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居酒屋紀行を辿る

【TV番組】

もう何年経っただろう。ある日、テレビを見ていたら、薄暗い画面の中でオジサンが何かを食べながら酒を飲み、マスター(料理人)と会話をしているという映像が流れた。ときにジャズがバックに流れ、昔の番組のような手の込んでいない作り方がなんだか印象に残るものであった。

エンディングでは店の概要や食べた料理の紹介もあり、いちおうグルメ番組のようであったが、撮影のための照明がほとんど使われておらず、店の前で喋るオジサンの顔が真っ暗で見えなかったりする場面もあり、変わった番組だな、という印象が強かった。

グルメ番組といえば、石塚英彦や彦摩呂のような大げさな言葉やアクションを売りものにするタレントで興味を引くスタイルが人気で、本当に美味しいのか伝わってこないものが多かった。それでも、「元祖!でぶや」だけはおいしそうに食べるので気に入っていた。しかし昨今のメタボリックシンドロームの流行のためか番組が終わってしまったのが残念ではある。

そういったタレントの大はしゃぎとは対照的に、朴訥な語り口をもって店で供される酒や肴の良さを真面目に紹介するオジサンがなんだかとても気になり、初めは何となく見ていた番組なのに、そのうちに放送日や時刻を調べるようになってしまった。

オジサンの名は太田和彦、番組はSkyperfecTVで放送されている居酒屋紀行というものである。なお、地上波の放送局でも流しているところがある。

 

【居酒屋】

私の場合、酒を飲むのは大勢が集まったときと決まっていた。札幌の大通り公園のビアガーデンで会社の同僚と生ビールを飲んだり、釧路のホテルで仕事仲間と焼酎を飲んだり、人が集うときに飲む酒はとても美味しかった。ただ、酒の席では「食べるもの」は脇役で、酒類の銘柄も特に気に留めることはなかった。

ところが、「いい酒、いい人、いい肴」をテーマにした居酒屋紀行というTV番組を見て私はいい肴に魅力を感じ、酒の薀蓄にも惹かれるものがあった。

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グルメガイドで紹介された店に行ってみようという考えは多くの人が持つと思うが、そんな思いで店を訪れて「これは素晴らしい」と思った経験はあまりないのではなかろうか。

店から宣伝費をもらって人の目に触れさせるという一般的なメディアと比べて、居酒屋紀行という番組は趣を異にする。本当に好きな居酒屋を訪れて、視聴者と思いを共有したい。そんな感じがするのである。店からお金を取っていたならば、あんなに暗い映像をTVに流すことなんてできないだろう。

【居酒屋巡り】

〔その1〕

番組に出てきた店に自分の足で行ってみようと思い立ったのは2006年、店は姫路の「寿」であった。

寿は食事処という看板を掲げており昼から営業している。そこで、まずは昼食で店の様子を伺おうと思い、姫路駅からクルマで向かった。辺鄙な場所にあるので、歩いて行くのは難しく、バス停が近くにあるがダイヤは不明。店の外観は田舎のめし屋という感じで、お世辞にもきれいとは言い難いもので入り辛かったが、扉を開けてびっくりした。

平日の昼飯時を少し過ぎた頃だったので誰も居ないだろうと踏んでいたのに、なんと、座る場所が見当たらないぐらいの賑わいであった。しかもお客は皆ビールを飲んでいたのである。食事処と思って入ったのに。。。

カウンターの前で2人分の隙間を空けてもらい、さて、いったい何を注文すればいいのか分からない。ちょっとした一杯飲み屋のようにカウンターの上一面にはガラスの鉢が二段に積まれていたのでしばし観察。20種類近くの中からマスターに内容を確認しつつ適当に頼んでみた。ほかの人がビールを飲んでいる中、運転して帰らねばならないので困っていると、女将さんがご飯と味噌汁を出してくれた。「ああ、食事処としても通用するのだ」と一安心。しばらくテレビの音だけが聞える時が流れたが、私たちの存在が物珍しくなくなってからはマスターとお客との間で話に花が咲いた。マスターもお客からビールをもらって真っ赤な顔をしていたので、ここのお客は毎日のように来る常連なのだと思われる。

料理はなかなか美味しかった。太田和彦が食べた珍味は常連にしか出ないようだが、いろいろな肴を楽しみながらビールを飲んでみたいと思った。ビールを飲むためにはバスかタクシーに乗って来る必要があるので難しいが、チャンスがあれば再訪してみたいものである。

それにしても、平日の昼間に酔客が集う食事処というのは私の想像を超えた世界であった。2006年9月

 

お食事処 寿

兵庫県姫路市野里332-1

 

【2回目】姫路を再び訪れる機会は意外にも早く巡ってきた。

次の週の土曜日、今度は4人で訪れ、テーブル席へ。

人数が多いことを幸いに食べてみたかったものをどんどん頼んでしまってテーブルに乗りきらないぐらいになったが、どれも美味しくて充実したランチになった。2回目でもあり、また、平日よりもビール客が少なかったので、雰囲気に違和感を抱くことはなくなり、居心地のいいところだったなあという思いで店を後にした。

 

次の居酒屋の話はその2へ続く・・・

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【3回目】久しぶりに姫路の寿を訪問した。

前回はいつだったか記憶が曖昧で、このページを読み返してみたところ、なんと7年半も前のことなのであった。

そういえば、BL5レガシィ購入後の最初の長距離ドライブの途中で立ち寄ったという記憶が蘇った。

そんなに時間が経っているというのに、マスターの風貌は前回とあまり変わった感じがしなかったのは面白いことである。

また昼間の利用であり、イイダコ、ヒネポン、フキ、ヌタ、粕汁を注文した。家内は粕汁をかなり気に入ったようで、今度同じように作ってみると言っていた。ここの粕汁には生臭くなる魚を入れず、代わりに脂をしっかり落とした鯨の皮を使っているというのが特徴(マスターのこだわり)である。

今回も美味しいランチに満足した。2014年3月 

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【4回目】約1年ぶりに寿を訪問した。

今回もランチである。

6〜7年ぶりに会う旧友と共に3人で小上がりへ。

最近は昼のビール客がほとんどいなくなり、気を遣わずに飯を食えるのが嬉しい。

小上がりの別の1組はオバサマ2人。昼からビール?と思ったら、ノンアルコールビールであった。我々より少し遅く入り、いろいろ(米飯も)食べて、さっと去っていった。スマートだ。

カウンター席には常連と思しきオジサンが1人で座り、静かに飲み、マスターにビールを注いでいた。

家内は何も見ずにいきなり「ひねポン!」。よほど気に入ったのか。

私は、ガラス鉢を一通り見て回り、ブリ大根、ナスの煮物、焼豚、ポテトサラダを注文した。

今回も幸せなランチタイムを過ごしたが、一度、夜の雰囲気も味わってみたいと思う。なかなか姫路まで遠征することはないので、難しいところであるが。

あまり長居するのも無粋なので、コメダ珈琲店に移動し、シロノワールとコーヒーで積もる話の続きを。。2015年2月 

 

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