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1.3

176万円

ドイツでは日本の軽自動車がほとんど売られていないため、シティコミューターとしてfortwoが数多く走っていた。Smartのブランド価値がどれぐらいのものなのか分からないが、クルマの内装や外装のバリエーションの豊富さが洒落た感じをうまく演出しているため、売れているのだと思った。会社の同僚のドイツ人は「インテリアが特別な色使い(黄色の縁取りのシートなど)になっているんだ」と言ってfortwoを気に入っている様子で、主に通勤に使っていた。日本ではバリエーションが少ないため、選ぶ面白さがなく、fortwoは結果的に売れていない。Smartを扱う店の数が少ないのも問題である。

そんな中で販売が開始されたforfourであるが、間延びしてしまったスタイルに魅力は感じられない。fortwoは小さいから薄っぺらでも妙な魅力があったのである。

車台をコルトと共用しているということが雑誌記事になることがあるが、そんなことはどうでもいい。ボディ構造とサスペンション形式が同じであっても、クルマの性格を決定付けるエンジン(コルトにもマイナーチェンジで同じエンジンがレギュラーガス仕様で載ることになる)とトランスミッション、そして内装はforfour専用なのだから、まったく別のクルマといえる。

内装は一見すると洒落た色使いだと思わせるが、触ってみるとかなり安っぽいシートだけはMercedesのイメージを持っているので救いようがある。エアコンの操作パネルは軽自動車並みの作りで、いまどき風の出口を選択するダイヤルを力づくで回さなければならないというのは珍しい。後席の窓を手回しで開けるというのも同乗者に不評を買った。

トランスミッションはソフタッチプラスという名前のロボット操作MTで、レバー操作は初めての人にも分かり易い(セレスピードは初めての人には難しい)。この類のミッションでは初めてクリープ現象を付与したのが特徴という。実際に試してみると、クリープ力は極めて弱く、4人乗車ではわずかな上り勾配でも前進しなかった。クリープがあると、信号待ちの多い日本ではクラッチ板が減ってしまうのではないかと心配になる。

まずはトランスミッションをAUTOにして走ってみたが、1速から2速へのステップ比が大きいようで、やはりアップシフトする際にクラッチを切っている間のタイムラグがまどろっこしいと感じた。2速以上ではタイムラグはあまり気にならなかった。「ギアセレクタを2系統にし…」とカタログに謳われているが、これはいったい何なのだろう。VW/AudiのDSGのような「2系統」ではなく、フィーリング上は単に普通のMTをロボット操作するだけのものなので、カタログにわざわざ書いている意図が不明である。

マニュアル操作モードで走ってみると、ダウンシフト時のコントロールが下手なことに驚いた。この類のミッションはダウンシフト時にエンジン回転を自動的に上げて瞬時にギアをつなぐ技をもっており、その正確さは人間よりも上手なのであるが、ソフタッチにはそのような制御がないようで、クラッチを切っている間にエンジン回転が一旦下がり、低速ギアにエンゲージすることによって回転数が上がるというMT初心者もビックリするような動きを示した。アップシフト時にはドライバーが一瞬スロットルを閉じてスムーズなシフトを助けてやるが、ダウンシフト時にもドライバーが自分でスロットルを開けて回転を合わせないといけないのかな?

ギアは6段あるというが、TOPギアは高すぎるようで街乗りでは5速までしか使えなかった。各ギア間のステップ比も大きいと感じた(ワイドレシオ)。現状では折角の6段変速が生かされていないので、1と2の間をもっとつめて、他のギアもクロースレシオにして、キビキビと走るよう仕立てるほうがいいと思う。

加速感は1.3Lにしては上出来で、Fitよりも遥かに気持ちの良い走りを見せてくれた。やはり小排気量のクルマはMT(またはそれをベースにしたもの)で乗るべきである。乗り心地は骨太な感じは全然なく、特に軽快でもなく、あまり特徴はなかった。ベーシックカーとして普通の出来である。

ちょっと価格が高すぎるが、Smartブランドが気に入っているのなら買ってもいいかもしれない。これはクルマとして買うものではなく、カバンと同じようなファッションの持ち物である。

 

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