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ドイツのTV放送は、原語が英語であろうと日本語であろうとことごとくドイツ語に吹き替えられ、殆ど聞き取ることができない(字幕にしておくれ!)。そのような中で、自動車に関する番組だけは何となく言っていることが分かる気がしたので、TVガイドをチェックしつつ色々な番組を見た。

2003年7月に放送された番組(Motor Vision)はなかなか興味深いもので、2.0Lエンジンを積む日本車、Avensis vs. Accord vs. Mazda6 (Atenza)の比較試乗があった。それらの評価は次のとおりで、Avensisは相変わらずトヨタらしくComfortだけを追求したオヤジ車なのではないかという印象を受けた(一部読めなかったところは省略)

 

Avensis

Accord

Mazda6

Good

快適性

エンジン

燃費

ハンドリング

価格

快適性

ブレーキ

Bad

ハンドリング

エンジン

快適性

価格

エンジン

燃費

10月になって日本でも発売されたので、展示車両を見にVISTA店に行ってみた。内装色がグレーのみ(ヨーロッパでも同じ設定)というのがどうもピンと来ない。ヨーロッパの車は様々な内装色を客の好みで選べるのが特長だと思っていたのに。。

Avensisは CALDINA/PREMIO/ALLION/CELICAと車台を共有する仲であるが、ヨーロッパで売るため、それら日本用車両と比べて基本装備がしっかりとしている。例えば次のようなもの。

Fr16インチ用&Rr15インチ用の大径ブレーキローター、左右独立温度調整式エアコン、チルト&テレスコピックハンドル、ESP、外部トランクオープン用スイッチ等

試乗車が用意され次第、乗ってみようと思う。

 

 

初期モデル

Xi

FWD

16インチタイヤ装着

VISTA店に試乗車が用意されたので訪問した。

おそらくこの日は車両の登録後に初めて迎えた週末のはずなのであるが、残念ながら客は誰もいなかった。その状況を見ると、日本でのセダン人気の凋落ぶりを痛感してしまう。

まずはエンジン始動音を聞く。当然であるがトヨタの日本製車両と同じく静かに目覚めてくれた。

運転席に乗り込んで運転姿勢をつくろうとすると、リクライニング調整レバーの動きが初めて経験するものになっているのに気付いた。それはシート高調整と同じようなラチェット式で、微妙な位置決めをすることが可能になっている。一気にシートを倒すことができないデメリットもあるが、ダイヤル式に比べて楽に微調整でき、しかも微妙なズレが発生しないのは良いアイデアだと思う。ステアリングのテレスコピック機能も便利な装備である。シート位置を最下位に、ステアリングを最下位で最も体に近い位置に設定し、いざ発進。

動き出してすぐに感じたのは着座位置の高さである。ALLIONと同じようにシートだけが異様に高い位置に存在するというバランスの悪さを強く感じた。ライバルと考えられる BMW 3er、VW PASSAT、Audi A4の各車において着座位置がかなり低くできるのは欧米人の体格に合わせるために必要なことだと思っていたので、Avensisが本当にこの状態でヨーロッパで売られているのか疑問である。もし日本向けの専用設定なら、余計なことをしないでヨーロッパ用に戻してもらいたい。

ATはTipシフト付き4段変速、エンジンはD-4の2.0Lで、CALDINAとほぼ同じ仕様である。そのフィーリングもCALDINAとほぼ同じで、スムーズで静かなトヨタの味が相変わらず感じられた。ヨーロッパ仕様と同じギア比を持つというATはややハイギアリングで、1STギアは4000rpmで45km/hぐらいの速度を出す。すなわちRev limitまで回せば 70km/h以上出ることになろう。変速ショックを観察しようといろいろな運転をしてみたが、Dレンジで急加速してもTipシフトでダウンシフトしても、ショックは感じられなかった。トヨタの快適性を作る技術には本当に驚いてしまう。エンジンはCALDINAやALLIONと同じくダラ〜ッと回るインパクトのないものであるが、その存在を意識させないというところに価値があるのかもしれない。

試乗車のタイヤサイズは205/55R16で、鉄ホイールを履いていた。乗り心地はストローク感がないものの、当たりは硬くはなかった。サスペンションは突っ張った印象なのに、ショックは入ってこないという乗り味は不思議なもので、詳細はよく分からないが、タイヤやブッシュを衝撃吸収に有効に使っているのかもしれない。17インチ仕様も脚の設定は同じであるという。

ステアリングのフィーリングはやや重めで、路面の乱れの影響を受けない。影響を受けないのと同時に手に伝わってほしい情報も遮断されてしまう。なんとなくハンドルを切ってみるとクルマが曲がっていくので、それを目で追いつつ舵角を決めるという感じである。

ブレーキは踏力に応じて利く設定(しっかり踏まないと利かない)になっており、一般的な日本車に慣れた足には違和感を感じるが、そのうちに慣れるので問題はないだろう。走行中のブレーキングで鳴きは発生しなかったが、Dレンジで停車中に少しだけ動くためにペダル踏力を緩めたときに「キーギュルギュル」という音が出てしまう。これは摩擦係数の高いパッド(BOSCH製)を使っているので仕方がない。ささやかなことなので我慢しよう。粉も多く出るかもしれないが、欧州車だと思ってホイールの掃除をこまめに行うべし。

短時間の試乗で得られた印象は、ヨーロッパ製の部品(ダンパーはDelphi製)を使っていてもやはりトヨタ車はトヨタの味がするということであった。

見た目は端正な4ドアセダンなので、冠婚葬祭に乗り付けるのに不自由はなく、また、快適に走りたいという要求は充分に満たしてくれる。運転の面白さを求めず、カリーナやコロナから乗り換えようと思う人にはAvensisは良い選択だと思う。まあ、無難なクルマである。日本のみならずヨーロッパのトヨタ車もやはりネガティブを消すことが最重要課題として作られているように思われる。

Avensis

初期モデル

Li

FWD

17インチタイヤ装着

アベンシスの販売の中心グレードはXiのようで、近所の店にある試乗車はXiばかりである。

今回、Liの試乗車を初めて見たので、Xiとの違いを確認するためにちょっと乗ってみることにした。XiとLiには基本的な部分に違いはないが、タイヤ&ホイールが異なる。Xiには16インチタイヤに鉄ホイールが備わるが、Liには17インチタイヤにアルミホイールが組み合わされる。タイヤ+ホイールのセット重量はどちらも同じぐらいだと思われる。

まずはゆっくりと流してみると、路面の良いところではXiよりもフラットで安定感のある乗り味が感じられた。タイヤのたわみが少なくなったことにより、そう感じられたのだろう。

鋭い力が路面から入る段差を踏んだときには、意外にショックが大きかった。その程度はXiよりも強いと思われる。タイヤのたわみによる衝撃吸収の度合いが異なるのが原因であろう。

ステアフィーリングはXiと大いに異なり、まるでMercedesに乗っているような錯覚に陥った。重々しくてねっとりとした操舵感はあまり気持ちのいいものではない。ただし、Mercedesと異なるのは、フロントサスペンションの片側が伸縮するたびにステアリングに微妙な揺れ(回転方向に揺すられる)が起きることであった。おそらくサスペンションのストロークによってタイヤの向きが変わり(バンプステアが大きい)、ステアリングに影響するのだろう。Xiで感じられなかったのは、16インチと17インチのタイヤのグリップ力(微少すべり角でのサイドフォースの立ち上がり)の差があるからだと思われる。

ATのギア比は高く、リミットまでエンジンを回せば2速で100km/hを超える。発進加速や追い越し加速は2.0Lの平均的なレベルなので、高いギア比は燃費に有利に働くだろう。60km/hではTopギアでロックアップクラッチが作動していた。

信号待ちで停車しているときの感触からみて、エアコンのコンプレッサは可変容量式であると推測された。冷却ファンのON/OFFによってコンプレッサが仕事を止めていることが判断できるものの、その際のショックはなく、とてもスムーズで高級感が感じられた。室内送風ファンの強さは7段階に変化するような表示がインパネにあり、マニュアル操作ではそのとおり7段階に調整ができる。一方、AUTO設定(希望する温度と室温の差によって風量が変化する)でも7段階の変化しかしない。これには少し不満がある(レガシィは13段階に変化)。コンプレッサが無段階可変なら、ファンも細かく区切ってもらいたい。

ブレーキはBOSCH製のパッドが付いていたので、ヨーロッパ仕様から変更はされていないようである。販売員からは「日本製と異なりダストや鳴きが多い」と聞いていたが、停止寸前の極低速時にキーキーと鳴るだけで、なんら問題のない範囲であった。ブレーキペダルは右寄りに位置し、また、フットレストよりもかなり高い位置に存在するので、左足ブレーキングには適さなかった。

全体的に見て、快適性能は良く出来たクルマだと思われる、ただし、乗り心地は厚いゴムの上に乗っているようなフィーリングがあり、動かない脚に対してゴムのたわみで誤魔化しているような気がした。この辺はトヨタの従来の考え方と変わっていないようである。

 

第一回 M/C 後

2.4 Li

FWD

2006年7月に外装と内装の小変更というマイナーチェンジがあった。 そこで、2.4Lエンジンを積んだ新モデルに乗ってみようと店を訪問したが、未配備であった。

試乗車として用意されていたのは2005年9月の第一回のM/Cを受けたモデルで、それには4気筒 2.4Lエンジンが載っていた。そして、組み合わされるトランスミッションも5段ATにアップグレードされていた。私はトヨタ車にあまり興味がないせいか、情けないことに2005年9月のM/Cを知らなかった。実はアベンシスには2.4Lがすでに載っていたのである。

2.0Lエンジンは第一回M/C時に廉価版のXiのみに残されることになり、2006年7月のM/Cにおいても踏襲された。

今回の試乗車は2.4 Liというグレードで、エクセーヌの生地をシート表皮にしたものであった。 運転席の調整は8wayの電動式で、助手席も電動式となっていた。欧州生まれにもかかわらず着座位置はあまり低くなく、そのせいなのかどうか分からないが、前端の高さの調整範囲が少なすぎるよう で、前端を最も高くしても、尻の面圧が高いと思われた。このクルマのベストポジションはもう少しスライドを後ろに下げて脚を伸ばす姿勢だったのかもしれない。

ゆっくりと流してみると、なかなか静かでフラットな乗り味が感じられた。どこにも違和感がないクルマで、刺激や面白みはないが、米の飯のように飽きが来ないかもしれない。

ステアフィーリングはパーキングスピードで重くてねっとりとしたものであったが、走行中には何ら変なところはなく、あまり速度の乗らない街乗りでもステア操作に何の支障もなかった。

ATは5段変速になったおかげで2速ギアは2.0Lモデルより低く設定されていると感じられた。Tipシフトで2速を選び、フルスロットルでリミットまで引っ張ってみたが、トルク感はあまり力強いものではなく、 「2.4Lである」と聞かなければそう思うことはなかっただろう。エンジンの音は軽快で、これも2.4Lとは思えないものであった。Dレンジで60km/hぐらいから80km/hぐらいまで緩やかな加速をしてみると、Topギアで作動していたロックアップクラッチはなかなか解除されないことが気に入った。この制御は評価できる。

ブレーキは 相変わらずクリープ時にゴリゴリと音を発していたが、性能重視のパッドが付いている証拠であるので、気にしなくていい。

初期モデルに乗った頃からかなり時間は経っているが、全般的に快適性能が向上しているように思われた。現行モデル(第二回M/C後)は試乗したモデルと機械の構造的にはほとんど変わっていないので、トヨタのセダンが好きなら買ってもいいだろう。ただし、MarkX 250Gよりも高い価格(税抜261万円)を受け入れられるかどうか、そこが問題である。

 

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初期モデル

Xi

FWD

16インチタイヤ装着

VISTA店がNetz店に統合され、街で青い看板を多く見るようになった。今回は旧VISTAの店を訪問した。

試乗車はセダンLiとワゴンXiの2台があり、乗り比べてみた。

セダンLiは比較的新しい車輌であったが、上記と印象は変わらず、相変わらず突き上げ感が強く、275万円もするクルマの乗り味ではなかった。売れ行きが良くないため、日本向けに味付けを変えていくことは考えられていないようである。日本ではもはや戦力外通告されたクルマということか。

ワゴンのXiは今回初めて試す機会を持つことができた。ただし、この試乗車は5000km以上酷使されたもので、シートリフターのレバーのカバーが割れてなくなっていたりして、かなりのボロ車であった。ディーラーでもこの車種には力を入れられないのかもしれない。可哀相なものである。

乗り味はセダンXiとまったく変わらず、普通のトヨタ車であった。タイヤの厚みがあるため、突き上げは少なく、快適に走ることができた。やや高い速度でカーブを走行してみると、あまりローリングをしないことが分かった。バネは割合に硬いのだろう。ステアリングに手ごたえが返ってこないのは不安であるが、体は安定していて良かった。

今回、1STギアで自動シフトアップ(Dレンジ)するまでフルスロットルで引っ張ってみたところ、70km/hぐらいまで伸びることが分かった。かなりギア比が高いが、その割りに発進加速が悪くない。日本の4段ATのクルマもこれを見習ってギア比セッティングするといいのではないかと思う。

リアシートは停車時に掛けてみただけであるが、セダンと同じようにクッションがフワフワで、とても長時間乗ろうとは思えない代物であった。

ワゴンならば荷室が気になるので見てみると、広さはなかなかのものがある。しかし、問題は形状である。サスペンション部品の逃げのためか、ホイールハウスに増して荷室幅を狭める奇妙な出っ張りが存在する。これのせいでもっとも狭い箇所の幅は90cmに満たないため、大型のスーツケースは3個しか載せることはできない。

AVENSISというのは、いったい何を目指して作られたのだろう。目標とする像が全然見えないのである。ドイツではVW PASSATと同じ価格帯でありながら、それを超えているとことがまったくないのでは、売れるはずがない。

 

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