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期待を超える

顧客の期待を超えるサービスを提供する。これは商売の基本中の基本である。

それによって反復して購買意欲を示す(リピート)客が現れたり、他の人に紹介してくれたりして、その店 (ブランド)は成長するのである。

最近の私の体験においては「期待を下回るもの」ばかりで憂鬱な気分になってしまうのだが(例:スバルの修理対応など)、「これはちょっといいんじゃない」と過去に思ったものを3つほど挙げてみよう。

【痛くない歯科医院】

歯医者に行きたくない原因は「痛みを感じること」である。切削の音も好きにはなれないが、痛くなければ問題はない。痛みを感じる原因は、抜歯のみならず注射針の穿刺もある。平常の状態からいきなり歯茎に針を刺されるのは想像するだけで痛そうだし怖いものである。

そこで、近所の歯科医は表面麻酔薬を使って治療をしている。

麻酔薬を染ませた綿を歯茎の上にしばらく置いてから針を刺すと、穿刺の箇所が痛くないのである。そして、注射の浸潤麻酔が効いた頃に抜歯をすると、無痛で一連の治療が終わる。前回は とりわけうまくいったのだろう。親不知を抜いた後でも腫れることはなく、鎮痛薬もいらなかった。

表面麻酔後の注射なんて当たり前のような話だが、表面麻酔は保険適用にならないそうな(今でもそうなのかは分からない)。歯医者における無痛の価値は高いため、わずかな持ち出し(表面麻酔薬の代金の回収)を我慢することで客はリピートしてくれるのだ。

 

【痛くない耳鼻科病院】

耳鼻科で鼻アレルギーの治療を受けるときに嫌なのは、やはり痛みを感じることである。吸引器の先端が粘膜に当たると、反射で涙が出てしまうのだ。吸引の前にキシロカインとボスミンをスプレーしているのだが、あまり意味がなさそうに思える。

そこで、札幌のある耳鼻科医はキシロカインをスプレーした後、5分ほど診察室の外で待たせるのである。

最初は面倒なことをさせるなあと思っていたが、これが実に具合の良いものなのである。待っている間になんとなくぼんやりとした「しびれ感」が現れてきて、吸引器の先端の感触が消失するのだ。

痛くない吸引を初めて経験すると、そこは名医ではないかとつい思ってしまうのだ。

実のところ単に麻酔薬の効果が現れるまで待つという当たり前のことを実行しただけの話なのだが、当たり前のことをしない医者が多すぎて、患者も疑問を持たなくなってしまう(痛くて当たり前と思ってしまう)のだろう。

痛くない耳鼻科はとっても賑わっている。

そして私もかなりの保険点数の手術を受けた。

 

【レストランでのちょっと嬉しい出来事】

京都で昼食を摂ろうと思い、予約もせずに本願寺の向かいにあるレストランに入った。

ランチコースを注文すると、普通に料理が順序立てて運ばれてきた。味は価格相応(期待どおり)だったので、そのままデザートとコーヒーが出てくれば「またお参りに来たら寄ります」という程度で終わるはずだった。

ところが、デザートと共に何か小さな1品が用意されたのである。

確かノニといったか。ほんの少し、一口にも満たないフルーツの細切れが出てきただけなのだが、「今日は特別に用意しています」という言葉と共に供されたされたので、ちょっと嬉しくなった。

ほんの些細なことだが、メニューに載っている内容(期待値)とは別のサービスが提供されるだけで、「友人にも薦めてやろうかな」と思ってしまうのである。

また、家内は「サービス料を取らないとは思わなかった」と述べ、さすがに金銭管理がしっかりしていると感心した。ああ、そんな話ではなかった。両者は見るところは違ったものの、これも期待値を超えると言っていいだろう。

期待値を超えるサービスを受けた客は、それに対してお返しをしたくなってしまう。お返しとは余分なお金を落とすことに他ならない。

つまり店にとって大事なことは、損して得取れ、という行動である。

件のスバルの修理対応のまずいところは、期待を下回るサービスを 実施した後に期待するレベルの作業を嫌々ながら実施したことによって客の心は満たされなかった(悪い印象だけが残った)のである。

これを始めから期待するレベルの対応(=客の注文によって四輪アライメント調整を実施する)、または客が注文する前に「四輪アライメント調整作業をきっちり済ませてから納車します」と先手を打ってくれていたなら ば、私は店にたんとお返しをしようと思っていたのだ。私も整備士の端くれであるため、作業員に余計な負担を掛けているのは分かっており、それに対する報酬を考えるものなのである。

実 のところ私は次のようなことを考えていたのである。スバル車のゴム部品は柔らかいのが常なので、GC8インプレッサ で実施したのと同様に、レガシィにおいてもアッパーマウントブッシュを交換しておこうと思っ たのである。アッパーマウントブッシュはストラット交換作業の中で必ず取り外すものなので、STI製品(5250円×2)に入れ替えるのに またとない良い機会だったのだ。

しかし、彼らはその絶好のチャンスを失ったのだ(目先の損を出したくないと思って動いたら、利益が出なかった)。そして、私もハードブッシュを入れる(フロントのキャンバ剛性を高めたり、精度の高いダンピングを得る)機会を失ってしまい、さらに満足度を下げたのだった。

いろいろな道があって最後には同じ結果が導かれるのならば、客の満足度が高まるような道を選択するのが筋であろう。

より多くのお金を使ってもらわなければ商売は成功しないので、顧客満足度を高める方策にちょっと頭を使って欲しいと思う。NOV2009

  

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