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ハイオクガソリンについて思うところ

石油元売各社は、ハイオクの宣伝活動に力を注いでいる。

レギュラーはひとつの出所の製品を様々な看板(掲げている元売の名)のService Station(SS)に運ぶシステム(融通という)が普及しており、看板による差別化ができない状態である。実際、私が働いていたSSでは、看板が変わっても出所は同じであった。一時期、日石と出光のレギュラーには清浄剤が配合されているという宣伝があったが、いつの間にか消えた。流通の実態と合わなかったということだろう。

一方、ハイオクの融通はされていないのか、今でも銘柄ごとに差をつけることができるようだ。低硫黄分、低ベンゼン、高清浄性などの優位性(有用性)を謳う宣伝が盛んに行われている。

では、なぜ石油元売はそんなに頑張るのか? まずは価格を見てみよう。店頭価格からSSの利益とガソリン税(53.8円)を引いた卸値は、ハイオク45円/Lレギュラー35円/Lぐらいになる。我々が目にする ハイオクとレギュラーの価格差10円は、店頭価格に対してわずか8〜9%に過ぎないが、元売から見るとハイオクは約3割も高い値段で売れるのである。すなわち、ハイオクは元売にとって優良商品ということができる。宣伝費や材料費(不純物除去や清浄剤添加)を使ってでも、たくさん売りたくなる気持ちはよく分かる。ただ、SSでの ガソリン販売量におけるハイオクの割合は20%に満たないという。

昭和の時代に比べると、ハイオク指定車はかなり多くなっており、軽自動車(SUBARU)までもがハイオクを要求するといういささか奇妙な時代になったが、まあそれは置いておくとして、どうしてガソリン全体の20%しかハイオクが売れないのだろう。燃料消費の多くを占める商用車(自家用車ではないという意味)がレギュラーで走っているからなのか? 自家用車ユーザーの中にはレギュラー指定であるのにハイオクをわざわざ入れる物好きも多いと思うのだが、実態はよく分からない。SSの利益がどちらも同じ10円/Lであることによって、末端(店頭)でハイオクを売り込む動機がないという問題もあろう。

 

ここでレギュラー指定のクルマにハイオクを入れることについて、どのぐらいのメリットがあるのか考えてみよう。元売各社は清浄作用(汚れを取って燃費向上)と環境への配慮(低ベンゼン、低硫黄)を謳い文句に宣伝活動に力を入れており、それらの価値はクルマと社会の両方に有用と考えられる。しかし、それでも一部のマニア以外に余計な10円を払わせることに成功していない。宣伝文句を真に受けるとメリットばかりかと思ってしまうが、エンジンの要求より過度に高いオクタン価を有する燃料を使ってもその恩恵(自己着火しにくい)を得られないということになる。ただし、一部のエンジン(SUBARUやTOYOTA)では指定されているレギュラーを使うとノッキングを感じさせるものがあり、ハイオクを入れたい衝動に駆られる(こんなにノック音が出て大丈夫なのかと思うことがある)ので、そういう場合には少量を混合するといい。実際にSUBARUの軽で試すと、ノッキングは出なくなった。

上述と逆のことも考えてみよう。ハイオク指定のクルマにレギュラーを入れることはあまり勧められることではないが、実際は問題にならないことが多いようである。ハイオク指定車両を持つユーザーの中には、実際にハイオクとレギュラーの両方を経験した上で、燃費(一定距離を走るときの燃料代)を考えて結論を出す人もいる。その結論として「レギュラーでいい」という話をよく聞くのが不可思議である。そういうクルマはレギュラー用とハイオク用のプログラム(点火時期や混合比の制御)にあまり差がないのかもしれない。確かに昔の雑誌を読むと、ハイオク仕様エンジン(SR20DE)にレギュラーとハイオクを使用し、それぞれパワーチェックをした結果、殆ど差が出なかったというのがあった。このレポートに私は強い衝撃を受けたので印象に残っている。

上に書いた「一部のマニア」の中には、点火時期を早めたり圧縮比を上げたりしてノッキングが出てしまい、結果的にハイオクが必要になった人もいるだろう。ガソリンの性能を最大限に利用するためには、ノッキングが出る少し手前に点火時期を設定すると良いというのが通説なので、昔、私もタイミングライトを持ち出していろいろと試してみたことがあった。4K-Uノーマルエンジンで点火時期を2度進角させてみると、全開ではノッキングがひどくなった。つまりレギュラーでは殆ど点火時期を変更する余地が残されていなかった。言い換えると、初めから点火時期の設定は適切だったということである。そこで点火時期を進めた状態でハイオクを入れてみると、ノッキングは収まり、「さすがにハイオクだけのことはある」と思ったが、パワーアップした気がしなかった。したがって、街乗りではノーマル点火時期でレギュラーを使用することに落ち着いた。ガソリンの燃焼エネルギーはハイオクもレギュラーも同程度というので、点火時期を無理に早めてハイオクを入れても無意味なのであった。燃料に応じた最適な点火時期で燃やしてやることによって、それが持っている燃焼エネルギーを使いきれるというだけの話である。

ハイオクの真価は、燃料のエネルギー変換効率を高めるために圧縮比(過給圧も含む)の高いエンジンを作った結果、レギュラーでは対処が困難になった(すなわち点火時期調整ではもはやコントロールできない)時にこそ発揮されるものである。要するにレギュラーでノッキングしないエンジンにハイオクを使っても、メリットは清浄剤の作用以外に何もないのである。

 

現在、乗用車ではトヨタ2SZ-FE(Vitz)が最も圧縮比が高いレギュラー仕様エンジンではないかと思う。11.0という値には感心してしまう。その次はホンダのL13A(Fit)の10.8であろう。それに比べて輸入車はどうか。圧縮比がさほど高くないエンジンでもハイオク指定になっているのはいかがなものか。

輸入車の取扱説明書には、そのエンジンの要求オクタン価が書かれていることが多い。たとえば Alfa 147(2.0TS)は圧縮比10.0で要求オクタン価は「95」である(測定法はリサーチ法か?)。ヨーロッパでは3種類のガソリンが店頭で販売されていることが多く、オクタン価95のガソリンが存在する(=Super:3種類の中間の製品)。しかし日本ではガソリンは2種類しか存在しない(JIS規格)ため、オクタン価90程度の日本のレギュラーでAlfa 147を動かすことはできず、ハイオク仕様にならざるを得ない。

JIS規格 1号(これがハイオク)はオクタン価96(リサーチ法)以上とされているので、日本車でハイオク指定というエンジンはオクタン価「96」でノッキングが出ない設計になっているはずである。つまり、今やハイオクのオクタン価は100が普通になった(シェルの製品も変わった)ので、レギュラーをある程度混合してオクタン価を下げてもハイオク指定のエンジンに問題なく使えるはずである。上に書いたが、エンジンの要求オクタン価を遥かに越えるオクタン価を有するガソリンを使うことにメリットはない。もしも何らかの客観的な指標をもって(ノックセンサー付きのエンジンではノッキングが体感できないので、パワーの変化ぐらいしか指標がないか・・・)自分のクルマのコンピュータがどれぐらいのオクタン価でマップ(普通はハイオク用とレギュラー用のプログラムがある)を切り替えるのか判断できるのなら、ちょうどいいオクタン価のブレンドガソリンをタンク内でこしらえることができるだろう。運転中の点火時期等を読み取ることができる車載機器があれば簡単にマップを判別できるが、そういうものがなくてもいろいろなブレンド比率で加速と燃費を計測し、エンジンに最適なオクタン価(ブレンド比率)を見つけられると面白い。

 

市販の燃料添加剤にオクタン価を高めるという性質のものがある。だいたい2〜3ポイントアップさせるものが多いので、SUBARUの軽のような微妙なノッキングを消すのには効果があると思われるが、宣伝文句によく見られる「パワーアップ」は期待しないほうがいい。なぜならオクタン価が上がっても ガソリンが発生する熱量は変わらないのだから。もしもその添加剤が相当な燃焼エネルギーを持つのなら話は別だが、そうなるとエンジンが壊れないか心配になってしまう。

通常、ハイオク指定車にレギュラーを入れた時は「レギュラー用プログラム」を用いてエンジンが壊れない程度で動かすよう設計されていると思われるが、ノッキング回避に必要な遅角分をはるかに越えて点火時期を変更していると想像できるものがある。点火時期が最適なポイントよりも極端に遅いと、不完全燃焼によりパワーダウンしてススが発生してしまう。ノックセンサーがノッキングを感知して「レギュラー使用中」と認識する燃料のオクタン価はクルマによって様々だと思うが、もし、レギュラーマップに切り替えるポイントがオクタン価92〜93で設定されているのなら、レギュラーにオクタン価向上剤を添加することによって正規マップを使えるようになり、添加剤の効能どおりにパワーアップできる場合(本当は正規マップに戻るだけ)もあるだろう。

我々はお店で、レギュラー、ハイオク、市販オクタン価向上剤、市販清浄剤など、いろいろなものを買うことができるので、費用対効果で様々な組み合わせを検討してみるのも一興だろう、もしも私のように暇だったら。。。

 

この記述は2004年のものである。

 

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