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WINGROAD

18RX Aero

CVT-M6

【1回目】

新型ウィングロードはプラットフォームを一新し、古臭いサニーバンというべき従来型から乗用車へと大きく進歩した。外観からティーダの派生であることが明確に感じられる。ティーダは遡ればマーチがベースなのに、ここまで大きくできることに感心してしまう。いや、こんなに大きくして大丈夫なのかという心配も半分ある。果たして走りはいったいどうなのか、気になったので試してみた。

車内の基本的な構成は当然ながらティーダと同じである。しかしシートやアームレストの感触は異なる。柔らかいクッション材を随所に使って独自性を出したティーダに対して、ウィングロードには明らかに手触りが硬い素材が使われ、月並みの小型車になった。主要ターゲットである若者にとってはティーダのような安易な上質感よりもコストダウンのほうが大事だと考えたのだろう。

運転席を最も低く設定してポジションを合わせようとしたが、ステアリングホイールが遠すぎてしっくりこなかった。テレスコピックが存在しないクルマは困ってしまう。マーチ系車両には付けてもらえないのだろうか。

動かしてみると、ティーダよりも操舵感がかなり重くなっていることを感じた。年寄り向けのクルマと比べて、若者用はハンドルが重いほうがスポーティというイメージにつながるのだろうか。それとも、単に195/55R16という太いタイヤを履いているせいで重くなっただけなのだろうか? ティーダで感じた電動パワステの違和感は、ウィングロードでは消失していた。しかし、ぐるっと回したハンドルをセンター近くまで戻してきたとき、最後の部分で特別に強い復元力が働くことには違和感を抱いた。これもタイヤのせいなのだろうか。

トランスミッションは当然ながらティーダと同じCVTである。Dレンジでは相変わらず低回転でクルマを走らせ、1500rpm以下で滑らかに加速することに気を良くした。しかしカーブが多く続く山道に入ると、スロットルOFFからONに移行したときに突然2500rpmぐらいまでポンと回転数が高まって、それからすぐに1500rpmまで落ちるという不思議な動きを見せることがあった。あまり制御が煮詰まっていないのだろう。また、ティーダと同じようにセレクタにはSPORTスイッチとLレンジがあり、それによって使う回転域を選択することができる。ティーダではSPORTにしてもあまり回転数が高まらなかったという記憶があるのだが、ウィングロードは極端に回転が上がってしまい、使い勝手が悪いと思った。セッティングの違いは、年寄り向けと若者向けというクルマの性格を考えたものなのかもしれない。同じプラットフォームのクルマで年寄り向けと若者向けがあるというのはどうもおかしい。

1.8Lモデルにはパドルシフトのスイッチが付く。これはとても使いにくい。運転手から見えない場所にあるスイッチを一旦押してからでないとパドルが働かないのである。そして、一度スイッチを入れてしまうとずっと手でシフトチェンジしなくてはならず、無段階変速には自動的に復帰しない。いったい開発者は何を考えているのだろう。こんな不出来なものは誰にも使ってもらうことはできない。Dレンジのままでもパドルに触れば反応するように変更する(ある一定時間経過後には自動変速に復帰する)か、スイッチをステアリングホイール上に持ってきていつでも簡単に操作できるようにすべきである。エンジンブレーキを使うためにいちいち隠れたスイッチを押している暇はない。

ブレーキを見て驚いた。日産はこんなに大きく重い(4WDは1300kg)クルマにドラムブレーキを付けてくるのである。ここにマーチがベースであることを窺い知ることができる。マーチ系の車両でリアにディスクブレーキを備えたクルマはないのである。多人数乗車+荷物満載のレジャーで下り坂を走る場合には細心の注意が必要で、そういう時にはパドルシフトでエンジンブレーキを利かせるか、SPORTを選ぶとよい。また、ESPもマーチ系全車種に付けることができない。どうやら日産はマーチ系車両に乗る客は突飛な行動を絶対に起こさないと想定しているようである。

今回は山奥の住宅地に向かう山道をゆっくりと走っただけであり、あまり多くは述べられないが、車体が薄っぺらな印象だけは終始感じた。クルマそのものにあまり興味のない若者を惹きつけるために安く簡単に作られたクルマであるということにおいて、従来型とコンセプトは変わっていない。

【2回目】

新型ウィングロードには"Rider"というヤンチャ坊主を対象としたモデルがある。展示されていた車両を見てみると、タイヤはなんと"PROXES T1R"が付いていた。「どうしたんだ日産は!」と叫びたくなる心境でまじまじと見てしまった。コストダウンの塊のようなこのクルマに何故こんな高級タイヤを履かせてしまったのだろう。バランス感覚を疑ってしまうし、ヤンチャ坊主がこれを理解できるとは到底思えない。また、インパネに貼られた黒い木目調のプラスチックは、日産によるとコルク調だという。ツルツルピカピカのプラスチックがコルク調とは面白すぎる。確かに柄はコルクの写しのようだが。。。

ちょっと余談が長すぎたが、1回目とは別の店にある18RX Aeroで通勤路を走ってみることにした。

前回は停止することがほとんどない環境であったが、今回は信号待ちが多い道で乗ったので、発進加速を頻繁に試すことができた。私のインプレッサはスロットルの初期反応が穏やかなので踏み込み代が大きくなってしまい、それと同じように踏んでしまうとウィングロードはグイッと飛び出して驚いてしまった。飛び出した後はトルコンがロックアップして回転数が下がり、緩やかに速度を増していくが、発進直後の演出はちょっとやりすぎの感がある。もちろん穏やかに発進することもできるので、慣れが解決する程度のものではある。ティーダの1.8Lモデルは穏やかな特性であったが、ウィングロードは若向きなのでスロットル特性を変えたのだろう。トルコンのロックアップの制御は唐突感がなくなり、改良されているところもみられる。

試乗コースの折り返し地点でUターンをしてパワステの感触を確かめてみると、簡単にステアリングがクルクルっと回り、あまりの軽さに違和感を覚えるほどであった。電動パワステは重さを自在に変えられることがメリットなので、こういう使い方は妥当なものなのだろう。そして、走行中のステアリングの重さは、前回ほど意識することがなくなっていた。

インプレッサで3速2000rpmで走る上り坂(回転数がそれ以下では走れないので、速度が下がると2速を選ぶことになる)を走ってみると、なんと1500rpm以下で静かに上り続けてくれた。先行車がとても遅かったので、ギア比はMTの2.5速ぐらいだったのかもしれないが、それにしても低回転で使えるエンジンである。そして、CVTがうまく働いてくれるのは良いものだと改めて感じた。

最後にパドルシフトを使える状態にして中速のS字カーブを勢いよく走ってみたが、スロットル操作に対する駆動力の出方にダイレクト感が薄く、ステアリングの感触にもダイレクト感が薄く、楽しめる特性ではなかった。

所有する喜びや運転する喜びはないが、経済的な移動の道具としては悪くない。

15RX

CVT

15RXは家庭用車両としてはベーシックモデルと言ってもいいだろう。15RSという安価なモデルも存在するが、それはトランスミッションが4段ATになり、リアシートスライドもオプションになる等、明らかに差別化されており、土建業などでトラック代わりに使われるものと考えられる。

15RXの標準タイヤはかなり貧弱で、175/70R14という今時珍しいサイズが選択されている。エアロ仕様でない1.5Lモデルは全車このタイヤを履く。ベース車のティーダが全車185/65R15を採用しているというのに、なぜ大きい車体のウィングロードに細いタイヤを履かせたのか理解に苦しむ。やはりコストダウンのためなのか。

18RX Aeroと比べると、15RXのステアリングはあまり重くなく、センターに戻る際の違和感もなかった。つまり、タイヤの性質によってステアフィールが変わるものと考えられた。

今回は山奥の道を試乗コースに選び、さらに踏み込んだ領域での走りを試してみた。タイトなコーナーでの動きはなかなか素直で、細いタイヤなのに意外にしっかりと踏ん張ってくれるので、日常走行でスキール音を聞くことはめったにないと思う。基本的に強いアンダーステアに仕向けられ、スロットルOFFでリアが出るような雰囲気はなかった。ESPを付けることができないため、スピンをしない設定にしたのだろう。ローリングも少なく、基本的に動きは悪くなかった。

乗り心地はボディが薄っぺらいという感じが相変わらずしたが、タイヤのたわみが大きいため、あまり気にならなかった。ただ、もう少しタイヤのたわみが少ないほうがバランスがいいと思うので、ティーダと同じ185/65R15を履かせると良いだろう。

上り坂でフルスロットルの加速をしてみると、ティーダと同様になかなか活発に走ってくれた。全開時のエンジン音はティーダよりもなんとなく静かな感じがして、CVTのノイズも気にならず、音の面では改良が進んでいるようである。

左足ブレーキを使うと、ティーダと同様に足踏式Pブレーキが引っかかってしまい、怖い思いをした。Pブレーキのペダルがあと3cmでも上に移動できればいいのだが。。

メーター類はシンプルな構成で、昼間は特に見るべきものはないが、夜間のメーター照明はメタリックな感じを表現しており、あまり見やすくないが個性的で面白い。

ティーダでも荷室はなかなか広かったが、ウィングロードはティーダより全長が210mmも長いため、荷室の奥行きはインプレッサと同程度(950mm)になった。リアシートを前にスライドさせれば奥行きはさらに増加するので、ワゴンとして十分に使える広さがある。Aeroというモデルは荷室の床面がプラスチック製であるが、それ以外のモデルは洗えないタイプになる。濡れたものを収納する機会があるのならば、Aeroグレードを選択するか別に床板を買って交換するといいだろう。

リアゲートを開けるとベンチのように使える装備があり、そこを照らすランプも備わる。使い道があるのか分からないが、気配りは細かいと思う。ランプは前席の地図灯を流用した簡単なものなので、他社もきっと真似をするだろう。

15RX Aero

CVT

195/55R16タイヤ装着車

15RX Aeroの標準タイヤはティーダと同じ185/65R15である。近所の店舗にちょうどよい試乗車があると思って見てみると、タイヤはオプションの195/55R16を履いていた。

上の試乗記に述べたように、ウィングロードのパワステの感触はタイヤサイズに依存すると思われたが、本当のところはどうなのか、15RX系でタイヤサイズだけが異なるモデルを乗り比べることによって真相を確かめることにした。

店舗の駐車場の中で動かしてみると、ステアリングはまあまあ軽く、18RX Aeroのように「これは重い!」とは感じなかった。街乗りに出かけてもフィーリングは同様で、ステアリングの重さを意識することはなかった。つまり、18RX Aeroのパワステが特別に重く設定されているのか、もしくは単にエンジンの重量増の影響(30kg)ということが考えられる。

今回、トランスミッションの特性を少しだけ詳しく理解することができた。Dレンジで走ると、スロットルONではエンジン回転を低く抑えようという制御が働き、1200〜1300rpmを維持したままで加速をこなす。一方、スロットルをOFFにすると途端にエンジンブレーキを使いたがり、エンジン回転数が高まる。一般のATのようにスロットルOFFで回転がアイドル付近まで下がりきってしまうのは良くないが、交通の流れ(速度)にむらのある街乗りにおいて、スロットルOFFで回転が上がり、スロットルONで回転が下がるというのはちょっと気持ちが悪かった。もっと緻密に制御して、運転手に違和感を持たせないようにできるとよいだろう。

タコメーターを見ながら走ることができる人なら、ティーダ以降のCVT仕様車では良好な燃費を得ることができると思う。上記のようなCVTの制御を考慮して、ブレーキをできるだけ踏まない走りをすればいいのである。

乗り味に深みのないクルマではあるが、クルマにお金を掛けることが馬鹿らしいと思う若者にとっては、実用車としてウィングロードは悪くない選択だと思う。

 

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