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PASSAT

V5 2.32L

FWD

349万円

BORAではV5エンジンを積むモデルはハイグレードに位置付けられるが、PassatセダンではV5搭載車は最下位モデルである。ドイツではPassatの人気はとても高く、個人所有と思しき中型車の多くがPassatであった(安いというのも事実)。

運転席のシート調整はV5のみ手動になる。高さは他のVW車と同様にラチェット式レバーで調整することが可能なので、イニシャル位置はかなり低くなっている。今回は、最も低い位置から2回ラチェット操作で上げて運転した。スライドは、昔のVWの悪いところを引きずっており、1ノッチで20〜30mmぐらい移動するので微調整ができない。V6モデルのような電動スライドが欲しいと思う。クッションは柔らかく、座った瞬間に大きく沈み込むが、厚みがあるので掛け心地は良い。背もたれは硬めで、肩甲骨のあたりを押さえてくれるので、姿勢を保持しやすい。

交通量の多い道で走り出すと、すべての面でとても滑らかな印象を受けた。特にステアリングは適度な手ごたえがあり、フリクションが少ないことが気に入った。足回りもソフトに仕上げられでおり、角のあるショックは伝えず、全体の乗り心地のまとめ方は良かった。エンジンも3000rpm以下では音は静かで、スロットル特性も穏やかにできているため、街乗りに適している。低速トルクが豊かで、加速感も軽快で良かった。ATもスムーズでTiptronicを操作してみても変速ショックは少なかった。以上のように、まるでトヨタ車のような出来であった。しかし、ブレーキまでもトヨタ車のようで、効きはやや甘かった。

フルスロットルでのマナーを確認してみると、3500rpmぐらいからV型エンジン特有のバラついた音が発生するのが分かった。この音は快音ではなく、やや興ざめのする類のものであった。また、トルク感もやや薄く、1520kgのボディを加速させるにはエンジンが小さいのかもしれない。

荷室はVWのセダンの定石どおり広大で、愛用の釣竿が余裕をもって収まった。また、ステアリング切れ角も大きく、小回りが利くのも良い。

Passatは外装はもとより室内の質感もかなり高く、普通の道で普通に走るには非常に快適なクルマであり、ファミリーセダンとして選ぶには良いと思う。マツダ アテンザが快適性のお手本にしたというのもよく分かる。一般的な用途においてフルスロットルの加速をする機会などあまりないと思うので、飛ばし屋を自認している人以外には2.3L V5をお奨めできる。

PASSAT

WAGON

V6 2.77L

FWD

390万円

2.3LのV5ではパワー不足を感じたので、2.8LのV6を試してみた。

今回の試乗車はM/C後の初期生産車で、シート表皮がアルカンターラ(エクセーヌ)と本革のコンビであった。これは滑りにくくて気に入ったのであるが、現行販売車は表皮全面が本革に変更されているらしい。滑るシートは嫌いなので、残念に思う。

混雑した道路事情でのV6の乗り味はV5とほとんど変わらず、若干アクセルペダルを踏む量が少なくても事足りるといった程度である。エンジン、ミッション、脚、ステアリングのすべての動きが滑らかで、高級感があった。

フルスロットルで加速(1st →2nd の途中まで)してみると、さすがに6気筒 5バルブDOHCだけのことはあり、スムーズな音を奏でながら回転が上がってくれた。ただし、1600kgのボディを193PS/28.6kgmのエンジンで引っ張るのは、不満は出ないが、余裕を感じさせることもない。エンジン自体は良いのであるが、ダウンシフトの制御は上手くない部分もある。スロットルペダルの感触には今時珍しいキックダウンスイッチのようなクリック感があり、そこを越えて踏み込まないとダウンシフトしないので、ちょっとした強めの加速が意図したとおりに出来ない。そういうときのためにTiptronicが付いているのかもしれないが、いちいち変速のために手を動かすのは面倒である。スロットルペダルの動きを細かく検知して、オートマチックにもっと細かい制御ができることを望む。

ブレーキフィーリングはV5と同様にいまいちで、約100km/hから急減速のために強めの力でペダルを踏んでみたが、減速感は弱く、いざという時にロック近辺のブレーキングができる自信がない。同じドイツ車であっても、BMWとは違うところである。もしかすると日本仕様専用のPadが入っているのかもしれない。

PASSAT

WAGON

W8 4.0L

4MOTION

541万円

ファミリーカーとしては少し余裕のあるこのクラスでは、アテンザ、アコード、レガシィなどの強豪がひしめいている。エンジンは2.0〜2.5Lが中心であり、これまで最大の排気量を持つクルマはMB C320(3.2L)であったが、最も競合車が多いこのクラスの中で個性を光らせるために、VWは特殊な構造の4.0L W型8気筒エンジンを用意したのだろう。

275PS、37.7kgmという性能は4.0Lにしては控えめである。ピストントップの角度がシリンダと垂直になっていないため、わざと抑えてあるのかもしれない。エンジンはコンパクトにできているというが、やはりV6 2.8Lよりは重いし、さらに補強や遮音装備を増やしていると思われるので、車両重量は驚くべき重さ(1800kg)になっている。これはV6 4MOTIONより110kg(V6 FFよりは200kg)も重い。

内装の造りはPASSATらしくきちんとしており、木のステアリングホイールとしなやかな革のシート表皮で普通のモデルとの違いを出している。シート表皮は滑りにくく良くできており、リアシートにもヒーターが付いている。リアシートの座面は他のPASSATより広く、お尻がしっくりと収まるようになっているのは、運転手付きで乗る人も想定しているのだろうか。PASSATはもともと高級感のある内装なので、W8だから特別にスゴイというものは感じなかった。個人的にはウッドハンドルやナッパレザーシートに興味はない。

試乗はいつもと同じ混雑した道で行ったが、さすがに重量級のことだけあり、車体のフィーリングはドッシリと安定したものであった。ステアフィールは相変わらずとても滑らかなもので、225/45R17の扁平タイヤを履いているせいで軽快感も出ていた。5段ATのシフトフィールも相変わらずスムーズで、55km/h以上で5速ギアに入れることが可能であった。最近のVWはATの仕上げは、まるでトヨタ車のように快適である。日本人のニーズに合わせてセッティングを変更しているのではないかと思うぐらいに。車内は静かなので、純正ステレオでFMラジオを試しに聞いてみたところ、なかなかバランスの良い音を出していた(オーディオには疎いので、信用しないでください)

前方が空いたのを見計らってフルスロットルの加速を試みた。トルク感はそれほど強くないがフラットで、シュルシュルという音とともにスムーズに回転は上昇していき、気が付けばかなりの速度に達していた。パーシャルスロットルからの踏み込みではピックアップはなかなか良く、気持ちの良いエンジンといえる。ただし、このピックアップの良さと引き換えに燃費はあまり良くないと想像できる。なぜなら、排気管には「すす」がたっぷりと付着しており、NAなのにかなり濃いガスで走っていると思われたからである(燃焼室形状が良くないので濃い燃料でノッキングを防いでいるのだろうか)。また、特性がジェントルすぎるので、4.0Lのありがたみを実感することは少ないと思う。日本の道路事情では、一般人にはV6 2.8Lで十分だろう(V6 4MOTIONは410万円)。

ブレーキは、V5、V6で文句をつけたが、W8では合格点をあげられる。エンジンに見合った制動性能を備えているので、安心してブレーキングができるのが良い。

乗り心地は、タイヤの接地面が硬いような印象で、凸凹をよく拾う。太いタイヤのせいでバネ下が重く、脚がスムーズに動かないのも一因かと思う。これだけがマイナスポイントであり、あとはすべて優良である。

 

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