--------------------------------------------------------------------------------

2004年度のプジョー人気はやや陰りが見え、AudiやMINIに抜かれて輸入車販売台数の順位は7位になってしまった。407の発売、307のフェイスリフトを実施して2005年は巻き返しを図ろうとしているが、307や407では台数を稼ぐことは難しそうである。

やはりプジョーは206が売れなくてはダメなので、そろそろ終盤というモデルに喝を入れるべく、1日モニターキャンペーンが企画された。

206シリーズにはハッチバック、ワゴン、CCのラインアップがあり、どのタイプでも試乗ができるということであったので、今回はCCに乗ってみることにした。

 

206 CC

Color line

1.6

4AT

正規販売店試乗車

試乗時間は店舗の営業時間内に限られるため、あまり遠出をするわけにはいかない。そこで、近江牛のランチを主目的にして、紅葉を愛でながらオープンエアドライブも楽しもうという計画を立てた。

-------------------------------------------------

試乗車は2004年に一時的に導入されたCOLOR LINEで、それは車体色と内装色の組み合わせを16通りに選べるようにした特別なモデルであった。だだ、残念ながら乗ったクルマはごく真っ当な組み合わせのもので、外板は黒、内装は黒/赤(ファブリックシート)であった。206CCはデビュー時に革シートしか選ぶことができなかったが、現在はファブリックシートがスタンダード、革シートはGriffeというグレードに設定される。また、小変更が知らぬ間に行われ、バンパーやサイドモールのプラスチック部品はボディ色に塗られている。

シートポジションは、ペダルが近くてステアリングホイールが遠いというほとんどのクルマでいつも感じるものであったが、206CCはそれが極端であった。最も立てた状態でもシートバックが寝すぎており、もう一段起こせる位置を作って欲しいし、テレスコピックステアリングも付けて欲しい。腕を伸ばした状態で重いステアリングを操るのはちょっと苦になった。ペダルレイアウトは何の不満もなく、左足ブレーキングもスムーズにできた。やはり巷の不評(ペダル位置が悪いこと)は理解できなかった。

206CCの屋根はフロントにある2箇所のロックを外せばすぐに開けられるので、信号待ちの時間があればオープンにすることが可能である。しかし、月曜日の国道171号〜1号〜8号線はトラックがとても多く、オープンエアを楽しめる環境ではなかったので、田舎道に出るまでは屋根を閉じたままで走った。

屋根を閉じていれば車内は通常のクルマと何ら変わらず快適であった。ボディのしっかり感に不足はないし、脚の動きは滑らかで、路面の荒れが身体に伝わる感触はとてもまろやかに洗練されたものであった。そして、クルマの動きが何となく軽快な感じがするのも良かった。1210kgもの重量があるのに1.6Lエンジンで低回転からスイスイと走るし、操舵に対する反応も自然であり、「206はこんなに良かったんだ!」と感心してしまった。

307はフェイスリフトと共にATのプログラムを変えたが、206のATは旧来の使いにくさが残っていた。アップシフトについては、Dレンジでは 1→2は2000rpm程度で変速することができるので問題はないのだが、2→3は途中でロックアップが必ず介入するのでショックが発生するし、ほとんど踏まなくても3000rpmぐらいまで引っ張りたがる。3→4も3000rpmぐらいにならないと変速せず、スロットル開度の小さい(速く走る必要のない)ときに無用に高い回転数を維持することに不満を覚えるのである。そこで使うのがTipシフトである。Tipシフトを使えば比較的自由に変速タイミングを選ぶことが出来、2200rpm程度を上限にした運転が可能になる。しかし、ある速度のときにはATが迷うことがあり、スロットルがしばらく反応せず、メカの準備が整ったときにガツンという変速ショックとともに生き返ることが何度かあった。ダウンシフトについては、4→3が48km/hぐらいで自動的にショックと共に起こり、3→2および2→1は停止直前にガツンガツンと起こる。そのため、Go and Stopを繰り返す日本の交通では信号待ちで止まるたびに非常に気を使うのである。スムーズに減速Gを一定に保ちながら止まるのがとても難しく、乗員に不快感を与えているという罪の意識にさいなまれるのである。新307はATに対する不満をほとんど感じなくなったので、次期モデル(207か?)で改良されるだろう。

10℃ほどの気温の中で屋根を開けて走ると、エアコンの暖気と冷たい外気がほどよく混じり合い、なかなか楽しい時間を過ごすことができた。頭上の景色があまり見えないのが不満ではあったが、70km/hぐらいまでは風の巻き込みを気にせずに済むということとトレードオフの関係にあるので、何も言えない。オープン状態のボディは明らかにしっかり感が削がれ、フロントスクリーンはブルブル震えるし、フロアの振動も多くなった。まあスポーツカーではないのだから、そんなことは重要ではなく、気軽に楽しく走ることができればいいのである。クローズドとオープンを簡単に使い分けられる二面性を持ったCCは日本の気候に合うだろう。

帰り道は屋根を閉めて高速道路を走ってみた。相変わらず名神高速は走行車両がとても多く、追越車線の流れが他の車線とほとんど同じ速さであるという愚かで不経済な日本の風習に嫌悪感を抱きながら3000rpmを維持した。そのときのメーター読みの速度は105km/hで、ギア比は低めでありながら車内は静かであった。混雑した日本の高速道路であれば、1.6Lエンジンでも不足はない。ギアが一定(4速)のときに206CCは上品な走りを見せ、多少速度が高くなったときでも脚の動きやステアフィールのバランスが良いため、アルファ147のような緊張感を持つことはなかった。発進-停止で変速を繰り返す街乗りと一定のギアを保つ高速走行では運転手が受けるストレスの度合いがまったく異なり、高速なら500km走り続けることも苦にならないだろうと思えるぐらいであった。なお、高速での燃費はとても良かった(15km/L以上)。

-------------------------------------------------

ディーラーにクルマを返してインプレッサに乗り換えると、ステアリングの軽さにびっくりした自分に驚いた。206CCはいまどき珍しくステアリングが重いクルマであることを再認識した。そして、渋滞路で発進-停止を繰り返す場面での速度調節の自由度に安堵感を抱いた。MTだから当然なのだが、自分の思ったタイミングですべてをコントロールできるというのがいいのである。206CC S16には右ハンドルのMTが用意されているので、ちょっと値は張るがそちらを勧める。206CCはATの制御にのみ難があり、それ以外はとても良く出来たクルマであった。1.6LエンジンとMTとの組み合わせがあるとどんなにいいだろう。

 

戻る

 

inserted by FC2 system