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暖機とエミッションの関係

近年のクルマは暖機をせずに走り出しても何ら文句を言わないようになった。しかし、あまりにも従順なので、機械がどのような状態で動いているのか想像することができない人を増やしている。

キャブレターの時代は、始動後すぐに走ろうとしてもアイドリング回転が低くて安定せず、スロットルを開けてもブスブスと息つきをしてまともに走ろうとしなかった。そういう現象から、エンジンで起こっていることに想像を巡らせたものである。

例えば、

  • キャブやインマニが冷えているとガソリンが気化しにくいのか・・・それで排気熱や冷却水でキャブやインマニを暖める機構が付いているのか・・・

  • チョークを引くとアイドル回転を保っていられるのは、燃料を濃くして、さらにスロットルバルブを開いているからなのか・・・

このように走り出す前にエンジンのことをよく観察し、機嫌を損ねないよう配慮する必要があったのである。

今のエンジンはコンピュータで燃料の濃さやスロットル開度を自動調節して、人間が何も考えてやらなくても一見機嫌良く動いてくれるようになった。

キャブでは狭い範囲でしかコントロールできなかったことが、電子制御できめ細かくかつ幅広く対応できるようになったこと(燃料補正:始動増量、始動後増量、水温増量など)により、ズボラを許してくれるのである。

果たして、それに甘えて暖機をしなくてもいいのだろうか。

 

では、暖機の有無とメリット・デメリットを考えてみよう。

 

暖機なしメリット

  • 走ることに集中して燃料を使える

  • 水温が適正になるまでの時間が早い(ヒーターから早く温風が出る)

 

暖機なしデメリット

  • 触媒が活性化していないので、未燃焼ガス(HC)が大量に放出される

  • 濃いガスによって不完全燃焼が起きるので、COが大量に放出される

  • 水温が適正になる前に燃焼室で強い爆発をさせるので、エンジン部品が適正なクリアランスを出せず、クランクケースに未燃焼ガスが吹き抜ける

  • 不適正なクリアランスで運転すると異常磨耗が増える(さらに、オイルメーカーの宣伝によると、FM剤は低温では機能しないらしい)

  • 濃いガスが燃焼室に入るので、燃えなかったガソリンでオイルが薄められる

  • オイル粘度が高く、さらに濃いガスで走るため、燃費が悪い

 

暖機ありメリット

  • 触媒が活性化してから走るので、汚い排ガスを撒き散らさない

  • 適正な濃度のガスで運転を始めるので、燃費が良い

  • トランスミッションも同時に温まるので、走り出しの時点でATFやギアオイルの抵抗感が少ない(ATやMTの作動がスムーズ)

 

暖機ありデメリット

  • 触媒と冷却水を温めるための燃料と時間が無駄

  • 触媒が温まるまで家に臭い排ガスが流れてくることがある

 

以上のようにメリットとデメリットが挙げられた。ただし、個々の例は単に一面を見ただけであり、もっと総合的に考えなければならない。

 

冷却水温が適温(80度程度)になるまで燃料増量の信号が出るので、冷間で走り出せば増量した分の燃料を余計に使う。また、触媒が温まるまでに出るHC、COは物凄く多い。停車して暖機すればやはり無駄な排ガスが出る。

では、排ガスの総量が暖機の有無でいかに変わるのか。そこが一番の論点になろう。

メーカーでテストした結果、暖機なしのほうが良かったので「暖機不要」となっているのかもしれない。

 

今になって思うと、冷間時に不機嫌だった昔のエンジンは、単にキャブだけが不機嫌で、それ以外の機械は特に文句を発していなかったのかもしれない。

もしそうなら、燃料コントロールが上手になった現代のエンジンでは暖機は不要と言える。

 

もしも暖機不要という考えが正しくても、1回の走行時間が極端に短い使用環境(私の場合、通勤は12分程度)では、燃料を無駄にしてでも適正水温で走る時間を増やしたいと思う。冷間走行でエンジン内に水が溜まるのは嫌なので、50度まで水温を上げてから走ることにしている。

スバルのクルマは水温情報を元に空調が自動コントロールされている状態が分かりやすい。25度に設定したAUTOエアコンは、GC8インプレッサでは水温が低い間は室内ファンがまったく回らず、 水温50度で初めてファンスイッチがONになる。BL5レガシィでは水温が低いと風向きがデフロスタで風量が微少になり、ある程度水温が上がると風向きが足元へ切り替わる。それが走り出す合図である。

スバル以外でも同じようなコントロール(低水温時の暖房制御)がなされているはずなので、短時間走行の頻度が高い場合は多少の暖機を考慮してみてもいいのではなかろうか。

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