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5 door Saloon

1.6

239.5万円(税込)

シトロエンのCで始まるラインアップが2〜5まで揃った。C4はゴルフと同じクラスで、クサラの後継車と言える。基本設計はプジョー307と共通であるが、それは外観や内装からまったく認知することができない。

今回の試乗車は1.6Lエンジンに4段ATを備えたモデルであった。これには、他車種では通常2.0Lクラスに装着されるサイズのタイヤ(205/55R16)が鉄ホイールと組み合わされていた。

店舗の敷地内で動かしてみると、ブレーキはカックンと利き、スロットルの踏み始めはグッとノーズを持ち上げ、加減速における初期応答の敏感さが気になった。

公道で走らせてみると、乗り心地が素晴らしいことにびっくりした。まるでC5のハイドロニューマチックのような不思議な感触があり、シトロエン独特の味があった。これの一番の立役者はシートの具合の良さであると思う。クサラのように体に吸い付くシートではなかったが、柔らかいベロアの表皮および適度に沈み込んで体を包み込むクッションが心地良い印象をもたらしてくれた。脚はさほど柔らかくないが、なかなか良く動くため、両者が相まって快い乗り心地を作りあげたのだと思われる。硬いだけであまり味のない307と比べると、C4は明らかに独自の味わいを持っていることが分かった。

私は、腕が短いせいか、それとも腰が悪いためシートバックを倒し過ぎてしまうのか分からないが、どのクルマに乗ってもステアリングホイールを最も手前に引いた位置に設定してしまう(ゆえにテレスコピックコラムにこだわる)。それゆえ、C4のフロントスクリーンが強く傾けられていることに対して違和感を抱くことがなかった。試乗時に座面を最下位に設定していたことも一つの要因であろう。なお、身長175cmの私が座面を最も低くした状態で運転すると、全体的にややアンバランスな気がしたので、シートリフターを使ってもう少し高めの着座位置を探してみるのも良かったかもしれない。ただし今回は短い乗車時間であったので試せなかった。

後席は307と比べると狭いようで、膝前にあまり余裕はなかったが、不都合を感じるほどでもなかった。2ドアクーペも同じ室内スペースを持つという話であるが、クーペの展示車の後席に乗り降りしてみると、体を捻らねばならないことに苦痛を感じた。

ATは307と同じものが使われているというが、307のものと比べるとシフトショックの少なさに「洗練」を感じた。ただ、加速の途中、2速でロックアップクラッチが作動することが明確に感じられるのは307との共通点として捉えられ、トヨタ車のような「ATの存在感のなさ」を見せるほどではなかった。

1330kgの車重に対して1.6Lエンジンは非力かと想像していたが、意外にも街乗りでは問題がなかった。しかし、急加速が欲しい場合に頑固なATが言うことを聞いてくれず、低回転域でもどかしさを感じる場面もあった。エンジンは3500rpmぐらいから上で元気になるので、4段ATでは美味しいところを上手に使うのは難しい。ゴルフ5のような6段ATが欲しくなってしまう。

街乗りの後、カーブをちょっと高めの速度で走れる場所に移動してみた。ギアを2速に固定してコーナーリングの姿勢をチェックしてみると、素晴らしい乗り心地を示すクルマであるにもかかわらず、車体のローリングは非常に少なく、とても安定していた。乗員の姿勢も滑りにくいベロア地の表皮のおかげで安定しており、シート自体のサイドサポートに頼る必要はなかった。ステアリングの重さも適切で、程よいクイック感も好ましく、307のようなサスペンションの揺れ(ブッシュのたわみ?)による不安感はまったく現れず、狙ったラインをきれいに進んでくれた。脚の設定はこれで何も文句はない。

最初に感じたカックンブレーキは、温度が上がると安定した利きを示すようになった。しかし踏み始めのスロットルの敏感さは変わらず、ノーズが持ち上がった瞬間にペダルを少しだけ戻してみると加速が急に止まり、なかなかうまく発進することはできなかった。ノーズが持ち上がってもそのままの状態を維持するか、極めて慎重にスロットルを開くか、運転手の力量が問われるクルマである。

1.6 Saloonは、全体的にはとても良く出来たクルマであり、雑誌等の試乗記で誉められていることが理解できた。ただ、私は加速性能に余裕がないことに我慢ができないため、2.0Lモデルに興味が湧いてしまう。販売員がテストドライブした感想によると、2.0Lモデルは、17インチタイヤを装着し(脚も設定が違うかもしれない)、シート表皮がアルカンターラになる(生地が伸びにくい)ことから、乗り心地が1.6Lモデルに比べて硬くなると説明してくれた。機会があれば、1.6 Saloonの基本的な乗り味が2.0 Exclusiveとどれぐらい違うのか、自分でも乗ってみたいと思う。欧州仕様でもアルカンターラのシート表皮が2.0 Exclusiveの標準設定になるため、1.6 Saloonの装備・仕様のままでエンジンだけを2.0Lに積み換えたモデルを注文することは残念ながらできない。

追記:私と同じように感じる人がインポーターの中にもいたのだろう。1.6 Saloonの仕様をベースに2.0Lエンジンを積んだモデルが追加された(2005.10.19)。

5 door Saloon

2.0

EXCLUSIVE

Leather package

299万円(税込)

Leather packageは20万円(税込)

1.6Lモデルの試乗から半年以上経ってしまったが、2.0Lモデルにも乗ることができたので比べてみよう。

試乗車にはレザーパッケージのオプションが装着されており、電動調整できる革シートが備わっていた。これは座面の高さが前後独立で調整できるタイプであった。標準設定のシートは手動調整で座面全体が一体で上下したと記憶しているので、電動調整機能があると細かい要望に対応できるのが良い。しばらく経ってなんだか尻の下が熱いなあと感じたら、シートヒーターがONになっていた。3段階ぐらいの温度設定ができるようで、このクラスにまでこんな装備がなされるようになったのかと感心した。革、電動、ヒーターという3点セットに20万円を出すかどうか、ちょっと考えてみたくなる価格ではある。

今回走ったコースは1.6Lモデルの試乗時とは異なる市街地であったので、ごく普通の街乗りの感想しか述べられない。

初めに感じたのはATの違和感であった。M/C前の307と同様の個性的な味が出ており、さらに擦れるようなキンキンした音もATから発せられ、なんとも主張の強いトランスミッションだなあと感じた。具体的には、各段のアップシフト時の変速ショックが大きく、2速の途中でロックアップする際のショックも大きく、ダウンシフトもガツンと来るというダイレクト感が強いものであった。M/C後の307のATは個性をあまり主張しなくなったし、C4 1.6もM/C後の307と同様に洗練されていたのに、どうしてC4 2.0のATは改良されていないのだろう。PSAの戦略はよく分からない。それとも、単なる個体差なのか。

乗り心地は、残念なことに特筆するほどのものではなかった。1.6Lモデルで得られた不思議なシトロエン風味がまったく感じられなかったのは何故だろう。17インチの50%扁平タイヤの硬さやファブリックに比し硬い表皮の革シートが心地よさを妨げていたのかもしれない。

ブレーキは相変わらずサーボ感が強いもので、軽い踏力で利くのは良いのだが、停止直前の踏力コントロールが難しく、カックンと止まってしまうことが多かった。ブレーキパッドの摩擦係数が高いような気もするので、パッドを変更するときに摩擦係数の低い製品を考慮するといいだろう。今は日本の数社からダストがあまり出ないパッドが発売されている。

コースの都合で2.0Lエンジンの力を試すことはままならないことであった。普通に街乗りをする限りスロットル操作に特に気を遣って走ることは一切なかったので、1.6Lモデルのような活発に思わせるスロットル特性にはなっていないのだと思う。往々にして同一車種の小排気量モデルはペダルストロークが小さくてもスロットルバルブを大きく開けようとする特性が見られるもので、C4も例外ではなかった。

今回の2.0 EXCLUSIVEには残念ながらシトロエンらしい快適さがまったく感じられなかった。C4はシート表皮材やホイールサイズによる違いが顕著に表れるモデルなのかもしれないので、いろいろと乗り比べてから買うのがいいだろう。ということで、16インチアルミホイールとファブリックシートを備えたC4 2.0の乗り味がどのようなものなのか気になるので、いずれ乗ってみたいと思う。

 

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