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1.3 G

4AT

106万円(税抜)

トヨタ最小という宣伝文句のパッソを試してみた。3.6m×1.67mという大きさは、軽自動車と比べて長さが20cm、幅が19cm大きいだけである。張り出したフェンダアーチなど、軽自動車よりも自由度が高いデザインが盛り込まれている。

室内は軽自動車のようにギリギリまで広いスペースを確保しようとしていないため、あまり広くないが、大人4人で乗るのには十分である。頭上空間が適度に広く、窮屈な感じがしないのが良い。後席は頭上空間に余裕があるのにもかかわらず、背もたれが低く、ヘッドレストが十分に上がらないので、乗員は160cmぐらいまでの人に限られる。運転席からの後方視界は良いのであるが、乗員の安全性をもう少し考えてもらいたい。

運転席は着座位置が高く、見晴らしが良い。男性ならシートリフターは不要である。ペダル配置は適切であり、足踏式駐車ブレーキのペダルはブレーキ解除時には高い位置に上がるため、左足ブレーキングの邪魔にならないのが良い。

コラムシフトの変速レバーはあまりスムーズに動かないため、いいかげんに動かすとDに入った。さすがにトヨタである。何も考えないで操作しても目的が達せられるようにできている。この瞬間がトヨタ車だね…

駐車場から動かしてみると、ステアリングがなかなか自然なフィーリングであった。EPSという警告灯がメーターの中にあったので電動パワステだということは分かっていたのであるが、意外なことにVitzよりも手ごたえは良好であった。

メーターはスカイラインのようにチルトステアリングに合わせて上下するようになっているがあまり意味はない。このクルマの場合は、上下調節より前後調節ができるほうがいい。スピード表示の手前に色々と表示できる小さい液晶画面が存在するのはとってつけたようで変である。同じ面の中にすべての情報を見られるようにしてもらいたい。

公道に出てみると、軽の味を少し感じたが、わりと普通に走ってくれた。トヨタ/ダイハツの1.0/1.3Lのクルマなので当然と言えるが、普通に走っている限りは雑誌の評価ほど悪い印象は持たなかった。エンジンは安っぽい音をあまり立てず、なかなか好印象を持った。カタログでエンジン型式を確認してみると、これはダイハツの製品であった。すなわち、現在トヨタ/ダイハツで4気筒の1.3Lエンジンは3機種(Passo/Boon用に1種、Vitz用に2種)も存在する。コスト意識の強い会社なのに、こんなことがあるとは驚かずにはいられない。いずれか1機種に絞ることはできないのだろうか。

トランスミッションについては、1速が最低でも20km/hにならないとシフトアップしなかったり(昔の安物によくあった単純なシフトプログラム)、2速に入ったときに一瞬だけ失火したような感じを受けたり(シフトショックを減らすために点火時期を遅らせたり燃料噴射を止めてエンジントルクをコントロールしているのだろう)、自動変速にやや雑なところは見られたが、4速から3速へ、また、2速へ手動でダウンシフトしてみてもショックは少なく、まあまあ問題のない動きを見せてくれた。

上り坂で2速にギアを固定してフルスロットル加速を試してみたところ、80km/hぐらいまでなら伸びやかに走ってくれた。ただし、その速度で大きいカーブ(普通は100km/hぐらいで楽に曲がれる)に進入すると、クルマの動きはちょっと怖かった。このクルマの挙動をあらかじめ知っていればよかったのであるが、初めてのコーナーリングではステアリングの切り始めになかなか反応が出ないことに焦りを感じた。ある程度切れば急に曲がろうとするが、過渡特性がいまどきのクルマには珍しいぐらい悪かった。その動きはまるでタイヤの空気圧が半分になったときのようなものであった。タイヤの空気圧は乗り心地と運動性のバランスを考えて設定されるので、今の設定は乗り心地を重視しているものと思われる。少し乗り心地を犠牲にして標準よりも空気圧を高めてやると動きが良くなるかもしれない。

次に50km/hぐらいで曲がるS字のタイトターンでの動きを確かめてみた。スロットルを開けたまま一定速度で進入すると、アンダーステア気味にフロントタイヤが負けてギュルギュルと逃げていく挙動を示したので、2つ目のカーブでスロットルを少し閉じてみた。するとリアがズリズリっと出て挙動を修正してくれた。限界は非常に低いもののクルマの動きはアンダーステア一辺倒ではなく、適度にリアを出しながら曲げていくこともできる操りやすいものであったGOLF4もよく似た感じの動きをしたのを思い出した)。ロール感はあまり大げさではないので、タイヤのグリップ性能を少し高めてやれば動きは良くなるだろう。いまどき155/80R13という細い(見た目にも貧弱)タイヤを履いているクルマは珍しい。グレードによっては175/65R14を履いているが、せめて標準タイヤには165/70R14を選んで欲しい。現状のタイヤ選択は安全性を考えると賛成できない(コーナーリング中に何かあったら避けることができない)。少しでも見栄えを気にする人ならタイヤをすぐに替えたくなると思うが、できれば標準タイヤはどんどん滑らせてクルマの挙動を覚えて欲しい。限界の低いクルマは練習にもってこいなのである。溝がなくなって次のタイヤが欲しくなったころには、運転が上手になっているだろう

細い路地にも入って取り回しについて確認してみた。視界が良いため狭い道でも操りやすいが、車両感覚は掴み易いほうではないと思った。フェンダーの張り出し具合などが分かりにくいのである。また、細かく入り組んだところに入ってステア操作を繰り返すと、回す速度や角度によってフィーリングが変化し、電動パワステの欠点が見えてしまった。このクルマ、本来ならパワステはなくても軽くステアリングが回ると思う(止まっている展示車両でも簡単にタイヤが動いた)ので、パワーアシストをもっと減らしてもいい。

パッソは軽自動車の匂いを残しながらトヨタ車の味もする、なかなかシンプルで使いやすいベーシックカーであると思った。2代目Vitzは大きくなって魅力が薄れたが、パッソは初代Vitzの代わりとして、軽から乗り換えようとする人を優しく受け入れてくれるだろう。軽のようにいろいろな面で無理をしているところがないので、走りに余裕があるし、燃費も軽より良いと思う。

母親の次のクルマとしてパッソはなかなか良いのではないかと思っている。1.0Lモデルはあまり安くないが、燃費は良さそうなので、1.0 X(税抜 98万円)にも乗ってみたうえで、薦めてみたい。

 

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