~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

スマートにドアを閉めるには

もう20年ぐらい経つだろうか。ソアラ(10系)やプレリュード(AB型)などの2ドアクーペが若者に人気があった時代の話である。

ガソリンスタンドに来る客の中にセリカ(160系)に乗る華奢な女性がいた。ある日「このクルマ、ドアの閉まりが悪いんだけど、なんとかならないかな」と相談を受けた。

ドアが閉まる瞬間、室内の圧力が高まり、その力がドアを閉めまいと反発するのが原因である。2ドアモデルはドアが長くなってしまうので、反発力(圧力×ドア面積)は4ドアモデルと比べてどうしても 強くなってしまうのである。それゆえ女性には負担になったのだろう。

普通は室内から外に向かう通気口が開いたり、リアゲートが浮かび上がったりして圧力を逃がすのであるが、セリカは気密性が高かったのだろう。私はパワーウィンドーが装着されていることを確かめたうえで、「助手席の窓を少し開けてからドアを閉めればいいですよ」と答えた。ドアが閉まる瞬間の圧力を開いた窓から逃がしてやれば難なくドアを閉められるからである。

彼女は答えた。「そんな面倒なことはしていられないよ」

多くの人はそういう考えなのだろうか。私は、誰かが同乗するときは運転席のドアを完全に閉めずに(半ドアまたは開放して)待ち、最後にドアを閉めるように心がけている。何度もバンバンと半ドアを繰り返されるのが嫌だから。

最近の2ドア車の中にはドアが開いている間は少しだけ窓ガラスを下げておくものが多い。初めて見たのはBMWのモデルだったと思う。ガラスを下げておくことによって、ドアを閉めた瞬間に室内の圧力を逃がすことが可能になったのである。もちろんドアを開けた瞬間も室内の負圧を低減できるので、開けにくいという問題も緩和できる。自動的にスマートな乗降を手助けしてくれるこの装備に私は密かに感激し、大きな拍手を送りたいと思った。

雑誌等でこの装備を説明したものを目にすることがあるが、「ドアを閉めるとガラスが上がって気密性をさらに高める」と書いてある馬鹿な内容が多い。通常よりもさらに上がるのではなく、ドアを開けると「ガラスが下がる」のである。ドアの開閉の際に起こる内外の圧力差を小さくしてスマートな乗り降りをサポートするという意図が分からないのだろうか。

あの女性は今も2ドア車に乗っているだろうか。Audi TTやBMW Z4、またはZ33などに乗って、ドアガラスの動きに気付いたならば、私の言葉を思い出しているかもしれない。

 

「やっぱり自分で窓を開けるなんて面倒だよ」

 

戻る

 

inserted by FC2 system