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1.5 RS

CVT

152万円(税抜)

Vitzがモデルチェンジして大きくなった。幅はなんと1695mmもあるという。こんなに大きくするとは、コンパクトカーをいったい何と考えているのだろう。社内の衝突安全基準を自主的に高く設定し、それをクリアした最初のクルマであると高らかに謳っているが、こんなに車体が肥大したのでは技術力があるとは到底言えない。

車幅がプレミオ/アリオンと同じなのに、室内が全然広くないのは何故だろう。

まずはRSを試してみた。1.5Lエンジンは従来型と同じものであるが、トランスミッションはCVTに替えられた。燃費と走りの両立を目指しているのだろう。

RS専用装備としては、革巻きハンドル、硬いスポーティシート、四輪ディスクブレーキ、195/50R16タイヤなどがある。

太くて大きいタイヤを履いているため、不整路面ではかなり揺すられる。脚はRS専用であるとカタログに書かれていないため、ノーマルと同じなのかもしれないが、旧型とは比べ物にならないぐらいのビシッとした乗り味になった。

CVTはトルコンの設定や変速比の変化具合に癖がある。電動パワステのフィーリングにおいても特に切り返し操作時にセンター付近でかなり癖がある。最初は取っ付きにくいが、すぐに慣れるだろう。

このグレードはスポーティなイメージを求める人に魅力を訴求するために設定されていると思われるが、いったいどんな人が買うのか想像できない。Vitzレースの絵だけが浮かんでくる。

1.0 F

CVT

110万円(税抜)

【ディーラー試乗車】コンパクト志向のドライバーの中で「軽自動車は嫌」という人が最も気になるのは 1.0Lエンジンのモデルだと思われる。これに新採用された3気筒エンジンはPasso/Boonのために開発されたもので、流用されている。

自動車税(1000cc未満)と重量税(1000kg未満)の負担が軽いというコンパクトカーのメリットを共に享受できるのが1.0Lモデルである。他のモデルはコンパクトカーなのに1トンを越えてしまうため、有難味が少ない。

期待して乗ってみたのであるが、いきなり衝撃を受けた。

1.5RSは特に何も印象に残ることはなかったが、1.0Fの始動時の音が軽自動車と同じなのであった。どうしてそんなに音が違うのだろう。

道路に出てスロットルを少し開いてもう一度衝撃を受けた。

「これはディーゼルエンジンか?」と思うほどのゴロゴロ音が発生し、とても日常的に付き合えるものではないと感じた。50〜60km/hの巡航時にはCVTがどんどん変速して非常に低回転で走るのでゴロゴロ音は顕著ではなかったが、よく使う発進や緩加速の際の回転数でのエンジン音が一番気になった。試しに高回転まで回してみると、その音はあまり気にならないものになった。これがダイハツの最新エンジンなのか? MOVEはもっと上質な回り方をしたのに、なんか変である。軽自動車よりも質感が落ちるなんて………

乗り心地は1.5RSほど硬くなく、しっかりした中にまろやかな味があり、トヨタ車の標準的な乗り味であると思った。

とにかくエンジンの音だけが問題で、それ以外は特に文句はない。いつかPasso/BOONに乗って本来のこのエンジンの音を確かめてみたいと思う。

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【レンタカー】9人で旅行することになり、旅先の駅前でVitzを2台借りた。レンタカーは新しい車に入れ替わるのが早く、期待どおりVitzは新型になっており、4人乗りと5人乗りで快適性はどうなのかというチェックも兼ねて乗ってみた。

まずは4人乗車のクルマの運転席に私が陣取り、真後ろの後席には170cm程度の身長の男性が座ったが、膝前には十分な余裕があった。また、別の1台の後席には女性が3人で座ったが、あまり窮屈ではなかったらしい。モデルチェンジで大きくなったVitzには4〜5人でも何ら問題なく乗れることが体験できた。ただ、荷室は狭く、各人1泊分の荷物でスペースの大部分を使ってしまった。

今回は燃費を稼ぐことを目論んで極めて慎重に運転したので、上述のディーラーでの試乗時のようなエンジンのゴロゴロ音が気に障ることはあまりなかった。20km/h弱でトルコンがロックアップすると、1500rpm以下を維持しているのではないかと思うほど(タコメータがないので不明)低回転で速度を増していくので、スロットル操作に気をつけていればかなり経済的な走りができると予想された。必要に迫られてやや多めにスロットルを開いて加速してみると、上記ディーラー試乗車と変わることなくゴロゴロ音が大きく響いた。Passo/BOONに乗らずともエンジンの感触はもう一度認識できた。

このように非常におとなしく走っていたのであるが、なんと助手席に乗った家内がクルマに酔ってしまった。家内は、インプレッサ(GC8C)でタービンが回り始めたときや急ブレーキのような過度の加速度変化に弱いのであるが、これ以上は無理というぐらい穏やかに走ったVitzで酔うとは不思議な気がした。脚は硬くないし、タイヤは柔らかいスタッドレスなのに、何故なのかと思ったのであるが、もう1台のVitzで前後両座席を経験した女性の弁では「Vitzは常に上下に細かく揺れていて、後席は特に乗り味がひどい」とのことであった。そういえばダッシュボードの上に置いたバッグが常にピクピク揺れていたのを思い出した。微少入力で動かない安物のダンパーが乗員に影響を与えるということを今回初めて知ることになった。

途中で大雪に逢い、路面がシャーベット状の雪に覆われた。平坦路だけしか走らなかったのでFWDであっても加減速に問題はなかったが、リアが何となくムズムズするのが気になった。

最も気持ちが悪かったのはステアリングの感触であった。切ったハンドルを戻していくとき、もう少しでセンターに帰るという辺りで必ず手応えが変化するのは電動パワステの欠点なのだろう。理屈は分からないが、日産車(TIIDAなど)でも同様なので、コストを掛けられないコンパクトカーの宿命なのかもしれない。ただ、小回り性能は素晴らしく、狭い道をすいすい走れるのが面白くてたまらなかった。

燃費は、半日でどれだけの距離を走ったのか記録していないので分からないが、燃料代は280円で済んだ。

ゴロゴロと鳴るエンジンは、少し粘度の高いオイルを使えば静かにできそうだし、乗り心地はダンパーを替えれば改善されるだろう。加速の機会の多い都会で乗らないのなら、Vitzは 1.0Lモデルでよいと言える。

1.3 U

CVTFWD

132万円(税抜)

従来型のVitz1.3U というモデルは優れた燃費性能(23.5km/L)を得るため、エンジンに2SZを、ミッションにCVTを特別に採用していた。新型Vitzにはエンジンとミッションをほぼそのまま継承しているが、燃費は19.6km/Lと冴えない数値になってしまった。

衝突安全やPassoとの住み分け(トヨタ最小のPassoより小さくてはならぬ)のため、車体が重くなってしまったのが原因であろう。なお、同じエンジン&ミッションの 1.3F なら重量が20kg軽いので、燃費は21.5km/Lとなる。

1.3U の車体が重いのは、これが最も装備の充実したモデルであることにもよる。サイドエアバッグや4スピーカーなどが唯一備わるのである。

走らせてみると、色々と表情を変えるクルマであることが分かった。

発進時はトルコンのトルク増幅作用を生かして加速の良さを演出する。その際、2000rpm以上まで一気に回り、エンジンはかなりの騒音を立てる。すぐさまトルコンはロックされ、一気にエンジン回転数が下がって静かになる。スロットル開度を小さく保つと、低回転のまま静かにじわじわ加速できるが、少し踏み込むとエンジンがガァーっと回って騒がしくなる。とにかくせわしないので、もう少し落ち着いた動きが欲しい。

2SZがこんなにも騒がしいエンジンであったという記憶がないのであるが、単に忘れてしまっただけかもしれない。1.3Lエンジンは4気筒でもこんなものなのだろうか。微妙な回転数をキープして静かなままで走りたいと思ってもなかなか思い通りにスロットル操作ができず、苦労をした。CVTの変速制御はもう少しだけスロットル操作に寛容(スロットルを開いてもエンジン回転はあまり上がらない設定)であってもよいのではないかと思う。

エンジンの騒音は1.0Lと1.5Lの中間であり、どれを選ぶかは好み次第である。乗らずに買ってはいけない。

ステアフィールはなかなか自然な感じがあり、1.5RSのような奇妙な感触は少なかった。それはタイヤサイズの違いによるのかもしれない。

乗り心地は1.0Fと同じくしっかりしていて穏やかな味で、快適であった。

フルモデルチェンジで乗り味はしっかりしたが、魅力を増したと思うところは残念ながら存在しない。ポリシーの明確でないクルマは、たとえ減点要素が少なくてもダメなのである。販売台数でフィットを脅かす存在になるのは難しいだろう。

→クルマの販売台数というのは不思議なものである。2005年2月から4月までVitzが1位になっている。「トヨタの新しいコンパクトカー」であれば何でもいいのだろうか?

 

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