ALFAは「走って楽しく、官能的だ」というのが強くイメージとしてあるため、期待しすぎたのかもしれないが、「なんてことはない」というのが結論である。JTS仕様に乗ったら印象は変わるだろうか。

とにかく安っぽいクルマなので、価格設定を見直す必要がある。147との差が大きすぎるのである。現状でALFA ROMEOが欲しいのであれば、147にスポーツサスペンションを付けたクルマのほうが良さそうである。

 

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