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Sonata

2.4 GLS

4AT

ヨーロッパやアメリカで人気の高いヒュンダイ。日本ではセダン人気の冷え込みからXGやエラントラは言うに及ばず、ヴィッツやフィットのライバルと思しきコンパクトカー「TB」でさえほとんど売れていない。

そこで、5代目ソナタの登場である。冬のソナタのヒットに乗じて、たまたま同じネーミングであったクルマが人気俳優の強力な後押しを得て、初めて日本に導入されることになった。

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一見すると、フロントは少し前のカムリ、リアはインスパイア(米国アコード)、サイドは少し前のアウディの影響を受けているのが明らかに分かる。アメリカ市場でアコードとカムリのセールスが良いので、単純に真似をしたのだろう。韓国で最大手といえども、まだまだヒュンダイオリジナルのデザインは完成していないということか。

室内の意匠は日本車と似たようなもので、特に悪くはない。プラスチックのパネルがGOLF5のように硬くて安っぽい材質であるのは触ると分かるが、大きな問題ではない。ウィンカーが日本車と同じように右手で操作できるのは、気が利いている。

室内の広さはなかなかのもので、頭上空間に余裕がある。助手席は、家内によると着座位置(床から座面まで)が低いという。脚の長い人にとってはもう少し高い方が良いだろう。座面の高さ調整は現状では運転席でのみ可能で、助手席は電動シート(Lパッケージ)であっても4ウェイ(スライド、背もたれ角)調整しかできない。この辺りは安っぽい考えの日本車の真似をするのではなく、欧州車に倣って左右席を平等に扱って欲しかった。

公道試乗のために店を出ると、歩道の段差でショックを大きく感じ、かなり脚は硬いと推測された。実際に他の人が乗っているのを観察すると、段差通過時のタイヤのストロークが少ないように見えたので、バネが硬いんだなということが分かった。

走らせてみると、乗り味はとても素直で、欠点を指摘するところは見当たらなかった。脚の硬さも全然気にならず、スムーズに路面をいなしながら走ってくれた。最も好印象を持ったのは静粛性であり、フルスロットルでの加速中でも音があまり高まらないのは良かった。

ATは4段変速であるが、Dレンジで街中を走っている限り何ら不満はなかった。Tipシフトはおそらく三菱のINVECSの技術が入っているのだろう。1速に落とす際にシフトショックを抑えるためと思われるタイムラグがあったが、総じて良く出来ていた。5段変速だったら(カムリが4段なので)もう少しクルマの価値が上がるのに、残念な気がする。

ボンネットを開けてみると、補機類にはBOSCHやDENSOの文字が見られ、ソナタが世界戦略車であることがよく分かった。また、ブレーキのマスターは右側に存在し、きっちりと右ハンドル用にクルマが作られていることも分かった。この2.36L 直4エンジンは、ツインバランサーシャフトや連続可変バルタイを採用した三菱の新型エンジン(アウトランダー用)と設計を共有するという。静かでスムーズだったのも納得できる。

荷室はなかなか広く、トランクリッドのアームは折りたたみ式になっており、リアシートの背もたれも倒せるので、使い勝手はかなり良いだろう。ただ、リアシェルフにあるスピーカー(ウーファ)の磁石が荷室に大きくはみ出していることから、大きい荷物が引っかかることがまれにあるかもしれない。なお、上級グレードのLパッケージにはインフィニティのスピーカーが装備される。

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韓国車に初めて触れてみたが、あまりにも普通に良く出来ており、文句を言うところがなかった。インスパイアにもカムリにも乗ったことがないので、比較はできないが、何度か乗ったティアナと比べると、明らかにソナタのほうが走り味は良かった。

2.4 GLSは、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ、ESPを標準装備していながら、ティアナ230JK(カーテンエアバッグ、ESPはオプション)と同価格であるので、なかなか競争力は高いと思われる。韓国で販売されている2.0L(直4)や3.34L(V6)のモデルも導入すれば、さらに競争力は高まるだろう。

クルマというものは、日本では安いことがメリットになりにくいので、先行きは不透明であるが、ヨン様人気にあやかって、クルマにこだわりのないトヨタ車に乗っているお父さんが、奥さんにそそのかされて買い替えるかもしれない。

TB

1.4 GLS

4AT

115万円(税抜)

TBがマイナーチェンジを受けた。日本向け車両のエンジンは1.4 DOHCを載せているが、本国では他に1.1 OHCと1.6 DOHCのガソリンエンジンもある。ソナタが日本で2.4のみの販売をする(3.3 V6は入って来ない)ように、TBでも1機種のエンジンでまずは市場の動向を探るのだろう。

運転席に座ってみると、シートクッションはかなり硬く、ちょっと前のVWをイメージしてしまった。リアシートはやや柔らかいが、一般の日本車よりはかなり硬い印象を受けた。着座姿勢は小型車らしくきっちりと座らせるもので、空間の使い方はなかなかまともであった。

ウィンカーとワイパーのレバー位置は、ソナタと同様に日本向けにのみ仕立て直されており、日本人と同類の律儀さが窺える。販売規模が小さいのに、よく頑張るものである。

走り出すと、まずは予想外に飛び出してビックリした。踏み込み初期のスロットルの感度が敏感すぎて微妙な調整には慣れを要する。フルスロットルでのパワーはそれなりなので、この手のセッティングは乗りにくさを強調するだけである。

乗り心地は良路では意外に悪くなかった。硬いシートは心地良く、VWのような小型車らしい潔さが感じられた。ところが、ひとたび微妙な凸凹が連続する道(HAT神戸:LEXUSの前)を走ると、それをすべて拾って、ヒョコヒョコヒョコヒョコヒョコヒョコヒョコヒョコヒョコヒョコと揺れ続けるのであった。これはどういうセッティングなのだろう。たまたま脚と道の周期が合ってしまったのだろうか。

ブレーキは利き味がかなり穏やかであった。日本向けにパッドを変えているような感じがした。できればもう少し硬くてμの高いパッドを付けて欲しい。

三菱と同じ建物の中にある販売店に客の姿はなく、ソナタの前に飾られたヨンさま等身大写真は寂しげであった。クルマの販売においては、期待したほどヨンさまの効果はなかったようである。とはいえ、ソナタの外装がものすごくキッチリと隙間なく組まれていることには改めて感心してしまった。高い品質感を継続的に宣伝することができれば、いずれはヒュンダイが日本に浸透することになるだろう。

 

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