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Vitz

U

L-package

 

1.3L

CVT

114.5万円

コンパクトカーのかつての王者ヴィッツがマイナーチェンジをした。Fitに主役の座を奪われたのは燃費の悪さが原因の一つであると考えたようで、新エンジン(2SZ)とCVTを武器にFitを上回る23.5km/Lの燃費を実現しているのが目玉である。その他いろいろと他車の使い勝手の良い装備を取り入れて魅力を増している。なかでもシートリフター(ダイヤル式)がシート全体を持ち上げるように設定されたのが嬉しい。

2SZエンジンは、従来の2NZエンジンと比べて圧縮比を高めて(11.0)、低速トルク志向となっている。最高出力は87PSで変わっていない。CVTはトルコンを併用したもので、適度なクリープ現象を持っているので使い易い。アクセルを深めに踏んで発進してみると、トルコンのトルク増幅作用を有効に使っているため出足は力強い。加速を緩めると、すぐにロックアップクラッチが働いて、CVTも変速をどんどん進めてエンジン回転数を下げてくれる。タコメータがないので、どのくらいの回転数で走っているのか分からないが、50km/hで1500rpm以下であると推測する。発進から穏やかに加速すると、直後にロックアップが働き、トルコンのロスを防ぐように制御される。燃費を意識して走れば、かなりの好成績が得られると思う。全開加速ではFitよりもCVTがスロットル開度に敏感に反応し、高回転に移行するタイミングが早く、速度の乗りは良いような気がした。

試乗コースには雪が固まって氷になった部分があったので、そこでABSのテストをしてみた。ステアリングをまっすぐにしたままのフルブレーキングでは、ペダルの振動は少なく、ストロークも小さいままで、好印象であった。乾燥路でのフルブレーキングは今回は試さなかった。

Fitと比べると車体が小さいので小回りが利き、4人乗りでも窮屈ではないので(荷室は狭いが)、街乗りのみではVitzのほうが使いやすいのではないかと思う。ただし、同じ値段なら少しでも大きいほう(すなわちFit)が良いと思う気持ちも分からなくはない。

M/C前

PRIUS

S

TOURING selection

231万円

【1回目】

2003年秋、35.5km/Lの燃費を謳って新世代プリウスが登場した。

初代プリウスは燃費のために少々頼りない性能に我慢しなければならなかったいう話を聞く。グリップ力の低いタイヤや加速性能の悪さのことである。また、ホンダ インサイトには2人乗りという制約もあった。ところが、技術の進歩は速いもので、2代目プリウスはエコカーゆえに何かを我慢するという必要はないらしい。

走り出す前にまずはスイッチをONにする方法を知らなければならない。カードキーをスロットに差し込んで(Gグレードは所持しているだけでいい)、ブレーキペダルを踏みながらメインスイッチを押して、スピードメーターなどの計器が点灯すれば準備完了である。エンジンが始動しないのでちょっと違和感がある。

シフトスイッチをDに入れてアクセルペダルを踏むと、モーターでスルスルと動き出す。アクセルペダルを深く踏むとエンジンが始動してCVTを介して駆動を始め、普通の乗用車らしい走り味になる。モーターとエンジンの連携はものすごくスムーズにコントロールされている。停車するとエンジンが止まり、その静けさに最初は戸惑う。

エアコンは今回から電気で動くコンプレッサを採用して、エンジン停止中でも作動する優れものになった。そんな時代が来たのかとちょっと感激した。電動パワステ付きステアリングも、もちろんエンジン停止中でもアシストが効いている。

走行エネルギーの回収をブレーキング時に行うというのは初代でも採用されていたが、違和感があったと聞く。初代の違和感を知らないが、2代目は奇妙に思うほどの変な効き方はしなかった。

初代で問題があったとされる加速性能は、モーターの改良で2L級に進化したらしい。それを試すため、急な上り坂で全力加速をしてみた。CVTとモーターによる連続した加速感はなかなか力強く、並みの2L(アリオン等)を超えているのではないかと感じた。

乗り心地はトヨタにしては珍しい硬い味付けながら、脚の動きは渋さがなく、ゴムブッシュの嫌な感触もなく、とても良く出来ていた。今回の試乗車であるツーリングパッケージはタイヤサイズが195/55R16という太いものを装着し(これによって燃費は30km/Lへ低下)、サスペンション設定もハードになっているという。シートもトヨタにしては良く出来ており、安定感があった。難点はパワステが軽すぎて路面の感触がまったく得られないことぐらいである。この点が解消されれば走り味はかなり良いものになると期待できる(節電のためにアシストをもっと弱く設定してもいい)。

荷室はバッテリが収まっていることを感じさせない広さをもっている。長尺の釣竿も入るだろう。リアシートの座面を跳ね上げることなく、背もたれの前倒しのみで平らな荷室になるように荷室床面を高めに設定し、その下にバッテリを隠している。床下収納(バッテリ後方のスペース)はなかなか大きい容量があって便利に使えそうである。リアシートの背もたれを倒せばフラットで広いスペースが生まれるので、スタイルを5ドアハッチバックにしたのは良いことだと思う。トノカバーを外したときは、それを床下に収納できるのも上手な設計である。

屋根の形状はRX-7(FD3S)を思い出させる。乗員の頭上空間を確保しつつ空気抵抗を減らすようセンターを凹ませている。トヨタがこんなに走行抵抗軽減にこだわりを持っているとは思わなかった。

短時間の試乗では新型プリウスはとても魅力的に見え、会社の営業車として採用してもらいたいという気持ちになった。カローラよりもイメージは良いし、長時間乗っても疲れが少ないのではないかと思う。室内で不満があるのはリアシートの頭上空間である。きっちり座ると髪が天井に触れてしまう。スタイリングと空気抵抗改善のために屋根が後ろに行くにしたがって下がっているのが原因である。足元が広々しているだけに残念である。2cmぐらい後席を前方にずらせば、頭上空間に余裕が増すが、足元の広さは犠牲になる。妥協点を見つけるのは難しい。

トヨタの先進性を見せつけてくれる新型プリウスは、ハイブリッド車としてではなく、普通のクルマとして見ても良く出来ている。HIDが付かないSタイプ標準車は215万円という低価格で買えるので、カローラから乗り換える人が多くなることを期待する。久しぶりに欲しいと思わせるクルマに出会った。

【2回目】

1回目は短時間の試乗であったので、新プリウスを詳しく知ることができなかった。そこで、同仕様のクルマにもう一度乗ってみることにした。今回は5〜6kmほどのコースを走ったので、特長を色々と体験することができた。

まずはエンジン停止状態でエアコンを作動させたままで放っておいた。電気式エアコンなので、電池の容量がだんだん減っていく。モニターで2目盛ぐらいまで容量が減るとエンジンが自動的に始動して充電を行うが、十数秒間回ってまた止まる。目覚めるときは突然なので、ちょっとビックリしてしまう。エンジンが回っているときにアクセルペダルを床までいっぱいに踏んでみても、エンジン回転数はあまり高まらない(音の感じから3000rpmぐらいかと思う)。停車中にエンジン回転を上げる意味はないので、電子制御スロットルが上手にコントロールしてくれるのである。

電池の容量が少ない状態で走り始めると、エンジンがすぐに始動して充電しようとする。この状態ではCVTを持つ普通のクルマの走りである。負荷の多い上り坂で、ちょっと加速しようとスロットルを多めに開くと、エンジン回転がブウォっと上がる。レスポンスはクイックで良い。下り坂でエンジンブレーキを利かせるため、シフトレバーをBポジションへ動かしてみた。すると、わずかにCVTが変速してエンジン回転が上がった。しかしこれは微妙すぎて体感度合が低いうえ、運動エネルギーを回収しないのでもったいない。Bポジションにしたときには回生ブレーキを作動させて体感できる減速度を出すほうが良いのではないかと思った。もちろん減速度合を速度センサーが検出して過剰な効きが出ないようコントロールしてほしいが。。。10分ほど普通に走ると充電が十分に行われた。

電池の容量が十分あると、EVモードで電気自動車として走ることができる(55km/h以下で1km)というので試してみた。街乗りではモーターのみの走りでも不自由することなく、とても静かに走るのが新鮮な驚きであった。モニターを見ながらなるべく回生ブレーキを使って走るのはなかなか面白いものである。電池容量が減ってくると、自動的にエンジンがかかる。EVモードは、静かな早朝や深夜にガレージからクルマを出し入れするときに使う仕掛けであるが、冷間時にはエンジンが始動するそうなので、朝早く出発するときにはエンジン音が出てしまう。普通のクルマのように高い回転数でアイドリングするわけではないので問題はないと思われるが、電池の容量に余裕(例えば80%以上の残容量)があればいつでもEV走行ができるよう改良してもらいたい。

試乗コースには通勤路を選んだので、いつもと同じような速度で走ってみると、タイヤのグリップが心許ないと感じた。見た目が195幅の16インチという立派なものであっても、やはり転がり抵抗を低減したコンパウンドを使っているのだろう。

2度目の試乗で、更に新プリウスに魅力を感じた。内装はプラスチック素材が多用されて安っぽい手触りの部分が多いが、見た目ではうまく処理されているので私は気にならない。どこに価値を見出すかは個人個人で違うが、新プリウスに乗ると、走りに不満を抱かずにエコロジーの意識を満たしてくれるのが良いと思うのである。現在(11月上旬に)注文すると3月に納車予定というほど予約が多く入っているそうである。

M/C前

PRIUS

S

TOURING selectionの乗り心地は悪くなかったが、走行中は脚が硬いという印象を絶えず意識させられた。太くて重いタイヤ(195/55R16)を支える脚は硬くならざるを得ないので、仕方がないのであるが、15インチタイヤ(185/65)を履くノーマル仕様の乗り心地も確かめておきたかったので、ちょっと試してみた。

ノーマル仕様の外観はTOURINGと異なり、余計な飾り物(エアスポイラー)がないためすっきりしていて良い。ただし、HIDヘッドランプが装着されないというのが残念である。内装はTOURINGと変わるところはない。

走らせてみると、脚はその存在を忘れるぐらい自然に振る舞い、路面の凸凹を避けて走ろうという意識が消え去ってしまった。これぞトヨタ車である。何も考えずに移動ができる。エンジンやモーターが作動していることも、モニター画面を見ていれば「今そういうふうになっているのか」と思うが、見なければ何も感じることはない。

面白くも何ともないが、スロットルを開ければ必要なだけの加速はするし、ブレーキを踏めば減速時の違和感もなく、ステアリングを切れば何の手応えもなく曲がってくれる。

営業車として使うにはこれほど適当なクルマはないだろう。カローラやサニーなんて使わないで、早くプリウスを導入するのが良かろう。それにより、エコロジーを考えた会社という好印象を持ってもらえるメリットもある。

 

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