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整備士、地位向上のために

クルマを買うとき、ショウルームの雰囲気や販売員の態度が決め手になるという人が多いようだ。

なかなか短絡的で面白い。この国の人らしい考え方だ。

「少なくとも1年に1回はクルマを買い替えることにしていて、いつも同じ店に決めているんだ」という人ならそれが正解だと思う。販売員との付き合いも頻繁になるため、良い人を選ぶべきである。

しかし、皆さんはそんなに高い頻度でクルマを買い替えるのか。

私の場合は最低2年、最高11年ぐらい同じクルマに乗り、しかも同じメーカーのクルマに乗ることはあまりないので、同じ販売員 に再び会うことなんてない。

同じクルマに長く乗る場合、販売員よりも整備士の質のほうがずっと大事だと思っている。なぜなら、半年に1回(スバルなら3ヵ月に1回)は整備士にクルマを預けることになるからである。そこで、販売店を訪れた際に待ち時間がある場合はピットを観察することにしている。

 

先日、試乗車の用意ができるのを待っている間にピットを見ていてちょっと気になることがあったので書き留めておこう。それは外したホイールを車両に装着する最終の場面であり、車両はリフトの台から完全に降りておらず、整備士はトルクレンチを持って作業していた。

それを見て「ここはなかなかやるなあ」と思った。その理由は次のとおり。

  • ホイールが完全に車両(ハブ)に密着していない状態(位置が定まらずグラグラしている)で車両をリフトから完全に降ろさない、という作業をしている → ホイールをセンターに取り付けるために配慮している → クルマの構造をよく分かっている

  • トルクレンチを持っている → ホイールナットの締め付けを均等にしようとしている → クルマのことを分かっている

ところが、整備士は私の期待を見事に裏切ってくれた。

  • トルクレンチ(プリセット型)の操作は「じわっと力を加えていってカチッと鳴ったら手を緩める」というのが使用方法なのに、彼はかなりの勢いをつけてカチカチッと2度鳴らすという操作をした。あんなに勢いをつけたら設定値よりもかなり高いトルクか掛かるだろう。まあそれを見越して90Nmぐらいに設定しているというのならOKだが、まさかそんなことをするはずがない。

  • 車両はリフトから完全に降りていない。そう思って作業を見ていたところ、車両はほとんど動かないままリフトの台がサイドシルから離れた。なんだ、ほぼ完全に降りていたんだ。。。そんなことでは何をやっているのか分からない。

 

もうちょっと頭を働かせてくれたらいいのに。。。そんなことだから自動車整備士の地位が上がらないのだと思ってしまう。

ホイールを車両に装着する際、センターをきっちりと出すために次の手順でやるのがいいと思う。

  

まずは車両をジャッキアップした状態で

@ナットを取り付けたらソケットを装着し、ホイールをグルグル回しながら手でソケットを回して締め込み、だいたいの位置を決める。

Aクロスレンチをナットに装着し、タイヤが回らないぐらいの軽い力で均等に締めてセンターの位置を決めていく(ホイールは少しずつ手で回しながら作業する)。それからクロスレンチでナットを締めながらホイールを回す(勝手に回る)作業を繰り返し、だんだん強く締め付ける(ホイールを回 しながら締めることにより、自重によるアンバランスが発生しないようにする)

次はジャッキを少し降ろしてタイヤがわずかに接地した状態(サスペンションは数mm縮むぐらい)

Bトルクレンチの設定を70Nmぐらいにして均等に締め、85Nm、100Nmと少しずつ均等に締めていく。

ジャッキを外して完全にタイヤを接地させて、クルマを前後に1mぐらい動かしてサスペンションを馴染ませた後、100Nmで各ナットの締まり具合を確認して終了。

 

私はこのように作業をしているが、かなり面倒である。でも、どの行程が省略できるというのか。

センターハブがきちんとフィットする純正ホイールなら「センター出し」にさほど慎重にならなくてもいいかもしれないが、社外品であればこれぐらいの作業がいるはずだ。でも、こんな作業をする店はない。それだけ何も考えずに整備士は作業をしているのである。

インパクトレンチを使えば楽ができるけれども、そんなことで本当に良いと思うのか。

整備士にもう少し頑張ってもらいたいと思った例 をさらに一つ挙げておこう。

私のレガシィのフロントストラット交換作業に伴うものである。

部品の取り付け位置は、ボルトとブラケットに調整範囲が明確に設定されているにもかかわらず、それを外れたところで組み付けられてい た。SUBARUの特徴であるこの調整機能を整備士が知らないはずはないと思うのだが、どうしてそんなことができるのか。

また、以前のアライメント測定&調節時に許容範囲ではあるがギリギリOKの値(キャスター角が基準値より小さい)が存在していたのに、組み付け時にそれを修正しようという試みはまったくみられなかった(→仕方がないので自分で調整したらうまくいった)。

この話は分かりにくいので補足すると、レガシィがBP/BL型にモデルチェンジした際に大きく変わった重要なポイントが「キャスター角6度」という設定なのである。これが意味するところは、転舵時に外輪が倒れこまないことでフロントタイヤが逃げない設計に変更されたということだ。それを生かすためにはキャスター角が小さくてはダメなのだ。 整備士ならメーカーの思惑を的確に認識しておいてもらいたい。希望を言うなら、6度を少し超える値に調整したいのだが・・・

もっと分かり やすい説明を求める向きは、こちらをご参考に

http://golf4.blog65.fc2.com/blog-entry-7.html

http://www.carworld-jp.info/car/subaru/legacy/html/index4.html

カードクターなんて呼ばれることもある仕事でありながら、誤診や不適切・不十分な処置が多すぎて本当に困ってしまう。

整備士のレベルが高い店があれば、私はそこでクルマを買いたい。

  

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