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北京ダックは美味しいか?

味を付けて焼いたアヒルの皮をちょっと剥がして、きゅうりとねぎと中華甘味噌を合わせて小麦粉から作られた皮で巻いただけの料理であるが、これは果たして美味しいのか。

中国でアヒルの料理として綿々と受け継がれてきた北京ダックであるからして、この食べ方がアヒル料理ではベストということなのだろうが、どうも私の舌ではよく分からない。

これまで、高級な店から庶民的な店まで色々なところで北京ダックを食べてみたが、どうしてもこの料理がアヒルの最も美味しい調理法であると思えないのである。

 

先日、友人たちと日航ホテルの中華レストランで昼飯を食べたとき、その店の北京ダックの味を確かめるべく注文してみたのである。果たしてここで美味しいと思えるのかどうか 。。

この店では小麦粉の皮をちょっと炙って提供することもできるというので、1本は炙り、もう1本は普通の(ちょっと柔らかい湿った)タイプで作ってもらうことにした。

まずは炙りから。これは焼き目の香ばしさが口の中と鼻の奥で楽しめるもので、なかなか面白い経験をした。それから普通のタイプを食べると、こちらのほうがアヒルの皮の味をより強く感じることができ、ちょっと北京ダックの味わいが分かったような気になった。しかし、小麦粉の皮の味と舌触りが勝っていて、やはりアヒルのベスト料理だと思うことはできずにいた。

 

ところで、いつも北京ダックを食べたときに疑問に思うことがある。それは、皮以外の部位はどこに行ってしまうのか、ということだ。アヒルもニワトリも外観は似たようなものなので、お肉も食べられるはずである。まさか捨てることはないと思うのだが、残ったお肉を食べてみたいと望むのは私だけだろうか。

それが、このたび実現した。

レストランからの初めの提案は「スープ仕立て」ということであったが、コースの中に鮫の鰭の姿煮というのがあったため、汁物が重なることを避けるよう配慮がなされ、「野菜炒め」で供されることになった。

野菜炒めの中に入っていたアヒルのお肉は、鉛筆より少し太めの長さ5cm程度に切られたものであった。これはニワトリのお肉に比べて何となくしっかりした食感があって、味付けが良いせいかとても美味しい料理であった。

 

北京ダックのお肉、これは私にとっては皮よりも美味しいと思えるものであった。しかし、お肉をそのまま食べるというのはやはり野蛮なことなのかもしれない。すなわち、手間暇掛けて焼いたアヒルの皮を小麦粉の皮で包んで食べるという奥ゆかしさこそが 上流階級の人の美食なのだということか。私は美食家ではないので、そのあたりの気持ちを正しく理解できないが、そんなふうに考えておこう。

ともかく、焼肉やステーキなどの野蛮な料理が好きな私にとっては、北京ダックの価値は相変わらず認識できなかったのである。日本でも北京ダックにはお肉の料理が必ず付随してくることを望みたい。

June 2010

 

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