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SKYLINE(V36)

250GT

type V

 

 

 

 

 

5AT

286万円(税抜)

 

段々畑は使いにくい

2006年11月、待望のV36が発売された。

V35は走りの面は別にして、デザインがなんとも下手で失敗した。一定の大きさの型に収めなければならないという軽自動車のような 制約を感じさせる抑揚のない外観が受け入れられなかったのだろう。

そこで、V36はフェンダーの膨らみをしっかりと見せ、前後を絞り込んで、車高を下げて、格好良く見えるように改善された。FUGAの弟分のようなイメージやSILPHYのような上品な味も与えながらも、V系スカイラインであることが明確な外観に日産の確固たる自信が感じられる。

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【展示車両をチェック】

250GTはTEANAと並べられていたので大きさをあまり感じなかったが、実際は全長が4.7mを越える。個人的にはFUGAともっと差を付けてもらいたかった。たとえばプラットフォームを共有するLEXUS GSとISのように。5ナンバーサイズにこだわるわけではないが、日産にも全長4.6m程度(ホイールベース2.7mぐらい)のFRスポーツセダンが欲しい。重量も1500kg未満にして欲しい。

日本のマーケットではMARK Xがライバルになりそうであるが、V36はやや高めの価格設定になっている。ESCが標準装備 (スタンダード仕様を除く)になっていたり、通気式ディスクブレーキが全輪に付くなど、手抜きができない日産の信念が価格に影響したのだろう。トヨタのように商売が上手ではないが、こういう真面目なところが日産ファンの心に響く。

V36はFUGAをベースに作られているが、3.5Lモデルに設定される「S」仕様(SとSP)にはFUGAより大きい330φローターが装着されるのがニュースである。おそらくFUGAのマイナーチェンジでSport Package仕様のローターは330φに変更されるだろう。

日産のFR車のブレーキキャリパの位置が前後輪ともに車軸の前方に配置されているのは何故だろう。日産はいったい何を考えてこの設定をしたのか知りたいものである。というのは、キャリパ位置を車軸後方にセットしているBMWやSUBARUは重量配分をできるだけ前後均等にもっていきたい(リアに荷重を配分したい)と考えていると推測できるし、車軸よりも車体中心に近い場所にキャリパをセットするPORSCHE(BMWにもある)は重量物をできるだけ中心に集めたいと考えているはずである。そのような明白に語らないポリシーが日産にも欲しい。なお、FWD車はトラクション確保のためにフロント荷重が欲しいので、全キャリパの車軸前方配置は理にかなった方法だと言える。

最近気になるのがステアリングホイールに巻かれている革の表皮(銀面)の仕上げ(模様、しぼの様子)が分割されたエリアごとに異なることである。V36は4分割されているのだが、それぞれに個性がある。よく握る部分には滑り止めを目的としてしぼの深い革を使うなど、目的を持って使い分けがなされているのなら褒めていいのだが、どうやらそんな考えはまったくなさそうで、上縁のほうに深いしぼの革が使われていた。当方のBL5DのMOMOブランドのステアリングホイールも同様に安直な作りである。インターフェイスに関わる部分の製品を設計する人はもっと考えて欲しいと思う。BL5(A〜C)のようにディンプルを付けたり、型押しをした革を使うという手間を惜しまないでもらいたい。

内装は写真で見るとNAVIGATIONの周辺が安っぽい印象があったが、実際にはそんなに問題はない。車両の電源スイッチをONにして計器の照明を点灯させると(エンジン停止状態)、文字盤には青 紫の円が現れた。この色には何か意味があるのだろうか(運転手が設定したエンジン回転数や速度に達すると赤くなると面白いのだが…)。計器の照度は5段階に切り替えられるが、いずれのポジションにしておいてもライトのON-OFFで変化がないのは不思議であった。

前席の着座位置はかなり低くなり、ポジションが改善されたのは嬉しい。ステアリングホイールの上下前後の調整幅も大きくなり、改善されている。V35から継承されたステアリングホイールと計器板が同時に移動する機構は良いのであるが、身長175cmの私が適正な着座位置(リフター最下位)で座ってステアリングホイールを最も低い位置に移動すると計器が見えなくなってしまう。ステアリングホイールが最下位の状態で計器が見える目線になる運転手の身長は165cmぐらいになるかと想像する。そのときの前方視界は良くないが問題はない。ということは、あと50mmほど着座位置を下げても問題がないということである。シートリフターが備わるのだから、大男でも適正な位置に着座できるようにしてもらいたい。後席の足元は前後に広いが、前席が最下位にあるときにつま先をシート下に入れるのは難しい。つまり、前席の位置をもっと下げても後席の人の足の置き場所に大した影響はないということである。後席の頭上高はカタログ値で910mmとなっており、あまり余裕はない。実際、きっちり座ると髪が天井に触れてしまった。クッションがへたればいい感じになるだろうか。

V35からV36へ変わるとき、車高を下げ、太いタイヤを履き、フェンダ(外板)形状を見栄えのするデザインにしたため、内部にしわ寄せが来た。たとえばトランクが小さくなった。容量としては僅かな差なのだが、ホイールハウス周辺の出っ張りが大きすぎて荷物の収納に困りそうである。当方の 所有するスーツケース(73cmタイプだが、車輪とグリップを含めると全高は80cmほどになる)を奥に押し込むと段差に引っかかるだろう。ところで、この段々畑の裏(下)には何が入っているのか???

インテリジェントキーは標準装備になっており、フューエルリッドのロックがドアロックと連動するヨーロッパ方式になった(室内に無粋なレバーはない)。しかしトランクは外部にボタンがありながらキーを携帯していないと外から開けられないという不便がある(室内にはロック解除スイッチがある)。

余談であるが、フューエルリッドの裏を見ると、キャップを置くための半円状のプラスチック部品があった。TEANAには紐を引っ掛けるプラスチック製の小さいS字フックが備わっていたが、なぜそんなに色々な部品を車種別に作るのだろう。

乗る前に色々と書いてしまった。(23NOV2006)

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【試乗】

上記の店舗には試乗車がなかったので、近所の別の店を訪問した。クルマで5分の範囲に日産が4店舗もあるので、試乗車を探すのは容易である。

乗ったのは250GT type Vであった。内装色はベージュで、黒(上記の展示車)よりも上品で良い印象を持った。汚れないように気をつけて乗る運転手なら、ベージュを選ぶといいだろう。

外気温15℃ぐらいでエンジンを冷間始動すると、タコメーターはしばらく2000rpmを越えていた。それから1分ほどでエンジン回転数は急激に下がって1000rpm付近になり、2〜3分で水温計が明確に動くのが見えた。VQ25HRはかなりウォームアップが早いエンジンであることが分かった。通常の乗り方であれば、1000rpmぐらいになるまで触媒のウォームアップをしてからゆっくり走り出すといいだろう。

エンジンが回っている状態でライトスイッチをONにすると、計器の明るさが落ちた。そして、3段階に照度を調節できることが分かった。展示車ではライトのON-OFFで照度が変わらなかったが、エンジンが回転しているとコントロール できるようである。

空調の操作は分かりやすく、風の温度は左右独立にもできるし左右同調もできる。AUTOボタンを押したときにコンプレッサが自動的にONにならないのが何よりも嬉しい。V36のAUTOボタンはそのときの温度設定をベースに風の量と吹出口を決めるだけのもので、内気/外気の切替やA/CのON/OFFはAUTOボタンを押す前の状態を維持してくれるので、FULL AUTOと呼ばれるものではないが、それでいい。いや、これがいい。当方のBL5のFULL AUTO空調は余計なお世話なのである。

窓を開けてみると、パワーウィンドーのモーター音は小さく、上質な感じがした。後席の窓も開けてみると、なんと全開になった。今どきこれは珍しく、嬉しいものである。

店を後にしてクリープ+αで国道を信号まで20mほど走ると、ステアリングホイールの感触がものすごくしっかりしていることに気付き、「これはいいかも!」と第一印象から良いイメージを抱くことになった。

一般の流れに乗って走ると、スロットルバルブのコントロールがV35よりも洗練されており、唐突な飛び出しがなくなっていた。V35の幼稚な設定がなくなっただけでV36の価値が上がったような気がするほどである。

2500rpm程度までしか使わない街乗りでも排気音は意外に耳に届き、音を聞かせるように作ったのだなということが分かった。FUGA 250GTは演出過剰であったが、V36はやや控えめになっていて好ましい。

山奥の住宅地に通じる低速ワインディング路を走ってみると、極低速で軽かったステアリングがかなり重くなっていて違和感を抱いた。40km/hぐらいでステアリングを大きく切る場面では、ちょっと重過ぎると言いたいぐらいであった。

5段ATはノーマル(D)とスポーツ(DS)の2種類の変速プログラムを持っており、まずはノーマルで走ってみたところ、FUGA 250GTよりはダウンシフトの頻度を低くして低回転で走れるようになっていることが分かった。とはいえ、トヨタ車と比べると全般的に使用するエンジン回転数は高いと感じられた。 活発に走ってくれるのはいいが、ちょっとうるさい。

100km/hまで加速して巡航エンジン回転数を見てみると、約2400rpmであった。これはちょっと問題だろう。FUGA 250GTと同一のギア比、同一のタイヤサイズなので、FUGAも同じだけ回るはずであるが、こんなに高いエンジン回転数を使うと燃費に不利に働くことは間違いない。100km/hで2000rpmを割るトヨタの6段ATと比べて商品性で劣ると言わなければならない。

ATをDSモードにしてフルスロットル加速を試してみると、かなり力強く速く走って驚いた。エンジンは本当に7500rpmまで気持ちよく回り、上り坂でもあっという間に3速 120km/hに達した。V35と比べると明らかに自然で速く、2.5Lで何ら不足はないと思うほどであった。

DSモードでワインディング路を走ると、ブレーキングで減速するとATが自動的に中吹かしをしてダウンシフトする演出があり、なかなか面白いと思った。変速の瞬間の減速Gが出ないのは嬉しいものである。

中速ワインディング路を走っているときの操舵力は適正で、ローリングやピッチングの挙動も穏やかであった。80km/h以上ではしっかりとした一体感のある乗り味があり、気持ちよく操れるようなセッティングが施されていることが感じられた。この素晴らしい感触を知ってしまうと、MARK Xと比較する気など失せてしまう。

低速ワインディング路に戻ってくると、40km/h時の操舵力の違和感が小さくなっていた。ステアリングの重さに腕が慣れたのだろう。往路で感じたことは、実はそんな些細な問題だったのである。

国道に戻ってDレンジで通常よりちょっと多めにスロットルペダルを踏み込むと、エンジンは5000rpmまで回ってしまった。VQ25HRのHigh Responseの部分の演出をしたいのだと思うが、Dレンジではあまり回転を上げない設定が好ましい。現状ではDとDSの2種類しかないが、早めにアップシフトするECONOMYという設定もあるといいと思う。

住宅地などの路面状態の悪い場所での 乗り心地はやや硬く、マンホールの穴に落ちたときなどのショックは身体に響いたが、新車なので脚の動きがまだスムーズでなかったのが原因かもしれない。 中速ワインディングでのV36の快適な走り味を考えると、この設定に一切文句はない。

V36の試乗をして、クルマの完成度の高さに驚き、嬉しくなった。スポーツセダンと呼べるクルマが現れたことはクルマ好きの人間にとって堪らない出来事である。V36の最大のウィークポイントは5段ATである。(24NOV2006)

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【試乗2: Type P】

誰の試乗記だったか覚えていないが、「低回転域でドロドロした音を発するVQ25HRはVQ35HRと比べて劣悪で、250GTには乗りたくない」と書いてあった。

デビュー後間もない試乗では、そんなに悪いとは思わなかったので、 真偽を確かめるべくVQ25HR搭載車を探してみると、家から歩いて5分の店にあった。

試乗車は250GT Type Pであった。その特徴は革シートを備えることで、 他にはステアリング位置の電動調整機能もあり、250GTシリーズの中で最も豪華なモデルという位置づけになっている。

では、乗ってみよう。

10℃程度の外気温での冷間エンジン始動では初期は2000rpmまで回り、1分ほどでみるみる回転が下がる。この暖機の儀式において不愉快な音を感じることは一切なかった。

今回の試乗コースは山奥の住宅地に向かう道を選んだ。住宅地に向かうクルマは多く、それらに続いて山道をゆっくりと進むと、前回と同じくステアリングの異様な重さが気になった。 ただ、それ以外のことについては一切気になることはなかった。

先行車のいない道へクルマを進めて、ATをDSレンジにしてスロットル開度を大きくしてみると、活発な走りを楽しむことが出来た。350GTのような過剰な性能ではない分、フルスロットルまでの幅広い範囲で楽しむことができるのが良い。シート表皮の革は滑りにくく、スポーティな走りを阻害しないことも分かった。

DSレンジにしたままでゆっくり走ってみると、低速ギアの維持が疎ましく感じられた。さらに速度低下に伴う自動シフトダウンによるエンジンブレーキが強力で、スムーズさに欠ける運転になってしまった。DSの設定にメリハリがあるのは良いが、DとDSの差がかなり大きいので、もうひとつのポジションが欲しいと思ってしまう。

今回の試乗でもVQ25HRのエンジン音が不快だとは一切感じなかった。改善して欲しい箇所はステアリングの重さとATである。6段ATになれば、もっとシフトショックを少なく出来るだろう。(04FEB2007)

350GT

type S

5AT

332万円(税抜)

試乗車:

四輪アクティブステア(4WAS)、リアスポイラー装着(税抜: +20万円)

Z33で始まった前後異サイズのタイヤ設定をV36も採用している。リアタイヤを太くすることによってグリップ力が高まり、駆動力を与えられる容量が増えるというのが事実なのか分からないが、BMWやMercedesのFR車がそうなっているので真似をしてみたということもあるだろう。350GTのスポーツ系の「S」を冠する モデル(SおよびSP)が履く18インチタイヤは前225/50、後245/45という立派なサイズである。

18インチホイールを履くことによってブレーキ径を大きくすることが可能で、「S」を冠するモデルは17インチホイール仕様よりも大きいローターを採用している。330φローターはVQ35HRによって 運動エネルギーを与えられた1600kgの車体を止めるのに必要なサイズなのだろう。ただし、これはプジョー407と同サイズなので、17インチホイールでも種類(形状)によっては履くことができるかもしれない。

試乗車にはリアスポイラーが付いていたが、スポイラーを作った人は車体のデザイナーと言葉を交わしたことがあるのだろうか。もともと整流を考えてトランクの蓋の形状(メッキの部分)が作られているように見えるのだが、これに後付のスポイラーを付けるというのは何とも理解し難いもの がある。

では、乗り込んでみよう。

シート調整が電動になるのはこのクラスでは珍しくないが、ステアリングホイールの位置調整までも電動になっていた。いつの間にかスカイラインには高級車の装いが備わっていた。 今回、BL5レガシィから乗り換えて最初の印象は、V36はタイトな空間を持っているなということであった。

まずは国道をゆっくりと流してみた。数mmのペダルストロークでの350GTのスロットル特性は穏やかで、唐突な加速に驚くようなことはなく、他車の流れに合わせて走ることは容易であった。音もなかなか静かで、サルーンらしい走り方が可能なことを知った。また、ステアリングの重さは別段の印象を抱かず、250GTのような違和感はなかった(試乗中はアクティブステア付きとは知らなかった)。

そして山奥の住宅地に続く山道に入り、少しだけ(ペダル先端で10mmほど)スロットルを開いてみると、グワッと加速力が出て、「なんとパワフルなんだろう!」と述べた。これは販売員への褒め言葉で 、半分はお世辞。実は「演出はどこまで出来ているんだろうか?」と思ったのである。

住宅地を過ぎてさらに山奥に行き、2速固定でスロットルを大きく開いて加速を試してみたところ、ペダルを床まで踏む必要がまったくないぐらいの十分過ぎる迫力のあるトルク感を示してくれた。普通の神経の人なら、全開加速をためらってしまうだろう。

もっと山奥に行き、畑仕事の人が歩いていないか、また、地方公務員が道端に座っていないかを確認したうえでUターンして帰り道を辿った。シフトレバーを右に倒してATをスポーツ設定にし、発進後に2速に入ったのを確認してから徐にスロットルを全開にしてみた。2速での最高エンジン回転数はレッドラインの7500rpmまでは到達せず、7300rpmぐらいでシフトアップした。3速に入っても加速力はなかなか強力で、VQ35HRの実力は凄いものだと思った。狭いワインディング路では半分もスロットルを開けるチャンスがないぐらいに加速性能は高く、法規を少しだけ逸脱して走りを楽しむという行為は350GTに乗ると不可能で、日本では扱いに困ってしまう。

フルスロットルにできるチャンスが訪れた直線路で再度ペダルを床まで踏み、それから戻していくと、だいたい7割〜8割程度までがペダルストロークと連動して加速力の増大を感じる範囲だと感じた。つまり、演出の度合いはV35よりも抑えられているようであり、本当に高い性能があるから小さいペダルストロークでも 十分な加速力が得られるのだろう。

演出が小さくなったとはいえ、V36のスロットル特性はその性能に対して過剰なので、現状では普通に山道を走るときにスロットルコントロールが雑になってしまい、同乗者を不快にしてしまう恐れがある。微小ペダルストローク時のスロットルの開き具合をもっと穏やかにして、さらにストローク の最後のほうまで加速力が明確に増大するような設定にしてもらいたい。もしも現状の特性を守り通したいのなら、SUBARUのSI-driveのような仕掛け(ペダルを一杯に踏んでもスロットルバルブは30%しか開かない)を付けて、穏やかな特性を別に作ることも考えて欲しい。

スロットルの話を長々と書いてしまったが、他のことも書いておかねばならない。

ATは相変わらず5段変速である。しかし、あまりにもエンジン性能が高いため、それ以上の段数を必要としない。現状ではトップギアは2250rpmで100km/hに達するが、もっとファイナルギア比を高めて、2000rpmで100km/hになるようなギア比にしても十分な加速力を持つクルマとして君臨できるだろう。パドルシフトは使う必要性を感じなかった。スポーツ設定にすればエンジンブレーキを利かせてくれるので、下り坂ではレバーを右に倒すだけでいい。JATCOの5段ATはかなり使い回されて熟成されていると思っていたが、街でゆっくり走ったときのパーシャルスロットル域で、たまにガクガクッという変なギクシャク感が現れるのは気になった。これはV36の350GTだけで感じられた。

ブレーキはかなりサーボが強く、ちょっと力を入れるとガクッと減速力が出て扱いにくかった。これも演出が強すぎる。

街乗りでのステアフィーリングには違和感を抱かなかったと上で記したが、低速ワインディング路では、反力を感じないことに対して不思議な気分になった。切ればスイスイと頭が入っていき、よく曲がるクルマだなという印象を持つが、手応えがないと不安になってしまう。そして、100km/hぐらいの中速カーブでは、どれぐらい切ったらいいのか分からず、ちょっとビビリながらステアリングを握っていた。

乗り心地は、走り始めの10分間は車体の剛性感が十分あって鋭い段差を滑らかにいなしてくれる素晴らしいクルマだなと思っていた。ところが、舗装の悪い山奥に行ってみると、緩やかで規模の大きい不整(うねり)のある場所で車体の上下動が大きく感じられ、疲れてしまった。どうやらV36のスポーツサスペンションは得手不得手があるようだ(BL5レガシィとは逆の性質を持つ)

V36の隣に当方のBL5を並べてトランクの大きさを比べてみると、奥行はBL5のほうが明らかに深く、最大幅はBL5がわずかに広い。天地の距離は明らかにV36のほうが大きい。そして、段々畑は何度見ても変な設計だと思う。

簡単にまとめると、V36の350GTはスポーツセダンとして素性は良いと感じた。しかし、チューニングが子供向きであり、アッと驚かせる演出が大袈裟なのである。そんな子供だましを使わなくても十分な性能があるのだから、奥深さを感じられる大人用のチューニングを期待したい。 (05JAN2007)

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V36の4輪アクティブステア(4WAS)は、初めてV36に乗る人は気づかないかもしれない。それぐらい良く出来ており、BMW 5erのような不自然な感触はない。しかし、4WASが備わらない250GTと乗り比べると、クルマからの情報をつかみにくくなることが分かった。そのため、「わずか15万円だから付けてしまえ」と早まった考えを起こさず、必ず乗り比べるほうがいいだろう。機会があれば、350GTの18インチホイール仕様で4WASが付かないノーマルステアリングシステムのクルマにも乗ってみたいと思う。

余談

店舗に配備されたV36をよく観察すると、ホイールのスポークの奥にバランスウェイトが大量に(10cmぐらいの長さで)貼付されていることが頻繁にみられる。

複数の店舗で同じことがあったので、ホイールまたはタイヤの製造上の精度が良くないように思われる。

ただ、バランスウェイトが少ないホイールもあるので、ばらつきが大きいのかもしれない。

250GT

標準車

5AT

266万円(税抜)

V36はデビューから1年以上経っているので、現在販売されている車両には公表されない様々な改良が施されていると想像できる。そこで、近くの店にあった標準車で味見をしてみた。

標準車はタイプVと比較してカーステレオ、エアコンの仕様およびESCの有無という違いがある。ステレオやエアコンのグレードが下がっていることに不満は感じないが、スカイラインのような後輪駆動車でESCが付いていないというのはトレンドではない。

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冷えたクルマをゆっくりと赤信号まで動かしてみると、スロットルの反応が唐突で、ブレーキもカックンと利き、なんとも乗りにくいクルマだなあという印象を受けた。アイドリング回転数アップの影響がそのままクリープ力の増加として現れており、また、錆びたローターの影響が摩擦力の異常を引き起こしていたのだ。Lexus ISのような運転手を不快にさせないような心遣いは設計の中に入っていないと考えられる。まあ日産にそんなものを求める人はいないと思うが。

スロットルの反応が唐突なのは初期のV36の特性で、あるとき改良されたと聞いたが、実際はなんら変っていなかった。そこで、目に付いたスイッチを触って変化するか否か確かめてみた。そのスイッチとは「SNOW」である。雪道用としてセットするからには何らかの差異があるはずで、通常は2速発進というのが多いが、V36はそうではなく、1速発進であることは確認済みである。それなら、ということでアクセルペダルの操作を変えずにスイッチを切り替えると、明らかにペダル踏み始めのスロットルバルブの開き具合が 変化した(穏やかになった)。なるほど、唐突なスロットル特性が雪道では危険だと日産は知っていたのである。それを知っていてなおノーマルではこんな荒っぽい特性に仕立ててある のだ。したがって、この味付けに文句を言うべきではなく、荒々しいのは特徴だからそれが嫌なら買わなくていいということになる。

それにしてもスムーズに走らせるのが困難なクルマであった。ステアリングのあまりの重さと唐突なスロットル特性により、山手の町の中のくねくね道は楽しいものではなかった。自然な走りができたクラウンとは大きく異なる。13APR2008

250GT

Type S

5AT

306万円(税抜)

2007年11月に250GTにもタイプSが追加された。

タイプSは350GTのスポーティグレードとして存在していたが、装備はそのままでエンジンの変更(3.5L→2.5L)が選択できるようになったと考えていい。 ただし、アクティブステアは選ぶことができない。

では、18インチタイヤとスポーティサスペンションを備えたタイプSに乗った印象を述べてみよう。

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外観は大きいホイールを履くことで精悍に見えるが、245/45R18というリアタイヤ(RE050)はこの車両(エンジンパワー)に必要なのかという疑問は湧いてくる。 まあBMW3のM-Sportと同様に外見重視の設定というものなのだろう。

後席に関してこれまであまり多くを述べていないが、駐車中にちょっと座ってみると、意外に良いシート形状を持ち、また、リアドアの開度が大きくて乗り込みやすい設計になっていることが分かった。これなら後席での試乗をしてみたくなる。

運転席に乗り込んでみると、フロントガラスの青い帯(日除け)の存在が気になった。視界の多くが青い世界になるのはどうも都合が良くない。これは単に着座位置が高いというだけである。シート位置はいつものごとく下端であったことから、50mmぐらい下方への調整機能が必要と思われる。

乗り心地は良路では不満がないものの(どんなクルマでもそうだが)、洗濯板のごとく波打った道では揺すられ感が強く、全般的に快適であるとは言い難い。乗り味がしっかりした感触でまとめられているのは良いのだが、長時間の乗車は辛いだろう。

ステアフィーリングは30-40km/hではなかなか好印象であったが、パーキングスピードや70km/hぐらいで操舵力がかなり必要になってしまうのはいただけない。フロントタイヤの太さに対してアシスト量が追いついていないのだろうか。

ATのコントロールについてはエンジンブレーキが利きすぎるし、シフトダウンが頻繁に起こるし、ちょっと煩わしいと感じられる。スポーティに走りたくないときもあるので、その辺の考慮が欲しい。

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V36のタイプSと先に乗った標準車とを比べてみると、タイプSのほうが乗り味は我慢できる範囲にあると感じた。もしかするとタイプSは改良を施された新しいクルマである (標準車は製造日が古い)可能性がある。25MAY2008

 

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