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CALDINA (T240系)

トヨタの人気車種カルディナがフルチェンジした。初代(190系)も二代目(210系)もレガシィを叩くという使命を果たせなかったため、今回はスポーティなイメージへ変身して新たな客を取り込もうという考えのようである。正統なワゴンに対して、亜流は果たして勝負できるだろうか。

エンジンは2.0Lターボを筆頭に、2.0L直噴NAと1.8L NAで構成される。先代より全長が短くシャープになったスタイリングは新鮮で面白い。その代わりに荷室の容量が狭くなってしまったため、ワゴンとして使うことを重視しないほうがよさそうである。これでトヨタには中型のまともなワゴンはなくなってしまった(トヨタ党の人はAvensisを待とう!)。それでもリアシートを倒せば広い空間が生まれるので、隔壁のあるセダンよりは使いやすいとも言える。しかし、トノカバーの使い勝手は良くない。巻き取り式ではなく脱着式(安物のVOLTZと同じ)であり、外すと仕舞う場所がない(2004年末のM/Cで巻き取り式になった)

リアシートの背もたれはリクライニングするが、これは最近のトヨタの最悪なトレンドである。アリオン/プレミオ、カローラと同様に1段階のみ大きく倒れる。座面前端が上がらず背もたれだけが倒れると変な姿勢になるうえ、衝突時の安全性も低くなると思うが、そのあたりは全く考慮されていないようである。

ZT

(AZT241)

2.0L D-4

4AT

FWD

212万円

2.0L直噴(1AZ)エンジンのFWDモデルから乗ってみた。このZTというグレードは、内外装をGT-FOURと同じように仕上げたスポーティな外観が特徴であり、17インチタイヤを履く。ただし、ブレーキローター径は15インチホイールに収まる大きさしかないので、とっても貧弱で格好が悪い。CALDINAのNA車両のボンネットには穴が無く、すっきりしている。

運転席に座って内装を見てみると、Vの形にデザインされたセンターパネルに目が行く。青いメタル調塗装にはなじめないが、最近多いアルミ調よりはずっと落ち着いていて良い。次に気づいたのは、トヨタ車でおそらく初めて採用(サクシード、プロボックスが先か?)されたと思われるラチェット式のシートリフターである。これは座面だけが動くものではなく、シート全体が上下するので、背もたれと座面の関係が崩れないのが良いのである(とはいえ、他社では以前から当たり前のように採用している)。しかし、着座位置がどうも高すぎて、高齢者向けのアリオンに乗っているかのようである。若者向けのスポーツワゴンで、しかもリフターがついているのだから、イニシャル位置を20mmぐらい下げてもらいたい。現状ではサンバイザーが視界の大きな妨げになり、まともな運転姿勢をとることができない。シートはスポーティな形状でなかなか良い。アリオンや旧カルディナよりもかなりまともな作りである。リアシートの空間は、頭上も膝まわりも余裕があり、ヘッドレストもいちおう備わる。

1AZ-FSEエンジンのフィーリングは、アリオンのA20と全く同じで、トランスミッションがCVTに代わって普通の4段ATと組み合わされるという違いしかない。エンジンにパンチはなく、ダラーっと回っていく。面白いところは何もない。薄い燃料走っているときには「ECOランプ」が点灯するので、燃費を大事にする人には良いかもしれない。

ステアフィーリングはインフォメーションが少なく曖昧で、低速では切り込んだ後に戻ってこないのが気になった。17インチタイヤを装着しているのだから、もう少しカッチリとした味を出して欲しい。乗り心地は、ボディ剛性が高いとかサスペンションがよく動くとかは特に感じなかった。トヨタの他車と同様に普通のクルマであった。

ブレーキは4輪ディスクではあるものの、ペダルタッチはダイレクト感がなく、効きは非常に悪い。鳴きを防ぐために、相変わらず摩擦係数の低いPADを使っているようである。この部分の改善なしにスポーツワゴンを名乗る資格はない。

厳しく述べてきたが、最後に良いと感じた部分について書いておく。雨が降っていたので間欠ワイパーを作動させたところ、「ブレードの往復が速い」ことだけが強く印象に残った。それだけである。

雑誌での前評判と異なり、2.0L NAモデルは面白い外観以外に何の特徴もない平凡なクルマであった。果たして若者が注目してくれるだろうか。

GT-FOUR

N-Edition

(ST246)

4AT

AWD

291万円

(標準車は271万円)

(試乗1回目)

こちらが本命のターボチャージャ付きのハイパワー全輪駆動車である。Nエディションの「N」はニュルブルクリンクを開発の場にしたことを表しているのか、開発ドライバーのイニシャルかどちらかだという話である(どっちでもいいが)。このグレードにはRECAROの新型シートAM19シリーズの「STYLE」という形状で、その中で日本車向けの製品(レカロでの品番ST-JJ/\184,000)が装着される(CALDINAのカタログに記載の「レカロ スポーツ」というのは誤りであり、レカロ スタイル がシート名としては正しい。トヨタとしてはレカロ製のスポーツシートという意味で書いているのだろうが、紛らわしいのでやめて欲しい。レカロAM19シリーズにはれっきとした「SPORT」というシートがある。旧型レカロのLX、LS等は背もたれ形状が気に入らなかったが、新型レカロは違和感が少なくなっていた。ただし、着座位置が高いので、体型によっては購入後にローポジションレール(社外品で1.5万円程度)に交換する必要はあるかもしれない。なお、高いところから見下ろす現状でも、ボンネット上の空気穴は視界には入らないのが良い。しかし、室内のサンバイザが視界に入って邪魔である。なんとかならんか!

さて、肝心の走りであるが、今回は残念ながら渋滞により充分なテストができなかった。それでも、気づいたところだけ書いてみる。

トランスミッションは4段ATのみが設定され、MTの設定はない。流行のTipシフトは可能であるが、各ギアのステップ比が大きいため、マニュアル操作をしても回転数の変動が大きすぎて面白くない。また、Tipシフトで2速を選ぶと、2nd発進が可能であるが、かなりギア比が高いので、非常に鈍重な発進になってしまう。凍結路で2nd発進することをプログラムに入れてあるのかもしれないが、GT-FOURはフルタイムAWDなので、どんな冬道でも2nd発進の必要性などない。さらに付け加えると、ターボチャージャの過給が本領を発揮するのはある程度回転数が上がってからなので、1stギアで発進したとしても、直後に強いトルクが発生することがないので、ホイールスピンを心配する必要はない。2nd発進はFWD車だけにあれば良く、AWDには無用の長物である。

フルスロットルにしたときのエンジンフィーリング(1速から2速の途中までしか踏めなかった)は、同じ出力(260PS)の私のインプレッサWRXと比べて非常に大人しく、滑らかなものである。奇妙な過給音を発生させながら、まずまずの速さを見せる。この過給音はどこかで聞き覚えがあるモノだなと思っていたら、EP82スターレットターボと同じだと思い出した。キーンというノイズを無理やり抑えて出てきた音のようである。走りが大人しいのはATにも原因があると思えるので、できるだけ早期にMTを導入してもらいたい(ST205セリカのミッションをそのまま採用すれば良いではないか)。

ATの変速ショックは非常に小さくて優秀であった。Tipシフトを使って4thから1stまでダウンシフトをしてもほとんどショックが出ず、この部分に関してはレガシィより一枚も二枚も上手である。この部分はさすがにトヨタ車が一番優れている。

ブレーキフィーリングは、タッチがソフトでトヨタ車らしい設定である。踏力と効きの関係は、ZTよりもローター径が大きいことが多少寄与しているようで、まあ普通のレベルには達していた。希望を述べれば、もう少し奥でグッと効かせるフィーリングにして欲しかったが、トヨタ流の鳴き重視のPAD設定では仕方がない。純正PADは即座に捨てて社外品に交換すべし!(TRDでもいい)

Nエディションのサスペンションは頑張って設定しているように見える。カヤバ製倒立式フロントおよび単筒式リアダンパーは、その構造による高いフリクションや高いガス圧による乗り味の硬さが出るのが一般的であるが、特に悪い印象は残らなかった。トヨタにしては珍しくコストをかけているようである。ただし、カタログに強調されているフロア剛性が高いというボディは、特別な何かを感じさせることはなかった。これについては曲がりくねった道を高速で走行してみないと分からないところである。ステアリングを切った後に戻らない性質はZTと同様であった。外乱の影響を抑えるためにキャスター角を小さくしているのだろうか。

ちょい乗りだけではあったが、レガシィと比べて良いところはシートの出来(RECAROだから当然)、ATのシフトショックの少なさの2点だけである。したがって、残念だがカルディナに勝ち目はないと思う。2003年にはレガシィのフルモデルチェンジがあるので、それまでの1年間で売りまくらないといけないというのに、価格が高いうえに特徴が少なすぎてダメである。排出ガスが★★となっているのは素晴らしいのであるが。。。

ディーラーには週末になると大勢のレガシィに乗った客が訪れて試乗し、販売員にいろいろ質問しているらしい。ただし、彼らはカルディナに買い換える気持ちなどあまり持っていないような気がする。販売員は、レガシィより貧弱で高価なカルディナをどのように宣伝したらいいのか困っていた。

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(試乗2回目)

1回目の試乗のあとで色々な雑誌の試乗記を読んでみると、走りの良さを褒めたものがとても多かったため、コースを変更してもう一度乗ってみた。

ATのセレクタをDに入れたままで少し速めに走ってみると、2500rpmぐらいから早くも過給効果が感じられ、クゥーンという過給によるノイズとともにクルマを進めてくれる。VVTiの付かないエンジンにしては下からトルクが出るので乗りやすい。変速はとても滑らかで、50km/hぐらいから作動するロックアップクラッチの制御も上手で、ショックがなくて乗りやすかった。

ステアリングの感触は、レーンチェンジや、交差点を曲がるときの滑らかなフィーリングは良かった。ただ、手に伝わる路面情報は少ないように感じた。

ブレーキは、60km/h以下の街乗りの遅い流れの中で普通に減速、停止のために踏んでいてもタッチが悪く、効きが甘い印象がつきまとう。GT-FOURといってもフィーリングはトヨタ流で並のレベルでしかなく、セリカのように対向キャリパも付いていない。Nエディションには専用装備のスポーツABSが付いているので、それを試すために90km/hぐらいからフルブレーキングを試みた。その結果、かなり踏み込んでいってもタッチはソフトで、効きが甘いフィーリングは変わらなかった。停止直前になってロック気味にスキール音を鳴らすが、制動感には大いに不満が残る。スポーツ走行を考えるとコントロール性に期待はできない。せっかくフロントに2PODキャリパを備え、素性は良いのだから、もう少しまともなPADを入れて欲しい

乗り心地を確かめるため、減速帯が続く凸凹路面を走ってみた。普通のクルマであればそれほど不快ではないレベルの道なのだが、我がWRXでそこを走ると突き上げを強く感じるので、この感触を基準に色々なクルマでこの凸凹を踏んでみて乗り味を確認している。1回目の試乗では良路だけしか走らなかったので本性が見えなかったが、今回の試乗でNエディションのダンパーはフリクションが大きく、突き上げがかなり大きいことを感じた(ダンパーのなじみに時間が掛かるというのは分かっているが、ここでは考慮しない)。RECARO STYLEのおかげでお尻にショックは伝わらないのであるが、足元とステアリングホイールには強い振動が伝わってくるのであった。クルマの設計にあたって、サスペンションとシートのショック吸収(ダンピング)特性は、相互のバランスを考えながら作り上げられるというが、このクルマに関しては、RECAROとサスのマッチングはあまり考えられていないという印象を受けた。フリクションの大きいダンパーの悪癖を隠すためにRECAROを使ったということかもしれない。

全体的にみると、CALDINAは、GT-FOURという大きな看板を背負ったスポーツタイプであっても、結局のところ大衆車の枠から出ることができず、トヨタ一流の80点主義が貫かれたクルマであった。雑誌記事を読むと開発者は今までにないぐらいに走りにこだわったというコメントをしているが、その気合は外観以外に全然伝わってこなかった。これまでレガシィに負け続けてきたカルディナを、レガシィとは違う方向性を持つクルマとして「The touring machine」、「スポーツカーが嫉妬する」のコピーで売り出してきたが、どうもピンと来ない出来栄えであった。ワゴンの変種というものにニーズがあると良いのであるが。。。

ニュルブルクリンクのLAPタイムでクルマを判断してはいけないが、スポーティさをあまりにも強調して宣伝されているので数字を見てみると、トヨタ一流テスターの運転で出した8分46秒では何の自慢もできない(10年ぐらい前には14インチタイヤを履いたMR-2(225PS)が8分35秒、15インチタイヤを履いたインプレッサ(240PS)が8分28秒という記録がある)。やはり新カルディナはスタイルだけに特徴のある万人向けの普通のトヨタ車でしかなかった。WRCチャンピオンの称号であるGT-FOURが泣いている。

Touring wagonとしてのこだわりは現行レガシィワゴン(BH系)に到底及ばないので、BHからの乗り換えはまず期待できない。また、旧カルディナからの乗り換えもあまり期待できない。なぜなら、旧カルディナは「荷室の広い普通の安価なワゴン」として選ばれることが多かったと思うので、荷室が狭くなった新カルディナに惹かれるものはないから。ミニバンとコンパクトカーが全盛の時代に、どのような顧客を集めることができるだろうか。

GT-FOUR

C-Edition

(ST246)

4AT

AWD

254万円

CALDINAのGT-FOURの試乗車はNエディションばかりかと思っていたら、なんとCエディションもあった。そこで、GT-FOUR 3度目の試乗で20km程度走ってみた。

このクルマは(普通のGT-FOURも)ショーワ製のダンパーを採用しているのが興味深い。トヨタ車のダンパーは安いだけのカヤバ製と決まっていると思っていたのであるが、性能を基準にしてSHOWAを採用したのだろうか。それならばトヨタに拍手を送りたい。

シートはZTと同じものであり、座面は硬めでしっかりしており、ショルダーサポートも適度に上半身を支えてくれる。サスペンションの振動吸収特性とシートのクッション特性がマッチしており、RECAROと比べても遜色はないと思った。ただし、着座位置が高いのはダメである。20mmは下げてもらいたい。

C-ed.のステアリングホイールはウレタン樹脂製で、革巻きではない。だが、フィット感は良く、特に問題はなかった。革巻きにこだわる人(気温がマイナス20℃になる朝は、ウレタンステアリングだと冷たくて握ることができないが、革巻きは手の熱を奪わないから冷たく感じない。)はGT-FOUR標準車を選ぶといい。比較的高い速度で曲がりくねった道を走ってみたときのステアフィーリングは、伝わるものが少ないものの不安感はなく、ようやくCALDINAも悪いものではないと感じるようになった。

ブレーキはN-ed.と同じく甘い。踏めばそれなりに効いてくれるが、フィーリングは相変わらず良くなかった。また、ペダルのリターンスプリングが強い(モンデオよりはマシ)ようで、踏み始めがスッと入らず、重いのは気に入らない点である。

加速性能は、3度目の試乗にしてようやくはっきり体感することができた。Tipシフトを操作しながら Red lineの7000rpmまで使って1st→2nd→3rd(3rdは途中まで)とフル加速してみると、とにかくトルク特性はフラットで、ターボ特有の盛り上がりは少なく、Rev.リミットに近づくにつれて徐々に勢いは弱まっていくタイプであった。回転リミッタは7000rpmちょうどで効く。シフトショックは少なくて良いのであるが、とても260PS/33kgmとは思えないぐらい加速は穏やかであった。手動変速でリミッタに当てると遅くなるので、自動変速(Dレンジ)のほうが速いかもしれない。0→100km/hのタイムは7秒ぐらいだろうか。

街乗りでゆっくり走っているときの快適性は高い。エンジン音やミッションのうなり(特に1stギア)はやや大きいが、耳障りではない(三菱4G63エンジンよりはかなり静かである)。ステアリングは滑らかで、ギア比も適切だと思う。乗り心地は硬くはなく、複筒式ダンパーの動きはN-ed.の単筒式より良いと思った。

ATは約50km/hでロックアップを効かせるので、Dレンジで走っているときには効率が良さそうである。ただし、Tipシフトを操作しているときはロックアップクラッチが常時解除されるので注意が必要である。本物のTIPTRONICは、マニュアル操作時でもロックアップクラッチを可能な限り結合しておくことでダイレクトな加速と効率の良さを求めているというが、トヨタはスポーツ走行に対する考え方が異なるようである。スポーツ走行時にTipシフトを選ぶのか、Dレンジで走るのか、これまでの試乗では結論が出せない。最低限言えるのは、巡航時にはDレンジに戻すことを忘れてはいけない、ということ

安いC-ed.であるが、N-ed.と走りに大きい差はなかった。サーキットを走れば違いが出るのかもしれないが、街乗りではC-ed.のほうがスムーズに脚が動いて快適である。

今回は試乗中に日が暮れたのでライトを点灯したが、その時に内装をほのかに照らす青いLEDがルームミラーの手前で光っていることに気がついた。夜間の雰囲気を盛り上げる演出ということであるが、何だかよく分からない装備がつくものである。イストにもセンターパネルの内側が八色に光る照明のオプション設定があるが、同じデザイナーの仕事なのだろうか。

近所の駐車場にはNAのカルディナが2台停まっている。それらと他のクルマとのAピラーの傾斜角を比べてみると、カルディナのそれはものすごく寝ていることに気づいた。運転席に座ったときにフロントガラス(サンバイザ)までの距離が近いと感じたのは、これのせいだったわけである。ワゴン車にこんなに傾斜角の強いフロントガラスを採用するというのはどういう意味があるのだろう。「使い易いこと」がまずはワゴン車の基本であると思うのであるが。果たして、販売台数ベスト20に入ったのは、デビュー直後の2002年10月と11月だけである。新車効果は長続きしない…

2003年6月の新型レガシィ登場までは販売を頑張って欲しいと思っていたが、実際はモデル末期のBH型レガシィに2002年12月時点で早くも負けてしまっている。いったいトヨタは何をしたかったのだろう。ストリームに対するウィッシュのように、レガシィに正面から対抗できるまともなクルマを出せないのか。ドイツのTV番組(Motor Vision)では走りに対してあまり評判の良くなかったAvensisがその役割を果たせるだろうか?

 

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