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2.5 SE

AWD

 

3.0 SE

AWD

 

ジャガーなど全く縁がないと思っていたが、フォードグループの一員になって量産車を売るという方針で安いクルマが出てきたので乗ってみた(東京・立川)。

X-typeはモンデオをベースに造り上げられたらしい。富士重工業が四輪駆動を盛んに宣伝しているが、AWDの優位性にフォード(ジャガー)も目をつけて、ドイツのFRのプレミアムブランドに立ち向かおうとしているようである。ドイツでAudiが取った作戦と同じとも言える。

外観は XJ と統一されたイメージで仕上げられており、誰が見てもジャガーそのものである。内装もデザインはジャガーであるが、革の質感やスイッチ類のタッチは上級車と比べると安っぽい。後席は意外に広く、膝まわりは余裕が充分ある。ただしデザイン優先のため頭上にはそれほど余裕はない。ATのシフトゲートはジャガー特有のJゲートが採用されている。操作感は軽すぎて節度がなく安っぽいものであるのだが、実際に走行中に操作するときには軽く動くのは意外に都合がよかった。ペダル配置は左足ブレーキが可能なものであるが、フットレストが存在しないので左足の置き場に困る。フットレストはメーカーオプションには無く、販売店オリジナルとして用意されているそうである。しかし、アルミ製でなんと4万円もするという。S-typeには足を置く場所(盛り上がり)が存在するのに、どうしてX-typeにはそれがないのだろう。

まずはV6 2.5Lエンジン車から乗った。この試乗車は生産初期のロットにあり、その時期はまだジャガーの作業員が大量生産に慣れておらず、組み上げ品質にバラツキが大きかったという。そのせいなのかどうか分からないが、乗り味は路面の突き上げが非常に強く、内装がミシミシいっていた。これではとても475万円の仕上げとは言えない。エンジンはおとなしく走っているときには何も感じるものはないが、フルスロットルにしたときにはドイツ車と異なり、豪快なエンジン音とともに高回転(といっても7000rpm弱)まで回る。ブレーキは、マスターシリンダが助手席側にあって複雑な構造になっているが、それによる不具合はなかった。試乗車は出来が悪かったが、最近製造されたクルマは品質が安定して、乗り味も良くなっているらしい。

V6 3.0Lエンジン車のほうは生産時期が比較的新しいものであった。3.0SEは2.5SEと同じ脚のセッティングであると聞いたが、この2台の印象はまったく異なっていた。路面の突き上げ感はかなり小さく、ダンパーが適切に仕事をしているのが感じられ、このクラスの外車として許されるレベル(525万円はちょっと高いと思うが)になっていた。エンジンのトルク感は当然ながら2.5Lよりもやや強力で、2ndギアでフル加速するとMAX回転数に到達するまでの時間は3.0Lのほうが明らかに短い(2.5Lと3.0Lのギア比は同じ)。音とフィーリングは2.5Lと同様に豪快で、高回転まで振動がそれほど高まらずに回っていくのを楽しめる。

2.5L、3.0Lともに速さとしては標準的であった。ただ、通常は2ndギア発進のようで、出足はそれほど良くない。Sportモードを選ぶと1stギアで発進するが、スロットル開度が小さいと意外に早く2ndにシフトアップしてしまう。日本向けにもう少し1stで引っ張るプログラムにしてもよいと思う。

ステアリングのギア比は切る角度により変化し、大きく切ると速くなるセッティングであるが、何となく気持ち悪いフィーリングを持っており、そのメリットは感じられなかった。ギア比の数値はカタログには記載されず、販売員も知らなかったが、全領域で一定の速いギア比に設定したほうが良い。そのほうがクイック感があってBMWに対抗するには都合がよいのではないだろうか。

価格は X-type V6 2.5 が BMW320i と、V6 2.5SE が 325i と、V6 3.0SE が 330i と同程度である。X-typeはAWDであり、ナビゲーションなど装備も充実していることから、ライバルと比べて買い得感はある。

そして、さらに市場を広げるためにV6 2.1LのFWD車を導入するらしい(試乗記は下に)。価格はBMW318i と同程度になるそうである。また、ワゴンボディも出るという話がある。

2.0 V6

FWD

初期モデル

2096ccのV6エンジンを積んだFWD車がXタイプに追加された。2.5Lモデルとの外見上の違いはアルミホイールのデザインとマフラーの出口(バンパーに隠れていて見えない)が1本になっていることぐらいで、安いグレードに乗っていることに対する劣等感は抱かなくていい。

乗ってみると、クリープで動くような微速時にステアリングホイールにわなわなという振動が伝わってくる。タイヤの不具合なのかクルマの特性なのか分からないが、高級感を損なう気持ちの良くないものであった。それ以外は総じて良くできており、スピードを出すとスムーズな転がり方を見せてくれた。FWDなので余分な抵抗を受けることなく走ることができるのだろう。5段ATのギア比はファイナルも含めて2.5、3.0と同一なので、ややハイギアードな設定だと思えるが、違和感を覚えるほどではない。60km/hではギアは4段めかもしれないがロックアップクラッチが作動するので、低回転で静かに走ることができる。2.1L V6エンジンの印象は2.5Lや3.0Lとは全く異なり、繊細で洗練されたものであった。BMWの直列6気筒 M54型 2.17L(320i)よりもシルキーな仕上がりと思える。加速性能は高いギア比のせいで大したことはないが、スムーズに回るエンジンと非常に静かな排気音のため、スロットル開度を大きくすることにあまり躊躇はいらない。乗り心地については短時間の試乗のため多くを語ることはできないが、2.5Lモデルのような荒さはなかった。

価格設定は4気筒のMercedes C180やBMW 318iより安い365万円であるにもかかわらず6気筒エンジンの優位性を2.0 V6に感じることができる。2.5Lや3.0LではAWDであることを他車との違いとして訴えたいのは理解できるが、2.1Lのみならず2.5L、3.0LでFWD車もさほどの投資なしに簡単に成立するので、作ってみればそれなりに売れるのではないかと思う。クワトロが得意なAudi社のFWD車が数多く売れているように。

3.0 V6 SE

旧 line up 車両

 

2003年11月、X-typeのラインアップが変更された。

2.0 V6、2.0 V6 SE、2.5 V6 SE、3.0 V6 Sport、そして3.0 Sovereignが設定される。2.0 V6にもいつの間にかDVD式のNavigation systemが標準装備されるようになったが、それによって価格も高くなっている。

展示車両として新しい2.0 V6 SEが用意されていたが、試乗車は従来型の3.0 V6 SEであった(大阪・箕面)。

シルバー(ジルコン)の外装色に黒(チャコール)の内装色が組み合わされていた。黒の内装色は重厚であっても洒落っ気がないので、X-typeならアイボリー、シャンペン、ストーンから選びたいと思う。

2年ぶりに3.0L車をちょい乗りで走らせてみると、ATのフィーリングがどうもパッとしない。あまりエンジン回転数を上げずにどんどんアップシフトを繰り返すのである。どうやら学習機能によって早いシフトをする設定になっているという話であった。S(スポーツモード)のスイッチがONになっていたが、発進時にはいつも2速ギアが選択されているような気がした。

乗り味はやわらかいのに硬い。路面の凸凹に対してはゴツゴツする当たりの硬さがありながら、うねりを越える際にはフワフワするという何とも言えない気持ち悪いフィーリングであった。この車両の製造時期は知らないが、もしかしたら初期ロット品なのかもしれない。

2kmぐらいの渋滞中の試乗では感じられることが少ないので、次回はコースを変えて乗ってみたいと思う。

2.0 V6

2004年モデル

デビュー時の2.0 V6の試乗記は上に書いたが、間もなく2.0 V6には上級モデルと同様にCAR NAVIGATION装置が備わり、最下位モデルであることをほとんど感じさせないようになった(ナビが追加されたのはM/C時ではなく、かなり初期である)

今回の試乗車は2003年11月のM/C以降のモデル(前席カップホルダーが2個になっているもの)であったが、内装の仕様は一部に従来型の部品(ステアリングホイールのスイッチが旧式)が使われていた。移行期にはよくそういう部品の混在がみられるという。M/Cにおけるカタログ上での大きな変更点は、ファイナルギア比が低くなったことである。

運転席に座ってみると、着座位置が前回乗った3.0 V6と比べて何となく低くなったような気がした。尋ねてみると、2.0 V6のシートは上下動のみが電動調整になるため、上級モデルよりもシート位置を下げることが可能になったという。

走らせてみると、6気筒エンジンの滑らかさが印象的であった。2.1Lエンジンは回り方が繊細で、とても良い雰囲気を出していた。しかし、ゼロ発進のときに唐突に動き出すようなスロットルセッティングには賛成できない。ギア比が変更された理由は、従来型があまり活発ではなかったためだと思われるが、加速の良さを錯覚させるためにスロットル特性まで変更する必要はなかったのではないかと思う。

日本人はスタートの瞬間にドカンと出るのが本当に好きなのだろうか。確かに信号からの発進で勢いよく飛び出すクルマが多いが、そのほとんどがその後スピードを増していかずトロトロと走っている。その光景はとても奇妙に映る。実際には勢いよく発進したくないのに、クルマが勝手にドーンと出るのかもしれない。

乗り心地は、路面状態が良い場所ではフラットで滑るように走ってくれたが、段差では突き上げがきつかった。M/Cで脚の変更があったのかは分からないが、バネが硬いような印象を受けた。ジャガーは Formula 1 に参加してイメージを高めようとしているが、大衆にいったいどのようなイメージを抱いて欲しいのだろう。X-typeをスポーツセダンとして売りたいのならこれでいいが、片や高級車という側面もあるので、もう少ししなやかな脚を実現してもらいたい。

いろいろと書いたが、短時間の試乗ではこのクルマの本当の姿(良さ)が全然分からなかった。機械的な面の良し悪しを見るには1日中乗り回してみないと何とも言えない。

内装はX-typeからXJまでジャガー独特の意匠でまとめられているので、この雰囲気が好きなら、X-typeは悪くないと思う。とにかくデザインが上品で美しく、その仕上げがきれいなので、乗るたびに満足できるだろう

ESTATE

2.0 V6 SE

ジャガー初のワゴンボディである。近所の店では試乗車がなかなか出ず、ようやく展示車両がナンバーをつけたので乗ってみることにした。

運転席に乗り込んでみると、レガシィなどと同じようにセダンモデルと何ら変わりのない景色が広がり、後ろを見ない限りワゴンであることが認識できない。当然、ジャガーのテイストに満ちた世界がそこにある。あまり高級な感じはしないが、それでもジャガー独特の上品な感じは良いものである。

店から路上に出る際、何も考えずに(インプレッサと同じように)スロットルペダルに力を加えたところ、ポンッと飛び出して少しビックリ…上記のとおりセダン2.0 V6で経験していたのに、それをすっかり忘れていた。スロットルの設定は相変わらず「スタートダッシュ優先」であった。

走ってみると、脚の動きがかなり滑らかになっていることに感心した。デビュー当時は突き上げが強くてジャガーらしくなかったが、だんだんと改良されてきたようである。もちろんワゴンとセダンの脚のセッティングは異なると思うが、それにしてもこの快適な乗り味ならジャガーの名に恥じないといえる。

セダンより50kg(当然リア側がメインで)重くなっていることが乗り心地を良くしたのかもしれないが、重量増が走りをスポイルするとは感じられなかった。同時にセダンと比べないと分からないレベルだと思う。上り坂を2nd→3rd(自動変速)でフルスロットル加速してみたが、2.1Lという小排気量エンジンの割りに3人乗りでも不満のない走りを見せてくれた。

日本仕様のワゴンはSE(上級版)の設定だけとなり、その価格は490万円(税抜き\4,666,667)となかなか手が出しにくい。普及版とSEとの差額は55万円(セダン2.0 V6の場合)なので、435万円(税込み)の普及版ワゴンがあればいいのになと思う。

X-Typeは販売面でやはりセダンが主流だというが、セダンに対して後席の頭上の余裕および荷室の広さでメリットがあり、スタイリングでも不自然なところはないので、また、X-Typeではステータス性を論じる程のものではないので、レガシィのようにワゴンのほうが多く売れる日が来るかもしれない。

 

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