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PRESAGE

250

Highway Star

4AT

256万円(税別)

2006年5月末にM/Cを受けたプレサージュは「輝くミニバン」という紹介がなされている。何がどんなふうに輝くのか、試乗車を見て確かめてみた。

試乗車のエンジンは250という数字が示すように4気筒 2.5L(QR25DE)であった。1シリンダ当たり622ccというビッグシリンダは、今では珍しいといえる(V6-4LやV8-5Lもあるので、そんなに変わったものではないが…)。レギュラーガソリンで使用できるこのエンジンは欧州向けには様々な車種に使われるが、日本用としては採用例は多くない(MURANO、TEANAぐらい)。そのため、今回初めて経験する。

以前から日産はハイウェイスターという愛称を色々な車種、特にミニバン風のクルマに付けてきた。文字どおり読んでしまうと笑える存在になってしまうのであるが、いったいどんな特徴があるのだろう。英語のニュアンスが分からないので、見せてもらうことにしよう。

ハイウェイスターの外観は一般のモデルと差がほとんどなく、ホイールが1インチ大きくなる(17インチ)のが目立つのみで、そのほかは室内色が黒になるだけである。 名前からイメージされるような装備、例えば高速道路の走行で便利であろうと思われるオートクルーズやETCは標準で装着されるわけではなく、エンジン性能や ギア比(ATまたはデフ)が特別に高速向けに設定されているわけでもない。

では、いったい何をもってハイウェイスターと呼ぶのだろう。

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運転席に乗り込むと着座位置はかなり高い。こういう類のクルマなので当然ではある。それでも後席乗員の見晴らしを良くするためにシートをもっと下げられないかと調整機構(ダイヤル式シートリフタ)を触ったが、すでに位置は最下位であった。運転席は元々見晴らしが良いので、後席の人のためにもっと下げられるようにしてもいいと思う。

ステアリングホイールの調整はチルトのみ可能である(MPVと同じ)。駐車ブレーキは足踏み式であるが、リリースするとフットレストよりもかなり高く上がり、左足ブレーキングの邪魔にならない。しかし、ブレーキペダルはやや右寄りに存在するので、左足で踏んで欲しくないという意図が感じられる。

ATのセレクタをDに入れると、一般的なクルマよりクリープは弱いと感じた。ギア比が普通のクルマと変わりなく、車重が1730kgもあるので、その現象は分からないでもない。国道に出て3000rpmぐらいまで回して走ってみると、ATの変速ショックはなく、意外によく走ってくれた。 実はQR25はレギュラーガス仕様なのに25kgmもの最大トルクを発生する力持ちエンジンなのである(10kgm/Lは立派である)。

ブレーキを踏んでみると、今どき珍しいソフトタッチに驚いた。初期制動感がほとんどなく、スッと踏んでも減速力が立ち上がらず、グイッと踏まないと空走してしまいそうなぐらいのフィーリングであった。トヨタ車ならこんなセッティングになっていても諦めがつくが、日産車でこれはないだろう。

山の上の住宅地に向かうカーブの多い道で遅い前車に追従して走ると、カーブでは意外にしっかりと踏ん張り、ロール感の少ない走りを見せてくれた。これなら6人ぐらい乗って山を走ってもグラッと揺れて驚くようなこともない と推測される。

Uターンして2速フルスロットルで5000rpm程度まで回して加速を試してみると、なかなかトルクフルでフィーリングは悪くなかった。5200rpmが最高出力発生回転数であるが、そこまでの使用で事が足りるので、エンジンが低回転型であることには何ら不満はない。

前を走行する車がなかったので、下りのカーブで乗員(前席2名)がどこまで耐えられるか試してみた。後席に人がいたら絶対に入らない速度でカーブに進入すると、何事もなくクリアした。そこからさらに速度を上げていったが、なかなかタイヤは鳴かなかった。入力が大きくなると脚の動きがちょっと曖昧になり、特にリアは初めに内側が伸びてから外側が沈むという時間差の挙動を示し、やや不安な気持ちになる 動きが感じられた。これは限界を迎える前に危険を察知させることで無理な走行を留めさせるセッティングなのだろう。タイヤのブロックがグリグリと音を立てて捩れる感触が得られた時点で前車に追いつき、テストを終了した。

ステアリングのフィーリングは可もなく不可もなくで、ファミリーカーとして満足を得るためには、まずブレーキフィーリングを改善してもらいたいと思った。

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プレサージュはマツダMPVとライバルになる。MPVはターボモデルにしか乗ったことがないが、走りの安定感がまったく異なった。 もちろんMPVターボのほうが走り味が良かったが、それは硬い脚の上に成り立っており、乗り心地には不利に働いた。MPVのNA仕様の脚を確かめてみないと、まともにプレサージュとは比べられないので、機会があったらMPVのNA車両に乗ってみたい。

室内の広さはMPVとよく似たものであるが、プレサージュの3列目の頭上はかなり低く、身長175cmの人が座ると、不整路面の上下動で天井に頭をぶつける可能性がとても高い。また、ヘッドレストが高く上がらないので、3列目の乗員は160cmぐらいが上限か。

ダッシュパネルの素材はMPVと同じように硬いプラスチックであった。表面のデザインは今までどおりの皮革を模したもので、MPVのような特徴のあるデザインではなかった。どちらが良いかは好みの問題だと思うが、プレサージュのパネル表皮を「柔らかそうだなあ」と思って触ると、そのギャップの大きさに驚くことになる。

まあいずれにしてもこの類のクルマは家族が一同に乗るために仕方なく買うもので、クルマ好きの人間がこだわって買う乗り物ではない。

最後になったが、「ハイウェイスターとは何か」について答えは見つけられなかった。おそらく、文字どおりの意味はないのだろう。昔はセレナのボディサイドにHighway Starというステッカーが誇らしげに貼ってあったが、今やどのクルマにもそんなステッカーは貼られていない。大した違いがないものを大袈裟に「ハイウェイスターだ、参ったか」と見せびらかすことに恥ずかしさを覚えるようになったのだと思う(メーカーも客も)。

2006.7.15

 

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