暖機とエミッションの関係
近年のクルマは暖機をせずに走り出しても何ら文句を言わないようになった。しかし、あまりにも従順なので、機械がどのような状態で動いているのか想像することができない人を増やしている。 キャブレターの時代は、始動後すぐに走ろうとしてもアイドリング回転が低くて安定せず、スロットルを開けてもブスブスと息つきをしてまともに走ろうとしなかった。そういう現象から、エンジンで起こっていることに想像を巡らせたものである。 例えば、
このように走り出す前にエンジンのことをよく観察し、機嫌を損ねないよう配慮する必要があったのである。 今のエンジンはコンピュータで燃料の濃さやスロットル開度を自動調節して、人間が何も考えてやらなくても一見機嫌良く動いてくれるようになった。 キャブでは狭い範囲でしかコントロールできなかったことが、電子制御できめ細かくかつ幅広く対応できるようになったこと(燃料補正:始動増量、始動後増量、水温増量など)により、ズボラを許してくれるのである。 果たして、それに甘えて暖機をしなくてもいいのだろうか。
では、暖機の有無とメリット・デメリットを考えてみよう。
暖機なしのメリット
暖機なしのデメリット
暖機ありのメリット
暖機ありのデメリット
以上のようにメリットとデメリットが挙げられた。ただし、個々の例は単に一面を見ただけであり、もっと総合的に考えなければならない。
冷却水温が適温(80度程度)になるまで燃料増量の信号が出るので、冷間で走り出せば増量した分の燃料を余計に使う。また、触媒が温まるまでに出るHC、COは物凄く多い。停車して暖機すればやはり無駄な排ガスが出る。 では、排ガスの総量が暖機の有無でいかに変わるのか。そこが一番の論点になろう。 メーカーでテストした結果、暖機なしのほうが良かったので「暖機不要」となっているのかもしれない。
今になって思うと、冷間時に不機嫌だった昔のエンジンは、単にキャブだけが不機嫌で、それ以外の機械は特に文句を発していなかったのかもしれない。 もしそうなら、燃料コントロールが上手になった現代のエンジンでは暖機は不要と言える。
もしも暖機不要という考えが正しくても、1回の走行時間が極端に短い使用環境(私の場合、通勤は12分程度)では、燃料を無駄にしてでも適正水温で走る時間を増やしたいと思う。冷間走行でエンジン内に水が溜まるのは嫌なので、50度まで水温を上げてから走ることにしている。 スバルのクルマは水温情報を元に空調が自動コントロールされている状態が分かりやすい。25度に設定したAUTOエアコンは、GC8インプレッサでは水温が低い間は室内ファンがまったく回らず、 水温50度で初めてファンスイッチがONになる。BL5レガシィでは水温が低いと風向きがデフロスタで風量が微少になり、ある程度水温が上がると風向きが足元へ切り替わる。それが走り出す合図である。 スバル以外でも同じようなコントロール(低水温時の暖房制御)がなされているはずなので、短時間走行の頻度が高い場合は多少の暖機を考慮してみてもいいのではなかろうか。 |