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3.5

Athlete

6AT

2005年10月、クラウンがマイナーチェンジ(M/C)をした。それに伴い、アスリートにはレクサス用と思われていた3.5Lエンジンが搭載された。

トヨタブランドの最高級サルーンのクラウンは、トヨタ自動車が有する最高の部品を使って作るべきものであり、レクサスとの差別化などに惑わされることはないようである。その証拠にブレーキキャリパもレクサスと同じもの(ADVICS製モノブロック対向4ピストンキャリパ)が採用されている。しかし、せっかくのキャリパには何もロゴがなく、あまりに無骨で寂しすぎる。ちょっと客を喜ばせる演出が欲しいところである(しかしながらCROWNもTOYOTAも不恰好なのでどんなロゴを入れたらいいか…難しい)。

今回も近所のディーラーまで原付で乗り付け、前回と同じ山奥の道を走ってみることにした。

エンジン以外にM/Cで変更された部分は、外装ではバンパー、グリル、ランプ類の意匠変更、内装ではリモコンキーのスロット廃止などがある。リモコンキーもかなり軽いものに変更された。これは今までのトヨタ的M/Cそのものであり、新型オーナーに微かな優越感を与えるだけのあまり意味のないものである。

エンジンを始動して動き出すと、まずはステアリングの操舵力がかなり軽くなったことを感じた。これはM/C前のロイヤルサルーンに近い軽さかもしれない。ZEROクラウンデビュー時のアスリートのステアリングは重すぎてオジサンたちの不評を買ったのだと想像する。

急カーブ急勾配の上り坂を登るとき、軽くて径の大きいステアリングホイールはちょっと扱いにくいと感じた。操舵力が軽いのであれば、もっと小径のものを選んだほうが操作しやすいと思う。また、スロットルの反応が3.0よりも良くなっている気がした。

勾配のほとんどない中速カーブが続く山道でちょっと高めの速度を維持して走ってみると、フィーリングは基本的にM/C前の3.0アスリートと変わらなかった。AVS(減衰力可変ダンパー)がノーマルの状態でステアリングを切ると、フッと頭が入り、ちょっと曲がりすぎるぐらいまで無意識に舵角を付けてしまうのであった。なぜか分からないがステアリングを切りすぎてしまうのである。この原因はおそらく初期の応答性が体感できないからだと思う。初期がリニアでないから、「もっと切らなくては」と思ってしまうのだろう。下の3.0アスリート試乗記でも「途中から変に敏感になる」と述べたが、M/Cでその特性は変わっていない。AVSをSPORTにしてみると、初期ロールが明らかに減り、クルマが曲がる動きを感じやすくなった。それに応じてステアリングを切りすぎることも少なくなった。SPORT設定では乗り心地が硬くなるが、シートのクッション性が十分にあるため、路面からの突き上げが気にならず、クラウンという品格を汚すことはなかった。山道を走るときにはAVSをSPORTに設定するほうがいいだろう。

Dレンジに入れたままで流しているときの音はなかなか快適であった。ATからの音はあまり聞こえなくなり、エンジンの機械音と排気音が心地良いハミングを奏でてくれるのは良いものである。ただ、スロットルの反応が良すぎるため、カーブが連続する場所で微妙なスロットルON-OFFを繰り返しながらスムーズに走るのは難しい。ついつい踏みすぎてしまい、乗員の頭を前後に揺らしてしまうことになるので、オーナーになったら鍛錬が必要になる。

発進後2速に入ってから3速の途中までフルスロットル加速を試してみると、4000rpmぐらいから勢いがついて、爽快な音と共にぐんぐん速度を高めてくれた。この加速感は3.0Lとは明らかに違う。これだけパワーがあれば、微小スロットル開度でもグンと加速してしまうのは仕方がないかもしれない。このエンジンはフーガのVQ35よりもパワフルで洗練されているが、クルマ全体の乗り味はフーガのほうがスポーティである。

3.5アスリートは、先日乗ったレクサスGS350と基本的に同じ成り立ちのクルマである。兄弟車ではあるが乗り味は異なるのが面白い。クラウンはステアリングやサスペンションから伝わる煩わしさをできるだけ排除しようとしている感じがして、路面の状態を感じながらクルマと対話するという実感が薄いのである。GS350は自然なフィーリングで運転できるので、運転を楽しむことを重視するのならGS350を選ぶといいだろう。(23NOV2005)

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アリストがレクサスブランドのGSになった今、クラウンアスリートはトヨタブランドのひとつの定番商品として維持すべき存在になったので、このページの最下に書いた意見は撤回しなければならない。

2.5

ROYAL SALOON

5AT

写真は3.0ロイヤルサルーンG

【デビュー時】近所の店の試乗車が「アスリート」から「ロイヤルサルーン」に入れ替わったので、ロイヤルに乗ってアスリートと同じ試乗コースを辿ってみることにした。天気はときどき弱い雨、路面はほとんど濡れていない状態であった。

今回は先客が試乗から帰ってくるのを待っていたため、私が乗ったときにはすでに車両のウォームアップは完了していた。駐車場内で移動するスピードでの操舵力はアスリートと比べて非常に軽く、従来型所有者にとっても違和感がないレベルだと思われた。また、微低速で動かすときのスロットル操作に対するエンジンレスポンスは穏やかであった(唐突に動き出さない)

試乗車は2.5Lモデルで、トランスミッションは3.0Lモデルの6段変速からTOPギアを省いた5段変速になる。また、ファイナル比もエンジントルクに合わせて少し低くされている。小排気量エンジンにこそ多段ミッションが必要になると思うが、重量増を避けたかったのかもしれない(2.5Lと3.0Lのエンジン本体の重量差はわずか数kgであるが、2.5L車は3.0L車より30kgも軽い。すなわち、5段ATと6段ATでは重量にかなり差があるのだろう)

まずは急な坂道へクルマを進め、ステアリングを大きく切りながら上ると、抵抗感のないステアフィールに安楽を覚えた。「やはり運転が楽チンなのがクラウンの本来あるべき姿だ」と思った。低速で走るとATから変な騒音が出る。特に2nd ギアに固定すると顕著で、ミューンという奇妙な音はやや耳障りであった。このATは古い型の使いまわしなのだろうか。クラウンという日本を代表する高級車の最新型でこんなことがあるというのは信じがたい。

中速コースを走らせると、ステアリングに手ごたえが出てきた。パワステは車速感応型なので、速度に応じてアシストを弱めているのが明確に感じられた。それでもステアリングに伝わる路面の感触はアスリートとはかなり差があり、ガッシリ感は薄い。これは、おそらくタイヤの違い(サイズ、銘柄ともに異なる)によるものだと想像する。ロイヤルサルーンのタイヤのほうがグリップは弱いが、素直な反応が得られるようで、舵角と曲がり方の関係は良好であった。脚もアスリートより若干柔らかい設定になっているようで、ロール感がやや大きめに感じられた。途中、ECTをスポーツにしてみると、浅いスロットル踏み込みでダウンシフトが行われることが分かったが、アップシフトでは特段の差を感じなかった。

加速性能を試すため、50km/hから2nd ギアでフルスロットルにしてみると、2.5Lとは思えない力強さを見せてくれた。もはやこれで充分であり、3.0Lは要らないと感じるぐらいであった。TOPギアで80km/h時のエンジン回転は1500rpm強を示した。

低速コースでちょっと追い込んだ走りをしてみたところ、ロールがグッと増すのを感じた。シートのホールド性も良くないので、無理な走行は自重するようにできている。クラウンは、やはりこのレベルで良いと思う。

試乗中はわずかに雨が降っており、雨滴がフロントスクリーンに溜まるにはかなり時間を要した。そのため、手動でスイッチをワンタッチしてワイパーを1回動かすという操作を何度か行った。半年前の私なら、「ワイパーを動かすタイミングなど自分で判断すればよい」と考えていたが、雨滴感知式の自動制御を知ってしまった身としては、クラウンともあろう最新の高級車にその装備がない(カローラにもついているというのに)ということに呆れてしまった。クラウンには、至れり尽せりのもてなしを期待するものである。

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クラウンというのは、いったいどういう位置にあるクルマなのだろう。昔は「いつかはクラウン」というフレーズが似合っていた(しかし、私が生まれた頃に親父が最初に買ったクルマはクラウンだった。当時まだその宣伝文句はなかったかもしれない。)が、現行のクラウンには特別な感情を抱くことがない。他のクルマが良くなったのか、クラウンが落ちぶれたのか分からないけれども、現在は日本一のクルマを作ろうというメーカーの心意気が感じられないのである。まもなく発表されるであろう新型マークIIは、このZEROクラウンをベースにして、同じプラットフォームで作られるそうである。クラウンより少しだけ小さい車体、少しだけ高級感の乏しい(若々しい?かも)内装を備える、根本は同じクルマとして登場するというのは、なんとも面白くない。威厳のあるクラウンの姿は、その名が示すマジェスタで実現させるつもりなのだろうか。

3.0

ATHLETE

6AT

【デビュー時】日本の高級車、クラウンが新しくなった。大変身したことによってメディアにとって格好のネタとなり、賛否両論が繰り広げられている。また、全拠点に試乗車を配備するなどトヨタの力の入れようが強く感じられる。その甲斐あってか、販売量は対計画比4倍にもなっているらしい。納車待ちは1ヶ月強という(2004年3月中旬に注文した場合)。

暖かくなってきたので、冬の間に弱ったバッテリを充電することを兼ねて、今回は原付で10分ほど走ってトヨタ店を訪問した。

試乗にあたってキーを受け取ると、これは流行の「所持しているだけでいい」タイプのものであった。ドアロック解除はドアハンドルに触れるだけでよく、乗り込んだらプリウスと同じボタンでエンジンを始動できる。なお、スタートボタンを押す前にブレーキペダルを踏んでおく必要がある。スマートキーは日産車と違って車内に差し込んでおく場所(センサーもついている)が存在するのがありがたい。エンジンをかけるとステアリングホイールが自動的に運転ポジションへ動き出す。エンジン停止時(乗り降りの際)はステアリングホイールがダッシュボードの方へ引き込まれて上方へ跳ね上げられているのだが、エンジンを始動すると、直前に乗ったドライバーが合わせた位置へ自動的にセットされる。なかなか親切な装備であるが、もし膝を立てていたらどうなるのだろう。怖いので試さなかったが、無理やり上から押さえつけられるのだろうか。

冷間(気温は13度ぐらい)での始動直後のエンジン回転は1500rpm強まで高まり、エンジン音は意外にも大きく聞こえてきた。静かなことが取り柄だったクラウンの面影はもはや無い。新V6エンジン自体の音はさほど大きくはないが、ダイレクトな動きを求めてエンジンマウントを硬くしたために車内に音が伝わるようになったのかもしれない。

シフトレバーをDに入れて駐車場から出すと、ステアリングにしっかりとした重さを感じた。ここでも「従来型とは違うんだ」ということを強く主張しているように思われた。道路に出てエンジンを温めながらゆっくりと走ると、タイヤからの騒音が意外に耳に届いた。225mm幅、18インチのVEUROは恰好が良いが、ちょっと似合わないと思った。

試乗コースは、アスリートの走行性能を試すために山道を選んでみた。店のすぐ近くには、傾斜のきついタイトターンからフラットな中速カーブまでバラエティに富んだ道があり、運動性能をチェックするには適当なのである。

まずは先行車に続いてタイトターンの急坂を超スローペースで登ると、ステアリングはやや重めの感触で滑らかに回り、スロットルペダルの動きに対するエンジンの反応も滑らかであった。加速は自然なフィーリングであったが、ステアフィールは従来どおりダイレクト感の希薄なものであった。電動パワステになっても伝統の味は変わらないのか。

前席は肩までホールドするシートを備えるので、横Gによって体が動くことが少なく、安定した運転姿勢を保つことができる。これはなかなか良い感触であった。

中速カーブが続く道では、DレンジからTipシフトにレバーを動かしてみた。3rdと4thを使い分けて走ってみたところ、エンジン音が高まることに対する嬉しさは全然こみ上げてこなかった。2500rpmを越えて回すとエンジン音が耳障りだと思えてしまうぐらいで、エンジンを回す楽しみはまったく感じられなかった。普通のクルマなら、どんどん踏んで突っ走るのが楽しいはずであるが、クラウンの場合は、アスリートといえども静かに走るのが性に合っているように思えた。ステアフィールは、舵角とクルマの動きがリニアでなく、途中から変に敏感になるところに違和感を覚えた。タイヤの応答性にも問題があるのかもしれないが、とりあえずステアリングギア比をもう少しスローにして微妙な調整ができるようにしてもらいたい。

Dレンジに戻してカーブをクリアしていくとき、初めて速度計を見たが、体感速度を大幅に越えていた。6th(TOP)ギアで走っているときはエンジン音もロードノイズも気にならず、全体的に静かに走るので、速度超過には気をつけなければならない。フロントのダンパー内には伸びを抑制するバネが入っており、カーブでのロール感は少なかったが、ダイレクト感が希薄なので、速度が高いと少し怖い。100km/h(TOPギア)でのエンジン回転は1800rpmぐらいであった。

直線部分で60km/hぐらいからフルスロットルを試してみたところ、滑らかで力強い加速を見せてくれた。3.0アスリートは、レガシィ3.0(BP・BL)よりも重いのにもかかわらず、加速性能は優れていると感じられた。

乗り心地は従来型よりは硬く、安定感はあるが、それでも大きい突き上げのないソフトライドは変わらず、まあまあ快適であった。しかし、運転する楽しさがまったくないため、自分で運転するために所有する気にはならない。やはりクラウンはリアシートに座るように作られたクルマである。その証として、アスリートといえども前席背もたれには、後席乗員用の「握りん棒」がつけられている。

試乗から帰ってきて初めて、TEMS(AVSという名になった)とECTをSPORTに切り替えるスイッチがそれぞれあることに気付いた。あまり使う必要はない機能だと思うが、使ってみないとどれほどのものなのか判断できないので、もし次に乗る機会があれば述べようと思う。

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先代クラウンからアスリートという派生モデルができたが、スポーティなクラウンというのは何とも違和感がある。スポーティクラウン=アリストなので、位置付けがぼやけてしまう。アスリートなんていう奇妙なものはやめて、クラウンらしい独自のクルマを追求したほうがいい。

 

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