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SAAB

9-3

Aero 2.0T

470万円

(独:32450 Euro)

日本向けの 9-3 が2003年1月にモデルチェンジし、それからずっと気になっていた。旧型の野暮ったい雰囲気がなくなり、面構えがシャープに変わったからである。

日本では、各グレードごとに割り当てられるエンジンが決まっているが、ヨーロッパでは LinearとArcには 1.8t(2.0L 超低圧ターボ)または2.0t(2.0L 低圧ターボ)のエンジンを組み合わせることができる。Aeroに 2.0T(2.0L 普通のターボ)のみが設定されるのは同じである。

Saabは相変わらずマイナーな存在で、メディアには殆ど出てこないため、新型がどんなクルマなのか全然分からなかったが、導入から10ヶ月後に初めて実物(Linear 1.8t)を神戸のショウルームで目にすることができた。そのときは、360万円のわりに質素なクルマだなと感じた(試乗車なし)。

それから1ヵ月後、尼崎にショウルームがオープンして、Aeroの試乗車が用意されていたので乗ってみることにした。

外観は225/45R17のP-ZERO(ピレリ)が目立つぐらいで、あとはホイールの隙間から見えるブレーキローターの摩擦面が広い(フロントローター径:312mm)という印象が残っただけである(Linear:283mm、Arc:300mm)。

運転席に乗り込むと、革張りのシートはすごく柔らかい感触で迎えてくれた。シートヒーターは3段階に調整できるらしい(試乗中は未使用)。空調装置は、左右で温度のみを独立調整できるようになっている。

セレクタをDに入れてゆっくりと動き出す。渋滞の中では特に変わった動きはなく、普通に走ってくれた。2ndギアおよび3rdギアでそれぞれ2000rpmから少しスロットルを開けてみると、まるでNAエンジンのようなスムーズさでスーッと速度を上げてくれた。加速感はターボチャージャが付いていることを感じさせない。2.0LエンジンにTD04という小さいターボの組み合わせは、なかなか面白いものがあると感じ入った(私のWRXは2.0LにTD05の組み合わせ)。9-3の中でハイパワー(209PS)仕様のAeroでこの設定なら、低ブースト圧のLinearやArcはさらにレスポンスが自然なのではないかと想像できる。Saabの2.0Lターボは日本車のように無理やりパワーを出そうとしていないところが好ましい。

前方が空いたのを見計らってフルスロットルでの加速も試してみた。2ndギアで全開にすると、即座に過給が始まり、メーターパネル内のBoost計の針がいっぱいに振れる(Red zoneの手前にピッタリ止まる)。加速感はとても穏やかで、やはりターボをあまり感じさせない仕上げであった。最高出力発生回転数を越えた6000rpmまで回したが、頭打ち感はなかった。

ATはアイシンAWの5段変速のもの。60km/h程度の速度では自動的には4thまでしか上がらない(Dレンジ)。試乗は交通量の多い一般道で行ったため、どこまで速度を上げれば5thに入るのかは残念ながら確認できなかった。また、55km/hで走行中にTipシフトのほうへレバーを倒すと、なぜか4thから3rdにダウンシフトし、M3の表示が出る。Tipシフトで4thギアを選択しようとすると、60km/hまで速度を上げる必要がある。このように、Tipシフトは、低いギアを意図的に選択させる設定であることが分かった。今回は低速度での試乗であったため、ロックアップ制御がどのように働くのかは確かめることはできなかった。シフトプログラムは日本車と大きく異なるが、部品はアイシンなので安心できる。

乗り心地は、225/45R17という太く重いタイヤを履いていながら路面の起伏をソフトにいなし、快適であった。古臭いスポーツの味は、最もスポーツ色の濃いと思われるAeroであっても全然感じられなかった。スポーツセダンというのは、もはや何となく漂う雰囲気で味わうもののようである。

ブレーキはフィーリングが素晴らしい。大径ローターをうまく生かしているようである。初期タッチが明確で、踏み込んでいった際の制動感の高まり具合がとても気持ち良く、安心して踏むことができる(ここはスポーツセダンだ!)。

試乗から戻り、店の狭い駐車場に自分で入れてみることにした。すると、タイヤの切れ角が大きく、小回りが利くことに気付いた。

30分ぐらいの試乗であったが、腰が少し疲れていた。どうやらシートポジションを改善する余地があったようである。ランバーサポートはいっぱいに前に出していたのであるが、座面の後傾がやや小さかったようである。調整範囲は広いので、自分のものにしたならば、運転しながら色々と調節してベストポジションを探すことができると思われる。

後席の広さは、私(175cm)が運転した座席の後ろでも足元には余裕がある。頭上空間も充分確保されているので、なかなか実用性は高い。

トランクは奥行きがあって広く、使いやすそうである。長尺の釣竿も入るだろう。後席の背もたれは倒れるし、アームレスト部分が貫通するのも便利である。

Saabはこれといった華を持っていないが、実用性を考えると良いクルマだと思う。だが、2.0Lのクルマで470万円はちょっと高すぎる。

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尼崎の店にはNew 9-3 カブリオレの展示車両もあった。

   

幌の開閉を試してみたところ、スイッチを押し続けて約20秒で作業が完了した。走行中(30km/h以下)でも操作できるというのはなかなか便利だと思われる。簡単な操作でオープンエアドライブを楽しめるのなら、オープンカーを選んでもいいかもしれない。

9-3 カブリオレのリアシートには幌を閉めても175cmの男が問題なく座ることができるし、トランクも狭くないので、これ1台だけでも何とか生活できそうである。

515万円也(Linear 2.0t)

9-3

Linear 1.8t

360万円

神戸のショウルームからフェア開催の案内が来ていたので訪問した。今回はLinear 1.8t の試乗車があったので、少しだけ乗ってみることにした。装着タイヤは215/60R15というカタログとは異なるサイズであった。

まず運転席に座ってみると、シートヒーターのスイッチに目が行った。Linearの椅子は布張なのに前席にはヒーターが備わる。VOLVOと同じように、寒いスウェーデンでは当たり前の装備なのかもしれない。また、運転席だけは電動調整式となる。Aero試乗時はポジション合わせがうまくいかなかったので、ステアリング位置とシート位置をいろいろと調整しながら走ってみたが、10分程度の時間では最適な位置を見つけることができなかった。

今回、最も興味を持っていたのは、Aero 2.0T よりも小さいタービンを使うエンジンのフィーリングであったので、いろいろな踏み方をして特性を確かめてみた。超低圧ターボの1.8t は、やはり2.0T と大きくフィーリングを異にした。どの回転域からどんなふうにアクセルを踏んでみても、まったくターボラグは感じられず、また、過給していることさえ感じさせないものであった。大人4人を乗せた2.0Lエンジン車としてはまあまあ速い部類に入ると感じたが、あまりにも自然なフィーリングなので面白味は感じられなかった。やはり「ターボをほとんど感じないが、付いているのは分かる」という2.0T のフィーリングのほうが私の好みに合っているようである。

9-3の3種類のグレードの中で最もローター径が小さいLinearのブレーキフィーリングは、Aeroと比べるとカッチリ感に乏しく、並のタッチであった。

同じクルマであっても、過給器(エンジン)とブレーキが違うとフィーリングは大いに異なることを実感した。真ん中のArc 2.0t は、1.8t と同じタービンを使って過給圧を高めたエンジンを搭載するが、ブーストアップによるフィーリングの変化がどういうものなのか、ちょっと興味がある。

 

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