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RX-8

Type S

6MT

250馬力

本革シート仕様

 

デビューからかなり時間が経過してしまったが、最新のロータリーエンジンとアイシン6段MTのフィーリングを確かめるべく試乗に出かけた。試乗車はおそらく初期モデルである。

まず運転席に座ると、RX-7(FC3S、FD3S)と同様にペダルがものすごく右に寄っているのが気になった。エンジンの吸排気管が右側に存在するため、センタートンネルが右に膨らんでいるのが原因である。このへんは主なマーケットであるアメリカに照準を合わせてあるのだろう。左ハンドルなら変なペダルレイアウトにならないと想像できる。助手席に座ってみると、トウボードがとても遠く(深く)、しかも遮音材か何か柔らかいものが奥のほうに敷かれていて、まったく踏ん張りが利かない。RX-7の限定車に装着されていた大袈裟なアルミ製フットレストは必要ないが、フワフワのトウボードはどうもいただけない。カーペットの下にアルミ板を隠しておいてほしい。

リアシートは停車状態でしか座らなかったが、雑誌に書かれているとおり身長175cmの男が座ることは可能である。ただし、窓が小さく、そのうえ後端がちょっとしか開かないため息苦しく、長時間ドライブするのは遠慮したい。

トランクには、もちろん長尺の釣竿は入らない。それでも、RX-7と比べれば遥かに広くなった。2人の旅行なら、まったく問題ないぐらいの容量である。

クルマの後ろに立ってエンジンを始動する時の音を聞いてみた。左右出しの排気管からは軽く、ちょっと高めの音が控えめにロータリーを主張する。

いざドライブ。シートは電動で調整するが、ポジションの自由度は少ない。高さは最下位でもさほど低くないので、必然的にその位置で決まり、スライドとリクラインだけの調整を行うのみ。そしてハンドルは上下にしか動かない。テレスコピックがないのでシートを立て気味に設定する。さて、ギアを1stに入れ、ミラーを見ると路線バスが迫っている。そこであわてて発進。初めて乗ったのにスムーズに動き出してくれた。ロータリーエンジン車に乗るのは 1992年の初期型FD3S以来である。そのときは、「なんと走りがかったるいクルマだろう」と思ったものであるが、RX-8は自然吸気エンジンになったおかげでまったく別物の反応の良さを感じた。スロットルワークに適切に反応するエンジンは気持ちがいい。

トランスミッションは、低速ギアのステップ比がちょっと離れているようで、シフトアップ時の回転合わせが的確にできるまで慣れが必要である。シフトフィーリングは軽く、適度に短いストロークがこまめなシフトを誘う。クラッチも軽い仕上がりなので、無意味なシフトチェンジを楽しんでしまうことになるだろう。

Type Sは18インチの大きく重いタイヤを履いているが、乗り心地は滑らかで、路面のギャップをきれいに乗り越えてくれることに感心した。これはとてもよく出来ており、Z33とは大きく違うところである。バネが柔らかい(F:2.9、R:2.1 kg/mm)ので、それは当然ともいえるが。。ダブルウィッシュボーンでレバー比がF:1.4、R:1.1もあり、こんなに低いバネレートでは、サーキット走行時にローリングを抑えられるのかちょっと心配になってしまうが、雑誌の写真ではそれほどロールは大きくないようなので、問題はないのかもしれない。ロールセンターと重心の位置がうまく設定されているのだろう。

フロントシートは座面が小さいが、悪くない。背もたれはピッタリとフィットし、ヘッドレストの位置も適当で、座り心地は気持ち良いものであった。革シートでも滑ることはなかった。

空調はオートエアコンがつく。操作はダイアルとその中のプッシュボタンで、表示窓がパネルの上のほうにあるため、調整をしやすい。今日はとても暑かったので、最初は設定温度を18℃にしてクーラーを効かせていたが、アイドリング状態ではなかなか冷えなかった。もちろん走り出せば(コンプレッサが十分な仕事をすれば)冷たい風は出てくる。以下は推測ではあるが、ロータリーエンジンは780rpmから9000rpmまでの幅広い範囲で回転するため、エアコンコンプレッサがその広い回転域に十分に対応できないのだと考えられる。一般的にはコンプレッサの過回転を防ぐため、ある程度高い回転数(例えば6000rpm)以上のときにコンプレッサのクラッチを切る制御が入っているのであるが、レシプロよりも高回転を頻繁に使うであろうロータリーでは、エンジンが高回転になってもコンプレッサをできるだけ切らないようにプーリー比を設定しているのかもしれない。というわけで、エンジン回転数の割りにコンプレッサ軸の回転数が低くなり、アイドリング時には冷房能力が低いのだと想像している。

街乗りでのステアフィールは、1310kgも車両重量があるとは思えないぐらい軽快であった。スイスイ曲がる(ギア比 16.4)のは気持ち良いものである。エンジンは4000rpmまで軽く簡単に回ってしまうので、何も考えずに走ると燃費は悪いかもしれない。ただ、4thギアで2000rpmしか回っていないと、ちょっと心許ないトルク特性であったので、燃費の良い走りをするためには我慢が強いられる。室内で聞くエンジン音は排気音が主体と思われるが、車外で聞く控えめな音と比べて意外にも音量は大きいものであった。その音質は快いと感じた。

今回の試乗は住宅地の中で行ったため、なかなかフルスロットルを試すチャンスがなかったが、わずかな間隙が前方に出来たのを幸いに2ndと3rdギアで全開加速をしてみた。飛び出しに注意するため前方を注視せねばならず、タコメータを見る暇はなかった。警告ブザーは鳴らなかったので、2nd→3rdのシフトアップポイントは8000rpmにも満たない。2nd全開では、そんなにびっくりするような加速はしない。9000rpmに近いところは分からないが、使った範囲ではフラットトルクであった。3rd全開(3〜4秒維持)からフルブレーキを試してみたところ、硬質で軽いペダルタッチはなかなか良いものであり、グイッと踏みこむとABSの介入は控えめで派手なスキール音が右リアタイヤから聞こえてきた。ペダルを僅かに戻してスキールを消し、もう一度踏んでスキールを出すことが容易にできるコントロール性が良いブレーキであった。

以上のようにRX-8は、いろいろな要求を呑んでくれる良くできたクルマであると思った。しかし、日常的に2名乗車、たまに友人や年寄りを後部座席に乗せるという使い方をして、1台しか所有できない私はやはり普通の4ドアセダンのほうが使い勝手が良いと感じてしまう。ロータリーエンジンの好きな独身でFD3Sに乗っている人が「もう速さを純粋に追い求めるクルマは疲れる」と感じたなら、買い換え候補として適当かと思われる。また、セカンドカーを買う余裕がある人にもいいかもしれない。

RX-8

Type S

6MT

250馬力

ファブリックシート仕様

RX-8はデビューしてから細かい改良が何度も施されているという。そこで今回(2004年6月)、近所の店を訪問したが、RX-8は置いていなかったため、アクセラセダン23S(AT)に乗ってRX-8のある別の店に向かった。この試乗車は新しかったため、おそらく最新Versionだろう。

試乗車の走行距離は600km程度であったため、最高エンジン回転は7000rpmに留めて運転した。

この車両にはオプション装備がついておらず、シート表皮はファブリックであった。マツダはこのクルマをスポーツカーと呼んでいるが、クッションはフワフワで、アクセラのシートと比べるとかなり柔らかな感触であった。また、標準のファブリックシートの場合は位置調整が手動式であった。以前に乗った試乗車のようにオプションの本革シートであれば位置調整は電動式となる。表皮の違いによって乗り味が異なるので、購入前には必ず乗り比べるべきである。

まずは1000rpmぐらいでクラッチをつないで発進しようとすると、エンジンがストールしそうになった。極低回転のトルクが弱いのはロータリーエンジンゆえ仕方のないことだろう。通常は1500rpm以上でつないでいけば、問題なく動いてくれる。

3000rpm程度までしか回さずにゆっくりと走る状況では、気持ちもゆったりしているのでシフトも急がずにゆっくりと操作することになるが、スロットルOFFでのエンジン回転の低下が速いため、シフトアップ時の回転数が合わず、エンジンブレーキを感じてから加速するということになってしまった。このクルマでは、どんなときでもシフトアップは素早く行わなければならない。

片側2車線の道路において 2nd ギアで3000rpmぐらいからスーッとスロットルを全開にしてみた。エンジン回転が上がっていくときの軽快な排気音は楽しい。しかし前回と違って広い安全な道でフルスロットルを試してみると、加速感は全然満足いくものではなかった。ついつい250馬力という先入観で見てしまうのがダメなのであった。トルクはわずか22kgmしかないため、2.2〜2.3Lのレシプロ並のエンジンであると考えて加速感は評価しなければならない。そう思えば、悪くないのかもしれない。

試しにWet路面でUターンする際に、ステアリングを切った状態で 1st ギアから全開で加速してみた。テールスライドを期待していたが、一切何も起こらなかった。DSCが働いたのだろうか。また、舗装に凸凹が連続して存在する不整路面で 2nd ギアに入れて全開加速を試みた。すると、バネ下がものすごく暴れ、ほとんど加速できない状態に陥った。DSCが働いてホイールスピンを抑制しているようであったが、タイヤの接地性が悪いため、うまく加速につなげることができなかったのだろう。やはり18インチタイヤは大きく重過ぎるのである。良路で走る分には18インチで問題ないが、いろいろな場面を考えると、17インチ(225/50ぐらい)にしておくのがいいだろう。ブレーキローターは17インチ用なので、インチダウンに何ら問題はない。購入後に18インチは売り払って、超軽量の17インチホイールを装着することをお勧めする。

ブレーキは、オーバーサーボ気味なのが日本流である。利きが良いのは歓迎であるが、足をペダルに乗せただけで減速するのは気持ちが悪いので、もう少し踏みやすいタッチにしてもらいたい。

試乗の途中、渋滞に会った。トコトコと進む際に、1st から 2nd にアップしてからスロットルをOFFにしても、そのまま1000rpm弱を維持しながら走ってくれた。規定のアイドリング回転は780rpmであるため、ギアが入っているとき(速度がゼロでないとき?)にはアイドルアップ機能が働いていることが分かった。これなら 3rd ギアでも同じようにスロットルOFFのままで走れそうな気がする。

マツダはRX-8をスポーツカーと呼ぶが、スポーツカーとは何だろう。手足の如く自由に操ることができるのがそれなら、並のセダンと比べればそう思うこともできる。操作系は軽いしクルマの動きも軽やかである。しかし刺激的なところが一切なく、アクセラよりも乗り味がソフトで快適(突き上げがない)なのである。狭い車室、狭い視界、細い低速トルク、それらだけが一般セダンと違うところである。帰り道、アクセラ23S(AT)に乗りながら思った。RX-8にはもっとトンガッテ欲しい。

RX-8

Type E

4AT

210馬力

18インチホイール装着車

マツダがスポーツカーであると謳うRX-8といえどもオートマチックトランスミッションの要望が高いようで、近頃はATの試乗車が店舗に多く配備されてきている。そこで、4段ATを搭載したタイプEに乗ってみることにした。なお、すでに新型ロードスターにアイシンAWの6段ATが載ったことから、RX-8のマイナーチェンジ時には同種のトランスミッションに変更される可能性が高いと思われる。

室内の色はボディカラーによって選択できる範囲が異なるが、革シートを標準装備するType Eにおいては基本的に3色(黒、黒/赤、黒/タン)の中から選ぶことになる。赤い車体の試乗車の内装には赤/黒の派手な意匠が選択されており、これはドアを開けたときにインパクトがあり、むやみに人に見せたくなることだろう。

基本的には外観も内装もMTモデルと同じであり、ホールド性の良い形状のシートは表皮が滑りにくく、電動調整が微妙な姿勢作りに役立つことから、私の気に入っている部分である。

18インチホイールは、大径ブレーキローターおよびスポーツサスペンションとの組み合わせでオプション装着できる。つまり、脚はType Sと同じ仕様になるのである。このセットはすでにType Sの試乗記でも述べているとおり乗り心地がスムーズでとても良く、今回も同じように感心した。

電動パワーステアリングの滑らかな動きもRX-8の美点で、Audi A3の電動パワステの次に気に入っている。

今回はATおよびそれに組み合わされたエンジンのフィーリングを観察してみようと、ほとんどDレンジ固定で走った。緩加速では低回転域を維持しながら走ることが可能で、ロータリーエンジンらしくない使い方もいちおうできることが分かった。スロットルを大きく開いてみると、それなりに走ってくれたが、レシプロエンジンのような瞬発力は得られず、やはり慣性の大きいロータリーエンジンであることが感じられた。加速中の音はかなり騒々しく、Type Sで心地良いと感じた排気音を中心としたサウンドとはまったく別のものであった。その音の主体はおそらくATから発せられるものなのだと想像するが、なんとなく古臭さを感じさせるものであった。新しいクルマであっても、主要部品の設計が古い場合は途端に魅力が半減するものである。ステアリングホイールに備わるシフトスイッチも一度だけ使ってみたが、ステップ比の大きい4段ATではまったく意味のない装備であった。早急にアイシンAWの6段ATを載せてもらいたい。

現時点では、免許証の制限でATしか乗れない人にもType E(4AT仕様)はお奨めできない。是非とも限定解除をしてMT仕様を選んで欲しい。もしくは、6段ATが搭載されるのを待つべきである。

 

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