ブレーキバランスについて考える

車両の前後ブレーキのバランスについて考えてみよう。

SUBARUレガシィは、BE/BHからBL/BPへの変更時にフロントのブレーキをかなり大きくした。エンジン性能と車両重量の対して従前は容量不足が顕著だったからである。

ブレーキ部品というものは他車種から流用されることが多く、SUBARUでは先行してブレーキを大きくしたGDBインプレッサから流用するのが最も簡単な手法と思われたが、どういうわけかBL/BP用には専用設計されたフロントブレーキが装着された(リアブレーキは従前と同じものが引き続き使用される)

BE/BHと車両重量に変わりはなく、フロントブレーキが大きくなったことから、BL5での日常のブレーキングはようやく安心感のあるものに改善された。

しかし、ノーマルパッドのままでサーキットに持ち込むと、大きくなったフロントブレーキが音を上げることになった。リアブレーキは平然としているのに。

ブレーキというものはフロントが先にロックするように設計しなくてはならないので、ブレーキの前後バランスは必然的に前寄りになるものだが、現状ではあまりにもフロント重視に偏っていると感じてしまう。どうしてこんなにリアブレーキに仕事をさせてやらないのか? 私には兆候が感じられなかったが、もしかすると、リアの制動力を高めてしまうとロックしやすくなるのかもしれない。

だが、現代のブレーキシステムにはABSやEBDが備わるので、基本的な前後バランスはドライ路面でフロントロックがぎりぎり先になるように設定してあればいいと思う(ABSに頼るなら、フロントとリアのロックのタイミングは同時でも良さそう)。なお、ホンダのサイトでブレーキに関する分かりやすい解説がある。

http://www.honda.co.jp/safety/technology/active/ebd/

 

ノーマルパッドで不満のある人はスポーツ用リプレイス品に交換すればいい。スポーツ用のブレーキパッドはノーマルパッドが抱える欠点を改善するために存在するはずである。高温での安定性や摩耗耐久性を高めるなど、ニーズに合わせて特性を変化させているのだ。

一般的にブランド(銘柄)を前後で揃えて装着すれば、宣伝どおりの性能をバランス良く発揮するものと考えられる。

そこで、私はDIXCELの600℃対応パッドに交換してみた。

しかし、このパッドセットは前後バランスがとても悪く(ノーマルよりも更にフロント重視か?)、サーキットを頑張って走らせようとする前(慣熟走行中)にフロントが簡単に設計温度を超えてしまった。どうやらこのメーカーには前後バランスを改善しようという観念が欠落しているようだ。過去に何度も騙されたのに、メーカー名が変わったから大丈夫だろうと思って買うと、相変わらずそれは三流メーカーのままだった。。。

リアブレーキをもっと生かしてくれる(利かせてくれる)ようなストリート用600℃対応パッドはないものか。やはりWINMAXやENDLESSという老舗に頼らざるを得ないのかな。30APR2012

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【余談】

もし「ノーマルBL5でフロントとリアのロックポイントが近く、リアパッドの摩擦係数を少しでも上げるとリアタイヤが先にロックしてしまう」という状況になっているのなら、DIXCELに罪はない。ただ単にBL5の基本設計が悪いということになる。そういうことであるのなら、通気式ディスクをリアに備えている意味がない。リアに任せられる仕事量が少なければ、ソリッドディスクでも事足りる(あまり冷やす必要はない)のだ。

過去の雑誌のテスト記事を見ると、フロント通気式ディスク、リアソリッドディスクの車両(S13だったか)では、ローター温度の前後バランスが良く、使用するパッドによってはリアのほうが温度が高いということもあった。

果たしてBL5の真相はどこにあるのだろう。

ブレーキ部品というものは様々な車種で同じ形状のものが共用され、それらを前後で色々と組み合わせて車両が出来上がる。したがって、一般的には特定の車種の前後バランスだけを考えて設計するのは困難である。そんな中、BL/BPのリアブレーキはBE/BHと共通でありながら、フロントブレーキはBL/BP専用部品として設定された(BL/BP発売時)。その後、BL/BP用のフロントブレーキ部品はインプレッサやBM/BRにも使われるようになってしまったが、そんな状況であっても「前後セットでBL/BPと共通設定の車種」というものは存在しない(ENDLESS品番で前EP417、後EP355という組み合わせはBL/BPのみに設定される)。したがって、しっかりと組み合わせ設計図を描き、パッドの特性を考え抜けば 、量産品を用いてBL/BPで前後バランスを整えることもできないことではない。

しかし、多くのラインアップを揃える必要があるパッドメーカーでは、特定の車種にあまり熱心に取り組むことはできないのが実態だろう。そのような状況で前後バランスを適正にするためには、過去にインプレッサで実施していたように前後で銘柄の異なるパッドを入れて試してみるしかない。あるいは、マルシェのような特定の車種にこだわるショップのオリジナルパッドを使うのが手っ取り早いか。。しかし、ハイグリップタイヤでセットアップしたブレーキパッド(マルシェ)はフロントの利きを重視することになるため、ノーマルタイヤでは結局バランスが悪いということになってしまうだろう。Umm、難しい。

 

 

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ブレーキのサイズはエンジン性能と車両重量で決まってくるはずであるが、最近、奇妙な設定がなされている車種があり、気になっている。その車種はスポーティな走りが売り物のFT-86である。

TOYOTA 86SUBARU BRZのブレーキのバリエーションは2パタンある。

モデル

フロント (参考: Endlessパッド品番)

リア (参考: Endlessパッド品番)

BRZ (S), BRZ (R performance package),

86 GT, 86 GT Limited

16インチ用通気式ディスク 

 (EP386)

15インチ用通気式ディスク

 (EP472)

BRZ (RA), BRZ (R), 86 G*, 86 RC*

15インチ用通気式ディスク

 (EP386)

15インチ用ソリッドディスク

 (EP418)

 * 86のカタログには詳細が書かれていないが、GとRCのフロントブレーキは15インチ用だと思われる。

《フロント》16インチホイール用ローターと15インチホイール用ローターの各々のブレーキパッド形状は共通である(キャリパが共通)。このパッド形状は現行インプレッサ2.0NA(15インチ用)や現行レガシィ2.5NA(15インチ用/16インチ用)から流用されているよう だ。15インチ用ローターと16インチ用ローターで同じパッドを使える合理的な設計になっているのが興味深い。

《リア》ローターサイズは全車15インチ用だが、通気式ディスク用とソリッドディスク用にパッドは別々に用意される。現行インプレッサ(15インチ用ソリッド)や現行レガシィ(16インチ用通気式/16インチ用ソリッド)から流用されているよう で、リアパッドも15インチ用と16インチ用で共用できる合理性を備えている(インプレッサとレガシィで共用化が図られている)。

GC8インプレッサのブレーキはフロントが15インチ用通気式ディスク、リアが14インチ用通気式ディスクであったが、適正なパッドを選べばサーキット走行もできたので、FT-86の基本セットである15インチ用ブレーキであっても実用上の問題はないのかもしれない。しかし、16インチ用ブレーキ装着車なら、スポーツ走行時のローター温度が低く抑えられるので、15インチ用よりはノーマルに近い特性のパッド(例えばダストが少ない)でそのパフォーマンスを楽しむことができるだろう。

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